第333話
宴は盛大に模様された。
3人の息子たち合同の披露宴で切原野の全体がお祭り騒ぎだ。
酒と幾つかの料理を振舞い切原野の人々も祝ってくれており、社から戻る途中では「おめでとう」等の声が掛けられた。
それに、遠くから笛や太鼓の音なども聞こえ、賑やかに各々で息子たちの結婚を祝ってくれているようだ。
まぁただ単に楽しんでいるだけの者も居るだろうが、それはそれで良いと思う。
そうは言っても、沿道に多くの者か駆け付けてまるでパレードの様に大盛り上がりで一緒に歩いている大名たちも驚いている。
丸目家一同は平常運転で特に驚く事ではない。
切原野は一応は俺の財力で造られた町なので主権は俺にあるそうで、息子たちは町の者たちから
そして、そういう意味でも現在の切原野はお祭り騒ぎの状態となっている。
「えらく下々の者が慕っておりまするな」
「ああ、元々が戦災で難を逃れたは良いが行き場を失っていた者や売られていた者たちを買ってここへ連れて来たりしておりますのでそれで恩義を感じての事でしょう」
「丸目様は篤志家なのですな」
高山殿(高山右近)がそう言って俺を褒める。
篤志家?・・・違うと思うけど、態々訂正することも無いので「そうですかね」と曖昧に答えたが話はまだまだ続くようだ。
「流石は聖人で在らせられる」
「いや、聖人は偶々頂いたもので、某自身は自分で聖人などとは思っておりませぬよ」
「うふふふふふ~流石ですな~!!」
うん、何を言ってもヨイショされそうなのですが?
そして、次には高山殿は真剣な顔で言われた。
「殿下(豊臣秀吉)をお止め頂き感謝しております」
歩きながらでの会話なので軽い目礼でその感謝を伝えるに留まっているが、落ち着いた場でのことであれば、深々と頭を垂れたのではないかと思えるほどの雰囲気で言われた。
何のことかと言えば、恐らくは伴天連追放令の事だろう。
高山殿はそれを諫めたことでお猿さんの不興を買い、今は小豆島に島流し状態だという。
諫める時に逆に棄教を迫られたとも聞く。
それを断って領土を捨てる覚悟を決めて更に諫めたから現在は追放状態だ。
そんな高山殿を匿ったのが弥九朗(小西行長)で、小豆島で匿っていたという事を藤林の諜報が調べていたことを思い出した。
本当に藤林の諜報網の広さに驚かされるな。
さて、今回はその小豆島を領地に持つていた弥九朗(小西行長)が連れて来た訳だ。
弥九朗は彼の親父である立佐さん(小西隆佐)の所で知り合った。
元々は商人の倅であったが、見ない間に武士となり、お猿さんに仕えていた。
立佐さんは薬問屋をしていたのでその方面で援助もしていた。
医療方面からの伝手で知り合った訳だ。
さて、立佐さんもキリスト教信者であるが、弥九朗(小西行長)も同じくだ。
その縁で同じキリシタンの高山殿を保護していると聞く。
弥九朗(小西行長)からもそう言えば感謝の書状が届いていたのを今更ながらに思い出した。
何だか知らんが、多くのキリシタン大名・武将から感謝の言葉が綴られた書状を頂く事となったのだが、そのお返事を書くのが大変だったことも思い出してしまい、少しだけ遠い目になったのは仕方ない。
話を戻し、弥九朗は肥後国人一揆の討伐で功を成し、肥後国の南半国を褒美として与えられた。
内蔵助殿(佐々成政)の所領が没収された形で空いたのでそこを埋める形で彼と虎之介(加藤清正)が入る形で埋めた。
虎之介は肥後国の北半国を所領する事となったので彼らはご近所さんと言う訳だ。
因みに切原野は相良家の領土内にあり、年貢等の一部を相良家に収めている。
しかし、相良家の援助など全く無く切り開いたことと、大平神社の所領として組み込んでいる為ある意味で相良家の治外法権の場所とも言える。
昔からある守護使不入の原則に基づいているし、それは現在の朝廷も認めるところなので犯すことが出来ない。
お墨付きを頂いているこの影響力は大きいのである。
だからこそ、肥後国人一揆の際は暗黙の了解であるここの統治者の俺を槍玉に挙げ攻めて来た訳だ。
「トーレスさんに頼まれましたし、言い分として少しだけ宣教師たちに同情する面もありました故・・・」
まぁ実際に奴隷の売買斡旋の場に一部の宣教師が関わっているので、お猿さんの主張が全部間違いかと言えばそうではないが、宣教師たちを責め立てるのはちょっと違う気がしたし、知り合いからのお願いを無下に出来なかったことと、その場の勢い?で看破した。
まぁそれで感謝する者も居るのだから実に面白い。
「しかし、デウスの神を信じる私ですが、神は唯一と教えられておりますが、あのような奇跡を見せられると多くの神が居ると教義に無いものでも信じてしまいそうですな」
「あははははは~一神教のキリスト教では相容れぬ事でしょうが、神は何柱も居ますよ」
そう!俺は夢の中とは言え多くの神々に会ったことがある!!
まぁキリスト教の者たちも異教の神を恐れて俺に手出しはしないと思う。
「俄かには信じられませんでしたが、今日初めて神の存在を感じた様な気がします」
恐らくは摩利支天様のお力と思うけど、高山殿に対して「宗旨替えしないよね?」とか思ってしまったのは失礼だろうか?
「恐らくは今日の夜辺りに某の枕元に立たれるやもしれませぬな」
そう言うと高山殿はギョッとした顔をされていた。
〇~~~~~~〇
高山右近も後々は主人公に関わらせようと思う一人なので、今回は大きく接近させました!!
さて、この当時の肥後国はどうなっていたのか?
九州征伐の後は佐々成政が肥後の殆どを治めており、相良家も佐々成政に次ぐ所領を有していたので、実質は佐々成政の与力として相良頼房が付き、肥後を支配していました。
しかし、佐々成政が肥後国人一揆で失脚すると、その空いた所領に小西行長と加藤清正の秀吉子飼いの武将が入る形となったようです。
小西行長が南半国、加藤清正が北半国を治める形となったのですが、相良家は加藤清正の配下に組み込まれました。
そう言う訳で、肥後は二頭体制で運営されます。
小西行長が肥後に領土を得たことで、高山右近も肥後に移り住んだようです。
史実ではそんな折に秀吉に前田家の許へ行くよう命じられ、キリシタンのいない加賀で罪人として暮らす事となります。
そんなこんなで、高山右近をどの様に主人公たちと関わらせようか今結構考えています。
次話も婚儀です。
まだまだ続きます!!
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