第250話
★700オーバー!!
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では、時間潰しの糧としてお楽しみください。
◇~~~~~~◇
お猿さん(羽柴秀吉)の軍勢は摂津の国人衆を吸収合併し、2万を越え、更にまだまだ膨れ上がっている。
藤林の諜報員の調べでは3万を優に超え4万に届く勢いだという。
摂津の有力国人である高山・中川の二家と丹羽殿(丹羽長秀)たちを取り込めたのが先ず大きいとの分析だと長門守が教えてくれた。
一方、惟任(明智光秀)の軍勢は1万6千程で、何とか搔き集めたといった感じらしい。
惟任殿と親戚関係にある細川が義絶を宣言したという。
同じく親戚という面では惟任殿が息子を養子に出している大和の筒井家も動きが怪しいらしい。
まぁ筒井順慶は日和見順慶と言う不名誉なあだ名で呼ばれる程優柔不断な者らしいから、今の段階での日和見もお約束なのかもしれない。
どちらにしても、親戚すら義絶したり・日和ったりしているので他も日和る者が多いようだ。
そんな中、丹後の領主の1人、一色何某さんが惟任殿に味方したらしいけど、義絶した細川家がその援軍の進路を邪魔して此方に軍が出せない状態となっているらしい。
惟任軍は予想以上にお猿さんたちが攻めて来るのが速かったようで、準備不足で事に当たることになりそうだ。
円明寺川と呼ばれる小川を挟んで両陣営が相対し睨み合っている。
数的にはお猿さんの軍勢が圧倒的なのだけど、陣取りは惟任が上手くやった?
よく解らんので何となく自分は解ってますよ~的な感じで美羽に意見を求めたのだが・・・
「美羽、どう見る?」
「そうですね・・・数的には羽柴様の軍が多う御座いますが、惟任様の軍の方はあの山とあの沼の間の攻め口に蓋をする形で中々に攻め辛い良い陣取をされておられますね」
美羽の言うあの山と言うのは天王山だろう。
丁度、天王山と沼が空間を狭め、大軍の通り道を邪魔しているが、他に軍の通り道はないので、お猿さんたちが攻めるにはその間にあるスペースを通るしかない。
しかし、そのスペースの先に惟任殿は蓋をする様に陣を置いている。
何、美羽の分析凄くね・・・言われて気が付いたぞ・・・
俺は美羽の説明を聞きつつ、取り合えず、うんうんと頷いて続きの話を聞く。
「羽柴様方が攻めるには、今の所、あの間を行くしか御座いません」
「そうだね・・・」
「お解りかとは思いますが、今の段階では中々良い勝負で、何方が勝ってもおかしくないかと」
え?そうなの?何か美羽って軍略の才能あるのかも?
説明聞きながら両陣営を上空から見ていると、美羽の説明が正しいと思えてくる・・・よし、もしも俺がまた軍を率いる様な時には軍師美羽に従おう。
俺は心に固く誓う。
「小競り合いはあったけど、特に大きく動きは無かったな」
「そうですね」
両軍が対陣してから1日目は特に動きが無く終わった。
さて、俺は山崎の戦いの観戦に来ている。
早く結果を知りたいという竜様(近衛前久)の依頼でもある。
しかし、俺が歴史的な戦いを見たいのと、ある目的の為に、美羽にお願いして連れて来て貰った。
今回は美羽と2人で上空から観戦中である。
「今日も大した動き無さそうだな・・・」
「いえ、あの一団が動きそうですよ」
2日目も上空より観戦しているが、何となく美羽の説明されながらの観戦を経験したことで少しは解る様になった?
美羽が指さすところを眺めていると、山裾を横切る形で惟任軍が仕掛けた。
それにしても、軍師美羽は状況をよく見ていらっしゃる。
俺なんて言われて気付いたぞ・・・
「このまま行けば戦局が動きそうですね」
「そ、そうだな・・・」
うん、解らん・・・戦局が動く?どの様に?
何か解らないことが恥ずかしく思えて知ったかぶりしちゃったよ・・・
一刻程両軍入り混じっての攻防が続いた。
確かに昨日の小競り合いと違い、美羽の指摘通り戦局が動いた様だが、勝敗の行方は・・・
おっと、結果を知りつつ何となく知ったかぶり脳内解説をしていると美羽が指を差し俺に見るように言ってくる。
「長様、あそこをご覧ください」
「あ~別動隊だね」
美羽の指さす方を見れば別動隊が惟任軍に向って来るのが見える。
それを見詰めつつ、美羽の解説を待つ。
「恐らくは、一度戦場を離れ渡河後に回り込んできたのでしょう」
「そうだな・・・」
何?そうなの?名軍師美羽が軍略を語り俺に聞かせてくれる。
美羽が言うのだ間違いない!!
俺は生返事を返し戦場を見つつ、美羽の才能に恐怖した。
軍才の無い俺には計り知れないが、美羽には何か見えているのだろう。
「勝負着きましたね」
「そ、そうだな・・・」
何処が?解らんけど恐らくはお猿さんの勝ち・・・歴史通りならそうなるのだろう・・・
美羽の「決着つきました」聞いても、どう決着したのか解らんが、美羽が言うのだ間違いない。
その後は溶ける様にと言ってもいい程一気に勝負のかたは着いた。
殆ど脱走・離反で惟任殿の軍は溶けて無くなった。
「美羽、あの一団を追うぞ」
「解りました」
逃げる惟任殿を上空から追い掛ける。
惟任殿の一団は、逃げる途中も脱走者が居たり、農民の落ち武者狩りにて命を落とす家臣さんたちもおり、どんどん数を減らして行った。
真夜中となり、何とか逃げ延びた惟任殿は藪に隠れ一夜を過ごすようだ。
もう既に家臣は一人も居らず、一人で藪に身を潜めている。
近付くと、息遣いが荒いので怪我でもしたか?
俺は惟任殿の隠れる藪に向かって声を掛けた。
「惟任殿、こんばんは~月が綺麗ですね~」
そう、今日は月が綺麗に出ており、月明かりが明るく周りを照らしていた。
★~~~~~~★
「藤吉郎様・・・」
「何じゃ?如何した?」
官兵衛が申し訳なさそうに報告しに来た。
この戦いは大勝利に終わったというに、如何したというのじゃ?
「誠に申し訳御座いませぬ」
「ん?戦には勝っただがね~何をそんなに謝るだぎゃー」
「実は・・・惟任日向守を取り逃がしてしまいました」
「なんじゃ、そんなことけ。官兵衛、気にするなだぎゃー」
「いえ、しかし・・・」
完璧主義者の官兵衛が惟任を取り逃がしたことを謝って来るが、大局は決まった。
惟任がこのまま天下を手中に収める為にはここで負ける訳にはいかなかった。
負けたと言う事は、仕舞いと言う事じゃ。
「もう、惟任が浮かび上がって来ぬ事は解っておろう?」
「はい、しかし、首が獲れればもっと楽です」
「わははははは~官兵衛は欲張りだがね~」
「欲張りですか?」
「うむ、あ奴の首など直ぐに手に入ろうがね~」
「ですが・・・」
「気にするな」
儂は官兵衛を労い、此方に報告に来る者全てを労った。
惟任日向守はもう仕舞いじゃ。
終わった者の事を考えるより、儂の為に戦い手柄を上げた者たちを労う事の方が重要じゃ。
少し遠くから笑い声が聞こえる。
手柄首を持参した誰かの笑い声であろうが、十分な労いの言葉を掛け次も味方になった貰わねばな。
まだ、惟任以外にも倒さねばならぬ者たちは残っておる。
それに・・・上様の意志を継ぐにも神輿は必要・・・さて、誰を担ぐか・・・
〇~~~~~~〇
山崎の戦・・・完
さて、この戦いは初期段階では膠着するかと思いきや、一気にかたが着き、秀吉の大勝利で幕を閉じたと云われます。
戦局が大きく動いたのは戦2日目の一刻程戦った後、淀川沿いを北上した池田恒興・元助父子と加藤光泰が率いる手勢が、密かに円明寺川を渡河して惟任方に味方していた津田信春を奇襲したことが切っ掛けのようです。
この時、津田信春の手勢は二方向から攻め立てられどんどん押し込められたようです。
最前線で戦っていた惟任軍の主力の斎藤利三らはこの混乱で押され始めます。
そして、その動揺が全軍に広がったことで、惟任軍は総崩れとなったようです。
光秀は既に戦の勝敗が決したことを知ると、戦線後方の勝龍寺城に退却しました。
日没間際の隙を突き、闇に乗じて光秀は本拠地の坂本に落延びようとしたようです。
実はこの一時退却先の城・勝龍寺は大軍を収容できない平城だったので、兵の脱走・離散が相次ぎ、700余にまで減衰したことで、これ以上の抵抗は無理と判断した光秀が城を捨てて逃げたとも云われます。
居城の坂本城を目指して落ち延びる途中、小栗栖の藪(京都市伏見区)で農民の落ち武者狩りに遭い竹槍で刺されて殺害され、次の朝に秀吉に届けられたようです。
尚、現在はこの藪を「明智藪」と呼ぶそうです。
実はこの山崎の戦は戦の前段階の戦略で既に秀吉の勝利が確定していた戦いとも言われています。
孫子の兵法には「勝敗は、戦う前に決する」と言うものがありますが、まさにそれですね~
出来レースと言える戦いで全然天下分け目の戦いではなかったとも云われる戦いでもあります。
さて、この物語では主人公と最後のご対面となります。
次回、裏切った訳を惟任日向守(明智光秀)に語らせる予定です!!
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