第113話

早いもので俺の晴れ舞台?の準備が着々と進んでいく。

堺の方からも町衆を代表して俺の仲の良い納屋の宗さん(今井いまい宗久そうきゅう)、天王寺屋の天さん(津田つだ宗及そうぎゅう)それと、魚屋ととやの田中与四郎さんが来た。

まぁ仲良し三人組だな。

田中与四郎さん仲が良いと言う訳ではないが・・・

見ない間に黒々とした衣装に身を包み托鉢の僧侶にも見える。

宗さん・天さんと旧交を温めていると少し離れた位置で苦虫を噛み潰した様な顔をするのだが・・・この人は何か相性が悪いんだよね~表立って何かしたと言う訳でもないけど馬が合わないと言う奴かもしれない。


「宗さん、天さん、それに与四郎さん、多分、人が沢山集まりますし稼ぎ時ですからがっぽりと稼いでください!!」

「長さんに言われるまでも無く仰山稼がしてもらいますよ!!」


天さんがそう言って宗さんもウンウンと頷く。

与四郎さんは・・・そっぽを向かれました・・・

さて、山科様からの養子の件が朝廷で物議を醸した。

結局、凄いこととなった。

春麗が藤林家の養子に先ずなり、それを更に山科様が養子として俺に嫁いでくる。

二段階養子とかあるのか?とか思ったが普通にあることの様である・・・

要は俺に義理のパパが一気に二人出来ると言う訳だ。

お公家さん的には縁を繋ぐことが目的なのでそういう事は偶にするらしい。

権威階級は色々と維持する為にそんな涙ぐましい努力してるんだね~まぁいいか、特に何かが変わる訳では無いだろうし、前世の現代風に言えばこれで晴れて春麗は日本国籍を取得したこととなるのであろう。

しかも、権大納言と言う国でも上の方の者の娘として。

そして、春麗は嫁ぐまでは山科春麗となる。

次に、美羽は近衛関白が義理の親父となる。

近衛美羽となる訳だ。

そこから俺に嫁ぐので近衛殿下が義理のパパとなる・・・

これでお腹いっぱいなのであるが、更に、真里・莉里の姉妹も貴族となる・・・貴族か?

二人は天女の末裔と言う噂があったが本当かと山科様に聞かれたので「本当だ」と答えたら養子縁組が殺到して収拾が付かない程となった模様。

しかし、ここで手を挙げた人物が居た。

天子様が「天女の末裔ならば皇家と親戚の様な物である、朕の娘として四位蔵人の下に降嫁こうかさせよう」と言われたとか・・・

あ~確かに天皇家は神の末裔だし・・・て、おい!良いのか?・・・まぁ天子様がそう言っているのだし逆らうことは・・・長い物にグルグルと本当にグルグルと巻かれておこう・・・

今生の天子様が俺の義理のパパになるようです・・・

京の町はその話題でも大騒ぎで下に上への大騒ぎとなっている。

「日本一の花婿」等と呼ばれるが、他にも「当代切っての助平」や「助平剣豪」等と呼ばれているそうだ・・・お空の将軍様、「剣豪将軍(笑)」とか言っててごめんよ~そんな噂の飛び交う中で話題の人物たちが兵法を披露すると言う。

しかも、野試合で挑戦者募集であるから噂は噂を呼び畿内どころか周辺諸国も噂で持ちきりらしい。

更に予定より大規模な野試合を行い、天子様の御観覧にと更に更にと噂が噂を呼び近くの各国からも見物客が押し寄せる大騒ぎでまだ少し先の事なのに京の町は賑わいを見せている。

挑戦者が多数となることが考えられる為、先ず弟子と戦う。

勝った者が次に俺の弟子のNo.1、No.2の甲乙付け難い二人、美羽と真里が相手して、その勝者が俺と戦う事となった。

イベントとしては大成功しそうな気がするが、挑戦者が多ければ日数が掛かるので場合によっては挑戦者同士で先ず戦い予選会をして勝った者がうちの弟子と戦う事も考えているが、事前に参加の有無を取り人数次第で何方にするかを決めることとした。

一応、10日間の期間を設けているが集まり次第で色々変更できるように工夫をした。

ここら辺は前世の色々な大会を見た俺が久しぶりに知識チートを発揮して決めたが、運営側で参加した宗さんや山科様などの協力者からも絶賛された。

前世で読んだ異世界チートものでは他人の褌で相撲を取る的な事で謙遜するような主人公も居たが、俺は謙遜しないぞ!!

だってさ~知ってたのが俺ってだけで何時か何処かで誰かが発案したんだろ?若しかするとその最初に発案した者も俺と同じ前世の記憶持ちでその知識を活用したかもしれないじゃないか!!

遅かれ早かれだ、やった者勝ち!!

まぁそれはさて置き、続々と兵法大会に参加するのであろう者たちが集まって来るようだ。

若しかすると知り合いなども参加するかも?・・・まぁそれで負けちゃったら格好付かないかもしれないが、それはそれだ。

大会的には成功となることであろう。

そして、忘れていたが、ハットリくんのご紹介の人物が訪ねて来た。

藤林一門を丸抱えしたし必要なかな~とか思ったけどビッグネーム過ぎて即座に採用を言い渡した。


「拙僧・・・いや、寺を追い出されまして今は行者として各地を回っております。果心かしんと申す。幻術を得意としております」

加藤かとう段蔵だんぞうと申す。跳躍と幻術には自信がある。誰にも、負けぬほどには・・・」


忍者界のビッグネームが二人揃ったけど・・・仲悪いのかな?睨み合っているよ・・・

アドバイザーとして側に控えて貰っている藤林夫婦に目を遣ると溜息を吐きつつ旦那さんの保豊さんが二人の仲裁を、弓ちゃんが説明してくれた。


「お二人とも特に幻術を得意とされておりますので、お互いに特性が被る為雇われるのはどちらか片方と思い張り合っておられるのでしょう」

「え?両方雇う予定だけど・・・」

「まだ伝えていませんから張り合っているのでしょう・・・」

「あ~成程・・・」


得意分野が被るしライバル意識からいがみ合っているのか・・・

まぁこんなビッグネームを逃す手は無いよね!!


「お二人とも某は九州を故郷としており将来的には故郷に戻るのですが」

「おお!それは重畳ちょうじょう!!拙僧も九州は筑後の者!!」


果心かしんさんは勝ち誇ったように加藤さんを見やりフンと鼻を鳴らす。


「某も九州でも地の果てでもお供しますぞ!!」

「九州と地の果てを一緒にするな!!」


あ~またにらみ合いを始めた・・・

弓ちゃんが溜息を吐き、柏手一つ


「主様が話されます!!」


と言うが・・・え?注目していがみ合いを止めたけど行き成りの無茶振りは・・・弓ちゃんを見るとニコニコと笑いながら「ささ、ここはビシッと!!」とか言ってくる・・・

戦国時代にこの言い回し有ったの?・・・あ~春麗の影響?・・・ひいては俺の影響?・・・


「え~お二人とも雇わせて頂きます!」

「「おお!!」」

「お二人の忍術を是非とも後進を育てると思い、某と某の仲間たちにお教えくだされ」


深々と頭を下げてお願いしたが、逆に恐縮されてしまった。


★~~~~~~★


雇い主となる丸目四位蔵人様にお会いした。

側に控えておるのは藤林か・・・

一門が全て雇われたと聞いたが、四位蔵人様の配下になっていたか。

三河の服部殿より依頼の打診があり行ってみれば服部殿が雇いたいのではなく別の者が雇いたいと言う。

別の者と言うのが四位蔵人様であった。

四位蔵人様は失礼ではあるが官位はあれど一介の兵法者。

そのような人が忍びの者に何用か?と思うたが、服部殿曰く、忍びに造詣が深く、忍びの者を見下すような者ではなく、寧ろ高評価していると言う。

数名に声を掛けていると聞き急ぎ四位蔵人様が居ると言う京へと足を踏み入れた。

京に着けば以前見た京の都よりも数段の人の賑わい。

その人混みに知った者を見つけた。

チッ・・・嫌な奴が居たものだ。

立ち去ろうとしたが向こうもこちらを見つけたようだ。


「爺・・・久しぶりだな・・・」

「ひょひょひょ~鳶か、何用で京に参った?」

「爺こそ何用で来た?」


お互いに今は関東周辺を仕事場としておりかち合うこともしばしば。

爺も幻術を得意としておるのでお互いに好敵手とも思っておるが、まさか京でも戦うこととなるかもしれるとことは・・・無いよな?


「爺・・・」

「何じゃ鳶、拙僧はまだまだ若いぞ!」

「それはどうでもいい・・・何で着いて来る?」

「重要じゃが・・・まぁよい、拙僧の行道ゆきみちに其方が先に居るだけじゃ」

「左様か・・・」


その後は無言で歩く。

ほんにこの爺とは反りが合わぬ。

現在、丸目四位蔵人様がご滞在のところは山科権大納言様のお屋敷と知り訪ねたが、爺も目的の場所は同じ・・・

まさか!服部半蔵殿が言っていた数人に声を掛けた者の一人が爺・・・

山科邸の門番に事の経緯を話せば、やはり爺も同じ目的であった。

確かに四位蔵人様が理想とする忍者組織を作り上げるには一人二人ではなくそれこそ何百人もの忍びの者が必要だ。

やはり、一介の国人の倅から官位持ちになる偉業を成した者!

考える規模が常人では無いと思うたが、爺にも声が掛かるとは・・・同じく幻術を得意とする者同士譲る事は出来ぬ。

案内されて奥座敷へと入ると真ん中に覇気のある男・・・彼が四位蔵人様か・・・

そして、その方を挟む様にして・・・藤林・・・

然も棟梁の藤林長門守が居る・・・

居住まいを正し座ると「某は丸目蔵人長恵と申す。遠路遥々よく来られた」とお声掛けをされた。

服部半蔵殿の紹介状を差し出すと四位蔵人様はそれをご覧になり驚かれておる。

そして、改めて此方もご挨拶。


「拙僧・・・いや、寺を追い出されまして今は行者として各地を回っております。果心かしんと申す。幻術を得意としております」


儂を前にして「幻術が得意」とほざきよる。

儂は爺を一睨みした後挨拶の向上を述べる。


加藤かとう段蔵だんぞうと申す。跳躍と幻術には自信がある。誰にも、負けぬほどには・・・」


爺が目を剥いてこちらを見る。

「誰にも、負けぬ」の言葉が気にでも触ったか?

にらみ合いを続けておると藤林長門守殿が声を掛けて来た。


「二人とも主様の御前じゃ、いがみ合うことはお止め下さらぬか?」

「相分かった」「そうじゃなすまぬ・・・」


お互いに目線を外し四位蔵人様の方を見る。


「お二人とも某は九州を故郷としており将来的には故郷に戻るのですが」

「おお!それは重畳ちょうじょう!!拙僧も九州は筑後の者!!」


爺は勝ち誇ったように此方を見やりフンと鼻を鳴らしてきた。


「某も九州でも地の果てでもお供しますぞ!!」

「九州と地の果てを一緒にするな!!」


またにらみ合いとなってしまった。

「パチン」と音がする方を見れば藤林のくノ一の棟梁が俺たちに言う。


「主様が話されます!!」


そうであった!ここには雇われに来たのであった!!

四位蔵人様は驚いた顔をされたが、気のせいだろう。

そして、咳払いの後に話し出された。


「え~お二人とも雇わせて頂きます!」

「「おお!!」」


おお!!雇って頂ける!!しかし、爺と一緒か・・・まぁよい。


「お二人の忍術を是非とも後進を育てると思い、某と某の仲間たちにお教えくだされ」


深々と頭を下げてお願いされた。

ふんぞり返り偉そうに「雇ってやる」と言われたことは多々あれどここまで丁寧に忍びの者を扱うとは・・・服部半蔵殿の話は嘘偽りがなかった様じゃ!!


〇~~~~~~〇


やはり仲間に入れたいと、入れてしまった果心居士かしんこじとび加藤かとう

本当は1人だけの予定でしたが、如何しても入れたくなりました。

さて、養子制度についてですが、実際にお公家さんへ一旦養子としてからワンクッション置いての嫁入りはあったようです。

これは伯付けの意味合いですが、他にも家臣の娘を養女として迎え縁組したりなどもあったようです。

中でも天皇の養女って事例あるの?とか思い調べてみれば、少ないながらもあるようです。

最も有名な物だと私も知ってた白河しらかわ天皇(正確には法皇時代)の養女となった人物は藤原璋子しょうこ

この人物は藤原公実きんざねの遺児で鳥羽とば天皇の皇后になった人物です。

白河しらかわ天皇と藤原公実きんざねが従弟の間柄で、引き取り養女にしたようですが、可成りのさんだったようです。

しかし、中々の生い立ちの人物で、7歳の時に父(藤原公実きんざね)を亡くすと、白河法皇とその寵姫であった祇園女御ぎおんのにょうごの養女として引き取られました。

この祇園女御ぎおんのにょうごは諸説ありますがデータが殆どない人物なのですが、懐妊した祇園女御が平忠盛ただもりに下賜されて平清盛きよもりが生まれたとしている説もあり、中々にミステリーでドラマチックな人物です。

さて、話は戻し、璋子しょうこさんは自由奔放な方だったらしく、藤原忠通ただみちとの縁談が持ち上がりますが、璋子さんの素行に悪い噂があり、藤原忠通の父(忠実ただざね)が縁談を断っており、これで白河法皇の不興を買ったとかなんとか。

さて、「素行に悪い噂」とは何か?

璋子さんはその後、白河法王の孫である鳥羽天皇に入内します。

璋子さんと白河法王の関係がだった可能性があり、縁談を断ったのも・・・

鳥羽天皇との間には5男2女の子宝に恵まれたそうで・・・

第一皇子の顕仁あきひと親王(後の崇徳すとく天皇)は父の鳥羽天皇から叔父子爺様の子と呼ばれたとか何とか。

この崇徳天皇も三大怨霊に数えられる有名人ですが今回は割愛。

璋子さんは他にも歌人の西行も魅了された一人と言う噂もあります。

さて、中々の昼ドラ感ある話でしたが、こちらの物語は特にドロドロしませんのでそちら期待された方、申し訳ない。

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