第226話

天高く舞う俺の姿はお約束の天狗面に山伏装束。

同行の美羽は鴉天狗に山伏装束で千代は巫女服に狐面。

凄~く怪しい一団だよね~

当初予定では九州から向う予定だったけど、京の方が時短になるので御馬揃えの後は京に滞在していたよ。

知らせを受けた後は大急ぎで用意して信濃に向かう。

三月の夜の風は冷たいので防寒確りで空の旅ですよ。

到着後は決めていた場所でお銀の配下の者と合流し、状況や現在の豊さん(武田信豊)の滞在場所等々の情報を受け取り迅速に行動開始!!

そして、お銀の配下の手引きで豊さん(武田信豊)の許に向かう事となったんだけど、豊さん一行の滞在先は信濃小諸こもろ城と言う。

この城は意外と有名な城で少し歴史を感じたよ。

昭和には跡しか残っていない城の一つではあるが、何とこの城の縄張は山本勘助君のお仕事!

会ったことはないけど、伝説の様な人物なんよね~

更に、酔月城とも呼ばれる城で後々に仙石久秀が改修を行う城だ。

まだ会ったことはないけど、お猿さん(羽柴秀吉)の家臣の人。

浅間山付近にある城で天然の要塞と言った感じの地形を最大限に利用した構造だ。

俺が到着した時にはこの城の城主の裏切りによって豊さん一行は取り囲まれていた。

急いで来て良かった?

本当にギリギリセーフって言った感じ?

いや、ヒーローは遅れて登場するものだ!

多分、丁度いいタイミングなはず!!

さて、俺はは兵ひしめく中に上空から降り立つ。

結構な高さから落ちて来たんだけど軽身功でふわりと降り立つ。

天狗スタイルだから降り立った瞬間に驚きと畏怖?怪しさ?から俺を遠巻きに取り囲む兵たち。


「何じゃ!!」「何事じゃ!!」「ひ~~天狗!!天狗様じゃ!!」


等々の俺を見て慄く兵たち。

まぁ行き成り現れたら驚くよね~それも、天狗に見える格好で・・・

ヒーローの着地みたいなポーズ決めたけど誰もそれについては語ってくれない・・まぁいい・・・

例の如く、俺は天狗様ムーブで兵士たちを威嚇。


「歯向かう者は容赦せぬぞ!!」

「何奴!!」


何か偉そうな彼奴が城主かな?

「何奴」って見れば解るだろ?だよ!!


「見て解らぬか?」

「天狗などこの世に居らぬわ!!」


うん、無神論者なのかな?声が少し震えているので強がりか・・・

まぁ姿見て天狗なのは理解したようだからいいけど。


「ふん!恐れぬならかかって来い!!」

「者どもやれ~!!」


誘う様に指をクイクイと来い来いポーズを決める。

勿論、斜め四十五度の〇〇立ちで少し斜めを向いてカッコつけたよ。

シーンと静まり返る敵さん一同。

誰もかかって来ません・・・あ!何か弓でこっち狙ってる。

そして、弓がビューン・・・パシリ!

飛んで来た弓を手掴みしました!!

敵さんは皆ギョッとした顔してるね~うん!掴みはこんなものでOKだよね~


「お、恐れるな~」


いや、お前が一番恐れている感じだし、その行動が味方の動揺を誘い士気が上がってないよ。

まぁいいや~掛かって来ないなら行くべし!!

俺は一足飛びにその号令を掛けている者に近付き斬り伏せる。


「ヒー祟りじゃ!!」「お助け~」「ナンマンダブ、ナンマンダブ」


リーダーらしき者を斬り伏せると阿鼻驚嘆の状態となり蟻の子を散らした様な大混乱。


「何じゃ、もう終わりかや?」

「長様~私の出番無かった!!」


千代と美羽がお面越しに解る位不満を漏らす・・・おう、スマン・・・

とりあえず、豊さんに会いに行こう。


「やあ、豊さん久しぶり!元気してる~?」

「長さん・・・今にも死にそうです」


え?ニヘラ~と笑いながらそのセリフ・・・

ノリがいいね!流石は豊さん分かってるね~

まぁさっきまで取り囲まれてたし、俺が来なかったら歴史通りに自害コースだったんだろうけどね。

外の様子を聞いて来たので切り取ったリーダー様の御首を見せる。


「あ~取り合えず此奴五月蠅いから斬っといた」

「な!浄喜じょうき!!」

「あ~此奴そんな名前なのね~」


豊さんの息子さんかな?首の人の名前を言ってるのは。

さて、話を進めるか~


「豊さん、九州移住となるけど、武田の名はここで捨てて貰うよ」

「承った・・・」


豊さんは既に武田の名を捨てる覚悟も出来ていたようだ。


「父上!!」


息子さんが叫ぶけど、流石に助け出して後で武田の生き残りとして信長に復讐とか仕掛けられると俺が困るからね~はっきりとしてもらわないとね。

その後は皆を豊さんが説得しました。

意外とあっさり説得されました!!


★~~~~~~★


あれ程恐れていた甲斐武田家が滅んだ。

今回の戦いで決着を付けるつもりではあったが呆気ない最期であった。

勘九郎かんくろう(織田信忠)に差配させたが中々見事な手際であったようじゃ。

出来ることなれば多くの武田の家臣どもも今後の為に我が家臣に加えたいと考えておるが、どうなる事か。

中でも武田典厩等は是非とも儂の配下に加えたいものである。

しかし、そんな武田典厩が自害し首だけが儂の許に届けられた。


「して、この首は間違いないか?」


首実験を行った結果、武田典厩親子の首は別の者の首だと言う事が判った。

典厩の首は下曾根浄喜と言う者の首だと後々判る。

さて、首が違うと言う事は生き延びたと言う事であろう。

今は何処で何をしている事か、もしかすると何処かで再起して儂にまた牙を剥くかもしれぬが・・・その気概や良し!!それもまた一興よ。


「上様(織田信長)指名手配しますか?」

「よい。捨て置け」

「しかし・・・」

「よいのじゃ」


もしかすれば何処かで会うこともあろう。


〇~~~~~~〇


実は信濃小諸城跡は昔行ったことがあります!!

この信濃小諸城は作中でも書いておりますが、山本勘助の縄張りと伝えられています。

天然の防御を利用している城ですが特徴的なのが深い谷を空堀として利用しており、城郭は城下町よりも低地に縄張りされ、市街地(城下町)から城内を見渡すことができ、穴城とも鍋蓋城とも呼ばれたそうです。

そして、仙石秀久の改修された城で、別名、酔月城、白鶴城とも呼ばれます。

石垣を作り近世城郭に改修したようで三重天守の城に作り変えられました。

天守には桐紋の金箔押瓦が用いられていたおしゃれなお城だったようですが、落雷により焼失し、廃城年数は不明とされていますが現在も城跡が残っています。

日本100名城(28番)に選ばれているお城ですが、現在は小諸城址懐古園として観光スポットとなっており、重要文化財としても登録されている城跡です。

物語の当時は甲斐武田家の御一門衆の下曾根浄喜が城代を務めておりました。

そして、下曾根浄喜に叛かれ武田信豊一行は自害しております。

信豊は武田勝頼と別れ信濃小諸城へ逃れて再起を図ろうとしていたようです。

関東へ逃れる予定で行動していた様で一部資料にその事が書かれているそうですが、裏切りにより自害し首を晒す事となりました。

下曾根浄喜は甲斐武田家の御一門衆にも拘らず武田家一族の者である信豊らのその首を織田信長に進上したようです。

しかし、信長は浄喜を誅殺しております。

信長の価値観としては結果が見えてからの裏切りは特に忌避した行為だったようです。

それに、人材マニアの信長は武田家臣団の取り込みを画策したのかもしれませんね~

実際、徳川家康が武田家家臣団の多くの者を配下に加えました。

後々に天下を取る家康ですし、武田信玄に敵ではあるけど傾倒していたと言われますから、さもありなんですけどね。

話を戻し、下曾根浄喜は武田姓使用を許可された一門待遇を受けていたと考えられている程の人物で、武田家の譜代家老春日虎綱の後任として信濃小諸城代となった程の人物です。

同じく裏切り者の一門衆である穴山梅雪はまだまだ生き残っています。

さて、どうなるか?

次はまた信長登場です。


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