第104話
「藤延よ・・・」
「上様・・・」
お互いに言いたいことがあるようだが言葉が出ない。
この場にはあの日「天啓」を聞いた者しかいない。
「お二人とも無言では話は進みませぬよ」
あまりにも長い沈黙に呆れて小侍従が意見をしてくれた。
「では、我から語ろう。三好の清水寺参詣は恐らくは御所巻きの準備であろう」
「某もそう思うております」
「そうだよな・・・ただの参詣で1万も不要・・・」
「しかし、四位蔵人の「天啓」を聞いていなければ疑うことも・・・」
「そうだな・・・三好ならそれ位普通と考えたやもしれぬ・・・」
「左様ですな・・・」
丸目より聞いた話では多勢に無勢で全滅とのことであった。
無防備で一万もの軍勢に攻められれば一溜りも無かろう・・・
「して、何時三好はこちらに来る?」
「恐らくは四日後には京に来るかと・・・」
「四日後か・・・では此方を囲むは五日後と見てよかろうな・・・」
「上洛と共にそのままという事も考えられまする・・・」
「そうよな・・・」
「上様の命により信用のおける者どもに声を掛けて弟君たちの避難にも向わせて御座います」
「そうか・・・助かる・・・」
「いえ、臣下としての最低限のものにて上様には苦汁を強いて申し訳なく・・・」
「いや、将軍にもう少しばかり力があればの・・・」
気持ちが落ち込んでいくことこの上なし。
我が今動けば関係のない弟たちにも迷惑・・・いや、命の危険もあろう。
今思えばもっと色々と丸目に聞いておけばと後悔しか出ぬ。
とっさの事で言われたこと以上の情報を得なんだ事は失態であった。
★~~~~~~★
お金・お銀が寺の坊主たちを揶揄う様に・・・いや、何時も通りの行動か・・・何時もの様に俺の腕に巻き付き極楽を形成する。
それを見た坊さんが赤い顔で「はぅ~!」とか言って股間を抑えている・・・少し免疫低過ぎないと思うが禁欲生活を何年も過ごす若者たちには良い修行になっているようだ・・・
「おい!金銀!!長師匠が歩き辛いとよ!!」
「あら~♡美ちゃん羨ましいの?しょうがないわね~変わって♡あ♡げ♡る♡」
「え・・・それじゃあ・・・はっ!違うそうじゃなくて・・・」
あ~最近は美羽と真里もお金・お銀に揶揄われてタジタジの様だ。
まぁ面白・・・美羽たちの修行と思って静観する。
「丸目殿・・・」
「あ!これは覚慶殿、こんにちは」
「はい、こんにちは・・・」
ジッと俺を見詰めて物言いたそうな顔の覚慶殿・・・
一応は彼の警護の任なので俺と有志の者はちゃんとこのお寺に待機しているが、槍のバカップル含め弟子たちは宝蔵院に槍修行に行っている。
そろそろ戻って来るとは思うけどね~
「覚慶殿、何ですかな?」
「いえ・・・僧たちを揶揄うのは・・・」
「あ~はい・・・注意しておきます・・・」
ここ数日は同じことで注意されている。
特にお金・お銀のお色気くノ一が平常運転で俺に絡んで来るのでそれを見た坊さんが・・・
そんな時、お銀がスーっと動き短刀を抜き覚慶殿に近づいて行く。
カキン!!
金属がぶつかる音がして投射物を見れば、棒手裏剣か。
「え?・・・」
覚慶殿はお銀が自分に短刀を抜きながら近づいて来た時には慌てていたが自分が守られたことを気が付かなかったが俺たちの目線を追ってその先の暗器を目にすると明らかに動揺した。
青い顔で「これ・・・何ですか?」と聞いて来るが、見ての通りの棒手裏剣だ。
霜台爺さんの読み通りに刺客が来たようだ。
「来たぞ!!」
俺がそう叫ぶと居残り組は一気に戦闘態勢に入った。
俺に纏わり着いていたお金も何時の間にか短刀を抜き身構えている。
美羽・真里もいつでも戦える体制だ。
「お~い、三好の刺客の者だろ?」
俺は棒手裏剣が飛んで来た方に向かって声を掛ける。
う~ん、返事は無いが、殺気の気勢が上がったので攻め込んで来るか?
三好の誰かのお抱えの忍びの者であろう者たちが20人程現れた。
此方は俺含めて10人で念の為に覚慶さんに3人のガードを置き7:20か。
「某たちは松永久秀殿の依頼で覚慶殿を守っておるのだが?」
一瞬、動揺したようだがリーダーらしき者が「関係ない!!」と言うと動揺が収まり殺気が飛んでくる。
まぁ三好も一枚岩では無いと聞いてたしね~来るなら殺るだけだ。
「そうか・・・命の要らぬ者だけ掛かって来い!!」
剣豪やるなら一度は言ってみたいセリフを吐く!!
うは~何か久しぶりに剣豪している気分!!
え?色物が何を言うと?・・・色物ちゃう!剣豪丸目蔵人!!
「そちらこそ、命は惜しかろう?その坊主を残して去れば命は助かるぞ?」
「あ~舐められたものだね~」
莉里が毒を吐く。
「こ、小娘・・・」
まぁ二十歳前の小娘だね~でも、莉里も俺がしっかり鍛えたし中々やるぞ。
美羽・真里が家のメンバーでは抜きん出て剣術が得意なだけで、莉里も春麗も弱い訳ではない。
いや、寧ろ舐めて掛かれる相手では無いよ~三河でも何気に2人の実力は実証済み。
「者ども!かか」
あ~セリフを最後まで言えずに春麗の棒手裏剣が相手のリーダーにぶっ刺さった。
動揺が見えた瞬間に覚慶さんの護衛として配置した者以外が一気に数人を斬り付けて始末した。
俺も3人程始末した。
一気に人数は7:11となった。
「おいおい、実力差理解しただろ?まだ無駄死にしたい?」
俺がそう言いつつ間合いを詰めて行くと「退け!!」と一人の者が言い退いて行った。
〇~~~~~~〇
さて、刺客が来ました!!
史実ではどうだったかは知りませんが、もう一人の弟の
この小姓さん中々やりますね~
若くして権力闘争に巻き込まれて散ってしまいました。
一方、覚慶の方は松永久秀が興福寺に幽閉・監視されたそうですが、意外と保護したのかもしれませんね~その証拠に寺内では自由に過ごせたようです。
松永久秀らは覚慶が将軍の弟で、近い将来は興福寺別当の要職を約束されていたらしく、覚慶を殺すことで興福寺を敵に回すことを恐れて、幽閉に留めたとも言われますが、将軍殺した連中ですよ?後々は興福寺と争ってますしそんなことで躊躇するか?とも思いますが、はてさて。
越前の朝倉義景はこの状況から覚慶を救うために、三好・松永に対して、直談で交渉を行ったそうです。
しかし、交渉は失敗、その後、謀略で大脱出を行うことになったようです。
映画「シ〇ーシャンクの空に」や映画「大〇走」ばりの大脱走を行っております。
朝倉義景の全面協力の下、義輝の遺臣である細川藤孝らの脱走計画が実行に移されました、同じく遺臣の
そして、隙を突いて番兵に酒を勧めて泥酔させ、脱出に成功させたと伝わっています。
その後は奈良→伊賀→近江甲賀郡の和田と逃走します。
そして、その和田の豪族である
和田家は甲賀五十三家のうち特に有力な甲賀二十一家に数えられ、特に山南七家とも称される家柄で名門の甲賀忍者の家です。
名前が出ないのは可哀想なのでこの大脱走に協力した他の主要メンバーは、三淵藤英、一色藤長、仁木義政らとなります。
ここら辺の出来事は主人公が関わる予定が全く無いので割愛します。
脱走劇やっている頃は主人公は挑戦者募集で忙しいでしょうしね~
さて、永禄の変もう少しです!!
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