第137話

嶋さんの所では胤栄さんも遊びに来たりと賑やかに兵法指南をさせて貰った。

気が付けば半年余りを過ごし十分に指南できたことだと思う。

嶋さん・・・いや、仲良くなり尚且つ指南した先生という事で俺は左近と呼び捨てにするようになったし、指南以外の時は蔵人と呼ばれる仲となった。

可愛い可愛い可愛い・・・以下略、我が愛しの里子はもう直ぐ1歳となる。

プレゼントを如何しようかと考えている。

0歳児だが、二足歩行するし、ある程度は言葉を理解し少し舌足らずの言葉で話す様になった。

多分、普通の赤ん坊では無いと思えるが、普通に育って欲しいと思っている。

変に期待しても良くないと思っている。

いい例が俺の親父だと思う。

さて、いよいよ指南も終わり京に戻ることとした。

俺が京を離れている間にあった大きな出来事としては、足利義栄よしひでと言う人が将軍となった。

四国に居た人なので面識はない。

そして、完全にこの足利義栄派閥の四国三好とそれに協力する者たちと、三好義継派閥が分裂した。

もう三好家の事は知らん!!

支払いだけはしっかりして欲しいものだが・・・

本願寺も10万貫を急ぎ持参してきたようだ。

取次ぎを近衛殿下と山科様にお願いしているので、大丈夫だと思う。

全て投資に回して宗さんと天さんに資産運用して貰っている。

手紙でも可成り感謝されているし、莉里の方にも手紙が来て三好と本願寺が支払い完了までは絞れるだけ絞る政策立案をしていた・・・莉里の怒りは治まっていないようだ。

まぁ俺も治まっていないと言うか、首謀者が居なくなったことでどうでもよくなったので、後は莉里の気が治まるまで長い目で見ることとしている。

それから、織田信長がいよいよ伊勢進攻を開始し始めた。

北畠さんが心配ではあるが、気にしても仕方ないので俺のアドバイスを活かして欲しいものだ。

それからそらから、家さん(徳川家康)の所の長男さんと信長の娘が結婚した。

真里のお悔やみの手紙と共に「御不幸事の時に申し訳ないが報告までに」という事で伝えて来た。

うん!気遣いが染みる!!俺は早速とばかりに康さんにお祝いと最近流行りの皮の外套を贈っておいた。

京に戻ると摩利支天様の社・・・神社・・・大社?の敷地割りがされていた。

俺が武術大会を開いた場所がお社の敷地と成る事になったようだ。

近衛殿下と山科様には申し訳ないが、俺は真里を故郷に連れて帰ることを優先することとした。


「真里、ただいま」


真里の安置された庵に向かい、眠る様に横になっている真里に語りかけるが返事は無い。

既に魂はここには無く、真里の聖骸は真里と言うよりアーティファクトみたいな物に成っているのかもしれないが、形はそのまま真里なので話しかける。


「これから俺の故郷に戻るからな」


一人にさせて欲しいと言っておいたので誰も来ないので俺の声が途切れると静寂が支配する。


「摩利支天様に言われたから髪を一房だけ貰うな」


俺はそう断りを入れて、真里の髪を少しだけ切り取り紙に包む。


「里子は元気に育っているぞ。莉里がまだお前の死を引き摺っているようだ・・・他の皆も偶に寂しそうにしている・・・俺も寂しいよ・・・」


涙が零れそうになり押し黙ると、何とも不思議な感じで、誰かに後ろから抱きつかれたような・・・そんな感じがしたが、誰かが居る訳ではない・・・

そのまま真里を見詰め半刻ほど過ごしてから庵をを後にした。


「長、九州に戻るのか?」

「はい、真里を連れて一度戻ります」

「また京に来るか?」

「そうですね・・・造営中の摩利支天様のお社の完成も見たいですから」

「おう!そちらは任せておけ!!」

「はい、お願いいたします」


深々と頭を下げてお願いした。

そして、義理の親父となった近衛殿下、山科様と俺に近しい者で祝言を挙げた。

天子様は・・・うん、流石に出席は難しいが「幸あれ」と言う有難きお言葉を頂いた。

勿論、真里も花嫁だ。

それから、準備が出来次第、俺達は京を後にして堺へと向かう。


っちゃんよく来たね~」


宗さんの所に行ったが、俺達の挨拶より先に里子を抱き抱える。

宗さんはまるで孫の様に里子の事を可愛がってくれる。


「宗さん、また少しの間世話になる」

「ははははは~長さんたちなら何時まで居て貰ってもいいですよ」


藤林一門の内、お金を筆頭に十数名が京の山科邸に残り、社作りの手伝いをすることとなった。

そのまま京の駐在員宜しく管理することとなっている。

俺が京に滞在中に神職の押し売り志願者が結構現れた。

殆どが京周辺の有名神社の次男坊三男坊だが、紐付きなど要らんわ!!

藤林家に任せて近衛殿下と山科様のお墨付きも頂いた。

多分、俺が京を離れると京の町が荒れる可能性が高いので、孤児とか出たら匿って人材として育てる様に指示している。

忍者としてだけでは無く幅広く色々な事を出来る人材を育てる予定としている。

既に孤児を数人今回の旅に同行させている。

何故同行させたのか?

実は里子には人を見る目があるようだ!!流石我が子!!超天才なだけでなく、超常の力すらあるらしい!!

え?親馬鹿?・・・うん!それは認めるけど、事実だ!!

里子には何か不思議な力があるようで、今回連れて行く孤児の何かを見ているようで、里子の方から連れて行って欲しいと言って来た。

友達と離れるのが辛いのだろうと?・・・まぁそうかもしれないが、そもそもが里子の願いだ聞くぞ俺は!!

里子が連れていってと言ったのは源太(5歳位?)、お香(3歳?)、千代(0歳)・・・本当に幼児だ・・・

源太とお香は兄妹で、伊勢に行く道中で行き倒れしていた所を保護した。

そして、千代は俺が孤児を保護している噂を聞いた何者かが山科家の門前に捨てて行った捨て子・・・

この三人に何を思ったのか里子は仲良くなった。

他にも何人か孤児はいるのではあるが、里子が懐いたのがこの三人で、理由を聞くと何か後ろの人が「助けちぇ」って言ったとか何とか・・・

まぁ里子の近習的な感じでお香と千代は採用し、源太はお香の兄なので連れて行く理由とした。


〇~~~~~~〇


神の加護が宿った母体から生まれた里子はただ者ではないようです。

さて、九州に主人公は戻ります!!

主人公の去った京はこれから荒れます!!

そして、足利義昭を連れた織田信長が上洛して来ます。

しかし、織田信長と敵対した者たちが弱体化しているので信長の動きも変わって来るかもしれませんが、タイミングを同じくして主人公が京を離れます。

今回は少し、織田信長について語りたいと思います。

信長は自分で「第六天魔王」名乗りました。

武田信玄とのやり取りで売り言葉に買い言葉で自分から名乗ったと言われています。

さて、「第六天魔王」とはどういう意味か!!

欲界の最高位が第六天と言い、仏道修行を邪魔するものを魔と呼びました。

簡単に言うと最悪の存在という事を自分から宣言しました。

では、信長はどんな大罪を行ったのか?

比叡山焼き討ちなどが有名でしょうか?

しかし、最大の大罪は、猫を虐待した事です!!

これは豊臣秀吉も近い事をしたので少し秀吉も猫スキーな私としては許せませんが、信長は明確に猫の大敵でした!!

猫愛好家の間では織田信長を「第六天魔王」と真剣に呼びます。(知らんけど)

何故か?

織田信長は鷹狩が大好きでした。

30もと(鷹の数え方:本、居)も飼っていたそうです。

それだけ多頭飼いしていると、餌に困ります。

鷹は生餌を好む為、目を付けられた動物の1種が猫なのです!!

奈良の猫と鶏を生餌として差し出す様にと命令されたそうです。

この命令で奈良での猫借り(借りると書いて返さないやつです)若しくは猫狩りと呼ばれるものが行われたそうです・・・(信長死すべし!!)

奈良の猫愛好家は猫を隠しましたが処罰された者も出たそうです・・・(信長死すべし!!)

そこである飼い主さんが良い案を思いつきました。

興福寺に猫を匿ってもらう!!

何故に猫を寺に?と思うかもしれませんが、当時の寺社は守護使不入権しゅごしふにゅうけんと言う物がありました。

これは、所謂、治外法権で、武家など外部からの侵入や介入を拒否できる聖域だったことを利用して、信長の魔の手から飼い猫を守った訳です。

この時代にペットと言う概念すら無かったのですが、興福寺に猫を持ち込んだ人々はペットに近い存在として猫を見ていた者と思われますね~

逆に、猫好き戦国大名も居ました!!

島津義弘は大の猫好きで、朝鮮出兵の際は愛ネコ数匹を連れて行ったとか。

その内二匹は亡くなってしまいましたが、島津家の別邸に社が建てられ手厚く葬られたそうです。

伊達政宗も猫好き大名として有名で、猫の様子を書いた書状を認める程だったと・・・

豊臣秀吉も実は猫好きで、日常でも飼い猫をたいそう可愛がっていたそうで、飼い猫が居なくなったことで大騒ぎして浅野長政が捜索の指揮を取ったそうです。

探しても見つからないため、猫好きで有名な武将に「お主の飼う猫の中で虎毛の美しい猫を貸してくれ」と書状を送ったらしいです。

その書状は現存しているそうですが・・・浅野長政って五奉行の一人ですよ!!

実は猫奉行だったとは・・・

え?信長のうんちくでなく猫うんちく?・・・信長より猫の方が重要です!!

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