第182話

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◇~~~~~~◇


お猿さん(木下藤吉郎)に剣術指南は中々上手く行かなかった。

織田家の忙しい時期なので戦に出たかと思ったら戻って来て政務、また戦に行きと大忙しのお猿さんたちは剣術する暇も惜しいとばかりに動き回り、中途半端なことになったのでまた時間ある時にと言うこととなった。

取り合えず用事も済んだので一度九州に戻る事とした。

京を出る際、態々忙しい中、見送りにお猿さんが来てくれたよ。


「長さん、オラが忙しくて迷惑掛けた」

「まぁ仕方ないさ、今度は剣術教えに長浜まで訪ねて行くわ~」

「ん?長浜とは何処じゃ?」

「今はまだ今浜だっけ?・・・あ!・・・まぁその内解るさ~」

「今浜?長浜?」


あ~確か今年は浅井と決着つくんだっけ~そして、「長浜ながはま」を貰う。

確か「今浜いまはま」を「長浜」に改名だったか?

ドラマで語られていたのを覚えているよ。

お猿さん(木下藤吉郎)の初めての城持ちになる瞬間で結構ドラマチックに構成されていたな~ドラマだけに?

それで覚えていたけど、ついうっかり未来の話をしてしまった・・・

言ってしまった時は堂々としていた方が良いと判断し、焦る気持ちを余所に軽く流した。

さて、また堺→博多経由でMyHomeに戻るよ。


★~~~~~~★


長さんが旅立ち数日すると上総介様(織田信長)が上洛された。

織田家は今、窮地に立たされている。

戦いに次ぐ戦いじゃ。

去年の終わりに武田に三方ヶ原で負けたことで上総介様と将軍様(足利義昭)との関係が最近悪くなったように感じる。

半兵衛も同意見なので間違いはない。

明智殿は頭を抱えて唸っている事であろう。

オラが将軍様の取次ぎ役で無かったことに胸を撫で下ろして居ることは秘密じゃが。

将軍様は年号を元亀げんきから天正てんしょうに改めようとしていることも気に入らないのかもしれぬ。

明智殿がその件を少し愚痴っていた。

以前より改元の話は出ておったが、元亀の元号は将軍様のご発案であったのも未だに反対される理由であろう。

明智殿の気苦労はまだまだ続きそうじゃ。

武田に織田家が負けたことで将軍様は強気になられておる。

各方面から漏れ聞こえて来る。

お近づきの標しと長さんの配下のお金と言う者が将軍様が各方面に御内書をばら撒き、織田家打倒を叫ばれていることを教えてもろた。

ある程度は情報を掴んがおったが、オラたちより詳細じゃ・・・

上総介様にこれを知らせてもご不興を買うことが予想されるし、既にお知りであろう。

逆に上総介様はそんな将軍様を見限るのも時間の問題だと思われる。

半兵衛は今年辺りに事が起こるのではないかと言う。

今回の上洛でも上総介様と将軍様が言い争ったそうだ。

明智殿が間に入りなんとかその場は収まったが・・・

オラは上総介様にご機嫌伺いを兼ねて「そば殻枕」を献上した。

これは、今、京で話題の商品じゃ。

長さんが考案されたと言う。

オラも半兵衛も長さんに勧められて半信半疑で最初は使ったが、今は愛用しちょる。

ねね(奥さん:ねい、愛称「ねね」)や小一郎こいちろう(弟:木下長秀、後の豊臣秀長)や小六ころく蜂須賀はちすか正勝まさかつ)や多くの家臣たちにも勧めた逸品じゃ。

上総介様も最初訝し気な顔をされたが、後日、お褒めの言葉を頂いたので気に入られたのであろう。

そうこうしていると初夏に入る頃には将軍様と決裂した。

上総介様は二条御所に籠城された将軍様を追い立て京より追い払われた。

そして、長さんの配下のお金が情報を売りに来たと半兵衛が言う。

その者はの情報と言うが、情報だけで千金?・・・恐らくは言葉の綾であろう。

半兵衛がの古事を教えてくれた。

本当に物知りじゃと思う。

半兵衛の勧めもあり、情報を買うこととした。


「織田様に報告した後で支払いは構いませんよ」

「さ、左様か・・・して幾らじゃ?」

「そうですね~そちらの言い値で構いませんよ」

「それでいいのか?」

「はい、結構です」


後払いで言い値で良い?・・・凄い自信とも取れるが、ここで出し渋れば次は無いと言うことだと半兵衛がまた教えてくれた。

う~ん・・・長さんとの付き合いがあるしの~情報次第ではあるが高値を出してやりたい気分となる。


「では、お教えいたします」

「た、頼む・・・」

「つい十日程前の話ではございますが、武田信玄入道様が身罷られました」

「へっ?・・・武田信玄入道とはあの信玄か?」

「他に居られますか?」

「いや・・・それは事実か?」


詳しく聞けばここまで調べ上げるとはと舌を巻くほど詳細じゃ。

この者が言っている事が事実であることは何となく勘で解るが、聞かずにはおれなんだ。

同じく聞いて居る半兵衛も口を一瞬あんぐりと開けておった。

直ぐに持ち直し思考の海に沈んだようじゃが。


「上総介様に急ぎ報告じゃ!!」


この交渉相手の女子おなごは、「では後日お支払いを楽しみにしております」と言って立ち去った。

半兵衛もこの情報に太鼓判を押しの情報と言う。


「それは誠か!!」

「はい、さる情報筋より確証を得ました」

「ほほ~猿も京に居ながらにして情報を得る手段を得るとはの~見ない間に中々やるようになった~」

「いえ、ひとえに織田の威光の成せる技にて」

「ふははははは~猿!」

「はっ!!」

「言いよるわ!!」


上総介様は満足そうに笑われ、オラを労うように肩をバシバシと叩かれる。

少し痛いが嬉しい。


「大いに価値のある情報じゃ!!まさにじゃ!!褒美を取らす!!何が欲しいか言ってみよ!!」


上総介様はご機嫌でそう申された。

オラは「情報を得る為に働いた者たちに報いたい」と言うと、五千貫もの大金を褒美として下された。

千金を一千貫とするならば、千金を大きく超える評価を頂いたようじゃ。

とても喜ばしい事じゃし、今回は金子より上総介様からのご評価の方がじゃ。

早速、件の者を呼び、労いながら五千貫全てを渡すこととした。

度肝を抜かれるであろうと顔色を見れば


「情報の礼として五千貫を渡そう」

「おほほほほ~流石は木下様!!織田様のご褒美全てを渡されるとは」


ん?「褒美全て」?・・・織田家の中にも間者が居るのやもしれぬ。

何処から得た情報かは解らぬが恐ろしき事じゃ。

そして涼しい顔で話を続けおった。


「主、丸目四位蔵人様より提示された金子の半分を頂く様にと言われておりますので、二千五百貫頂きまする」

「よ、良いのけ?」

「はい、蔵人様は友達価格と言っておられました」

「友達価格・・・」

「はい、仲の良い方への特別な価格だそうに御座いまする」

「さ、左様か!!」


正直言って金が二千五百貫戻って来た嬉しさより、長さんに「友」と

思って貰え、「特別」にと言う言葉に何と言えぬ込上げる物があり、嬉しさで小躍りしそうになった。

それに、逆に度肝を抜かれてしもうた。

そして、元号が改まり天正に変わって直ぐに、またお金がオラの許に情報を売りに来た。

今回も前と同じく褒美後で良いと言う。


「朝倉左衛門督(義景)様が同族の朝倉式部大輔(景鏡)の謀反にて自刃あそばされました」

「な!何と!!」


上総介様もまだ知らぬ情報であり、織田家にとっては更なる朗報じゃ。

大喜びをされ、また、肩をバンバンと叩かれる。

痛いが嬉しい。

今回も上総介様に一早く報告し、褒美を頂き、その半金を報酬として渡すことになった。

情報を得る事が金になるとは・・・目から鱗とはこの事じゃ。

戦にて手柄首をあげるのみが褒美を得る方法では無い事を知った。

浅井攻めでも活躍できた。

その一助はお金の使いの者の知らせからの情報であった。

この活躍で近江三郡を褒美として頂いた。

何と驚いたことにその中に今浜の地が含まれておった。


「長さんは何と言っておった?・・・「長浜」と言っておったな・・・」


オラは直ぐにその「今浜」の地を「長浜」と改める。

建前は信長様の「長」の字を冠することとしたが、本当は長さんに言われたからである。

そして、長さんの「長」の字であるからと言う意味合いが大きい。

本当に長さんはオラにとっての福の神じゃ!!

そして、オラは織田家に仕官して二十年を目前にして一国一城の主となった。

福の神の名を冠する領地とは縁起がいいことじゃ!!


〇~~~~~~〇


「長浜」の地名の逸話を知っていたのでこの物語を書くと決めた時にはこのストーリーを必ず入れようと思っておりました!!

さて、今回のうんちくは「値千金」です。

現代でもよく使われる言葉ですが、極めて価値があることを指します。

私たちがこのフレーズを聞くのはスポーツ観戦でのアナウンスでが多いのかもしれませんね~「値千金の一点(又は得点)」とかそう言う感じで使われます。

大昔の中国、北宋ほくそう時代の蘇軾そしょくと言う人物の「春夜」と言う詩の一説が元となっています。

「春宵一刻、直千金」と言う言葉があります。

「春の夜のほんの一時ひとときは、千金の価値があるほど素晴らしい」と言う意味なのですが、「一刻」と言うのは普通の2時間位を指します。

しかし、これは日本の江戸時代の頃からのことで、中国のこの詩が詠まれた時期の「一刻」と言うのは今で言うと約15分位の時間を指します。

1日24時間もあるその内の季節も春と言う時期の限られた約15分と言う本当に短い時間に価値を見出した美しい詩の一節からの由来なのです。

蘇軾そしょくさんは宋代随一の文豪とも呼ばれますし、書家、画家として優れ、音楽にも通じたと言われる文化人です。

政治家でもありました。

古文の唐宋八大家の一人として数えられる人物でもありますが、この蘇軾そしょくの一族が凄い!!

八大家とは8人の人物を表します。

8人は蘇軾そしょく以外には蘇洵(蘇軾の長男)、蘇轍(蘇軾の弟)、韓愈、柳宗元、欧陽脩、曽鞏、王安石が居ります。

一族から3人も入る優秀な一族でもありました。

そして、蘇軾そしょく東坡肉トンポーロー(豚の角煮)の名付け親とも言われます。

左遷された先で豚肉料理について詠じた詩が元で名付けられたそうです。

人生で2回左遷をされた人物ですから頑固で癖の強い人物なのかもしれませんが、私としては凄く共感が持てる人物ですね~

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