第3話
「天晴である!!」
「「はは~」」
俺の親父が仕えるお殿様である相良様に今回の戦の件で褒められている。
遅刻した件は勿論不問だ。
結果オーライと言う物だろう。
上司に褒められているんだから問題無い。
そうこうしているとお殿様がニンマリ笑顔で親父に告げる。
「褒美の1つとして「
「有難き幸せ!!」
え?丸目?・・・今日から俺は
探していた人物は自分本人でした。
マジかーーーーー!!と心で叫んだが実は丸目蔵人佐の人生は中々に波乱万丈なのだ。
最終的には有名人になるので知り合いなのは良いが本人にはなりたくなかった・・・
「長、如何した?」
親父が話し掛けて来たがあまりの出来事にどうやら呆けていたようだ。
親父は「殿に褒められて感極まったか、お前も人間らしい所もあるんじゃな~」とか言っている。
俺を何だと思っているだこの親父は・・・
まぁ成ってしまった者は仕方ない。
剣豪として将来、俺にタイ捨流の剣術を教えてくれた爺様に「郷土の誇り」と言ってもらえるような生き様をしよう。
さて、剣術道場の爺さんに丸目蔵人佐の武勇伝は聞いているが全部が全部覚えていないし全ての人生を通しで知っている訳では無い。
最も覚えているのは兵法修行の為上泉信綱に弟子入りしたことだろうか?お殿様は「親子それぞれ別に褒美を与えるので欲しい物があれば考えておけ」と言われた。
兵法修行がしたい事を申し出ることとしよう。
そして、「剣聖の上泉信綱に弟子入りする」これが最初のミッションだ!!
★~~~~~~★
長はやはり神童だ!!
7歳の頃に棒っ切れを振り回す姿を見てやはり武士の子、俺の子だと感動したが、見ていると非凡な事が儂でも解る。
「長よ、剣術か?」
と声を掛けると驚いたようにビクッと肩を跳ね上げてこちらを振り向いた。
「父上」
「続けよ」
見られたくないものでも見られたように素振りを止めてこちらをじっと見つめている。
特に問題がある訳でもないので続けるように促すとまた素振りを始めたが、7歳とは思えない振りの速さである。
確かにまだまだ体が泳いでいるがあの年齢では十分以上の素振りだ。
納得いかないのか首を偶に傾けている。
我が息子ながらまさにトンビが鷹、嫌もっと凄い何かを産んだのかもしれない。
「やはり長には才能が」と独り言を漏らすと素振りを止めて何言っているんだみたいな目でこちらを見た様な気がしたが・・・
それから長は偶にふらりと何処かへ行ったかと思えば誰かを探しているようだ。
昔から変わった行動をする子ではあったが最近は更に磨きが掛かって来た様で野良仕事の手伝いをしていたかと思えば変な提案をしてきた。
儂が難色を示すと「天啓でこうせよと言われました」と言う。
神仏に愛された本当に神童なのかもしれぬ。
種籾を塩水に漬けた時には流石に怒鳴ったが、またもや「天啓でこうせよと言われました」と言う。
最近はこの文言を使うが便利使いしてないかと怪しんでしまう。
しかし、天啓を口にした物は全てに成果が出ているので本当に・・・
長のお蔭で山本家の財政は少し楽に成った。
何か欲しい物はあるかと聞けば「おかずを1品増やして欲しい」と言う。
実に子供らしい願いだと思い1品増やした。
そして、大豆を使った料理をよく強請る。
大豆好きなのかもしれぬな。
10歳位になると振る棒っ切れの剣筋が安定して来た。
これは・・・儂より強いのでは?焦りを感じ自分の親父としての沽券の為にも儂も木刀を振り鍛錬に励んだ。
12歳になると明かに儂より格段に強いと思われる振りをする。
その頃には槍の鍛錬や色々とやり始めた。
これが才能の差なのだろう。
父としての威信を諦め息子に手解きを受けた。
すると儂自身も手ごたえを感じる程に腕を上げて行った。
15歳、息子が元服した。
「今日より
どうじゃ!!
三日間寝ながら考えたこの名前、実に良い!!
しかし、息子は難色を示した。
「父上~
「
もう一つ考えていた方を提示すると少し考えている素振りをする。
息子の名前を決めるのに心の蔵がバクバクと脈打つ。
何故に儂がここまで緊張を強いられるのか納得いかんが息子はニッコリ笑い名前に対しての感想とお礼を述べた。
「父上、良い名前をありがとうございます」
「おお、気にいったか!何より何より」
ホッとしてしまう儂。
そうこうしていると儂の仕える殿の領内に薩摩兵が責めて来た。
連絡を受けてから準備しても間に合わないかもしれぬが奉公とは行くことに意義があるのだ。
考えてみれば長の初陣じゃな。
奴も喜ぶかな?
「長、初陣じゃ!!」
「父上?行ってらっしゃい」
自分は行かないつもりか?
俺は息子に対して来るように促す。
「阿呆!お前も来るんじゃ」
「はぁ?俺も?」
「そうじゃ、初陣はお前の事じゃ」
「マジかよ・・・」
「はよう準備いたせ!!」
何だか渋々と言った感じで用意を始める息子を尻目に自分も準備を始める。
戦場へ行くと既に始まっていた。
こればかりは仕方ない。
連れて来た領民を指揮して敵方に突っ込んだ。
槍で敵方の兵を突いては前進を繰り返したが丁度敵の横合いから突撃したことで奇襲となったようで薩摩兵を追い返す事が出来た。
案の定、殿は大喜びされて褒美を下さった。
名字を「丸目」に改めることとなったが、何か意味がある名前かは知らぬが褒美と言うのが誇らしい。
珍しく長が呆けているが奴もやはり人の子、嬉しかったのだろう。
呆けた顔が元に戻ると何やら決意でもしたような顔となる。
何だか突飛な事でも言い出しそうな予感がするが・・・
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