第274話

朝の目覚めは快適であった。

昨晩は神たちと酒盛りをして浴びる様にテキーラ飲みまくった。

いや~久しぶりに飲む高濃度の酒精アルコールは効くね~何か最近飲んでいるお酒とパンチ力が違う気がする。

何とも懐かしいと感じてしまう程に刺激が強いお酒だ。

でも、夢の中の話なので、次の日に二日酔いなどにはならないし、逆に目覚めが良い位のもので、それが何だか不思議だ。

そう思ったことを話せば、千代が言う。


「神との酒盛り?夢の中で?・・・直会なおらいを夢の中で?」

「そうなるな」

「成程の~・・・どおりで神力が上がっておるはずじゃな・・・」

「神力?」


霊力・仙力とも言うらしい。

簡単に言うとその力が強い程に色々と能力が上がり、事を成すことが出来るそうだ。

神力と聞けばMP《マジックポイント》的なイメージだったんだけどね~

減るのは減るが、それは修行を怠けたり、気力・体力が衰えるのと並行して推移したりと色々あるらしい。

どうやって増やすかと言うと、仙術の修行や剣の修行、等々だけではなく日々の生活でも心掛け1つで増減すると言う。

ただし、この神力は多ければ効率よく物事を回せるという。

例えば、何かの修行をした場合、この神力が高い程効率が良く、運気も上がるそうだ。

それを聞きバフみたいなものと理解した。

千代曰、俺の神力は人としては可成り高いらしいので好循環が起こるとか何とか。

まぁ要は何となく上手く物事が回ると言う事であろう。

話は変わり、欧州に来て3年程過ぎた頃、日ノ本より船がやって来た。

この出来事も神力が増えたことによる幸運なのであろうか?

俺がこちらに来る時に使った船で、依頼していた品々が届いたそうだが、一緒に

その船の船長としてやって来た人物が居た。

九鬼左馬佐さまのすけ澄隆きよたかと言う人物で、苗字の「九鬼」から考えると、海賊大名と言われた九鬼嘉隆の関係者かな?と思ったんだけど、どうやら海賊大名とは甥の関係であるらしい。

聞けば彼の叔父・九鬼嘉隆との関係が最近特に悪くなり、命の危険すら感じ始めていたので長門守の誘いに乗り貿易船の船団を率いる船長を引き受けてくれたらしい。

レア武将・九鬼嘉隆本人では無い事も何だか運命的なものを感じてしまう。

これも運が呼び込んだと言えることの様にも感じてしまうから不思議だ。

今回はその手始めとして、行きで俺が使った船を使い航海して来たらしい。

彼は全てが初めての経験でとても良い経験をしたと興奮しながら喜んで語っていた。


「今後もやれそうですか?」

「はい、是非とも今後ともよしなにお願い申し上げまする。丸目様は拙者の主になるのですから敬語は不要にて」

「わかりま・・・解った」

「それと、九鬼家は捨て申した。九鬼左馬佐澄隆は死んだ者とし、新しく生まれ変わったとして新しい苗字や名を名乗りたいと存じます」

「え?いいの?」

「はい、勿論!つきましては新しい苗字や名を主より頂きたく存じます」


う~名付け・・・九鬼左馬佐澄隆から文字るしかないな。

聞けば九鬼を越える様な家を興したいという。

九鬼家って結構勝ち組の家で、明治にも残って華族になる家だよね?

う~ん・・・越えようと言う志が良いね。

九鬼に勝つ様にと考えて名付けると一足して「十」かな?

彼の叔父・九鬼嘉隆の官職は確か「右馬允うまのじょう」だったね。

寮の役職の一つだったな。

名前は諱が欲しいと言われたので「長」の字をあてて・・・


十鬼とき主馬しゅめ澄長すみながなんてどう?」

「良き名を有難う御座いまする!!」


すげ~喜ばれた・・・

彼には此方に一時滞在して貰い言語や文化を学んでもらうこととした。

数年程過ごせば恐らくはそれなりになるだろうと思い提案すると、「是非」と言われたのでスペインに数年程住んで貰い、その後に船団を任せる事とした。

何か俺の人材運って良い様で、彼は瞬く間にスペイン語を習得した。

その習得方法がまた面白い。

彼は積極的に街に繰り出した。

積極性について彼に聞くと、日ノ本に居る時は叔父に配慮して出歩くこともままならなかったそうだ。

元々海の男と言った感じの性格のようだ。

叔父が海賊大名とまで言われる程の人物だし、家系的に海人なんだろうね~

海の男に対しての俺の勝手なイメージだけど、陽気で活発、日に焼けていてたくましく、イケメンって感じがするんだけど、彼は陽気で活発でイケメンなのは当て嵌まる。

しかし、軟禁状態に近い生活だったようで、肌の色はまだまだ白く、たくましいというより細い感じがする。

今の風貌は薄幸なイケメン?

しかし、しかし、彼の行動力には舌を巻いた。

1ヶ月ほどすると、スペイン人の女性と付き合いだした。

名を「アナ」と言う。

何処で見つけて来たのかは詳しく聞くことはしなかったが、結婚を前提に付き合うと聞いた。

金髪・碧眼で、身形を整えさせるとスゲー美人だった。

最初に紹介された時は驚いた。

だってさ~滞在1ヶ月位で「紹介したい女性がいます」とか主馬が言うんだよ?

なんだろうか?と思い、取り合えず会うこととした。


「蔵人様、彼女はアナと言います。夫婦になる事を誓っておりますのでどうかお許しください」

「え?・・・此方に来て1ヶ月位だよね?」

「はい、運命の女性と巡り合いました」


何か凄い主馬の目が輝いております。

家の奥様たちも里子も御付きの女性たちもキラキラお目目で見詰めて来ます。

何か既に「駄目!!」とか「待った!!」とか言える雰囲気ではないので、勿論、認めたよ。

主馬のスペイン語の習得は早かった・・・愛の力だね~

そして、彼女・アナも中々逞しい女性のようで、日本語も片言で話し始め、侍女的な役割もこなし始めた。

元々此方に連れて来た者たちには此方に滞在して貰う予定の者が多く、色々と教育を施していた。

アナもそれに交じって色々と学んだ行った。

将来的には主馬と共に船に乗り一緒に航海をすると言うから中々に活発的と言える女性だが、此方に都合も良いのでどんどん教育を施した。

剣術とかも教えたけど、案外筋が良い様で、主馬より剣術の腕は上達したよ。

そうそう、アナは元々は孤児院育ちらしく身寄りが無かった。

そう言った子供たちはこの時代は意外と多く、教会に併設された孤児院にはそう言った子供たちが居り、ある程度の年齢12歳前後位まではそこで面倒を見て貰っているという。

孤児院と聞いて、そう言えば戦国時代の日本にはそんな物は殆ど無いな~と言う事に気が付いた。

そういう意味では、藤林家を中心とした忍者育成はこの孤児院のような役目をしていることに気が付いた。

うん、日本に戻ったら少し底上げを考えよう。

アナの紹介で孤児院の子供たちを屋敷管理などの人材として招き入れた。

教会は聖認定されている俺の下で働くと言う事で、速攻で許可してくれたよ。

他にも、アナが人格的に問題無いと思う者たちに声を掛け、屋敷で働く事となった者は多い。

今までこういった伝手は無かったので非常に助かった。

ALL奴隷も視野に入れていたからね~

奴隷を助ける意味でも良いかもね、位の感覚だったけど、アナ曰く、「奴隷は屈折している者も多いので・・・」と言う事らしい。

勿論、孤児にも性格の捻じ曲がった者も多いのでそこはアナの推薦から働いて貰い様子見となるけど、今の所は問題無い様で、東洋人だからと見下すことも無い様だ。

そう、ヨーロッパに来て思うのはやはり差別は大きいね。

東洋人と言うだけで見下す阿保もいる。

勿論、そういう阿保は痛い目を見るけど、意外と多い。

国の中心人物たちが今の所その傾向が少ないので良いものの、そういった思想が蔓延ればとんでもない事となるので注意しないとね。

意外にも主馬に始まりアナの件などから多くの気付きがあったので、日本に戻ってもやることが多そうだ。


〇~~~~~~〇


権力基盤としての第二弾、人材となります。

現在でも人材は豊富ですが、それ以上を目指して行く形で権力基盤を強固な物にしていく予定です。

さて、この時代のヨーロッパは孤児などは掃いて捨てる程いました。

その中でフェリペ2世は敬虔なクリスチャンですから、こういう社会福祉的な事には力を入れていた様で、弱者救済として病人、孤児たち等を救済する為の施策を幾つもしております。

舞台等、観劇などの興行の際は上演収入から手数料を徴収して孤児院へ寄付したりなども行われていたようです。

しかし、それでも孤児院の運営は中々厳しい状況だったようですが・・・

それでも、この時代の日本より可成りましなのは言うまでも無い事です。

日本は戦国時代から安土桃山時代となって来ておりますが、まだまだ弱者救済とかする余裕はありませんでした。

意外と言うか何と言うか、一応は孤児院ありますた。

実はキリスト教の孤児院がこの時代日本にあったそうで、イエズス会の日本支部の協会に併設される形で病院と共に孤児院があったようです。

同じ様に寺院も孤児を僧侶として受け入れていましたので、戦国時代の孤児の受け入れ先は宗教施設だったようです。

日本での孤児院と言うか孤児を保護する施設としては19世紀半ばに「孤児受け入れます」的な看板を自宅の門に掲げ、乳母を雇って30人以上を育てたという事例があるようですが、こういった部分では日本と言う国は凄く後進国家だったようです。

孤児について有名なのは石井十次と言う偉人でしょうか?

「児童福祉の父」と呼ばれる人物で、岡山孤児院を創設し日本で初めての私設の孤児院を作った人物として知られています。

キリスト教を信仰し、生涯を児童福祉に捧げた人物として有名です。

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