第181話

今年の年越しは京でとなりそうだ。

お猿さん木下藤吉郎から剣術指導を頼まれた。

仲が良いから全然OKだから受けたよ。

そして、予想通りに比叡山焼き討ちが行われた。

受験勉強で一生懸命に年数覚えたから珍しく今年が西暦何年か俺は知っている!!

1571年だ!!「いごない」で覚えたけど、本当にこれ以降に比叡山が焼き討ち無いから覚えやすい。

さて、この頃って第二次信長包囲網が構築されて信長陣営大忙しのはず。

そう思っていたら、年末も年末に三方ヶ原の戦いが起こったようだ・・・あれ?

確かこの戦いって比叡山の焼き討ちの翌年かその次の年と記憶していたような・・・俺の関与で少し歴史が動いたのかもしれないと思うのは俺自身が自分を評価し過ぎかな?

でも、俺の知る歴史と齟齬が少し生まれているようだ。

霜台爺さんとは袂を別ったが、情報は入って来る。

信長陣営に居た爺さんは、最近、反信長に鞍替えしたようだ。

これも翌年だった気がするけど同年に鞍替え。

爺さんは信長が天下人で話したからそのうちまた鞍替えするのかしないのか・・・

確か何回か前世での歴史でも行き来するはずだしな~まぁ爺さんもう関わる気はない。

爺さんのせいではないのは解るが、爺さんの依頼で、そして、勘違いと、三好家のごたごたで真里は死んだ。

爺さんと俺が交わることはもう無いだろう。

さて、問題の三方ヶ原の戦いで織田・徳川軍は甲斐武田軍に敗れる。

どれの年数がズレているのかは不明だけど、時系列の繋がりがある物は順に起こるだろう。

三方ヶ原の戦いの次は一言坂の戦いだったな。

確かここで家さんは信玄に大敗する。

徳川家康の人生三大ピンチとか何とかだったな。

俺と関わったことで家さん(徳川家康)死んだら困ると思って歴史で知る秘策を封書に認めて「困ったら開封」と言う事で藤林の者に届けさせていた。

うん、もう1か月位前の話ね。

織田家が徳川家に佐久間・平手に3,000の兵を付けて援軍に出したという知らせ聞いて思い出したから、急ぎ手紙出したのはつい最近の出来事。

この戦いでは佐久間のやらかしで甲斐武田に負ける。

そして、それを知った俺は急ぎ書状を認めた訳。

伝言の者には「次に武田に負けて困った時は」と言う言葉を付けて一緒に封書を送ったけど、どうやら役に立ったようで、服部さんとこの人が急ぎ礼を言いに数日前に来たよ。

家さんからの書状には「九死に一生を得たのはひとえに長さんのお陰。この御恩はまた別の機会にでもお返ししたく候」だってさ~

アドバイスと言っても歴史上で家さんが行った、城の門を全開にして篝火を焚くと言うこと。

「罠ありげに見せれば信玄坊主は攻めて来ない」と言うことも添えて書いたよ。

うん、歴史上で起こったことで成功事例だし問題無くそのまま歴史通りとなってホッとしたよ。


「長門守~」

「何でしょう?」

「多分、信玄坊主が死ぬと思うから確認しといて~」

「へっ?し、信玄めがですか?それは何時頃?」

「ん~確か初夏?」

「卯月(4月)にですか?」

「多分?」

「ちょ、諜報部に知らせておきます!!」


お~長門守が珍しく慌てているね~まぁ信玄の死と言うのは大きい出来事だしね~

織田さん所が高値で買ってくれそうな予感!!

人の死で商売するのはどうかとも思うかもしれないけど、情報網の売り込みとしてはこのビッグニュースを使わない手はないよね~

それと、羽毛布団を竜様(近衛前久)と師匠(上泉信綱)に贈っておいた。

藤林宅急便で送ったけど、藤林家の事業展開が凄い事となっている。

俺が提案した事ではあるけど、諜報部・警備部・運送部が今の主軸で、諜報と運送は基本的にセットでもあるけど、竜様と山科様の所と勿論俺の身の回りに警備部が居て、この警備部が幹部的な立場で諜報・運送を取り仕切っている。

あと、紹さん所と宗さん・天さん・角倉さん辺りもこれを利用していて、警備部もと打診されているけど、現在人員が確保出来ていないので待ってもらっている状態だ。

商人たちには速達の郵便が物凄くウケが良い様で、商売に仕えると好評なようだ。

それぞれの所に見習いとして商人の適性高そうな者を送り込んで育成もお願いしているから10~15年程すればそっち方面でも事業展開が見込めそうなんだよね~

そんな事を考えていると、また珍しく慌てた長門守が戻って来た。

あ!そう言えば、1573年は信長と足利義昭が関係を拗らせて決別するんだっけ?


「長門守~」

「まだ何か?」

「今年か来年辺りに信長と将軍様が敵対すると思うから」

「え?それは・・・誠ですか?」

「さぁ?多分そうなると思うけど~調べておいて」

「う、承りました・・・」


うん!1573年「だ(以後涙)」の室町幕府滅亡だよ!!


★~~~~~~★


「長門守!!」

「何でしょう?」

「急ぎ、家さん・・・徳川殿に書状を送りたい」

「何か御座いますか?」

「場合によっては徳川殿が滅ぶかも?」

「な、何と!!」


数か月前に主の蔵人様がそう言われた。

丁度、先程まで遠江の三方ヶ原で起きた戦の報告を読まれていたと思うが。

儂は急ぎお金に命じて徳川殿の下に人を送る。

後日、徳川殿の所の服部配下の者が礼を言いに参った。

報告と照らし合わせて考えると、空城計くうじょうのけいの様な策を主は示されたのであろうと推測できる。

様子を観覧した者は甲斐武田が一言坂で徳川を破り、徳川敗走後に甲斐武田方は城攻めを行う勢いであったが、城の様子から城攻めを止め軍を引いたと言う。

武田信玄に心理戦で、それも遠く離れた場所より打ち勝った主の蔵人様には空恐ろしくもあり、頼もしくもありと言う畏怖にも似た感情を抱く。

藤林の全ての者が敬愛しつつも畏怖する存在が目の前にいる主、丸目四位蔵人様なのである。


「長門守~」

「何でしょう?」

「多分、信玄坊主が死ぬと思うから確認しといて~」

「へっ?し、信玄めがですか?それは何時頃?」


信玄坊主とはあの武田の信玄坊主であろうかと一瞬驚いたが、直ぐに気持ちを切り替えた。

そして、儂は慌てて何時頃かを確認する。


「ん~確か初夏?」

「卯月(4月)にですか?」

「多分?」

「ちょ、諜報部に知らせておきます!!」


儂も平静のつもりが平静では居られなかったようで慌ててその場を離れたが、よく考えれば部下を呼べばよかったのであろう。

慌てて出て来たのでそのままお金に内容を伝えに向かう。


「はっ?へっ?信玄坊主とはあの信玄ですか?」

「他に誰が居る」

「え~と・・・承りました」


慌てたのが儂だけではなく娘のお金もだったことで何だかホッとしてしまった。

「では、お金、後は頼む」と言い、蔵人様の下に戻る。

戻った来ると蔵人様はまた思案されているようだ。

そして、意見が纏まったのだろうか、また、儂に声を掛けられた。


「長門守~」

「まだ何か?」


「うん」と頷かれてからまたとんでもない情報を開示される。


「今年か来年辺りに信長と将軍様が敵対すると思うから」

「え?それは・・・誠ですか?」

「さぁ?多分そうなると思うけど~調べておいて」

「う、承りました・・・」


今度は冷静を装いもう一度部屋を出てお金の下に向かう。

本当に我が主は・・・一緒に居ると楽しくて仕方なし!!

さて、今さっきのことではあるが、今度はお金はどんな態度を取るか・・・楽しみである(ニヤリ)


〇~~~~~~〇


今回は藤林長門守との一幕でした。

さて、私の学生時代は語呂合わせで年号を覚えました。

高校時代は日本史を専攻したので特に日本史の年表とにらめっこしました。

私の場合は、大きな事件の年号を語呂で覚えそれに紐付出来る物を次の年や翌々年等々と言う形で覚えたので今回登場させた語呂はその当時使った物です。

さて、今回は空城計について語りたいと思います。

三方ヶ原の戦いで徳川軍は武田信玄率いる武田軍に敗れて浜松城に逃げ帰った際に、家康は「あえて大手門を開き、内外に大かがり火を焚かせた」と言われております。

これは日本における空城計で一番有名な事例となります。

この事例は武田信玄が徳川家康に軍略で上を行かれたなどと言う人も居ます。

しかし、実際にその前の戦いで徳川は大敗し、出せる兵が少なかったから苦肉の策で行った決死の覚悟の策だから成功したと私は考えております。

さて、この空城計は「三国志演義」で最も有名な策略の一つで、諸葛亮が城門を開け放ち司馬懿を退けた話として語られますが、実は、漢中争奪戦の時、蜀の将軍の一人である趙雲子龍が空城計を使って曹操軍を撤退させたのが初めてと言われる策なのです。

実はこの空城計は兵法三十六計の第三十二計にあたる戦術です。

この兵法三十六計と言うのは魏晋南北朝時代の兵法書で兵法における戦術を六系統の三十六種類に分類した内容の物となります。

「三十六計逃げるに如かず」の語源と言われますが、実は「走為上そういじょう」と言う第三十六計目の策略があります。

この策略は「勝ち目無しと判断したら、戦わずに全力逃走して損害出さないようにする」と言う計略で先に上げた語源ともなりました。

武田信玄は徳川家康の空城計に「走為上そういじょう」を選択しただけで負けた訳ではないと私は考えております。

それよりも、一言坂の戦いで武田信玄の策略は見事だと思います。

これは三十六計の中で言うと「調虎離山ちょうこりざん」と言います。

「敵を本拠地から誘い出し、自分たちに有利な地形で戦う」と言う策略なのですが、これに嵌り徳川家康は多くの家臣を失う訳ですからその後に空城計が決まってもとは思いますが、この事で徳川家康は九死に一生を得て生き延びて、後々に天下人になり、幕府まで開くのですから本当に歴史とは面白いですね~

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