第337話

その日の夜、やはりと言うか何と言うかお馴染みの空間へとやって来た。

そう、神域と言う場所だ。

遮る物はなく延々と続いているのではないかと思わせる広々とした場所、そんな何も無いただ白いだけの空間なのだが少し待っていると何時もの様に後から気配がした。

振り向くと数柱の神がテーブルに座り待っていた。


「よう参った」


代表してか声を掛けて来られたのはお馴染み摩利支天様だった。

最初に正式に会った神様だし、嫁となった姉妹(真里・莉里)の先祖なので俺の事を気にかけて下さる。

そして、春麗・春(春長)関連のオーディン神にセドナ神という神々。

しかし、ニューフェイスの神が2柱いる。


「初めまして。丸目蔵人長恵と申す」


先に挨拶すると一柱の神がニコリと笑い挨拶をして来た。


「我はスーリャという」

「スーリャ神様ですか?」

「仏教では日天、大日如来などとも呼ばれておるな、好きに呼ぶと良い」


ああ、日天と言う事は摩利支天様の旦那様か。

それに、大日如来って仏教の最上位の仏だよね?

何だか凄い神様?仏様?がやって来た。

他にも何だか名前を色々と持っていそうな神様だ。

大日如来・・・言われてみればそんな感じに見えて来るが、美丈夫過ぎて仏像とは似ても似つかぬ感じなので少し首を捻ってしまう。

美しい摩利支天様の横に居ても遜色ない程の美丈夫なのは間違いないし、威厳も感じる。

まぁ仏像はディフォルメしたりした物と考えておこう。

驚いているともう一柱の神も挨拶して来られた。


「我はブラフマー、梵天ぼんてんと言えば解るか?」

「・・・はい・・・」

「こちらも好きに呼んでよい」


摩利支天様の父神だったな。

ブラフマー神と言えばヒンドゥー教の最高神だったっけ?

何にしても凄い神だ。

此方の神はダンディーな見た目ではあるが、何とも言えない大人の色気?みたいなものを感じてしまう様な方で、更に「控えよ!!」とか言われたら土下座してしまいそうなほどの威厳もあるから見ていて不思議な感覚に陥る。

それにしても、太陽神(日天)に創造神(梵天)来ちゃったよ。

正直、驚いた。

まぁ考えてみれば、摩利支天様にオーディン神にセドナ神も凄い神だから最初に会った時は驚いたから同じだけど、二柱も同時に大物来たら驚くぞ。

その心は恐らく神々に筒抜けだろうが、顔に出なかっただけ成長した証だろう。


「相変らず面白い事を考えよるな」

「こ奴は何時も面白いな」

「あまり揶揄うと可哀想ですわ」


順にオーディン神様、摩利支天様、セドナ神様のご意見だ。

何が面白いかは解らないが、悪い感触では無い様なのでまあいいか。


「我らが末裔の晴れの日じゃ、祝いに参った」

「おめでとう」

「「「おめでとう」」」


梵天様の言葉に続け日天様がお祝いの言葉を述べ神々が続けて祝いの言葉を述べて盃を掲げた。

考えてみれば三柱(梵天・日天・摩利支天)は真里・莉里のご先祖様に当たる。

利(利長)のご先祖様なので不思議では・・・いや、神との邂逅自体が不思議な事だった。

神々との邂逅がよくあることとなって感覚が麻痺してるな俺。

そんな事を考えながらお礼を言う。


「ありがとうございまする」


神々から生暖かい視線を感じる・・・

あ~頭の中を見られているのだから俺の考え丸解りだな・・・

そんな中、ワイン片手にオーディン神が言って来た。


「そちは何を飲む?」

「では日本酒を」


一応は各種色々なお酒がそのテーブルに乗っていた。

そして、日本酒を今回は選び飲むこととした。

テーブルの上には色々な料理も乗っていて目移りしてしまう。

前世の昭和~令和の時代で見たことある様な食事が並んで居た。


「お主の知る物を用意したぞ」

「あ、そうなのですね。ありがとうございまする」


摩利支天様はそう言って握り寿司を食べ、「美味い」と言われる。

確かに生食はリスクが高いと思い転生後は必ず火を通して食べることが多かったので俺も早速、握り寿司を食べる。

うん!美味い!!

前世では回る御寿司がメインだったが、間違いなく三ツ星の回らないお寿司だと思える美味さだった。

他にも、久しぶりに食べる熊本ラーメンに馬刺し、太平燕タイピーエン辛子蓮根からしれんこん、人吉の鰻のかば焼きにいきなり団子・・・

ああ、何て懐かしい味だ。


「如何じゃ?」

「実に懐かしく美味いです」

「そうであろう!そうであろう!!」


ここに用意されている物は俺が前世で食べた美味しい物だった。

どうやって用意したかは神だし聞くだけ野暮だろう。

懐かしく美味しい食事を堪能して日本酒から始まり、神獣印のビールや財福の神のビールに芋焼酎に麦、そば、酎ハイ等々の前世でよく飲んだ酒も十分に堪能した。

宴もたけなわとなった時、梵天様が言われた。


「次は北の地を目指すのであろう?」

「はい、今は蝦夷えぞと呼ばれている地を目指します」

「ふむ・・・」

「如何されました?」

「その地に行くのならコタンカルカムイを訪ねてみよ」

「コタン・・・」

「コタンカルカムイじゃ。なに、人くさい神じゃしお主と気が合いそうじゃてな。それに・・・まぁ会ってみよ」

「会ってみよってどうやってですか?」

「現地に社位あろうからそこに行けば会えるじゃろう」

「はあ・・・」


そして、朝目覚めた。


〇~~~~~~〇


神回でした、いや、おもしろかった回という意味の神回ではなく、神登場の神回です!!

勿論、毎話面白い回に出来れば素晴らしいですけどね。

ブラフマー神については結構過去に語っていますので、今回はやはり日天についてでしょう!!

仏教における天部の一人で、十二天の一人として知られる神ですが、元はバラモン教の神で太陽を神格化した神として知られ、観世音菩薩の変化身の一つとも言われます。

ジャヤ・ビジャヤという二柱の神を后に持つ神様としても知られています。

はい、神様の話から少しそれますが、国民的漫画「ワンピース」の空島編でという言葉が出て来ます。

ジャヤ島という島の名前で登場するのですが、同時に太陽の神についても語られますのでこの日天の事をモチーフにしていると考察できます。

他にも雨の神、森の神、大地の神なども語られますが、主人公の能力を神の能力に擬えて考えると、悪魔の実が神の能力を再現するアイテムであるという考察が出来そうですね。

漫画の考察はさて置き、インド神話に伝わるジャヤ・ビジャヤの話は中々面白いので語る機会がありましたら語りたいと思います。

さて、日天はスーリヤと名乗りましたが、インド神話に伝わる太陽神のことで、天空神ディヤウスの息子とも女神アディティの息子たちアーディティヤ神群の一柱とも云われます。

金髪で3つ目、4本の腕を持つ姿で、7頭の馬が引く戦車で天を駆けるそうです。

闘神インドラの兄弟でそのインドラと並ぶ力を持つ神らしいです。

インドラはバラモン教、ヒンドゥー教の神の一柱で、仏教にも取り入れられ、「帝釈天」の名で呼ばれる雷霆神にして軍神です。

インドラと言う名は略称ですが、語源は「神々の帝王」を意味しますので本当に強い神です。

天空神としても語られますが、兎に角、強い神様(重要なので2回)です。

因みに、雷というのは神を表す最も力のある自然現象として古来から語られる為、雷は神の象徴として神罰などの表現でも用いられますが、雷霆神はその雷の化身として絶大な力を持つ神として各神話で語られる神が多いです。

ギリシア神話のゼウス、北欧神話のトール、スラヴ神話のペルーン、それにインドラ(帝釈天)が代表格と言われます。

そんな神と同等と言われる神ですから、勿論、スーリヤ神(日天)は最上位の一角です。

流石に1回のうんちくでは語り尽くせませんね。

機会があればまた日天については語って行きます。

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