第329話
天子様に結婚のご報告を済ませから此方に戻って来て準備を終えて現在は酒宴が始まった。
式の当初は厳かに・・・いや、待たせるのは申し訳ないと思い既に振舞い酒をしており、結構酔っぱらって居る者も多い。
「長さん、裏で色々と動いて下さった様で誠に感謝いたします」
「秀さん(豊臣秀長)・・・俺が何したか知っているの?」
「ええ、どんな情報でも対価を払えばお売り頂けるので」
ニッコリと笑いながらそう言う秀さんはどうやら俺の動向の情報を藤林から買ったようだ。
長門守やお弓ちゃんたちには俺の情報も売ってよいと言ってあるが、かなり高額設定にされているはずなんだけど、どうやらその情報を買ったいたようだ。
それ以外にも九州征伐の際には秀さんの所に世話になって動いたし、それの含めての事と思っていたがどうやらそれだけでは無いようだ。
「兄が、ご迷惑をお掛けしております」
「ん?お猿さんが何か俺に迷惑かけた?」
「いえ・・・」
秀さんが言い淀む。
何だろうか?
お猿さんに俺が何か迷惑被ったかな?
考えてもあまり思い当たる節が無い。
「長さんは奴隷になった者を買い戻されるとか・・・」
秀さんは覚悟を決めたような顔で俺にそう言って来た。
ああ、キリスト教の宣教師たちの国外追放を止める際に確かに買戻しの事を話したな。
その事が迷惑?・・・よく解らん。
「買い戻す序に人材確保しておりますよ」
「うははははは~長さんらしいことで」
「まぁそう言う訳で気にしないで良いですよ」
「左様でしたか。それを聞けただけでも今回ここに来た甲斐がありました」
その後は長さんとも話した、色々な者たちと話した。
実に楽しい婚儀となった。
★~~~~~~★
姪の恵の婚儀の差配を任された私は京にて祝言に参加している。
兄者(豊臣秀吉)は以前は長さん(丸目蔵人)と親戚に成れることを喜んでいたというに恵の嫁ぐのが近くなる程に婚姻破棄を言い始めた。
姉上(寧々)がそれを大反対したので今無事に祝言を迎えることが出来ている。
急に兄者の考えが変わったのは実の娘が手元より居なくなるのを悲しんだ親心なのか、それとも・・・
何にしても最近の兄者はおかしい。
まさかとは思うが、恩義もある長さんに敵対する考えが・・・考えるのは止めよう。
もし、そのような考えであれば命を落としてでも兄者の考え方を変える為諫めるしか無かろう。
恵の婿殿の羽は幼き頃より知っているが、母親の血を受け継いでいるのか男から見ても容姿に優れる。
さらに、剣の腕も相当なもので、手解きをしているという柳生石舟斎が「将来楽しみだ」という程だと聞き及ぶ。
また、朝廷の覚えも目出度く、武将としても在野とは思えぬ程の活躍を見せており、仕官の誘いは引く手数多と聞く。
実に良縁で喜ばしい事だ。
そんな事を考えていると、婚儀が少し遅れていると言う事で、新郎新婦が来ぬ内から振る舞い酒が振舞われ始めた。
どうやら長さんの指示のようだ。
そして、長さんが私の方にやって来て酒を酌み交わす事となった。
丁度良いのでお礼を述べる事とした。
「長さん、裏で色々と動いて下さった様で誠に感謝いたします」
「秀さん(豊臣秀長)・・・俺が何したか知っているの?」
「ええ、どんな情報でも対価を払えばお売り頂けるので」
長さんは少し訝しがるような顔でそう言われた。
長さんの情報は思いの外高く驚いたが、情報を教えてくれたお金曰く、長さんの情報を売るのは長さんも認めているという。
実に驚いたことであるが、長さんは「儂の情報なぞ漏れても問題無い。恥ずかしき行動などしていないからな」と言って笑ったそうじゃ。
しかし、主の情報と言う事で配下の藤林家としてはおいそれと売りたくないと理由から高値を付けているという。
中々の金子を出したが、長さんが豊臣家にとって有用な動きを数々裏で行ったことを知れて良かったと思うし、私個人の意見としては出す価値のある情報であった。
「兄が、ご迷惑をお掛けしております」
「ん?お猿さんが何か俺に迷惑かけた?」
「いえ・・・」
兄者が長さんに迷惑を掛けたことを詫びるつもりが「迷惑かけた?」とそ知らぬふりで言われる。
実に長さんらしい奥ゆかしさじゃ。
惚けられたのでこれ以上言い募るのも失礼に値すると考えこの件は引くこととした。
しかし、これだけは詫びようと奴隷の件を持ち出す。
「長さんは奴隷になった者を買い戻されるとか・・・」
「買い戻す序に人材確保しておりますよ」
その言に呆気にとられる。
「人材確保」などと嘯かれる。
その言があまりにもあまり事とでつい笑い声をあげてしまう。
周りでも酒を飲む者たちで話しながら笑い合っており、私の笑い声はその中に紛れ、場違いにならない程に笑ってしまった。
「うははははは~長さんらしいことで」
「まぁそう言う訳で気にしないで良いですよ」
長さんが「気にしない」と言われるのは本心からと思いこれ以上の事を言い募るを止め、素直な心で長さんに笑顔で答えた。
「左様でしたか。それを聞けただけでも今回ここに来た甲斐がありました」
長さんも私の言葉を聞きニコリと笑われて酒を勧められた。
私はそれを受け飲み干し、返杯した。
今日は心から美味しいと思える酒が飲めそうだ。
〇~~~~~~〇
婚儀がまだまだ続きます。
さて、安土・桃山時代頃の婚礼と言うと花嫁が輿に乗って花婿の家に向かい、犬張り子の箱を一緒に持っていくのが習わしとされていました。
犬張り子の箱とは嫁入り道具としても作られた犬の形の小箱で、お
犬は多産子宝の象徴で、古くから子供の健やかな成長を願うお守りという縁起物でした。
女性は初潮を迎える12歳前後が結婚適齢期とされていた時代ですので物語の結婚時期としてはある程度妥当な年齢となります。
大名などは現在の中学生から高校位までの年齢で結婚していたようです。
YesロリータNoタッチの精神なぞありません!!
物語の時期はまだ定まっていませんが、1595年に豊臣秀吉の発布した「太閤様御法度御置目」という法令の中に大名間の結婚は秀吉の許可を得て行うべきことが条文として書かれているそうです。
さて、戦国時代からこの安土・桃山時代の大名の結婚というのは一種の軍事セレモニー的な部分もあった様で、結婚相手の大名家や周辺諸国に対して権威と武力を見せる絶好の機会の一つだったようです。
その為、嫁入り行列はある種の軍事パレートでした。
北条家から今川家に嫁入りした早川殿の嫁入り行列などは有名で、沿道は見物人で前代未聞という程の賑わいを見せたと云われています。
行列を飾りたてて見栄えも良かった様で語り草になる程だったようです。
他にも時代は少し先の江戸時代となりますが、前田家へ将軍家(徳川)の姫が嫁いだ嫁入りが有名です。
2代目加賀藩主・前田利常と珠姫(第2代将軍・徳川秀忠の娘)を最初として徳川家から前田家に4人の花嫁が嫁いでいるのですが、4人目の13代目加賀藩主・前田斉泰と溶姫(第11代将軍・徳川家斉の娘)の嫁入りの際は「赤門」が作られました。
「赤門」は姫君の為に建てた
しかし、この「赤門」は将軍家の姫が嫁ぐ時のみ設置出来る特別な門なのですが、殆どが焼失してしまい、唯一、溶姫の為に設置物のみが現存しています。
特別な門の為、再建不可とされたからそのような仕儀となったようです。
さて、「赤門」と言えば東大の赤門だと思いますが、実はその赤門がその時の物で、国の重要文化財となっています。
そして、東大の赤門は旧加賀藩主前田家上屋敷の物となります。
作者は歴史好きなので東京に行った際、この赤門と半蔵門という歴史的な二門を見に行ってしまいました!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます