第354話

今日は良い天気で絶好の鷹狩日和!!

政宗君のお誘いで鷹狩にやって来ましたが、戦国武将って鷹狩好きだよね~

まぁ前世の接待ゴルフとかみたいなものでもあるのである種の社交場とも言えるしお偉いさんには必要なことらしい。

竜様(近衛前久)は何度も鷹狩に誘われ同行したし、織田殿(織田信長)も好きだったし、家さんも好きらしく何回か同行したことある。

まぁ獲物で作る美味しい料理食えるし、俺的にはちょっとしたピクニックみたいなものなので鷹狩自体に興味は無くても意外と楽しめる。

行き成り何故鷹狩?と思うだろ、いうなれば敵を誘い込む為のある種の囮鷹狩なんよ~


「どうですか?」

「立派な鷹ですね」


ご自慢の鷹を見せてくれている政宗君は鼻高々で、趣旨を忘れてないよね?と言いたくなる程には鷹狩をエンジョイされています。

今日は鴨が取れたみたいなので鴨南蕎麦でも食いたいところだ。


「蔵人様の所の料理人にお任せしてよいのですかな?」

「勿論!!美味い物をご馳走しますよ」


まぁ刺客が現れるまで鷹狩を楽しみましょう。

そうこうしていると、鴨がかかった、いや、鴨は鴨でも敵ね。


「父上!報告で二千名程の軍勢が此方に向かっているそうです」


どうやら諜報部からの知らせて敵を感知したらしく、羽(羽長)が報告を挙げて来た。

伊達家の方はまだその情報を掴んでいなかった様で大慌てで確認を取っている模様。

政宗君も小十郎殿(片倉景綱)も渋面です。


「本当にお任せしても良いのですか?」


そう言って来たのは小十郎殿で、前もっての打ち合わせで敵の相手は丸目家で行うこととした。

うん、売られた喧嘩は買うよ!!

一応は政宗君たちの顔を立てて鷹狩での誘き寄せ案には賛同したけど、そもそもが喧嘩売られたのは俺だからね~

勿論、伊達家にも面子があるだろうけど、そこはほら、今までの落ち度を匂わせて家が対処することを決めさせたよ。

一応は伊達家の方でも藤五郎殿(伊達成実しげざね)が軍を率いて待機しているけど、俺たちが敗れない限りは手出し無用とさせて頂いている。


「長様、敵大将を暗殺する?」

「それじゃあ面白くない」


暗殺するか聞いて来たのは春麗で、春麗は剣術以上に忍術や幻術に特化したことで今回出番が少ないのがご不満のようだ。

前回の戦では俺と美羽で敵を倒しているのが羨ましかったらしい。


「拗ねるな、拗ねるな、今回は春麗には必ず参加して貰うからそれで我慢してくれ」

「解りました・・・」


うん、春麗は納得してくれた様なのでホッとするが、今回の事聞いたら莉里も何か言って来そうだ。

今回は莉里は切原野でお留守番なのでここに居ない。

まさかこういう事態に陥るとは思っていないからね~戻ったら何て言われるだろうか?


「父上、父上だけではなく藤次郎殿の首も狙っているようです」

「ほう!本当に謀反じゃな」


その知らせを聞き政宗君がワナワナと怒りを爆発させる。


「おのれ!!小次郎(伊達政道)め!!」

「藤次郎様、小次郎様が軍勢に居るかは・・・」


小十郎さんが此方をチラリと見ると、羽が「居ないようですよ」と答えたので、政宗君がばつの悪そうな顔で言う。


傅役もりやくの制御も出来んのか!!」

「まぁこれで小次郎様も言い逃れは出来ますまい」


小十郎殿が悪い顔でそう言う。

日本の伝統、「責任者出て来い!!」の原則に従い、傅役もりやくの犯した罪は主たるものが責任を負う事となる為、弟君(伊達政道)は伊達家の軍法に照らし合わせて裁かれることとなるのだろう。


「では、参るか」


俺の合図とともに春麗と美羽が俺の両サイドに並び、「お供します」という。

今回の作戦は、春麗が幻術で敵軍の足止めを行い、俺が突っ込む。

頃合いを見て春麗と美羽がそれに続く事となる。

羽や春(春長)とそれ以外は政宗君の護衛で、もしも俺たちをすり抜けて政宗君に攻撃が及ぶようなら彼らの出番ではあるが、1500の軍を藤五郎殿(伊達成実しげざね)が率いて駆け付けて来るだろうからそれまでの護衛という形になるだろう。

早速とばかりに駆け出して、春麗が軍勢の真正面にて幻術を行使。

どんな物を見せているのか後から聞くのが楽しみだ。


「では先ずは俺が突っ込むから、後は任せた」

「お任せ下さい」


俺は美羽にそう告げると軍勢に突っ込む。

美羽は見惚れてしまいそうなほどのニッコリ笑顔で見送ってくれた。

突っ込むと目敏く俺を見つけた者が「敵が来たぞ!!」と叫ぶ。

混乱はして足止めしたが何とか持ちこたえた様で逃げる物は今の所居ない様だが、浮足立っている。

俺の近くに居た数十名が槍を突いて来た。

俺は軽身功を使い一つの槍の上に乗るとそれを見ていた敵兵から声が上がる。


「何じゃあれは!!」「や、槍の上に・・・」「信じられん!!」「あれは人か?」


色々な声が聞こえて来るが、一応に皆驚いた感じなので、その隙に槍先から兵士の手元の方へと槍上を移動し敵兵の首を刎ねた。


「う、う、狼狽えるな!!敵は一人じゃ!!」


滅茶苦茶動揺した声でこの場の指揮官的な立場の者がその場の沈静化を図ろうとしたが、春麗のクナイが眉間に刺さりあえなくこの世を去った。

次の瞬間


バン!ババババババーーーーン!!!!


凄まじい数の鉄砲で味方諸共銃撃された。

パッと見で200位かな?

俺は慌てずに自分の体に当たりそうな物だけを太刀で逸らして難を逃れる。

周りは阿鼻驚嘆で敵兵が味方の玉でバタバタと倒れる。

次の瞬間、突如として竜巻が起こり鉄砲隊が吹き飛ばされた。

恐らくは美羽の天狗の技での仕返しだろう。

その後は俺、春麗、美羽の3人での蹂躙が・・・その前に殆どの兵士が逃げて行った。

この時代は農民兵とか陣借りの傭兵みたいな奴らで攻勢されているから情勢不利となれば兵は逃げる。

残るは傅役もりやくとそいつらの家来でも忠誠心の高い僅かの者のみが残った。

ゆっくりとその一団に近付いて行くと抵抗はしないようだ。


「首謀者は出て参れ!!」


そう叫ぶと一人の者が出て来た。

傅役もりやく は二人と聞いていたけど、ここには一人しか居ないのか?


「小原縫殿助ぬいどのすけと申す!!」


確かに・・・いや、何となくだけど弟君との会見の場に居た顔だと思うが・・・正直よく覚えていない。

春麗が俺の横にやって来て、「伊達小次郎の傅役もりやくの一人です」と教えてくれた。


「丸目二位蔵人様に立合いを所望する!!」


この期に及んで立合い希望・・・

まぁ良いけど、一応は政宗君に確認が必要なので春麗にお願いして呼んで来て貰うこととした。


★~~~~~~★


「鉄砲での暗殺が出来ぬと判れば次は毒を盛るか、軍でも此方に投入して来るか・・・」


蔵人様がそう申された。

毒・・・確かにありそうじゃが、軍を差し向ける?流石にそこまではと思うたが、尻に火の付いた後の無い愚か者ならそれ位はやるのかもしれないと考えを改めた。


「蔵人様」

「何ですかな?」

「これは伊達家の不始末、此方で形を付けさせて頂きたい」

「いや、喧嘩を売られたは某、某は売られた喧嘩は買う事としております」

「しかし、軍を差し向けて来るとなれば蔵人様方だけでは対処にお困りでしょう?」

「そうですな・・・1万位で来れれると流石に草臥くたびれますな」

「一万は流石に・・・」

「ああ、三千位なら私一人でも何とかなると思いますよ?」


何を言っているのかよく解らず聞き返すと、過去に一千二百余名の軍勢を蔵人様と奥方の美羽殿のお二人で退けたという。


「本当に宜しいので?」

「勿論!!」


蔵人様の言い分を聞くと言う事で相手が気易い様にと鷹狩を行い誘いだす事となった。

小十郎、藤五郎とも話したが相手も馬鹿では無いからそんな誘いには乗らないだろうという意見で一致した。

念の為に藤五郎が軍を率いて待機する事となった。


「蔵人様の予想通り馬鹿が攻めて来ましたな・・・」


小十郎は我々の予想を覆して攻めて来た阿呆の軍勢を忌々しそうに見詰めながらそう宣う。

蔵人様方はまるで散歩でも出かけるといった具合に気軽に歩いて敵軍へと歩いて行った。


「本当に大丈夫なのか?」


つい、心配で独り言を言うと、それを聞いていた図書殿(春長)が言う。


「父上の武威は一騎当千、いえ、それ以上ですので面白い者が見れますよ」

「そうそう、心配するだけ損です」


帯刀殿(羽長)も追従するようにそんな事を言われる。

戦いはあっと言う間の出来事であった。

敵軍の正面に春麗殿が突如現れると何故か軍が大混乱に陥る。

今までの統制が嘘の様に崩れて行く様は何が起こっているか解らないまでも恐ろしいと言う事だけは理解出来た。

次に、蔵人殿が駆けて行き、敵軍に飛び込んだ。

何という無策!!何という豪胆!!

呆気に取られている間にも敵兵の一部がそれに気が付き騒ぎ出す。

そして、蔵人殿目掛けて数十名の者が槍を突いた。

しかし、蔵人殿はふわりと宙を舞い槍の上に乗る。

それはまるで源平の牛若(源義経)の如くである。

そういえば、昔、蔵人様は「今判官」等とも呼ばれていたなと言う事を思い出した。

槍上の蔵人様は兵の首を刎ね地面に降りられると今度は銃撃された。

数として二百程か?

儂と小十郎は慌てたが帯刀殿・図書殿が落ち着いて言う。


「父上を殺したければ大砲でも撃ち込まねば無理でしょう」

「いや、父上なら大砲ですらいなすか斬りそうじゃ」


何を馬鹿なと思っておったが、敵兵がバタバタと倒れる中、蔵人殿は平然とその場に立ち、太刀で銃弾を弾いて居られた。


「「な!!」」


儂だけではなく小十郎も驚き、驚嘆の声が重なった。

勝負はあっと言う間に着き、軍勢は散りじりに霧散した。

遠くなので良く聞こえぬが、首謀者の一人が蔵人様に対して何か叫んでおる。

少しすると春麗殿がこちらに戻って来て言う。


傅役もりやくの一人、小原縫殿助ぬいどのすけ殿が長様との立合いを所望です。私どもだけでは決め兼ねましたので長様が伊達様をお呼びするようにと」

「あ、相分かった・・・」


儂たちは蔵人様たちの許へと行くこととなる。


〇~~~~~~〇


久しぶりに少し長い本編となりました。

さて、久しぶりの剣豪ムーブ?いえ、もうチートですね。

一人だけ戦〇無双してる感じですね。

うんちくは何を語ろうか?と思ったのですが、数話前に兜の前立て(伊達成実しげざねの毛虫の前立て)の話をしたのですが話足りないので戦繋がりで掘り返し話をさせて頂きます!!

前立てだけではなく兜と言うのは武将の主張の際たる物で、色々なモチーフの物があります。

神仏だったり神獣(龍、麒麟とか)だったり、愛という漢字を掲げたり、鹿や牛の角何かもありますね。

しかし、今回取り上げるのは伊達成実の毛虫繋がりで「虫」に焦点を絞りましょう。

先に申し上げましたが、兜は武将の主張の際たる物です。

戦に臨む上での自分の主張を全面的に押し出した自己主張の塊と言ってもいいかもしれません。

伊達成実の毛虫の様に「敵に相対せば一歩も引かない」という己の心意気を表したものや、験担ぎなど色々あります。

さて、虫の中でも人気なのが「トンボ」です。

有名なのは織田信長や前田利家がトンボの前立ての兜を所持していました。

何故トンボ?と思うかと思いますが、トンボは別名「勝ち虫」と言われました。

要は験担ぎです。

西洋では不吉なものとされるトンボですが、日本ではとても縁起の良い虫とされたし、後退はせず、前にしか進まないという習性から「勝ち虫」と呼ばれたので伊達成実の「毛虫」と同じような理由で武将に好まれました。

また、「勝ち」というゴロも良いので採用率が高かったようです。

後は、「百足ムカデ」や「蝶」も人気でした。

「百足」は甲斐武田の使番が、このムカデを描いた指物を使っていたと云われます。

姿形はグロテスクですが、俊敏で獰猛と言う事で人気だったようです。

後は「カブトムシ」みたいな兜被った者も居ます。

作中で登場した前田利長・蒲生氏郷の兜は「銀鯰尾形兜ぎんなまずおなりかぶと」というナマズの尻尾モチーフの兜でした。

シンプルなデザインなのに凄いインパクトのある兜なので知らない方は是非ともネット検索でもして「銀鯰尾形兜ぎんなまずおなりかぶと」をご覧ください!!

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