第328話

肥後国人一揆は終幕した。

4万近くの一揆勢に対して7万程の討伐軍が動員されて収束した。

弟子の弥七(立花宗茂)が弟・高橋直次と共に活躍したらしい。

兄弟揃ってお猿さん(豊臣秀吉)の直臣になっているという。

四国の大名たちにも動員が掛かり収めた今回の件で国人たちは生き残った者も罪を問われ処刑されることとなった。

相良家は首の皮一枚助かったが、内蔵助殿(佐々成政)は京に登りお猿さんに謝罪しようとしたが会っても貰えなかったそうだ。

賤ヶ岳の戦いでも権六殿(柴田勝家)方に与していたりで、お猿さんからは良く思われていなかったことから今回は仕組まれたことの様に感じるが、藤林の諜報の方でもそのように結論を出している。

助命嘆願を出した者も何人かいる様だし、俺の方も助命嘆願を出したが聞き届けられなかった。

内蔵助殿だけではなく黒官(黒田官兵衛)も検地を行い反乱者を出しているのであるが、そちらはお咎め無しな所を見るだけでも陰謀めいているのに隠す気あるの?と言いたくなる様な後味の悪い結末だった。

お猿さんの許に向う前に大平宮に参拝に来られた。

そして、その序に俺にも挨拶しに来られた。

その際に、覚悟されたいた様で「お別れに参った」と言われていたのが何だか昨日のことのように感じる。

内蔵助殿の切腹の知らせは腹を召されてから3日後に俺の許に知らされた。

お猿さんたちの公式見解では「一揆を発生させた」ことが罪ではなく「一揆を自力で収められなかったこと」としているが、切腹までさせるのが気に入らない。

身内に甘くそれ以外には厳しいとか暗君か?とも思うが、権力者だけではなく俺も同じようなものだと思い直して内蔵助殿のご冥福を祈っておいた。

織田殿、権六殿たちと共に世の行く末を高みの見物していて欲しいものだ。


「本日はお日柄も良く誠に目出度き事にて、両家の末永き結び付きを願い、お祝い申し上げまする」

「はい、親戚としてこれからも今まで以上に仲良く致しましょう」


寿ぐ挨拶をして来たのはお猿さんの名代としてやって来た秀さん(豊臣秀長)だ。

丸目家家長として挨拶を受けた。

大坂から嫁いで来た恵ちゃん(豊臣秀吉の長女)の婚礼行列は異例の10万人の大行列で、民衆の間ではまた大戦が行われるのか?という物々しい雰囲気に一時的になった。

まぁ直ぐに婚礼行列だと知れて「流石は関白様の娘御の嫁入りだ」という評判になった。

うん、藤林の諜報部の噂ばら撒き工作で良い方に捉えて貰えるようにしたのは息子の晴れ舞台だと思った親心だ。

京で婚儀を行い、天子様にご挨拶して、その後、息子の羽(丸目帯刀先生)と嫁さんの恵ちゃんは大坂に行き、お猿さんにも挨拶してから九州に行く予定だ。

そして、九州で息子たち合同結婚式を行う。

何でも利(丸目大蔵輔)と春(丸目春長)の二人も祝言は簡易的に済ませているだけと言ったのでそのように手配している。

金に糸目を付けずにやれと言っておいたので、可成り盛大な式になる事であろう。

さて、息子たちが結婚したが、娘たちがまだだ・・・

嫁がせるの嫌なんだけど・・・いや、行き遅れとか可哀想なので二人に聞いたら、「自分で探す」と言われてしまった・・・それはそれで・・・嫁さんたちに慰めて貰ったよ。

丸目家は自由恋愛を奨励している訳ではないが、そうなることが多いようだ。

俺の影響かも知れないが、まぁ悪い事ではない・・・悪い事ではないよね?

それにしても、羽と恵ちゃんの京での祝言は参加者が豪華だ。

身内は、勿論、豪華だよ。

恵ちゃんの叔父にあたる秀さんに、羽の義理の祖父となる竜様(近衛前久)が親族として参加している。

それから、羽の友人的な者として石田三成にお供の左近殿(嶋左近)に上杉家からも与六(直江兼続)に慶さん(前田慶次)も来ているな。

慶さんは家族ぐるみの様な付き合いが続いているので「羽が結婚する」と聞くや、「良い酒が飲める!!」と言い駆け付けて来た。

他にも孫四郎(前田利長)に黒官の息子(黒田長政)に幽斎殿(細川藤孝)の息子の細川忠興、他にも沢山の者が来ている・・・!

源次郎(真田信繁)も来ている。

羽の交友関係も中々に広いらしい。

そうそう、前世の昭和~令和の時代の結婚式と違いこの時代の結婚式は嫁さんの友人を呼ぶことはない。

祝言は基本的に野郎どもの集まりの様なもので、女性は身内の者位だ。

今回は羽の祝言と言う事で、美羽と共に京に来ている。

他の者たちは切原野でお留守番となる。

まぁ戻ったら今度は合同の結婚式なのでそちらの手配も大変なので任せて来たというのが実状だ。


「蔵人師匠!本日は誠におめでとうございまする!!」

「おお!源次郎(真田信繁)、今日は態々ありがとうな、良い酒と美味い料理を出すから楽しんで行ってくれ」


俺を見つけ早速とばかりに寄って来て声を掛けて来る。

尻尾があればブンブンと機嫌よく振られているだろう程に何時も人懐っこい彼は家の子供たちとも仲良くしているようだ。

特に羽とは仲が良いらしく、剣術をよく教えて貰っているそうだ。

源次郎を皮切りに次々に俺の許にも挨拶をしに来る者が続いた。


「お初にお目に掛りまする某は羽柴三河守秀康と申します」

「お初にお目に掛る。三河少将殿と息子が親しくしておられるとは存じ上げませんでした」

「帯刀殿とは殿下(豊臣秀吉)の養子になった頃より仲良くさせて頂いております」

「左様でしたか。おっと、左近衛権少将へのご任官おめでとうございます」

「ありがとうございます」


彼はお猿さんの養子となったが本当の親は家さん(徳川家康)だ。

複雑な事情がある子ではあるが、見た感じは闇などは抱えていないようである。

そして、最近、左近衛権少将へと任官されて三河守と兼任となった事から三河少将と呼ばれるようになって来た。

よわい14とは思えない確りとした受け答えである。

それにしても、子供たちの交友関係が幅広いなと感じた。

他にも堀秀治ひではるという久さん(堀秀政)の息子も来ているが、彼は三河少将殿より若く見える。

久さんも勿論来ているのであるが、考えてみれば羽も若者なのでその位の年齢の者と交流があってもおかしくないのであろう。

因みに、この場に居るのは元服済みの者だけなので、子供に見えても大人扱いだ。

挨拶も落ち着き婚儀の準備が出来た様で、上座に羽と恵ちゃんが現れた。


〇~~~~~~〇


息子(羽長)の婚儀!!

さて、この時代は本当に面白い時代で、長男でそれなりの地位の者は早めの結婚が執り行われたようで、10歳の元服前に結婚することもあったようです。

そして、場合によっては40歳位で初婚の者も居たような時代だったようですが、基本的には20歳位で結婚することが多かったようです。

さて、堀秀治ひではるが出て来ましたが、この堀家は数代続けて短命で、彼も31歳で亡くなります。

因みに、彼の息子も20歳代で亡くなりますし、父の堀秀政も36歳でこの世を去ります。

堀秀政は小田原征伐時に陣中で急死しているので大変だったようです。

大将の一人として参陣していたので秀治は家督を継ぐこととなっただけではなく、少なくとも堀軍の指揮を執ることになったのですから大変だった事でしょう。

因みに堀秀政の父・堀秀重は70台まで生きておりますので秀政・秀治・忠俊の3代が短命だっただけのようです。

さて、もう一人の新キャラの羽柴三河守秀康(結城秀康)ですが、徳川家康の次男として生まれたのですが、生れた当初は家康に認知して貰えなかったようで、親父の家康に目通りが叶ったのは3歳の時と云われます。

それも、長男の信康が秀康の事を憐れんでとりなしたそうです。

では何故に認知されなかったのか?

諸説ありますが、有力なのは二説で、秀康は双子でした。

この時代の価値観としては双子は不吉とされ一子は養子に出されたり間引きとして殺されました。

勿論、もう片方の子供も冷遇する親も居たようです。

そして、もう一つが当時の家康の正妻の築山御前の影響です。

築山御前は家康と長勝院(結城秀康の母)の間に子が出来たことを認めず、徳川家の子として承認しませんでした。

その事に対し家康も同じスタンスであったようです。

丁度、時期的に武田との抗争が忙しく構っている暇がなく放置してしまったとも云われますが、忙しい最中でもそれ位は・・・

築山御前が誅殺されると家康に認知されたことから、築山御前説中々に有力です。

しかし、今まで冷遇していたので跡取りとはしなかったようで、小牧・長久手の戦いの後、和睦条件の一つとして秀吉に人質として差し出しています。

この際に家康は童子切の名刀を秀康に選別に渡しています。

天下五剣の一振りですから中々の大盤振る舞いですが、それほど申し訳ないと思っていたのですかね?

人質兼秀吉の養子として出された以降は中々に将才があった様で14歳の時九州征伐を初陣として参加し功績を挙げています。

しかし、秀吉の第一子、鶴松が生れたことで養子に出され結城家に引き取られて結城秀康となります。

これは奥州仕置中の出来事だったそうです。

ここまでの内容でも中々の波乱万丈な生い立ちですね~その後まだまだ色々ありますがまた別の機会にでも!!

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