第307話

明日もリアルが忙しくなりそうなので、今日は時間があったので2話目献上!!

先行UPとなりますが時間潰しの糧としてお楽しみ下されば幸いです。

明日も時間が許せば1話UPしますが、無ければご容赦を!!


◇~~~~~~◇


噂に聞く大名・武将たち居並ぶ中、剃髪して、名を龍伯と改めた儂は黒衣を着て上座に向かい合う形で座して時を待つ。

(※薩摩弁は入れずにお送りします!!)


「関白殿下のおな~り~!!」


その声の合図とともに私の両側面に居並ぶ大名・武将たちが深々と頭を上座に向けて一斉に下げた。

儂も慌てて同じく頭を下げて上座に皆が頭を下げる存在の登場を待つ。

上座に気配が現れたと思うと圧倒的な覇気がその方向から此方を伺う様な色濃い気配がして、まるで巨大な何かに睨まれている様な気さえする。


「皆の者、おもてを上げよ」


一声で居並ぶ大名・武将たちが顔を上げた気配がするが、儂はそのまま頭を下げたままでいると、儂に声を掛けて来られた。


「島津修理大夫(島津義久)、面を上げよ」

「はっ!!」


頭を上げると正面上座にいる関白殿下がジッと此方を見詰めるのが視界に入って来た。

この男が天下人か・・・

噂に聞いた猿面で小柄な男がそこに居る。

天下人などと言われてもピンと来なかったが、見れば成程理解した。

この男に逆らえば・・・


「ほう!頭を丸め黒衣で参ったがー」

「はっ!今回の責めは拙僧の一命に」

「わははははは~その意気や、良し!!」


儂の覚悟の言葉を遮り、笑われながらそう言われた。


「そうきゃ!そうきゃ!!僧籍に入られたか!!名を何と改められた?」

龍伯りゅうはくと号しまして御座います」


儂がそう答えると人好きする笑顔を関白殿下は儂に向け、言われた。


「龍伯殿、よくぞ参られた。さあさあ、もそっと近くへ参られよ」

「いえ、しかし」


儂は少し狼狽えて言い淀むと「遠慮はいらぬぞ」と関白殿下は言われた。

本当に上機嫌といった感じなので、恐る恐ると更に近寄ると、関白殿下は居住まいを正し、言われた。


「腰の当たりが少々お寂しいご様子」

「はい、僧となりますれば」

「そうか、そうか!!」


そう言われたかと思うとご自分の脇差を取り、自らの手で刀を儂にお渡しになった。

その振る舞いはまさに天下人。

感服するより他に無かった。

儂は関白殿下に服従することを約束し、弟の又四郎(島津義弘)に家督を譲ることを殿下に告げた。


「龍伯様!如何でございましたか?」

「ああ、関白殿下は懐深き御仁であった」


家臣に聞かれ儂はそう答えておった。

しかし、儂はまだやることがある。

降伏に納得しない者たちが味方にはまだまだ居り、説得して回らねばならぬ。

特に弟の又六郎(島津歳久)は徹底抗戦を叫び、説得に苦慮し・・・


★~~~~~~★


「如何であった?」

「実に見事な振る舞いでした」

「わははははは~そうであろう!そうであろう!!」

「兄上、この後は如何されます?」

「九州も平定したし、先ずは九州の仕置きをせねばならぬな」


兄はそう言って悪い顔をされた。

九州入りする前に色々と兄上は調べさせており、必ず落とし前を付けると息巻く事柄があった。

しかし、兄上は当初予定では島津家の所領を殆ど奪う算段であったにもかかわらず、独断で島津旧領のほぼ全部をそのまま与えてしまわれた。

それならそれで何か手当てしておく必要があるだろう。

その事について兄上を問い詰めると、


「仮病でも使い会見の場に現れなんだら逆に滅ぼしてやったがー。一命を落としてでも儂の前に来たことの褒美だがねー。それに、儂の懐の深さを見せれば臣従した際に恩義を感じてよく働いてくれるだぎゃ」

「確かに、そうなればよいのですが・・・」

「良いではないか、もし使えなければ」

「・・・そうですね。何が起こっても良い様にしておきます」

「流石我が弟!!頼りにしてるがー」


兄はそう言われ兄は上機嫌で寝所に向われた。

今日も女どもを侍らせてお騒ぎになるのであろう。

姉上(寧々)には言えぬなと思いつつ、私は見なかった振りをして残りの政務を終わらせるべく己の執務室へとなっておる部屋へと足を運ぶ。


★~~~~~~★


「兄上!!何故、刀を渡されたのにその刀を使われなかったのです!!猿を殺せば」

「何を言う!関白殿下は懐の深きお方であった」

「それは見せかけの姿。騙されてはなりませぬ!!」


勿論、最終的に降伏する事になっているのは理解している。

三好の様に畿内を治めておけば満足する天下人ではない。

全てを飲み込む貪欲な天下人だ。

だからこそ、降伏するにも時期がある。

今はその時期では無いというだけだ。


「和睦には時勢があり、今、このまま降伏すべきではないと何故解らぬのですか!!」

「又四郎も降伏を受け入れたのじゃぞ!!」

「あ、あれは丸目殿の顔を立てただけに御座います!!」

「又四郎兄上も本来は私と同じ考えのはず。それを酌んでくれると信じておりましたのに・・・」


儂が到着する前に既に停戦するようにと指示を受けていた豊臣軍に奇襲を掛けており、多くの被害を出した後であった。

何という事をしてくれたのだと思った。

急ぎ豊臣勢に「手違いがあった」と言う事で深く詫びる必要があるのであるが、実行した弟が儂の命に従う気は無い様で途方に暮れた。


「既に降伏したので沙汰に従え!!」

「兄上のお言葉でも従えませぬ!!」

「もう良いわ!!」


弟との話し合いは喧嘩別れのような形で終わった。

儂は仕方なく、討伐軍を出す事となった。

大事な弟ではあるが島津家の存亡がかかっている。

苦渋の決断ではあったが、そうするよりなかった。

そして、討伐軍の者より弟の首と遺書が手元に届けられた。

弟・又六郎(島津歳久)は最後は自害したという。

儂はあまりの事に覚悟はしていたが大泣きをした。

人目ある中であるにも拘らず大号泣してしまった。

しかし、周りの者たちも同じく涙を流し、弟の死を悲しんでおった。

泣きに泣き、手元にある遺書と辞世の句を見れば、


「拙者は病に侵され、太閤の前に出ることが出来なかったのであって、何らやましいことは無し。しかしながら、謀反を疑われた以上、島津家安泰の為に切腹致す。家臣どもは承服しないだろう。武士の本分を貫くべ已む無く交戦するが、これは兄上に対して弓を引こうなどとは微塵も考えておらぬし、付き従う兵には全く罪は御座いませぬ。生き残りし兵や残された兵たちの家族に類が及ばぬようにご温情賜わりたく候」


という遺書の言葉と共に、辞世の句が添えられてあった。


晴蓑せいさめが たまのありかを 人問わば いざ白雲の 上と答へよ」


(※辞世の句の意訳です。

私の魂はどこへ行ったともし聞かれたら、思い残すこと無く死んだので雲のかなたに消え去って分からないと聞いた者に言って伝えて欲しい)


考えてみれば関白殿下が織田家配下の頃より家中で最も関白殿下を評価していたのは弟・又六郎(島津歳久)であった。

なのに最後まで徹底抗戦を叫び、降伏の時期は今では無いと言っておった。

何故そう思うのかを聞く機会は永遠に失われてしもうた。

もっと素直に聞いて居れば・・・

関白殿下の許しを得る為に遺書と共に弟の首級を指し出した。

致し方ない事は理解しておったが、血の涙を流してしまうのではないかと思う程に無念であったが、自害した弟の意思を酌んで堪えた。

その後、弟の首級は京の一条戻橋に晒されたという知らせを聞く事となる。

佐馬頭さまのかみ(島津忠長)がその晒された弟の首級を奪い返し京にある浄福寺に葬ったことを涙ながらに教えてくれた。

その行動の際、丸目殿の配下の者たちが大きな助力をしてくれたという。

丸目殿には返し切れない程の恩義が出来た。

何時の日か彼に報いることが出来るのであれば彼の為に動くことを残された弟たちとともに誓った。


〇~~~~~~〇


島津家メインの話でした。

さて、島津義久の史実での行動は書かれた物とあまり変わりはありません。

そして、それは島津歳久も同じです。

今回はうんちく入れる必要ある?と思う程に本文にうんちくとも言える物を入れた感じとなりました。

史実と大きく違う動きとなったのは鬼島津こと島津義弘でしょうか?

実際の義弘の行動は歳久と同じような行動を取っていますが、義久の説得に応じて矛を収めております。

歳久の首級は実際に京の一条戻橋に晒されたそうで、島津忠長が首級を奪い返し京にある浄福寺に葬ったのも史実通りですが、秀吉たちは犯人を知っていたものと思われますが、特に処罰などはせず見逃していると思われます。

恐らくは、憐れんでの事ではなく、島津の暴走等をさせない為の処置だったのではないかと思います。

歳久の遺体は帖佐(鹿児島)の総禅寺に、霊は島津歴代の鹿児島にある菩提寺である福昌寺で供養されたそうです。

秀吉の没後に歳久最期の地となった場所に寺を建立し霊を祭ったそうです。

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