第55話

何故か俺が将軍様と立合うことに・・・

え?これって何?何なの?

俺に接待ゴルフならぬ接待剣術でもお望み?・・・

マジで簡便かんべんなのだがお相手の将軍様は意気揚々と御着替えに行かれましたよ・・・


「師匠・・・山科様に何か聞いてました?」

「いや・・・聞いてはおらぬ・・・」


何?その変な間は・・・あ~これが噂に聞くサプライズ人事ってやつですか・・・

この時代にも有ったのね~・・・な訳ないじゃん!!

絶対何かあるぞこれ!

前例前例と五月蠅いのは令和の世でも変わらなかった。

おおやけの事は前例に倣うのがお役所仕事!

役所朝廷のやることでそんな前例に無いことをゴリ押し・・・あ~俺も同じ様なことした気がする・・・

いや!俺の場合とは違うぞ!!俺の場合はちゃんと事前連絡して根回ししたし、俺の・・・こんなことを考えている場合では無かった!


「師匠、某は手を抜いて立合う方が宜しいのでしょうか?」


はい!これが今一番重要!!

接待するのかしないのか、ここは師匠に聞く方が宜しいようです!!


「蔵人よ!」

「はい!」

「立合いに身分は関係ない!」

「はい・・・」

「自分から腕を見ると言われたは上様じゃ!」

「そうですけど~」


え?本気出せと?・・・マジでいいのか?

あ~解った!!新陰流の本気ね!OKOK、それなら理解できるぞ!!

俺の新陰流の腕前はまだ殻の付いたひよこ!カ〇メロ君なのだ!!


「儂と立合った時の様に戦えばよい!新陰流の技に拘る必要はない!!」


え?・・・何ですとーー!!

それって接待ゴルフ望んでいる相手にガチでフルボッコにして嫌われる奴ちゃうん?

やばいよ!ヤバいよ!!(出〇哲郎風)

え?そんなおふざけする余裕があるんだね~って?

わははははは~余裕ちゃう!現実逃避しているの!!

さて、師匠はガチの本気を出せと言う。

しかし、いいのかな?・・・いい~ん、です!!(川〇滋英風)

ネタが古いだと!!いやいや、今は戦国時代よ?バリバリの先取りよ!!

まぁ前世の道場の爺様も本当の丸目蔵人佐は武士としての立身出世は縁が無かったと言うてたし、それなら別に問題無いよね?

社長に嫌われたからって死ぬ訳じゃなし、地方に飛ばされて閑職に追いやられる程度。

元々熊本の片田舎の国人の倅よ?今更何を怖がる必要があるって話!!


そうこうしていると、立合いに相応しい動き易そうな恰好をした将軍様が現れた。

ふ~ん、ここは剣豪将軍と呼ばれた足利義輝VS西国最強と言われた丸目蔵人佐の夢のドリームマッチと考え、割り切りましょう!!

まぁ、自分がその当事者なのが問題っちゃー問題だが、少しワクワクする。

いや!かなりワクワクする。

オラ、ワクワクするぞー!!って言ったどこぞの戦闘民族の気分解るぞ!!


「そちらの準備は出来たか?」


将軍様が少し見下したような感じで俺に問いかけてくる。

OKOK!舐めているのね~いっちょもんじゃりますか~!!


「は!何時でも!!」

「そうか・・・では、始めるか」


先程、師匠たちが立合っていた位置に俺は移動して剣豪将軍の正面に立つ。

お互いが徐に構える。

将軍様は正眼の構えを取る。

俺は上段斜めに構えて相手を見詰める。

ふ~ん、剣豪将軍と後の世で呼ばれるだけあってかなりの腕前だと思えた。

構えだけでも情報と言うのは取れる。

多分は向こうも俺の構えや少しの動作で俺の情報を得ていると思われる。

先ほどまでの舐めた感じが一瞬にして消えた。

俺が一歩間合いを詰めると将軍様は一歩間合いを開ける。

ふむ、二歩詰めると二歩下がる・・・

大分警戒しているようだが埒が明かないようにも思える。

師匠の様に華麗に相手を圧倒しようと思っていたのに残念だ。

え?接待とか言ってなかったかだって?・・・過去に拘るなよ!

おっといかんいかん!今は目の前の将軍様に集中だ。

舐めている内に蹴りを着けるべきだったかなとも思うが、実力が見たいみたいなこと言ってたから少しこちらも様子を見過ぎたかな~

それでも問題は無いよ~なんせタイ捨流は相手を圧倒して常にこちらが先手を取る先の先が本来のスタンス。

師匠の新陰流とは似ていて非なる物なのだ!!

今の現状で相手を圧倒して先手を取っているのは間違いない。

しかし、もう大体の相手の間合いの分析は終了したぞ。

俺は一気に間合いを詰めて袈裟斬りに木刀を振り下ろす。

流石に剣豪将軍もその太刀筋は後ろに下がり躱して来るが、次の瞬間に跳ね上がる様に軌道が下から上に急上昇して来る木刀は予想外だった様で、あっさりと木刀を打ち上げられて万歳状態の将軍様。

大きく目を見開いて驚いているがもう遅い。

すかさず首元に太刀筋を当てる。


「参った・・・」


はい、勝利!!

いや~中々の実力者で少し焦ったが終わってみれば余裕の勝利の様にも見えるが、燕返しは次回は使っても躱されそうな予感がする。

何故かと言えば、一太刀目を躱して直ぐに反撃しようとした将軍様は中々の剣術家だと言うのが解る所作だった。

燕返しの威力は一太刀目が躱された後に一瞬スキに見えて相手がこちらに攻撃しようとしてくれば来るほどに威力が増すのだ。

そのまま更に後ろに下がられても追うことは可能であるが、それよりも攻撃を目論まれる方が都合が良い秘剣と言える。


「もう一手お願いする・・・」


あ~そうなるか~師匠も3回したし、この流れだとそうなるよね~・・・最後は俺も無刀取りかな?・・・

俺は3回も戦うのは面倒・・・無駄と考え、木刀を地面に置き少し移動して無手で構える。


「それでは師匠と同じく無刀取りの妙技をお見せします」


2回目の無刀取りと言うのは中々にハードル高いよね~

1回目はある程度意表を突けるけど、「無刀取りしますよ~」って宣言してるとそれを警戒される。

さて、将軍様はどう出るか?


次回、剣豪将軍の心!!の巻


〇~~~~~~〇


剣豪将軍、足利義輝はこの主人公が相対しているこの時期の時点でもかなりの剣豪でした。

師に塚原卜伝と言う剣聖が居ますし、吉岡流も教えられています。

他にも何人もの剣豪から教えられており、相当の使い手であったことは間違いありません。

さて、夢のドリームマッチ如何でした?

まだ、丸目蔵人佐VS足利義輝は続いておりますが、ご満足頂けているでしょうか?

特に私は剣道や剣術、居合などは行ったことはありませんが、高校時代の恩師が居合をされておりました。

普通剣術では相手の駆け引きでと言うのがかなり重要で、腕の長さ、太刀の長さ、踏み込みの強さなどなどの情報から相手の間合いを図るそうです。

その間合いに合わせて攻防をして自分の有利な間合いを作っていくのが駆け引きの1つだそうです。

居合は太刀の長さを隠して斬り捨てる手法なので間合いが図り辛く、剣速が抜く際の抵抗で加速するので横薙ぎなのに剣速は早いそうです。

居合のことが言いたかった訳ではなく、のことを言いたかったのです!!

拙い文章で今回の話ではそこを上手く書けているかな?とか思っておりますが、如何だったでしょうか?まだうまく書けていないと思われる読者の方は自分の脳内で足りない部分を補完して頂くようお願いいたします!!

次話は将軍様サイドの話となります!!


まだ主人公の刀何にしようか?と考え中なんですが、足利義輝の刀何ですが、前も話したのですが、この将軍様は無類の刀コレクターでした。

何が凄いって天下五剣てんかごけんと呼ばれる日本刀の中でもトップオブトップの飛んでもない刀が五振ごふりありますが、な、な、何とその内の四振を所蔵していたそうです。

これは歴史上でも稀でして、如何に刀狂いかを表す指標になると思います。

ちなみにその4振は「鬼丸国綱おにまるくにつな」、「三日月宗近みかづきむねちか」、「童子切安綱どうじぎりやすつな」、「大典太光世おおでんたみつよ」となります。

ちなみに、ちなみに、残り1振は「数珠丸じゅずまる」と言う刀で、この刀は立正大師りっしょうだいしこと日蓮にちれん所縁ゆかりの品で、日蓮の遺品として袈裟けさ中啓ちゅうけい(扇)とこの刀の3つを三遺品と呼び身延山みのぶさん久遠寺くおんじで厳重に管理していたのですが、行方不明となり、1919年に見つかります。

見つけた刀剣愛好家の杉原さんは久遠寺に戻そうとしたのですが、本物かどうか定かではないと言われて返納拒否されたので自宅近くのお寺に寄贈したと言う中々面白い経歴のある刀です。

この刀の本当の名は「恒次つねつぐ(作った方の名前まんまです)」と言うので「数珠丸恒次」とも呼ばれます。

何故に数珠丸と言うかと言うと、日蓮がこの刀に数珠を掛けて魔除けしたとか何とか・・・刀の名付けって結構適当なのがまた面白いですね~

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