第183話

堺に滞在中、師匠(上泉信綱)がやって来た。

久しぶりに会うが、顔のしわが目立つ。

少し細くなった様で、師匠に寄る年波を感じるが、目はぎらつき歳を取っても益々血気盛んのご様子だ。

態々急ぎ俺を訪ねて来たそうだが、何用かな?

羽毛布団を贈った序に近況報告を行ったんだけど、師匠は何か気になる事があるようである。


「蔵人!久しいな」

「お久しぶりです」

「して、仙術を修行中とはどういう事じゃ?」


ああ、なる程!!と合点がいった。


「縁ありまして、仙術の使える者に教えを乞うております」

「何と!!」


早速とばかりに用件を口にされた。

師匠は「仙術」に興味があるようだ。

仙術の師匠であるうちの義妹いもうと千代を見ると安定の茶菓子に夢中。

師匠も同じくそちらを見て、里子と千代を孫でも見る様な顔で見ていた師匠は自分の茶請けの菓子を2人に渡したのでそれを美味しそうに2人してまた頬張っている。

そのまま俺は視線を千代に残して見詰めていると、気になった様で千代が俺に意見する。


「何じゃ?義兄上あにうえ、返さんぞ!!」

「いや、話聞いてた?」

「仙術か?特に教えても良いぞ」


師匠はそのやり取りを聞き、珍しく驚かれていた。

うん、5歳位の幼女が仙術教えているとか普通は思わないよね~

流石の師匠も驚き、桃の木、山椒の木、ブリキにタヌキに洗濯機だったようだ。

さて、師匠ならいいやと言うことで、今までの経緯を説明する。

にわかには信じられないようではあったが、「蔵人のことだしの~」となんか変な納得をされる師匠。

その納得が俺的に納得できないので、証拠として千代にお願いして、耳と尻尾を出して貰った。

里子が大喜び「しっぽ~お耳~♪」と言いながら耳をさわさわ、尻尾をもふもふ。

「そこは・・・」と言ってトロ目の千代。

師匠はビックリ驚かれて口をあんぐり開けておられた。

そして、はっと我に返り


「是非とも某にも仙術をご教授くだされ!!」


幼女里子にモフられている幼女千代に深々と頭を下げている剣聖師匠・・・なんとシュールな光景だろうか・・・

俺、莉里と長門守等のこの場に居る者が遠い目をしたのはお察しだ。

モフられながら返事をする千代。


「うむ、よいぞ!菓子もくれたしお主のことを気に入った!!」


千代は菓子で買収されたらしい、ある意味では安いお狐様である。

まぁ俺の知人であることから了承したのであろう。

弁護する訳ではないが、千代が以前「我は悪人に仙術を教える気はない」と言っていたしね。

口にはしないが、俺への信頼が厚い様で、俺の認めた者に対してこのお狐様は甘々の様だ。

決して菓子に釣られた訳ではないはずだ・・・「菓子をくれたから良い奴じゃ」と言っているが・・・釣られた訳では・・・

こちらに滞在中に教える事となったが、流石の剣聖も仙術を一朝一夕に何とかする事は出来なかったようで、このまま一緒に九州に来ることとなった。

多分、九州に来たら師匠驚くだろうね~飛んでる赤子に耳・尻尾のある赤子・・・美羽も羽を生やすしね~

さて、こちらでも普通に千代は仙術を少しづつ教えている。

俺達は仙人の基礎知識としてレクチャーを久しぶりに聞くこととなる。


「仙術とは後天的に修練して仙真を目指し、悟りに至る道じゃ」


うん!よく解らん。

師匠は「ほほ~、成程!!」とか言いつつ熱心に聞いている。

千代と師匠が意気投合して仙術レクチャーは更に過熱する。

もう、着いて行けません!!


「千代老師と呼べ!!」


調子に乗った幼女が無い胸を張って偉そうに師匠に言う。


「調子に乗るな」

「う~呼ばれてみたかったんじゃ・・・」


そう言いつつもお代わりのお菓子を片手に持ち、それにパクつきながら言われても威厳なぞゼロだぞ、老師。

せめて菓子を皿に置いたか言えよ。

菓子を高く掲げて力いっぱい言うセリフではないはずだ。

手始めにと言うことで瞬歩など幾つかの歩法も披露してくれた。

相変らず瞬歩には驚かされる。

最近は俺も大分出来る様になって来たけどね~

しかし、師匠は「ふむ・・・」と言って瞬歩をやって見せた。


「これは凄いの~」


師匠は大喜びで瞬歩を数度繰り出す。

一同唖然。

俺も唖然、千代も口をあんぐり開けて・・・あ!咥えていたお菓子を地面に落とした。

それに気が付き少し悲しそうな顔をしたが、流石に確認事項が先のようで菓子を諦めて俺に聞いて来る。


義兄上あにうえ!」

「何?」

「あ奴は何者なのじゃ!!」

「え?剣聖だけど?」

「へっ?剣聖って一度見た物をその場でやってみっせるほど凄いのかや?初歩とは言え仙術じゃぞ?」

「さぁ?凄いんじゃない?」

「さ、左様か・・・凄いのじゃ・・・」


流石に軽身功や分身の術などは出来なかったけど、その内覚えそうで怖いわ~

軽身功と分身の術使う剣聖を頭の中で想像し、身震いしたよ、くわばら、くわばら。

師匠を仲間に入れ、俺と愉快な仲間たちは一路、九州はMyHomeの肥後は切原野を目指す。

前世の世で、上泉信綱が九州に上陸したと言う話は聞いたことない。

完全に歴史改変ですがな~と思いつつ、何だかワクワクする。

さて、戻ると我が息子・娘たちが更にパワーアップしていた。

羽は歩く位の速度で飛ぶ。

春・麗華が走る程の速度で這い這いして居ります。

唯一、普通枠と思った利が文字の読み書きを始めておりました・・・

そして、嫁さんたちも美羽が少し浮遊を覚え、春麗が隠形術を会得していた。

うん!俺も負けていられない!!

奮起して俺も仙術と剣術を更に頑張ることとしたよ!!

師匠はまたもや全ての事柄を肯定し、「蔵人のことだからの~」と変に納得された・・・俺関係なくない?とも思う、解せぬ!!


〇~~~~~~〇


大分歴史改変が起こっております!!

さて、仙術について語って行きます。

ご存じと思いますが、仙人が使う術、もしくは仙人に至る為に行う修行法を指します。

人間の体に宿ると呼ばれるものを操作し、肉体や自然現象を自在に操作する特殊能力とも呼ばれます。

また、究極の肉体コントロールとも呼ばれます。

仙術を使うとされる仙人とは中国の道教の伝説の人物を指す言葉として用いられました。

元々は道教の信仰する「神仙」を指す言葉の一部でした。

「神」は言葉そのままなのですが、天神・地祇・物霊・地府神霊・人体の神・人鬼の神と言う存在は先天的に存在する真聖なものでそれらを指します。

「仙」は仙真せんしん・せんまを指して、仙人と真人まひと・しんじんを含んで、後天的に修練を経て道を得て、神通力、また不死を得て悟った・悟る過程にある者を指します。

真人まひと・しんじんとは仙人の中で上位的な存在で、道教の不滅の真理を悟った、自然の神よりも強い霊力を持つ存在と言われます。

道教の「タオ」の神髄を具現化とした者などと言われます。

ド〇ゴンボールで言う所の超〇イヤ人ゴッ〇超サ〇ヤ人SSGSSみたいのものだと思ってください。(解り辛い人の為に、人が仙術を極め神と同等位になった存在と思うと解り易いです。)

さて、この真人まひと・しんじんですが、神が自らの写し身として作った人種とも言われます。

本当に簡単に言うと、超人と言ったところでしょう。

さて、仙人と言うと老人のイメージですが、韓湘子かんししょうと言う中国の代表的な仙人である八仙の一人が居るのですが、若々しい男性の容貌で描かれます。

他にも西王母、麻姑仙人と言う美しい女性の姿の仙女(女性の場合は仙人を仙女と呼びます)も居ます。

仙術の方術の1つの能力に隠形や、分身したりして自由自在に変身する忍術を使うとされますが、その1つに姿を変えることも含まれるとされます。

長い年月修行しているにはずなのに外見が若々しいのはその為のようです。

忍術と出て来ましたが、忍術は仙術の1つの能力と言われているので、忍者は仙人の延長上にある者とも言えます。

さて、他にも、身が軽くして空を飛ぶ、水上歩行・潜水する術、千里眼、火中に居ても平気、暗視・気配察知、猛獣・毒蛇等を調伏ちょうぶくし従える等の能力があるようで、聞けば聞くほど、私たちが知る忍者ですね~(火中に居ても平気はちょっと毛色が違いますが。)

実際に、忍者の技は仙術が源流と言われるので間違いではないようですが、ただし、忍術はそれに密教等も含め幾つかの手法・技法等々を取り入れて行くこととなるのですけどね~

仙術・仙人等の話は話が尽きないのでまた機会がありましたら話たいかと思います。

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