第161話
この場には俺以外に嫁たち、里子、長門守、弓ちゃんにお公家さん2人・・・
近衛殿下が神妙な顔で千代に質問する。
「千代、いや千代殿」
「何じゃな近衛の小倅」
「玉藻前と言うのはご存じでおじゃるか?」
「ふん、あれは作り話なのじゃ」
「作り話でおじゃるか・・・」
「その位はお主も知っておろうに、何か?儂が朝廷に仇なすとでも言うか?」
鼻で笑うように近衛殿下に玉藻前を作り話と言い切る千代。
そして、胡乱気に聞いて来た近衛殿下に聞き返す。
何か凄い機嫌悪そう・・・あ~そう言えば、妲己も玉藻前も九尾で凶獣だな。
それを知り合いか?それとも本人か?と言われれば機嫌も損ねるだろう。
近衛殿下はそう言われても引く様子はないようで、じっと千代を見詰める。
話は進まないし、千代が悪い者の様な気はしない。
俺の勘ではあるが・・・
「近衛殿下」
「何でおじゃる?」
「千代は神獣です!」
お!尻尾が機嫌良さそうに振れる。
「しかしでおじゃるの・・・」
「いえ、千代が悪事を働くとは考えられませぬ」
「長よ、根拠でもあるのか?」
「神の指示でこの日ノ本に来たと言いました。千代を疑うは神を疑うに等しい行為です」
「ふむ・・・」
そうだよね~若しも九尾の狐みたいに災いを振りまくとしたら朝廷の者としては捨て置けないよね~近衛殿下の気持ちも解る!!
でも少なくとも神が日本に誘ったんだし・・・悪者ではないよね?
「曲がりなりにも某の義理の妹となりました」
「そうでおじゃるな」
「義理ですが、もしも妹が日ノ本に災いを成すなら」
「災いを成すなら如何するでおじゃる?」
「某が責任をもって処置します」
近衛殿下が考え込まれた。
「処置とは何じゃ!!処置とは!!」と狐が喚くが今は黙れよ、本当に何をされるのか聞きたいのか?おい!
「長よ」
「はい」
「その方が死した後はどうするのでおじゃる?」
「はい、我が子々孫々が責任をもって処置しましょう」
「左様でおじゃるか」
「はい、しかし、某はこの者が悪い者とは微塵も思ってございませんで、全く心配しておりませぬ」
言い切ったことで近衛殿下はまた考え込む。
何か千代の尻尾見ているだけで嘘付け無さそうで悪い者には思えない・・・甘いか?
「よう言うた!!」と尻尾をぱたつかせてご機嫌の空弧の千代・・・うん!甘いのかもしれない、尻尾可愛いわ~
それに、仙術教えて貰わんと行かんしね~今、千代を処置とかしたら父母だけでなく里子にも嫌われちゃうじゃないか!!
「長よ、責任持って管理しておじゃれ」
「承りました」
パンパカパ~ン!!
空弧・千代が仲間になった!!
レアキャラGETだぜ!!
ちょっとガッツポーズしたのはご愛敬である。
春麗も「ナイス!長様!!」と言い、親指を立てて俺を労う。
うん、俺に影響を受けてるね・・・
他の嫁たち含め周りもホッとした顔が目立つ。
情がわいてるから実際は処置とかね・・・そうならないことを本当に祈るよ。
「千代」
「なんじゃ?」
「お前のこと信じているからな」
「我は神獣ぞ、お主の方こそ運が良いの~子々孫々まで守ってやろうぞ」
無い胸を張り、尻尾をブンブン振りそう宣う千代。
調子乗る所も愛嬌に感じ何だかホッコリしてしまう。
女児で尻尾に狐耳は卑怯だよね~
そのご機嫌MAXに揺れる尻尾をジーっと眺めて今にも飛び掛かりそうな里子・・・うん!両方可愛い!!
しかし、里子に普通の子供には尻尾が無いことを理解させるのは大変だったのは言うまでも無いが、とりあえず置いておこう。
「え?妹にしっぽは無いの!!」とショックを受ける里子に俺は何も言えず嫁さんたちに後は任せたよ・・・
★~~~~~~★
陰から支え手塩にかけて来た代国が滅ぼされ終の棲家を失った気分なのじゃ・・・
当ても無く大陸をさ迷い歩いたのはもう何年経つだろうか?
数えるのも忘れる程に長い年月だったのじゃ。
ある日、天啓を受けた。
神は海を越えた国に来ないか?と言われたのじゃ。
行く当てもなかった我はその提案に飛び付いた。
この国(日ノ本)に渡って直ぐに人の好い夫婦に運よく拾われ
我は美しく育ったのじゃ。
元が良いから当たり前じゃが、人の好い夫婦は子に恵まれずにいたので我を大事に大事に育ててくれたものよ。
そして、10年ほど経つと我の美貌を聞き付けた者が宮中への参内を進めて来おった。
夫婦は喜び、あれよあれよと言う間に宮中に上がることとなったのじゃ。
我は直ぐに鳥羽上皇と言う者の女官となった。
その際に
美貌もさることながら博識の我に鳥羽上皇と言う者は惚れ込んでしもうた様じゃ。
そう呼ばれる程の我の美貌と英知が我ことながら恐ろしいのじゃ。
それに、鳥羽上皇と言う者も中々見る目があったのじゃろう。
しかし、何の因果か鳥羽上皇と言う者は病を患い伏せってしまったのじゃ。
医師が診るが原因不明と言う。
原因?人の恨みを買い過ぎて呪われておるのよ。
権力者と言う者はどいつもこいつも我儘で、人から恨みを買うものじゃしの~一種の業じゃな。
世話になっておるし今回は我が神通力で病魔を払ってやった。
しかしじゃ、弱った体は直ぐに回復せず、今度は陰陽師の阿部の何たらと言う者が呼び出されたのじゃが・・・
その時、我の術の痕跡を辿り原因は我と
ろくでもない陰陽師じゃ、
我は追われる身となったのじゃ。
尻尾を一本犠牲にし身代わりを作り事なきを得たが・・・
九死に一生を得たが助かる為とは言え神力の殆どを失う結果となってしもうたのじゃ。
それからまた少しの間さ迷うこととなったのじゃ。
神よりまた天啓を受けた。
赤子の姿で京の都近くのある場所にて寝ておれと言うのじゃが・・・信じるよりないわな。
神を信じて寝ておると、何と里子が現れたのじゃ。
そして、今に至る訳じゃ。
里子とは約束して我の正体を明かさぬようにと言っておいたのに・・・
「妖狐であることを皆には教えないでおくれ」と言っただけだったのが悪手じゃった。
まさか、尻尾と耳の事を里子が言おうとは・・・抜かったわ・・・口止めの仕方が悪かったのか、そもそも幼女に要求すること自体が難しかったのか・・・今となっては考えるのも無駄なのじゃ。
しかし、ここで奇跡が起こったのじゃ。
里子の父、我の義理の兄者殿が助け舟を出してくれた。
その者は助け舟だけではなく我の事を神獣と呼ぶのじゃ!!
ぐふふふふ~中々に見る目があり、理解力のある御仁の様なのじゃ。
それに・・・神の加護を受けているようじゃし・・・敵対するなぞ命取りなのじゃ。
特にあの腰に差した短刀・・・くわばらくわばらなのじゃ。
拾われた時から分かってはおったが、神の末裔に天狗の末裔・・・我はえらい所に来たようなのじゃ。
そして、我を祭るお堂を作ってくれた!!
何という剛毅な人物なのじゃ!!
これで神力を得ることが出来るのじゃ。
この者たちと居るのも楽しそうじゃし、誘ってくれた神に今回ばかりは感謝じゃな。
後ほど千代は自分の社ではなく稲荷神の社だと知ることとなるが、この時、その事はまだ知らない・・・
〇~~~~~~〇
前話の続き的な話でした!!
さて、玉藻前伝説の成立は室町時代以前であると言われています。
「玉藻草子」と言うおとぎ話が室町時代にはあった様で、能の「殺生石」などが作られるほど人気でした。
玉藻前の前歴としては
他にも禹王の妻の女嬌は白い九尾だったそうですし他にも幾つか九尾伝説はあるようです。
玉藻前は中国の方で追われる身となり大陸の方を逃げ出します。
吉備真備の乗る遣唐使船に同乗し、来日を果たしたとされております。
玉藻前は九尾の狐の化身と言われますが、実際には鳥羽上皇に寵愛された皇后美福門院(藤原得子)がモデルで実在しなかったと言われます。
鳥羽上皇(天皇)には藤原璋子(待賢門院)と言う奥さんが居ました。
藤原璋子さんは113話で語っておりますが、この璋子さんを失脚させ、崇徳上皇や藤原忠実・藤原頼長親子と対立させ保元の乱や平治の乱を引き起こし、更には武家政権樹立のきっかけを作った人物などと得子さんは言われています。
でも、実際に何処までそれらに関与したかは定かではないのです。
得子さんは元々が名門出身でもないのに皇后にまで成り上がりした。
この事への皆のやっかみだったのかもしれません。
九尾の狐は逸話として残っている多くが世を乱す凶獣として書かれていますが、中国などでは太平の世に現れる瑞獣であるとも言われます。
千代はどちらになる事やれ。
九尾の狐ないし妖狐は書き始めた当初から何処かで必ず登場させたいと思っておりました。
天狗や河童が登場しているのでここはやはり狐つ子(玉藻前)は鉄板ですね!!
彼女の今後の活躍?に期待致しましょう!!
それにしても、この玉藻前の語られる時代は怨霊など出てくる時代ですから九尾と言う大妖が出てもおかしくないと言った感じでしょうかね?
今も昔もこういった都市伝説?創作話?の様な話は本当に民衆に大人気で、物語や芝居などなどでラスボス的に九尾は度々出て来たようです。
本当に居たか?は定かではありませんが、信じる信じないはあなた次第!!てとこですかね~
え?ネタが古い?・・・
行き成り何言ってるんですかね?・・・まぁ、でも!・・・何かそうかも~!!
次回はまた京の話です!!
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