第114話

晴れやかな青空が広がり朝より京の町は賑わいを見せている。

天子様御臨席とのことで大きな神輿櫓が組まれた。

流石に京市内にて野試合とは言え多くの会場を作るのは難しく、京の町を出て直ぐの原っぱを会場として行うこととなった。

挑戦者多数につき先ずは100人位に絞ることとした。

その100人位が美羽・真里以外の弟子たちに挑戦する。

そして、その勝ち残った者たちが美羽・真里に挑み勝てば俺が挑戦を受けると言った感じで、先ずは振るい落としの2日間が行われる。

ここで絞られた100人位から俺まで行き着く人数や誰が行き着くのかなど賭けをすることとなっている。

この儲けは運営する俺と商人連中で儲けの3割を分け、残り7割の内2割が京の町衆の行事の為の資金とする、残り5割を朝廷へと献上することとした。

どの位の儲けが出るかは解らないが、こういうお祭りの雰囲気で賭け事って高揚するので売り上げは期待出来そうだ。

因みに、掛け内容には俺が負けるというのも勿論ある。

俺が負けた場合は3,000貫、俺が支払い賭けた者で山分けとなる。

これは初日のみ販売で、中々の売れ行きらしく、「長さん!もう元は取れましたよ!!」とか言われたけど幾ら集まったか聞くと、6,000貫と言う・・・流石に負けた際はせめて元金だけでも返さないと悪いので、俺が6,000貫出し、売り上げの一部を戻すことで調整することとなった。

どうやら俺の負けに賭けた者が多いので俺の負けを期待している者も多いという事だろう。

「これだけ大掛かりにしてあの助平が負けたら面白いね」程度だと何処から情報を得たのか弓ちゃんが教えてくれたが・・・助平ちゃうわい!!助平言うなし!!

早速、連れて来た忍者集団を使い色々と情報収集して宗さんたちに売り込みのプレゼンをしているようだ。

俺の計画を話したら弓ちゃんが乗り気で今はそんな感じで動いている模様。

営業先への売り込み方法とかも教えたら早速とばかりに活用して商人とかに情報を手渡して試供品の様に情報を扱う弓ちゃん・・・名うてのキャリアウーマンに見えて来た・・・

エントリー人数は凡そ2,000名と少し、100人ちょいに絞るという事は5試合ほど勝てばコマを進めることが出来る。

弟子は莉里・春麗・咲耶の女性陣三人に寿斎・吉兵衛の弟二人に九朗(木野九朗右衛門)の計6名だと流石に20人近く相手にすることとなるので多過ぎるので、忍者集団にも助っ人を頼んだ。

彼らにも最近は剣術を教えているので、弟子?とも言えなくはない・・・苦しいが致し方ない。

弟子6人と忍軍14名の総勢20名が第一関門として立ちはだかる。

注目は藤林長門守!!お金、お銀も何気にこのメンバーに選ばれているとこを見るに剣術も嗜むらしい。

まぁ忍者は何時も命懸けのミッションに挑むわけだし嗜む程度ではなくガチでしているのでその精鋭の一人に選ばれる二人は強いと思うぞ。

俺の負けくじが販売終了となった。

流石に負けなければいいとは言え、負けた時に払うお金を考えて運営金の亡者の宗さんたちも切り上げたようだ。

いよいよ野試合が始まった。

参加者には通し番号の木札が渡されており、負ければ手持ちの木札を負けた相手に渡し、勝者は倒した相手の手持ちの木札を運営に持ち込めば第一関門を通過となる。

天子様御臨席は流石に警備の関係上美羽・真里の試合からとなった。

剣術大好きの今生の天子様は初日から見たかったようであるが、何とか近衛殿下や山科様がお止めしたらしい。

近衛殿下は初日からニコニコ顔でご観覧だが天子様の「狡いぞ!!」という声が聞こえそうだよ。

さて、どんなつわものが現れるかオラワクワクするぞーー!!

初日は3試合が終わった時点で終了で、2日目2試合行いで勝ち抜けた者が第一関門突破。

そして、第二関門は弟子たちとの戦い第1弾で3日間で行われる。

弟子たちは一人約6試合することとなるので1日に2名相手にする。

その弟子たちに勝ち、駒を進めたつわものが美羽と真里がお相手するが、人数が多く残った場合は俺・美羽・真里を含めたトーナメント方式の試合が行われる。

この流れは既に告知済みで、賭けもトーナメントになった時点で募ることを告知している。

11名以上の勝ち残りが出た場合はトーナメントとなるが、それを楽しみにしている者たちもいる様であるがはてさて。

初日、2日目と消化していく過程で謎の凄腕覆面兵法者がエントリーしていた。

名前を伊勢太郎さん・・・まさかあの人じゃないよね?・・・瞬殺で相手を倒しての第一関門突破で他に情報が無い・・・

何だか数名の謎の覆面がいるのですけど・・・

覆面僧兵の武蔵坊むさしぼう弁慶べんけいさんもいます・・・

丁度試合をしている所を見かけたので観ていると、「我が宝蔵院の槍術の妙技を見せてくれよう!!」とか言っている・・・胤栄さん頑張って勝ち残ってください、対戦楽しみにしております。

さて、イベントは盛況のようで、並び立つ出店で食べ物や飲み物を買い観戦しながら楽しそうに食事する。

イベントの少ない戦国時代でこのようなイベントが開けたのは皆にとっても暗き浮世を忘れ一時の楽しみを謳歌してくれているようで開いて良かったと思える。

いよいよ明日からは弟子たちの試合が始まる。

20人の者にはモチベーションを持って挑んでもらう為にも1勝ごとに金一封ならぬ賞金を出すこととしている。

1勝で2貫のお小遣いを出すこととしたのであるが、何だか皆が燃えている・・・

平成とかの時代のお金に換算すると1勝30万円か・・・5勝で150万・・・そりゃ燃えるな・・・言い出したのは俺だけど、変に火を付けたのかもしれないな・・・


★~~~~~~★


京の町ではまるで祭りの様に盛況とか。

三好の家臣たちの中にも腕に自信がある者たちが野試合に挑むと言う。

何でも丸目四位蔵人に勝った者には200貫もの銭が手に入るとのことで色めき立っていると言う。


「お主があのクソ坊主より派遣されて来た者か・・・」

「そうだ・・・」

「腕に自信があると聞くが?」

「ああ、上人様をクソ坊主などと呼ぶな・・・」

「ぶわははははは~言で勝てぬからと恨みを募らせ今度は暗殺の片棒を担ごうと言う生臭なまくさをクソ坊主と言わずに何という?おお!外道とでも言うた方がお似合いか?」

「貴様も同じではないか!!」

「そうよな~儂も外道じゃ!三好家を守る為にも危険な芽を摘むこと、これが肝要ぞ!!外道?ぶわははははは~外道結構!!三好の繁栄の為ならそれこそ名誉な事よ!!」


三好日向守(三好長逸)様はそう言って目の前の者に言い放つが、これから協力して事に当たろうと言う時に犬猿の間柄とは言えこれは拙い事よと思い割って入る。


「日向守様」

「何じゃ?」

「後は我らで話します故、某に後はお任せ頂けませぬか?」

「・・・うむ・・・後は頼む」


そう言うとその場を出て行かれる日向守様・・・我らの主ではあるが・・・そろそろお暇することも考えた方が良いかもしれぬ。


「チッ!何だよ彼奴は!!偉そうに!!」

「いや、実際に偉いと言えば偉いぞ・・・」

「そんなこと解ってるんだよ!!言ってみただけだ・・・」

「そうか・・・」


先方より派遣されてきたこの者は手練れであることはこの目で確認をした。

丸目四位蔵人を討ち取るにはこれしかないと考えての派遣かもしれぬが・・・本当に外道な事よ。

それに加担する儂も外道ではある。

忍びの者だからと諦めてはおったが、噂では四位蔵人様は忍びにも優しい者だと聞く・・・

嘘か誠か解らぬが、確かに以前襲った時には何時でも全滅させられたであろうに見逃してくれた・・・

いや、あれは後ろに居る者への伝達者として生かされたのかもしれぬ・・・

何にしてもこの仕事が終わったら暇を貰おう。

棟梁よりの便りにてこの儂にも息子が生まれたと聞く。

数年前の話ではあるが、産後の肥立ちが悪く妻は死んだが棟梁が面倒を見てくれていると言う。

棟梁に派遣されて何年経つことか・・・


「それでお前さんの名前は?」

「忍びの者の名を聞くか?」

「あ~はいはい、そんなの関係ねえ!仕事を請け負った仲じゃろ?名前も知らぬは流石にどうかと思うのじゃ」

「そうか・・・石川・・・」

「石川?何じゃ?よく聞こえんかったぞ!!」

「石川四郎右衛門しろううえもんじゃ」

「おう!四郎さん宜しくの~」


この仕事が終われば棟梁の百地ももち様に連絡を取ろう・・・外道は外道でももうあのような主には着いて行けぬわ・・・


〇~~~~~~〇


三好日向守(三好長逸)と謎の人物(顕如)が悪だくみです。

さて、・・・流すなという声が聞こえてきますが流して・・・

石川と百地と聞いて四郎右衛門と言えば!!

まぁこの石川五右衛門の親父は勿論の事、架空の人物です。

大泥棒、石川五右衛門は元忍者で百地ももち三太夫さんだゆうの弟子と言われております。

孤児を拾って弟子にしたと言われていますが、忍者はよくあることの様で、何故そうしたかと言うと、命が軽い諜報員ですから需要はそれなりにあり、上忍と呼ばれる忍者の元締めの様な存在が居ます。

元締めは今回は三大上忍の一人、百地ももち三太夫さんだゆうですが、下忍は消耗材の様に使い捨て感覚で使い潰されました。

その中で生き残った者が中忍と呼ばれる存在になります。

忍者派遣の総元締めが上忍だとしたら中忍と言うのは現場監督の様な存在でした。

この中忍に数人の下忍と呼ばれる作業員を付けて依頼先に派遣された訳です。

下忍は多ければ多い程良いので孤児を拾って来て配下に組み込むことはよくやっていたという事です。

さて、石川五右衛門はそんな厳しい忍者の世界に嫌気がさして、、伊賀流忍者の抜け忍となりました。

忍者は極道商売で、抜けるという事は、勿論、許されず追われる身になります。

食うに困って泥棒となったのが石川五右衛門ですが、この人物に関わるキーワードとして、「秀吉」「釜茹」でと言う物があります。

都市部を中心に荒らしまわり、時の為政者である豊臣秀吉の手勢に捕えられ、京都三条河原で一子と共に処刑されたそうです。

その時に処刑方法として採用されたのが「Let's cook!!(さあ料理しよう!!)」・・・違ったです。

何故、行き成り石川五右衛門の親父を出したか?と言えば、何時もの如く「秀吉案件」であると言うのもあるのですが、三好家の家来の石川明石の子であるとも言われます。

このうんちく部分を読まない方も居ると思うので敢えて解り易くアレンジしましたが・・・

幼名は五郎吉ごろきちさんと言うそうで、15歳位で父母を亡くし流れ流れて百地さんの弟子になったようですが、百地さんの妻と密通した上に妾を殺害して逃亡したとの伝承されています。

え?さっき「嫌気がさして」って言ったよね?と思うと思いますが諸説あるのです!!

名古屋城か大阪城の金のしゃちほこを盗もうとしたなども言われますが、これは創作です。

後、この泥棒さんの有名ワードとして千鳥ちどり香炉こうろうと言う物があります。

しょっ引かれた捕まった原因ですが、ゴロキチさんは秀吉の甥の豊臣秀次の家臣、木村さんから秀吉暗殺を依頼されたそうです。

秀吉の寝室に忍び込んだ際、この千鳥の香炉が鳴いて知らせたため捕えられたと言う逸話があります。

その後、捕えられた配下の一人に悪事や部下などをすべて暴かれてしまう。

そして、「Let's cook!!(さあ料理しよう!!)」・・・違ったです。

さて、まだまだ先の先ですが、この物語ではゴロキチさん登場するかどうか?こうご期待?

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