第223話
体調不良の為、三日程休載させて頂きました。
朝夕の寒暖の差と、湿気と暑さが辛いですね~皆様も健康にお気を付けください!!
◇~~~~~~◇
美羽が御婦人を連れて来た。
「ち、ち、ち、ち、ち、ち・・・千代と申ちまちゅ・・・ま、ま、ま。ま、ま、丸目しゃんい・・・」
何かガチガチでドモリながら更に噛み噛みだったよ。
「あ~そう硬くならなくていいですよ」
苦笑いしつつ俺はその女性に声を掛ける。
そう言えば、名馬を買うか・・・御馬揃えでいい馬を買おうとする者は多い。
落ち着いた様なので話を更に聞くこととした。
「それで、何故、馬をお買い求めで?」
「はい・・・実は夫の出世の為に・・・」
「出世ですか?」
「はい、御馬揃えで名馬を買えば何方かの目に留まり・・・」
あ~何か聞いたことある話だ。
御馬揃えで馬購入と言うのは皆が行ったであろうことだけど、美談として後世に残ったのはあの話であろう。
「そう言えば御主人のお名を伺っておりませなんだな」
「あ、失礼致しました。夫は山内
「山内・・・」
「え?何か?」
「いえ~何でもないですよ」
俺は笑って誤魔化した。
山内千代・・・あの山内一豊の妻か!!
もしかするとこれって馬と黄金の話かな?
俺の前世の世界で中々に有名な逸話だ。
簡単に言えば、山内一豊は嫁の持参金を馬の購入資金に当てたと言う話だ。
その嫁入り時の持参金を出した千代さんは「賢妻」として後世まで語り継がれることとなるんだよね~
この世界では駄馬を名馬として夫の一豊が騙されて買って来た。
妻の千代は経済観念が高い女性でその騙されて損をしたことが許せなかった。
詐欺を働いた者どもを見つけ、騙して奪った金を返す様にと詰め寄ったようだ。
そんなに騙されるか?とも思うが、人間は騙されないぞと思っても騙されるし、時代が進んでもオレオレや投資等々、詐欺と言う物は後を絶たない。
専門家ですら時に欺くような詐欺も考えるのが悪人だ。
美羽が偶々お出かけ中にそのチンピラたちと揉めている山内千代さんを助けたようだが、運が良かったね。
美羽曰く、俺の名前を出したらそのチンピラどもは慌てて金を返したそうだ。
だよね~実は藤林家がある程度闇を仕切っている。
諜報には必要不可欠だよね~
それに、俺の名前はそれなりに有名だし、チンピラ風情など者数ではないのだ!!エッヘン!!
その駄馬に払った金額は黄金十両(現在の金額で250万円位)。
それなりの良い金額ではあるが、それなりの馬であれば特段高いと言う訳ではない。
騙されて売り付けられたってどんな手を使われたのだか興味深いが、それよりもあの有名な馬と黄金の話が微妙に違うのがな・・・
確か信長に褒められて、それが内助の功であることが又美談なんだけどね~
一豊が詐欺られて・・・奥さんが騙された金を取り戻し・・・って、おい!
袖振り合うも何かの縁だ。
「それで、山内の奥方殿は何をお望みで?」
「え~と・・・」
うん、何だか言い辛そう。
美羽が合の手を入れる。
「長様が協力して頂けるそうですよ」
「それは・・・恐れ多い事に御座います」
美羽の説得にて俺が介入する事が決定となった。
美羽と仲良くなった御婦人だし、何よりも、面白そうだから介入する予定だ。
さて、山内千代さん曰く、御馬揃えに一豊さんはエントリーしていると言う。
ここで目立てば出世できるだろうと奥さんの千代さんは予想している。
旦那さんに発破をかける為に虎の子の持参金からお金を出したそうだ。
しかし、旦那の一豊さんは晴れ舞台であっても1度の事で態々名馬を買い求めると言う散財が何だか嫌だったらしい。
愚図る旦那様を説得し
旦那様は売り口上だけで馬を検分せずに購入・・・騙されたことは理解しつつもその馬で御馬揃えに出ると意固地になり言い出したらしい。
千代さんは流石にそれは無いと思い、何とか売った者たちを見つけ返品を求めて揉めている所を美羽が助けた。
俺の知る話と違い過ぎるけど、これはこれで面白いが、やはりここは美談を聞きたいよね~と言う事で!!
★~~~~~~★
御馬揃えが盛大に催された。
それぞれが自慢の馬・武具を纏い、それぞれに列を成す。
織田家に仕える者たちの晴れ舞台となった。
そこはそれ、まさに軍事パレードの様相を呈している。
娯楽の少ない戦国時代の者たちにとってはその煌びやかな者たちの行進だけでも良い娯楽と成り得た。
そして、そんな中、注目を集めた人物が居る。
「千代が何処からか手に入れて来た名馬だ」
「流石は山内殿の奥方、内助の功ですな~」
何処で如何知ったのか知らぬが、目敏い事よ。
以前に態々他の同僚の前で馬鹿にされた。
その同僚には最初に手に入れた馬の話題で大笑いされ馬鹿にされた。
悔しいが、事実であるから仕方ないし、言い訳なぞみっともない。
それにしても、馬一つ取ってもこの晴れ舞台では何でも良いと言う訳では無い様だ。
勿論それは自分自身でも解っていたさ、でも、自分が騙されたと思うとそれを認められない自分がいた。
意固地になり妻の千代には自分が手に入れた馬で出ると言うたが、正直な所、どうしようかと困り果て思案していた所であった。
そんなある日、千代が取り返した代金で新しい馬を購入して連れて来たと言う。
「な、何と見事な・・・」
「ふふふふふ~でしょ!仲良くなった方の旦那様から今回特別にと言う事でお譲り頂いたのよ~」
「なんと!誠か?高かったであろう?」
「取り戻した代金でお譲り頂きましたわ」
千代がどや顔で言うが、この馬は間違いなく高い。
元の代金でも買うのは先ず無理だ。
本当に何方から譲り受けたのやら・・・
噂に名高いペル
しかし、流石に件の馬ではなかろうが、その噂の馬に負けず劣らずの名馬であることは素人でも判ろう程の馬である。
栗毛の毛並みが美しく実に優美で勇壮な馬である。
「千代・・・助かった・・・ありがとう」
「あらあら、あの駄馬で出ても宜しいですわよ?」
「う・・・是非ともこの馬を使わせて欲しい」
「はいはい、勿論ですわ。その為にご用意いたしました」
妻の千代はそう言うとニッコリと微笑んでくれた。
そんな回想途中に出番が来た。
「山内殿!出番です。参りましょう!!」
煌びやかな数々の凝った鎧兜に身を包んだ織田家の
ふと貴賓席を見ると異様に目立つ一団がおった。
噂に聞く風聞から推察するにあれが丸目三位様の一団であるのは間違いなかろう。
しかし、我妻の千代に似た女性がおった。
そう言えば、仲ようなった方々と見物すると言っておったな・・・まさか・・な・・・
そして、後日、千代の仲良くなったのは丸目三位様の奥方の一人で近衛家の養女であらせられる丸目美羽殿だと言う事を知った。
と言う事は、この馬は巷で噂のペル馬か?・・・儂は慌てて右府様(織田信長)にこの馬を献上し、代わりに同じ毛色の馬と多くの褒美を頂く事となった。
何故か美談として本当の経緯と違う話が巷を賑わせた。
それから直ぐに巷では妻の千代の内助の功の話で持ち切りとなり、それを契機に儂は羽柴様のお目に留まり配下に加わる事となった。
そして、後日、丸目三位様にお会いし、面識を得る事となった。
〇~~~~~~〇
御馬揃えと言うのは一種の軍事パレードですが、作中で言った様に娯楽の少ない時代だからかなりの娯楽になったようです。
現代社会でもパレードと言うのは娯楽になるので間違いなく織田家の行った御馬揃えは盛り上がったことだと思います。
さて、山内一豊とその妻・千代の美談として語られる馬と黄金の話と言うのはこの御馬揃えで起こった出来事の中でも屈指の美談として語り継がれています。
司馬遼太郎先生の歴史小説「功名が辻」でも名シーンとなっている逸話です。
山内千代は「良妻賢母」の見本のように語られ、第二次大戦以前までは特に高等女学校の教育において見習うべき女性としてモデルケース化されていたようです。
さて、山内一豊はこの御馬揃え以降に着実にステップアップして行き、最終的に大名となった人物で、勝ち組と呼ばれる人物です。
土佐一国の領主となります。
実に面白いのが、当時はこの地域で鰹を刺身で食べる文化があった様なのですが、時代が時代ですから食中毒や寄生虫等で亡くなる方も結構居た様で、一豊は鰹を刺身で食べることを禁じたという話があります。
勿論これは領民を思いやってのものなのですが、人間は駄目と言われるとやりたい生き物なのです。
ソウルフード的に食べていた物ですから特に食べたい!!
そこで、領民たちは鰹の表面のみを炙り、刺身ではないと言い繕って食すようになったと言われています。
これが鰹のタタキの起源などと呼ばれています。
山内家とは今後も絡むことがあると思います!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます