第378話

噂は全国を駆けた。

十日と猶予が出来たことで噂はどんどん広がって「一人城攻め」という話で盛り上がっているという。

こういう場合は賭けをする者も現れそうなものだけど、俺にBETする者を探す方が大変だそうで、賭けが成立しないという。

わははははは~実に舐められたものだ。

よし!目にもの見せやろうと一人燃えに燃えている。

と言っても時間はまだまだ五日以上ある。

その間に突貫工事で韮山城に対しての付き城に観戦用と見れれる櫓のような物が出来て行った。

観戦希望者の主だった者はお猿さん(豊臣秀吉)に始まり、織田信雄バカに家さん(徳川家康)、孫七郎(羽柴秀次)、と又左殿(前田利家)、隆さん(小早川隆景)、忠三郎(蒲生氏郷)、小吉こきち(豊臣秀勝)、与一郎(細川忠興)、久さん(堀秀政)、三左衛門(池田輝政)、高山殿(高山右近)、彦右衛門(蜂須賀家政)、宮内少輔(長宗我部元親)、市兵衛(福島正則)、喜兵衛(真田昌幸)、錚々たるメンバーが居るそうだ。

慶さん(前田慶次)は何時の間にかやって来て「楽しみじゃ」とか言っているよ・・・

弥七(立花宗茂)も陣中見舞いと称して小田原征伐は免除されていた筈なのにやって来て慶さんとともに観戦する気満々のようだ。

後は与六(直江兼続)が喜平治(上杉景勝)の名代で戦観戦へとやって来た。


「前田様(前田利家)が北方隊から一時とは言え抜けられるという事で向こうにお残りされましたので、代りに見聞に参りました」

「さよか・・・」


呆れて物も言えないが、与六は「それだけ注目されているのです」と強弁する。

諜報の調べではお猿さんは小田原城に籠城する北条方にも見に来ないかと誘いを入れたそうだ。

来るかな?・・・来るとして、誰が来る?

まぁそんな感じでお祭りのようになっている。

「猿回しの猿の様に猿(豊臣秀吉)に使われているな~」と思うと今は亡き半兵衛さん(竹中半兵衛)や小六さん(蜂須賀小六)は草葉の陰で大笑いしているかもしれないな。


「父上!」

「お~俺の雄姿を見に来たか?」

「何を馬鹿な事を言われておるのですか!!」


あ~何か羽(羽長)が騒いでいる。

そして、俺にだけじゃなく美羽たちにも噛みつく。


「母上(美羽)も春麗母様も、何故、父上の蛮行をお止めされなかったのですか!?」

「羽・・・長様をお止め出来るなら世の中に不可能は無いのですよ」

「そう!長様を止めるは不可能」


羽の意見に対し美羽、春麗が順にまるで駄々っ子を宥める様に言い聞かせるように言う。

いや、いや、俺を暴走特急みたいな言い方するなよな!


「ですが・・・」

「貴方が一緒に居ても止められたとはとても思えませぬが?」

「・・・そうですね・・・申し訳ありませんでした」


羽が美羽と春麗に深々と頭を下げて謝罪しているが・・・

おい、おい、おい!!

待てい!!

酷くないかい?


「俺をなんだと思っておるのだ?」


あんまりだったのでそう言うと


「弓矢のような物ですか?」

「手裏剣!」

「長様は長様ですね」


羽・春麗は放たれたら止まらない者の様に言う。

美羽は・・・・まぁいいや・・・


「相変らず仲が良いの~」


慶さんが茶々を入れて来て俺を揶揄う。


★~~~~~~★


関東より面白き噂が流れて来た。


「小十郎(片倉景綱)はどう思う?」

「豊臣方に与する方が宜しいかと」


父・輝宗の時代から北条と同盟関係にあったが為に小田原に参陣し北条に味方するか、はたまた、豊臣方に与するかで家内の意見が割れた。

しかし、儂が聞いておるのは別の事じゃ。


「解っていて言っておろう?」

「はい、二位蔵人様の事で宜しいでしょうか?」

「うむ!本当に一人で城を落とせると思うか?」

「無理、と言いたいのですが、二位蔵人様の事ですから只では終わらない者かと・・・」

「わははははは~小十郎でも答えを濁すか」

「濁した訳では・・・そう申される藤次郎様(伊達政宗)は如何なると思われまする?」

「儂はな」


小十郎と話しているとその場に急ぎ現れた弟の小次郎(伊達政道)が儂の言葉を遮り喚く。


「兄上!!」

「何じゃ?」

「何じゃでは御座りませぬ!!」

「早う小田原に行かねば!!」


小十郎と共に溜息を吐いてしまった。


「はぁ~小次郎よ」

「何で御座いますか?」

「今、家中は意見が割れておる」

「では早く意見を取り纏めねばなりますまい!!」

「催促されてからでも遅くはない。それよりも、何方につくか決め、意見を統一することが肝要なのじゃ」

「しかし・・・」

「しかしも案山子も無いわ!お主だけが慌てても仕方ないのじゃ!!もそっと視野を広げ物を見よ!!」

「ぐっ・・・もうよいです!!」


ドスドスと不機嫌そうな気が立った様な足音を残して小十郎は去って行った。

小十郎は目で「良いのですか?」と聞いて来る。

儂は「泳がせておけ」と言うように手を振ると、「藤次郎様は身内に甘もう御座いまする」と諫言して来た。

自分自身でもそう思うが、限界がある。

もうそろそろ限界は来そうではあるが・・・


「して、藤次郎様」

「何じゃ?」

「先程のつづ」

「小十郎、決めたぞ!」


儂は小十郎の意見を遮り言う。


「豊臣に付く!!」


小十郎は「はぁ~」と溜息を吐き、「藤次郎様も予告不能ですか・・・」などと言う。

儂がキッと睨むと


「はい、はい、豊臣方にお味方されるのですね。しかし、そうなると詫びが必要ですな・・・何か相手の度肝を抜き、関白殿下が笑って許さざるおえぬ仕掛けが必要ですな」


そんな事を小十郎は言う。

そして、ジッとこちらを見詰めて来る。


「う・・・なにか考えて置く・・・」


儂は取り合えずそう言う事しか出来なかった。

さて、如何すべきか・・・


〇~~~~~~〇


次回、主人公の無双回となる予定ですが、伊達家の動きも気になる所ですね。

さて、私の推し武将・立花宗茂も久々登場!!

実は小田原征伐時に九州の諸大名は九州征伐・肥後国人一揆と立て続けで大戦となった事から殆どの大名が兵役免除されたと云われています。

しかし、無理を押して参加した者も多いようで、加藤清正は兵だけを派遣したりしていますし、小早川隆景は後方支援的に徳川家康の本願地の城である三河岡崎城を預かったそうです。

他にも大友義統は従軍していますし、立花宗茂も実際に小田原征伐に陣中見舞いと称してやって来て参陣しています。

秀吉は諸大名の前で「東の本多忠勝、西の立花宗茂、東西無双」と評し褒め讃えています。

宗茂が肥後国人一揆の鎮圧に功を上げ、秀吉から加増を打診された時に、「充分な兵力を養える領土は既に頂いているので結構です。それよりも戦の際に、先鋒に使って頂ければ相応の働きをもって答え致す」的な事を述べたそうです。

その時の御返しのリップサービスだったのかもしれませんが、この当時で最強武将とも言われた本多忠勝と並べられるというのは中々の事ですから、それだけ評価が高かったのでしょうね。

後々、朝鮮役の大一番とも云われる碧蹄館へきていかんの戦いにて先陣を任されて「日ノ本随一」と賞賛もされたので戦働きにおいては可成り凄かったというのがそれだけでも解りますね。

実際に生涯無敗と云われております。

この生涯無敗だったと云われる武将は私の知る限りで言えば9人の武将居ます。

そのうちの一人が立花宗茂で、もう一人が彼の義理の親父である戸次道雪。

そして、吉川元春です。

吉川元春は 戦においては生涯で76戦(64勝12分)と、1度も負けなかったというエピソードもあるのですが、幼少期に弟の小早川隆景と行った雪合戦で、敗北を喫したことがあり、これが生涯唯一の敗戦だと言ったとか言わなかったとか。

最後の一人が甲斐宗運(親直)という武将です。

最後の一人は結構マイナーなので知っている人居るかな?

阿蘇家の家臣で生涯60戦無敗で阿蘇家の最盛期を支えた武将です。

他は有名所ばかりですが、大田道灌・太原雪斎・朝倉宗滴・毛利元就・竹中重治(半兵衛)ですかね。

惜しい所で、野戦無敗の上杉謙信とか、村上義清に2度敗北した以外負けなしという武田信玄、等々・・・

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