第160話

「里子~」

「何?父様ととさま~」

「しっぽについて聞きたい」


里子は一瞬よく解らないと言った感じで頭を傾ける、可愛い!!

我が子ながらその愛くるしさと来たら・・・おっといかんいかん、話を進めろと天の声さんが言う。

そうこうしていると里子がしっぽについて言って来る。


「しっぽ?私には生えてないよ?」

「そ、そうか・・・」


自分には生えていないと言うが、如何聞けばいい?

里子にしっぽが無いのは見れば解る。

うん、里子にしっぽ・・・ありだな!!

また要らぬ事を考えたことを叱責される。

天の声さん・・・厳し~~~~い!!


「あ~私もしっぽ欲しかったな~」

「しっぽ生えてる子が居るんだよな?」


もう色々すっ飛ばしてストレートに聞いてみた。

里子はまだ小さいし、その方がいいと判断した訳だ。


「うん!千代!!」


千代?・・・見た感じしっぽが生えているように見えないがふと千代を見ると目を逸らされた・・・

俺が考え込んでいると里子が追加情報をくれた。

千代を見ると何だか凄く気まずそうに顔を背けるのだが気のせいか?じゃないよね・・・


「あのお耳も可愛いね~」


千代を見ながら里子が言う。


「耳?」

「うん!犬の耳」


犬耳にしっぽ?

俺には耳も尻尾も見えないし、側で聞いている者たちにも、勿論、見えないようだ。

長門守と美羽が警戒して俺の側で身構える。

俺は手で制し、千代の方を見る。

本当にバツの悪そうな顔で反論する。


「犬じゃない」


千代がそう言う・・・


「え~じゃあ何のお耳なの?」

「う~・・・はぁ~狐じゃ・・・」

「へ~きつねか~きつねって何?」


うん、里子は狐見たことなかったね。

千代が諦めた様な顔ですたすたと歩いて来て俺の前に胡坐をかいて座る。


「う~バレてしまったのじゃ」

「おう、ドンマイ」


千代は諦めた様に俺をじっと見てから話を続ける。


「して、何が聞きたいのじゃ?」

「お前は何者だ?」

「我か、我は空弧くうこじゃ」


そう言った千代は幻覚を解いた様で行き成り耳と立派な1、2・・・8本のしっぽが・・・8本!!

恐る恐ると俺の疑問を幼女に聞くと怒られた。


「お前は妲己だっきみたいなものか?」

「妲己?ふふふふふ・・・あはははは~あんなのと一緒にするでないのじゃ!!」

「おう、すまん」

「おう、解ればいいのじゃ、解ればの~」


千代曰く天弧てんこと言う善狐ぜんぎつねで神の使いとも呼ばれるような神通力を使う狐が居るそうだ。

野狐やこが千年以上の時を生きると稀に天弧となる。

天弧になり切れなかった一歩手前の千年以上生きた老狐が天弧に及ばないまでも神通力を使える様になるらしいのだが、それを空弧くうこと呼ぶらしい。

千代はその空弧で耳としっぽは神通力の一つの幻術で隠していたそうだ。


「お前さんが言う九尾の狐(妲己)は人に災いをもたらした凶獣であろう?」

「そうだな」

「ふん!われは大陸の五胡十六国ごこじゅうろっこくが内のだい国を陰で支えた善狐なのじゃ」

「え~と大陸って今の明?」

「そうじゃ」

「へ~その大昔の国を支えた神獣様が何故に日ノ本に?」

「神獣・・・うむ!!神獣の我が神の天啓を聞きこの国に来たのじゃ!!」


神獣とかよいしょしたら耳に尻尾生えた幼女がふんぞり返る様に無い胸を張る。

尻尾もブンブン振ってご機嫌MAX?

話が壮大になって来ましたが、要は代と言う国が滅んで行く当てがなくさ迷っていた所に神のアドバイスがあり日本に渡航して来たらしい。


「幼児の姿も何か理由があるのかな?」

「そうよな~・・・力を得られず今はこんな幼児の姿じゃが、元は絶世の美女なのじゃ!!」

「へ~~~」

「し、信じておらんな!!」

「ア~シンジテルヨ~」

「何じゃその気の無い返事・・・本当なのじゃ!!」


この幼女の空弧を呼び寄せたのは宇迦之御魂神うかのみたまのかみ様で、バリバリの国津神で、稲荷神と言えば解り易いかな?

その神に呼ばれてこの地に来たそうなので神使なのかな?

神社の一角に宇迦之御魂神うかのみたまのかみ様も祭ることとした。

名前は千年生きた事と元代国の守り神?的な存在と言うことで、千代と名乗ったそうな・・・

里子が拾って来たのは何だか運命の様な気もしてこの義理の妹を受け入れることとした。

千代は仙狐せんこと言う仙術の修行をした狐でもあり仙術を使うそうだ。

この事を聞いて大喜びしたのが春麗、彼女の先祖は仙人だったというし、「仙術使えるの!!」と千代に詰め寄りブンブンと縦に揺る。


「う~きぼち悪いのじゃ~」

「あ・・・ごめん」

「う~良いのじゃ・・・」

「それで・・・」

「教えて欲しいのか?」

「仙術教えてくれるの?」

「ええぞ」

「やったーーー!!」


春麗は大喜びである。

さて、俺も教えて貰わねばなるまい!!

仙術使えるようになると思うと気分が高揚するぞ。

どんどん何か懸け離れて行くような気がするが考えたら負けである!!


〇~~~~~~〇


なんと!八尾の空弧登場!!

さて、中国の歴史で五胡十六国時代と言うものがあります。

代と言う国はその国の一つで、西暦300年代に61年間あった国です。

現在の内モンゴル自治区辺りにあった国と言われています。

前秦に20万の大軍で攻められて併呑されてしまいました。

おっと前秦とは何ぞ?と思うかもしれませんので簡単に説明すると、国号は単に秦と言います。

この秦を滅ぼして起こった西秦と後秦があるために前秦と呼んで区別したそうで、西暦350年位から300年代末位まであった国です。

話は戻し、代国に拓跋孤たくばつこと言う人物が居たそうです。

この人物は拓跋鬱律たくばつうつりつ(代国の王様)の四男として生まれました。

多才多芸であり、謀略に長け、高い志を持っていたと言われています。

ごうは神武と言うそうですが別件で色々調べていた過程で拓跋の一字がに似ているな~とか思って何となく思いついたストーリーとなります。

そう言う訳で、代と妖狐は何の関りもありません!!

さて、妖狐について詳しく語って行きましょう。

中国や日本に伝わる狐の妖怪を妖狐と呼びましたが、中国では長く生きた狐は仙術を修行するものと見られていた様で、仙狐せんこを目指し修行するための試験に合格していない狐を野良の狐と言うことで野狐やこと言いました。

仙術を修行し獲得した狐を仙狐せんこと呼びました。

この仙狐の中でも有名なのが九尾狐、白狐等でしょうか?

九尾狐は中国では瑞獣ずいじゅうであるとされますが、妲己・玉藻前の例のように、徳のない君主の場合、災いを招き、革命を促すので凶獣として知られます。

白狐は安倍晴明の母親とされている葛の葉の正体などと言われることがよくある妖狐で、白い毛色を持つと言うのは人々に幸福をもたらす存在や稲荷神の使いとして語られることが多い善狐とされます。

善狐の種族には天狐・金狐・銀狐・白狐・黒狐の5種が存在しているとされているそうですが、基本的に行いの善悪で決められますのであまり色とかは関係ないのですが、天・白は特に特別視されるようです。

ご先祖様が仙人の春麗が仙女になるかもしれませんね~

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