第385話
タイ捨流は体術も得意な実戦剣術なので今回は組打ちのみで兵たちを蹂躙しております!!
投げては発頸で気絶させ、出来るだけ命を奪わないように気を付けて戦いの以外と疲れる・・・
「助五郎(北条氏規)、もうそろそろ降参しては如何じゃ?」
「いえいえ、兵はまだまだ居りますぞ!」
そう言っているけど顔を引き攣らせている助五郎。
それにしても助五郎はここから離れる気が無いようで、兵は投入しているけど移動する様子は無いようだ。
まぁ下手に移動すればそれが隙になるので移動できないというのが正しいのかもしれないけどな。
それにしても、幾ら仙術使って戦っているからまだ余裕があるというものの、このまま続けて疲れれば、加減の匙加減を間違って兵を殺めてしまうかもしれないので、出来れば降参して欲しいんだけどね~
「おい!助五郎よ」
「何で御座いましょう?」
「幾ら俺でもこのまま戦えば」
「不覚を取りますか?」
「いや、疲れて手加減の匙加減を誤れば人死にになる可能性が大きくなる」
「今は手加減をされておいでと?」
頷くと更に顔を引き攣らせる助五郎。
俺はその問いに答えながらも兵を捌いて行った。
それから更に敵を処理して行っているがそろそろやらかしそうなので、降参することとした。
「助五郎」
「何で御座いましょう」
「そろそろ匙加減を間違いそうなので降参する」
「いえ、それには及びませぬ。某が降参いたしまする」
そう言うと助五郎は兵たちを俺から引かせた。
そして、助五郎と話そうとしたやさき
「殿!!御無事ですか!!」
「助五郎様!御無事ですか!!」
二人の武将がやって来た。
一人は城門で檄を飛ばしていた人物で、名を富永孫四郎政家という。
北条家の家老職にある人物らしい。
もう一人は朝比奈右衛門泰栄、此方は三の
今川家で助五郎と会った時にも側付として居た人物で、顔見知りである。
彼は元々は今川家に仕えていたのである。
助五郎が人質として今川家に入った際、監視役的な立場で助五郎の補佐役として任命された人物だ。
助五郎が北条家に戻る際にそのまま家臣となり北条にやって来た。
「孫四郎殿、右衛門、儂は降伏した」
「「・・・」」
あ~俺の侵入を知り慌ててここに戻って来たらしいが、現場の指示を投げ捨てて来る訳には行かず、それなりに時間が掛かった為、朝比奈殿に関しては俺と矛すら交えずに降伏したことになるので渋顔だし、富永殿も思う所が有るのだろう無言だ。
「いや、俺が先に降参したんだけど、助五郎が譲らないんだよね~」
「それはどういう事ですかな?」
朝比奈殿が聞いて来たので事のあらましを助五郎が説明した。
二人とも少しだけ納得できないというような顔ではあるが、助五郎の降伏にはそれなりの理解を示した様で反対意見は言い渋った。
しかし、朝比奈殿は「儂は矛すら交えておりませぬに・・・」と、もう少し降伏を遅らせられなかったのか?とでも言いたいような顔で言う。
まぁもう少しなら・・・いや、安全第一だ!!
戦に安全第一も無いと思うが、これはあくまでもお遊び、お遊びで命を奪うのは忍びないので可成り手加減をした。
初戦の騎馬武者たちは俺も戦の興奮で少し・・・いや、かなり思考が鈍っていた様で、死者を出してしまったが、それ以降は死者を出さないように細心の注意を払ったので疲れたし、死者が出ずに終わってホッとした。
「して、降伏はどのような形で行われまするか?」
「小田原城陥落後に降るでも良いぞ」
俺がそう言うが、彼らは納得せず、即時降伏となった。
そして、助五郎を連れ豊臣方の陣に戻る事となった。
★~~~~~~★
韮山城の付き城に大きな櫓を急ぎ作らせた。
長さんの無茶な城攻めを検分したいという者は多く、幾つもの櫓を作りそこから韮山城を一望できるようにした。
長さんが城を出て行って直ぐに声を掛けられ、ある物を勧められる。
「殿下、此方を使うとよう見えまするぞ」
「ほう!これは何じゃ?」
又左どん(前田利家)が儂に謎の筒を渡して来た。
使い方を聞けば、覗くだけで遠見が出来るという。
「ほう!便利じゃな・・・」
「はい、今回の戦では重宝しておりまするぞ」
又左どんが自慢げにその筒を説明する。
丸目家よりの貸し出しの品だという。
しかし・・・これは・・・
その筒を望遠鏡というそうじゃが、少し使っただけでその便利さが解る。
遠くの物がよう見えると言う事は偵察に便利と言う事じゃ・・・
「羽、おっと、帯刀先生に借りて五十程持って参りました」
「それで検分か?」
「左様!!」
確かに遠くで長さんがどのような事をしているか確認するのには便利そうじゃ。
それに、これは間違いなく戦の概念をかえる品じゃ、落ち着いたら交渉して手に入れねばなるまいて。
そして、実際に城攻めが始まると
「何が起こっているがーー!!」
「あ~蔵人殿が何やらやって騎馬武者全てを一網打尽に倒したな・・・」
それは見ていたら解るがー!!
儂が聞きたいのは何をしたらああなったかじゃ。
しかし、その答えはこの場に居るもので答えられる者は居ないと思ったが、長さんの所の配下の藤林家から派遣されたという鋭き目付きの藤林長門介という者が答えを持っておった。
「蔵人様考案のされた御業に御座いまする」
「ほう!」
「蔵人様曰く、威圧と遠当てと幻術を織り交ぜたものと申されておりまする」
「その様にあの秘儀を教えても良いのきゃ?」
「蔵人様は特に秘匿はされておりませぬで」
「と言う事は誰にでも使えるがー?」
確かのあの技を使われるは脅威じゃが、使える者が10人も居れば城など容易く落とせよう。
しかし、藤林長門介はニヤリと笑い、言う。
「今の所、蔵人様以外の者で使えた者は居りませぬ」
「左様か・・・」
ああ、そうじゃな。
あのような技が誰でも使えればそれはそれで恐ろしい事じゃ。
ホッとすると共に長さんの恐ろしさをまざまざと見せつけられたがー
騎馬武者たちは長さんが通り過ぎると、長さんの配下の者たちが縛り上げたり怪我の様子を見たりと言う事を行っておった。
そして、歩くこと暫し、長さんが城門前に行くと矢や鉛球の雨嵐に見舞われた。
流石にこれは終わったと思いきや、その場に止まり受けておる・・・
「化け物!!」
誰かがそう叫んだ。
そうじゃな・・・あれは人の皮を着た何かであると言われれば信じてしまいたくなるような異様な光景じゃ。
「藤林長門介と言ったか?あれは何じゃ?」
「あれとは蔵人様の事で?」
天下人に向けて良い視線ではないが、主に対しての失礼な言葉に対して怒れる彼に好感を持った。
「おお!済まぬ、済まぬ。長さんは何をしておるのじゃ?」
「ああ、矢と銃弾を斬り飛ばされておるので御座いましょう。某も見るのは初めてで御座いまするが、欧州で修練されておいでになったとか」
「さ、左様か・・・」
修練して出来る物なのか?
いや、出来るのであれば誰でもしていよう。
背中に冷たい物が流れ落ちる。
「蔵人様曰く、大砲の玉を斬り払えるようになりたいとの事のようですが、流石にそれは危険極まりないので皆でお止めしておりまする」
止めなければ・・・
儂は何とも言えぬ表情をして居った事であろう。
昼時に差し掛かる頃、長さんは陣の方に戻って来ると聞き、呼び寄せようと思い使いを出したが、「城攻めで忙しい」の一言で使者は追い返されたという。
天下人、関白、その様な立場の者にその様な言葉をいう者など居ない為、驚いたが、長さんらしいとも思えた。
「もう一度使者を出して呼び寄せまするか?」
「よい、確かに一日で城落としするのであれば忙しかろう」
しかし、後々優雅に捕虜と戯れながら昼餉を取っていたと聞き及んだ。
忌々しいという思いもある中、実に長さんらしいとも思い不問とすることとした。
家臣の中には処罰を求める者も居たが、あんな化け物じみたことが出来る者と面と向かって争えという馬鹿者に貸す耳は無しじゃ。
昼餉の後には城壁を駆け上り瞬く間に城落としを成したとの報告を受けた。
韮山城は呆気なく降伏した。
〇~~~~~~〇
史実の歴史と違い割と早い段階で韮山城が降伏したことでどう変わって行くのか気になる事ですが、小田原征伐のイベントは幾つもあります。
さて、そのイベントの一つで位置的なもの等々の関係で主人公が関わることは無いと思いますが松井田城の戦いは中々に面白い戦いの一つだと思います。
上野国碓氷郡、今現在の群馬県安中市松井田町に位置するこの城は安中→武田→織田→北条と持ち主を結構変えた城の一つで、松井田城と呼ばれる以前は諏訪城や堅田城等々幾つかの違った名称で呼ばれました。
小田原征伐時は城主が大道寺政繁でした。
この大道寺家は北条家で
前田・上杉・真田の軍勢は豊臣方では北方隊という名で呼ばれ独自裁量である程度動いていたようです。
約2,000名将兵で35,000名敵軍から1ヶ月近く守り切っていたというからやはり堅固な城で指揮官である大道寺政繁も優れた人物であったのでしょう。
山中城が半日で落城した影響で、予想以上に小田原包囲が早まることとなり、豊臣秀吉から松井田城攻略の督促を受ける程だったそうです。
北方隊は督促の影響で猛攻に出て城を落とす寸前まで追い込みました。
大道寺政繁はそこで開城降伏し、豊臣方に組み込まれ、北方隊の道先案内をする事となります。
大道寺政繁らは討ち死に覚悟で孫の脱出作戦を敢行しました、その時、真田昌幸は見て見ぬ振りをして武士の情けを掛けたという逸話が残っています。
大道寺政繁はあの有名な忍城攻めにも案内人として参加したりしています。
城自体はこの大攻勢でボロボロになり、破城されたなどと云われていますが、廃城になったのは何時かは詳しくは解っていませんが、恐らくこの時ではないかと・・・
次回は主人公と秀吉の対話あり!!
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