第2話

「今日より山本やまもと石見守いわみのかみ長恵ながよしじゃ!!」

「父上~石見守いわみのかみはちょっと・・・」

ながよ我儘言うな・・・それじゃあ蔵人佐くらんどのすけこれでどうじゃ?」


おお、丸目君と同じ名前ではないか!!

これは良いぞ。

丸目君と仲良くなる切欠となるだろう。

「同じ名前だね!仲良くしようよ!!」よし決まった、これは使えるぞ。


「父上、良い名前をありがとうございます」

「おお、気にいったか!何より何より」


今日で大人の仲間入り、昔の成人式となる元服の儀が執り行われた。

少し見栄えの良い衣装を身に纏い宴会に主賓として参加した。

と言っても親父の仲間数人が来て宴会するだけだ。

まぁ祝ってくれるだけでもありがたい事としておこう。

7歳時に俺の棒振りを見てから親父の英才教育?が始まった。

気が付けば7年位の歳月が過ぎたが時期的にも丁度良かったのかもしれない。

元服したからと言って生活が変わる訳では無い。

この時代の武士は半農なので普通に農作業をする。

7歳から色々と口出しして15の元服までには大きな成果とは言わないが少しは成果が表れた。

俺の提案で少しづつこの時代の間違った農業を少しだけ改革出来たと思う。

巷に聞く戦国知識チートは無理だ!!

何故ならば、山本さん家はただの国人です。

それも相良と言う殿様に仕える1国人で権力?なにそれ美味しいの?状態だ。

変えられたことは三点、1つは三毛作を行った。

田が痩せるからと難色を示した親父も2年間だけ試して欲しいと懇願すると渋々応じてくれた。

田が痩せ細らない様に近くの山で腐葉土を取って来て田で取った雑草と人糞混ぜて少し置きナンチャッテ堆肥を作成した。

これが2点目。

そして、米→麦→蔬菜そさいを作って堆肥を定期的に撒いてサイクルさせた。

にわか知識ではあったが人糞をそのままぶちまけたりより十分に効果が出た。

親父から「何処でこの知識を知った」と聞かれて説明が面倒・・・訂正、説明が難しかったので「天啓が・・・」とか適当に言ったら「やはり長は神童じゃ」とか言っているマジで勘弁である。

寒冷期の日本でも比較的温暖な九州だからこそ出来る芸当である。

そして、3つ目は2年目に正条植えを試してみた。

前世で読んだ小説の定番だよね~とか思いつつ試してみたが、種籾の塩水選をした時等は親父に「種籾を無駄にするな!!」と怒鳴られた。

「天啓でこうせよと言われました」と言ったら渋々と俺のやることを容認してくれた。

種籾を直接撒かないことにも難色を示したが「天啓」と言うとまた渋々従がってくれた。

「天啓」って便利な言葉だな~と最近思えて来るがこれ以上の乱発は危険である。

結果、上手くいった。

これで山本家の財政が少し上方修正されたことで食事のおかずが1品増えた。

この時代は粗食なのだが本当に驚いた。

幸いにして味噌作りとかの為に大豆あるから植物性のタンパク質を摂取して栄養バランスを取った。

この時代は本当に食事でのタンパク質の摂取が少ない。

平均身長が低いのもここら辺が関わっていると俺は思っている。

我が家では煮豆等でそれをカバーした。

偶には肉食いたいな~とか思うが中々手に入らないので無い物強請りしても仕方ない。


ある日、親父が慌てて家に戻ってくると俺に声を掛ける。


「長、初陣じゃ!!」

「父上?行ってらっしゃい」

「阿呆!お前も来るんじゃ」

「はぁ?俺も?」

「そうじゃ、初陣はお前の事じゃ」

「マジかよ・・・」

「はよう準備いたせ!!」


どうやら俺の初陣らしいのだが何処と?

どうやら薩摩兵が責めて来たらしい。

薩摩って捨てがまりとか釣り野伏のぶせとか言うキチガイ戦法取る集団だよね?

あ・・・そう言えばこの戦いで丸目さん大活躍してお殿様に褒められんだっけ?

丸目さん探しにもこれで終止符を打たれるな~とか考えていると、親父が怒鳴る。


「長、はよ用意しろ!!」

「了解了解・・・」


郷に入りては郷に従えていうが俺も戦国時代の武士の仲間入りか~

薩摩兵が責めて来たのは大畑。

前世の世界での熊本県人吉市大畑町である。

大河ドラマで見る様な煌びやかな揃いの鎧にとか思っていたが意外とバラバラだし半分以上は農民の民兵・・・

一応は親父が国人の武士なので治める周辺の農民の成人男子に武装させて集合させて戦場へと向かう。

成人男子をかき集めているのだが栄養状態の良い俺は15歳にして平均以上に大きく育っております。

最近は昔に近い位にはタイ捨流の基本動作を出来るようになりました!!

タイ捨流は一撃必殺的な思想で袈裟切りに重きを置いているが、新陰流の影響もあり円の太刀と呼ばれるあらゆる場面で活きる体捌きに蹴りに目潰し、関節技とある意味では太刀を使う総合格闘技なのだ。

実践向きの剣術と言われる所以であるが、丸目君より先にタイ捨流の技を今世ではお披露目である。

戦場へ行くと既に戦いは始まっていた。

これはいかんと思ったのか親父の号令で敵に突っ込む。

最近は親父が俺の剣術に興味を持ったので少しタイ捨流の剣術を教えている。

逆じゃないの?と思うかもしれないが、前世の現代でも生き残っている実践向きで洗練された剣術だから親父のナンチャッテ剣術より断然有効的であるのだから仕方ない。

親父も俺もその実力を遺憾無く発揮して敵の薩摩兵を斬っては捨て斬っては捨て・・・一刀では何人も斬れませんし、そんなこと出来ませんので槍で突いては倒し突いては倒ししましたよ。

実はタイ捨流は槍も出来ます!!

兵法21流を極めたと言われる剣豪、丸目蔵人佐は剣術以外も超人でした。

親父には槍も教えています。

戦場で長柄の得物と言えば槍でしょう。

槍働きと言うくらい戦場での槍は重要です。

そんなこんなで俺と親父は遅刻を帳消しする程の大活躍で薩摩兵との戦闘を終わらせた。

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