第135話

1日泣いて真里の約束を守り、次の日からは泣くのを止めた。

真里の遺言の様な物だ守りたいと言う思いが非常に強い。

それに、真里の言った様に美羽・莉里・春麗にはここ一年の間は特に我慢を強いていたのかもしれないと思うと申し訳ないと思う念が沸き上がる。

真里とは事情が事情だったので残念ながら祝言しゅうげんすらあげていない・・・真里がそれ以上に一分一秒でも惜しむ・・・いや、この時代にその感覚は無いだろうが、少しでも多くの時間を一緒に居ることを望んだという事もあるが・・・

そんな負い目からか、美羽・莉里・春麗には必ず祝言をあげることを約束した。

それに、これからは3人に時間を費やすことも誓った。

真里の刀は妹の莉里が姉の形見として欲しいとのことで、九字兼定くじかねさだは莉里に渡した。

脇差は里子の将来の懐刀だ。

真里を荼毘に付そうと思ったが、昨日の今日だ、まだ何も手配できていないが、最後と思うと別れ辛く、まるで寝ている様な真里をずっと見ていると今までの疲れからついうつらうつらしてしまった。

いつの間にか寝入ってしまったがここはどこだ?・・・夢の中?・・・ふと正面を見ると真里に面差しの似た・・・何度か遭遇したから何となく解るぞ、存在Xが俺の夢枕に立ったようだ。


「初めまして」

「はい・・・初めまして」

「子孫が大変世話になっておりますね」

「子孫!?」

「はい、真里と莉里、それに里子もこれから世話になりますね」


存在Xは摩利支天様?なのかもしれない。

そう思った瞬間に意味深なニッコリ笑顔でお笑いになった。


「真里の聖骸せいがいを荼毘に付すのはお止めなさい」

「聖骸?荼毘に付さない?」

「人間の間ではそう呼ぶと思ったのですが・・・」


聞けばキリスト教的に言う所の聖人のご遺体を指してのことの様だ。

仏教的に言えば即身仏・・・

真里は神の力でそれらより明かに格上?の聖遺物の様な存在?となったとのことだ。

ただの遺体ではなく神力の成せる御業みわざとか何とか・・・

説明色々されたが俺の理解が追い付いていないだけだな・・・取り合えず俺の頭で理解出来ることとして、凄いものになったそうだ。


「私たちを祭る社を作るのですよね?」

「はい、そうさせて頂こうかと・・・宜しいですよね?」

「勿論!!」


女神様の笑顔プライスレスです。

摩利支天様が自分の神像を作った際は真里の髪を一房その神像に収めるようにと言われた。

何かあるのかもしれないが、「サプライズです」と言われた。

神もそんな茶らけた言葉使うのね~とか思ったよ。

目の前の神は「喋ったのではなく、概念を伝えた、テレパシーみたいな物ですよ」とか言う。

要は俺に言葉で伝えているのではなく、解る様に翻訳したような状態で伝えているらしいが、俺の頭で理解できる言葉が茶らけた事なんだね・・・それでも色々と理解できない俺の頭って・・・そうだ!混乱しているという事にしておこう。

真里の聖骸は故郷の社を作る所に安置するように言われた。

摩利支天様の言だ、間違いなく必ず実行しようと思った。

「そろそろ戻らないと魂と体が乖離かいりします」とか怖い事を言う。

ふと気が付けばいつの間にか寝ていて、どうやら夢を見ていたようだ・・・

しかし、手には見覚えのない短刀が握られていた。

夢の中で摩利支天様が別れ際に金剛杵こんごうしょを下げ渡されたが・・・

刀を抜き確認すると、刀身に彫刻された金剛杵こんごうしょの絵柄。

不思議な事であるが、この短刀を見ていると吸い込まれるような落ち着くような不思議な気分になる。

それにしても良い短刀だ。

勿論、自分の脇差をこちらにチェンジした。

さて、これより先は鬼となり、真里の敵討ちをする所存だ。

「まだ折れぬ不届き者に神罰を与えておきました」と摩利支天様は言われたが・・・何の事だろうか?

「今、手元に居る者は任せる」とも言われたので、神罰を受けたのは顕如?・・・長門守に調べて貰おう。

手元に居る者たちに沙汰を伝える必要があるだろう。

協力的であった四郎右衛門に、真里の死を告げると覚悟していたのであろう。

俺に深く頭を下げてお詫びの言葉を述べた。

会う度に謝罪の言葉を述べていたが、今回は最後という事で更に何時も以上に謝って来たがもういいのだ。

長門守に命じて薬により安楽死をさせた。

本人が眠る様に死にたいと言ったので希望に従いそうした。

平井孫一はほぼ廃人だ。

「阿弥陀様、申し訳ございませぬ。如何かお助け下さい」とぶつぶつと呟くだけで、今日まで生かし続けるのが大変だった程だ。

一応は真里が死んだことで沙汰を下すことを伝え、「お前は極楽へ行くことは無いだろう」と告げると独り言がピタリと止まった。


「極楽浄土に行けぬ?」

「何故行けると思う?」

「南無阿弥陀仏と唱えれば誰でも助かるのじゃ!!」

「そうかよ、じゃあ唱えて地獄にでも行け!!」

「嫌じゃ!嫌じゃ!!死にとうない!!」

「諦めろ、四郎右衛門は死んだぞ」

「へっ?・・・誠か?」

「この期に及んで嘘言って意味あるか?」

「・・・」


正気に戻ったかと思ったが、「南無阿弥陀仏」と呟くだけの人形となった。

もう何を言っても反応しない、呪文のように「南無阿弥陀仏」と唱え続けるだけの壊れた何かだ。

どうやら恐怖のあまり現実逃避したようだ。

もう相手にするのも馬鹿らしくなったし、此奴の代わりに雑賀の者には連座で痛い目を見て貰おう。

銃による暗殺とか二度と考えられない位にはする予定だ。

此奴の処分は本当に申し訳ないが長門守に任せた。

「実験に使いましょう」と何やら暗い笑みで言う長門守・・・怖ええよ!!

さて、最後に三好日向守の所に向かう。


「お前らのせいで真里が死んだ・・・」


それを聞くとギョッとした後に諦めた様な顔で聞いて来る。


「そうか・・・申し訳ない・・・して、儂はどの様な形で死ぬこととなる?」

「謝る位ならするな!!・・・そうだな・・・」


特に考えていなかった・・・憎くて憎くて仕方ないし、恨みはあるが、サディスティックな趣味は無いので処刑方法とか考える思考は持ち合わせていなかったしな~

考えていると日向守がジッとこちらを見詰め語る。


「何じゃ考えてもおらんかったのか?」

「そうだな・・・摩利支天様も特に如何しろと言われなかったし・・・ああ!任せるとは言われたな」

「ふん!この期に及んでまだそのような世迷い事を!!」

「いやいや、本当に夢枕でお会いしたぞ」


あ~死を覚悟した人間はある意味において最強だね~俺の「天啓」とかも嘘位にしか思ってないだろう。

いや、嘘だけどな。

いやいや、摩利支天様の事は本当・・・ややこしいな・・・

俺は証拠となるかどうかは解らないが「摩利支天様より頂いた物じゃ」と言って脇差を見せる。

また鼻で笑われた・・・

何気に腹立つ奴だな・・・まぁ開き直りなんだろう。

俺はそう思いつつも腹立たしくなり脇差を抜き刀身を見せる事とした。

「それで儂を刺し殺すか?」とか此奴が言うが、そんなことはしないぞ!!

「そんなことはせん!まぁ見てみろ」と言って刀を抜いた瞬間、驚いたことにうっすらと発光し、バチバチと音を立てた。

平成の世で見たスタンガンのような感じで発電した?

三好日向守は驚いて、「本当なのか?」とか言う。

俺は意味深に頷いて見せたが、俺も驚いたぞ!!

あの吸い込まれるような落ち着くようなそんな刀身を見せようと思っただけなんだけどね~・・・

何食わぬ顔で刀身を鞘に納め腰に戻し、話を進める。

お~流石に驚いているね~「やはり神仏と対話すると言うのは・・・」とか言っている。

あ!一緒に居る面々も驚いている・・・


「真里は天子様の義理の娘でもあるし、天子様にも話す必要がある」

「そうか・・・」


何か凄く大人しくなったよ。

後日、朝廷からの沙汰は京の市中引き回しの上磔獄門!!

その沙汰を聞き、前世で観た時代劇で聞いた処刑方法って本当にあったんだ~とか思ってしまった。

まぁ過去を参考に作ったドラマだし有るわな。

三好日向守は市中を引き回される際に物を投げられて刑場の四条河原に着く頃には生ゴミだらけとなり、臭った。

真里は京の民衆のアイドルになってたし、何より天子様の義理の娘、死ぬ要因となった者はそりゃ~こうなるよね。

そのまま2日間首だけ出した状態で生き埋めとされ、これも警護が大変だったようだ。

警護に当たった藤林の者がぼやいていた。

それが終わると磔にされた。

磔にされた状態で罪状を読み上げられる間にも石が投げつけられたりともうボロボロ、ぐったりしている。

そして、両脇を槍で突かれ憤死、苦悶の表情とはこういう顔だと言う見本のような顔で死んだよ。

更に、首を切り落とされてそのままそこに首だけで曝されて汚いオブジェとなった。

獄門台と言うのがこの台らしい。

うん!凄い残酷ではある。

鋸引きとか釜茹でとかもあるらしいけど、今回のこの処刑方法も中々のインパクトだったぞ。

真里が喜ぶとは思わないが、溜飲は下がるな。

敵討ちは出来たし、一段落だ。

顕如は何と真里が亡くなった同時刻位に落雷で焼死した模様。

直撃して骨も残らぬ程に燃えたと言うからガチの神罰怖いね・・・

神罰・・・うん!報告して来た長門守が「神罰でしょうか?」と言って来たので、「摩利支天様は神罰を与えたと言ってた」と伝えれば彼も流石に顔を引き攣らせていた。

うん、解るよ!!

この事はまたもや京の町の噂になった。

今回も俺は何も指示していないよ。

弓ちゃんとかが撒いた可能性高いね。

人心掌握術的に色々と平成の世で学んだ啓発本や人心掌握術の有用だかもよう解らん知識を弓ちゃんに話したからな~・・・

そして、三好家が慌てるようにして詫び金の支払いを打診して来た。

まぁ怖いよね~神罰・・・事を起こした三好日向守のとばっちりだろうけど、神がどう見るか・・・10万貫を使い立派なお社建立をすることにしたよ。

御所5,000貫なのにお社はその20倍・・・まぁ土地の購入資金とかもあるしね・・・

さて、もう一つこので期間で驚くことが起こった。

生まれて20日程度の里子が二足歩行するようになった。

生まれて直ぐに二足歩行して何か天上天下唯我独尊を叫ぶことは無かったし、刺客の蛇を握りつぶすことも無かった・・・しかし、生まれて1ヶ月経たない内に二足歩行ってのも中々のものだよね?

ゲームみたいにステイタスチェックとか出来たら、里子の特記事項とかに「〇〇の加護」とか「〇〇の眷属」とかそんな物が書いてあるのではないか?と疑っている。

俺の後ろ辺りを見て手を振っている・・・

子供には大人の見えないものが見えるというけど・・・

さて、本願寺も顕如の焼死の件を伝えて来た。

三好同様に神を恐れて20万貫と言う大金を支払う旨も伝えて来たよ。

阿弥陀様に御すがりすることは無理と諦めたようだ。

まぁ大金を得た・・・運用はまた知り合いの商人さんにお任せする予定だ。

莉里も商人の一部から「弁財の莉里皇女」とか呼ばれ始めている。

いやいや、莉里は弁財天様の子孫では無く摩利支天様の子孫だからね!!

さて、本当に一段落?したので伊勢に向うこととする。

山科様の下に数十名の藤林忍軍を残して行く。

山科邸には真里の聖骸があるのだ守りは厳重にしないと!!

真里の聖骸は神の言った通りまるで生きて居るように見えるし、腐敗しないようだ。

勿論、季節が冬だからと言うのもあるのかも?しれないが、明らかに違うような気がする。

見ていると神々しくも感じると皆も言う。

時折目の錯覚を疑うが、発光しているし・・・本当に謎過ぎる。

お社の建立は山科様と近衛殿下が取り仕切ってくれるそうだ。

博多の恵比須様の時もそうだが、投げっぱなだなと思うが、頼れる者が居るという事は良い事だ。

予算聞かれたので10万貫と言ったら2人とも顔を引き攣らせていたけど、気にしない気にしない!!

さて、伊勢の北畠さんの所に先ず行こうかね~

その後は嶋さんの所かな。

そして、一度故郷に戻ることとした。

真里を故郷に連れて帰ることを優先したい気持ちに駆られるが、何となく北畠さんと嶋さんとの約束を優先しないと果たされない様な、そんな予感めいたものが働いたのでそっちを先に終わらせることとした。


〇~~~~~~〇


復讐完了?・・・まぁ一段落です。

特に復讐話にするつもりも無かったのであっさり感は否めませんが。

色々とまた出て来ました。

謎の短刀、里子の能力、聖骸(真里の亡骸)等々てんこ盛りですが、今回は聖骸を取り上げたいと思います。

聖骸とはキリストセカンドなどとも呼ばれます。

要は聖人の亡骸ですね。

仏教では聖骸と言わず即身仏と言います。

本当に簡単に言ってしまえば聖人のミイラ。

キリスト教で有名なもので日本に関わるものはフランシスコ・ザビエルの聖骸でしょうか?

日本のキリスト教の普及と言えば一番最初に出て来る名前ですが、この人物はキリスト教の聖人の1人に数えられております。

キリスト教においての聖人とは生存中にキリスト教の模範に忠実に従い、その教えを完全に実行した人たちのことを指してそう呼んだ様です。

ですから聖人は数えるのが面倒になる程の人数が聖人に数えられます。

1,000人を超える聖人が居るのですが、このフランシスコ・ザビエルは聖骸が現代でも残る聖人の1人です。

ザビエルは日本での布教の後は一度ゴア(インド)に戻ります。

そして、中国に渡り布教を始めますが、中国に渡ることが実は出来ませんでした。

私も調べてみて知ったことですが、この時代の中国は宣教師などの入境は相当難しかったようです。

上川島じょうせんとうと言う中華人民共和国の広東省江門台山市の沖合にある島にて病を発症して46歳でこの世を去ったようです。

この時代は土葬でザビエルの遺骸は石灰を詰めて納棺しその島の海岸に埋葬されたと伝えられています。

しかし、その後に墓が掘り返され遺骸はマラッカに移送され、さらにゴアに移されました。

そして、聖パウロ聖堂で3日間一般拝観を行ったそうです。

調べてみて驚愕する程驚いたのがこの時にこの一般拝観に参観した一人の婦人が右足の指2本を噛み切ってそれを持ち逃走したそうです。

この2本の指は彼女の死後聖堂に返されそうですが・・・

ザビエルさんの遺骸はボム・ジェズ教会と言うゴアにある教会に安置されたそうですが、死んでいるとは思えない程だったので10年に1度、棺の開帳を行っていたそうです。

そして、ここからが驚くことですが、ザビエルさんの遺骸は死んでいる者とは思えない程瑞々しく、死後50年以上経過しているとは思えない程だったようです。

これを知った当時のローマ法王が「何を馬鹿な」と言ったかどうかは定かではありませんが、当時の首脳陣が確認の為に右腕を切り落とし持って来たところ、右腕からは鮮血がほとばしったそうです。

これを「奇跡」と呼んだそうです。

まぁ奇跡ですね・・・

右腕はローマのジェズ教会に安置されたそうです。

この右腕は1949年のザビエル来朝400年記念および1999年の450年記念に日本へ遣って来たそうです。

右腕上膊はマカオ(中華人民共和国マカオ特別行政区)に、耳・毛はリスボン(ポルトガル)に、歯はポルト(ポルトガル)に、胸骨の一部は東京になどと分散して保存されていると言うから聖人は死んだ後も大変ですね~

ザビエルは死後70年後に聖人として聖列されたそうです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る