第61話

霜台爺さんが訪ねて来たよ。

三好家大変な中によく来れたね~とか思ってしまうが、任官のお祝いと称してやって来た。


「長よ、久しいな~」

「霜台爺さん元気そうで」


相変わらずの飄々とした態度であるが戦続きだ。

最近だと畠山はたけやま高政たかまさとやり合っている。

それに、幕府政所まんどころ執事しつじ伊勢いせ貞孝さだたか貞良さだよし父子を討伐したのはここ最近の話で、京の街では戦々恐々とした物々しい雰囲気に包まれた。

三好さん家は十河一存・三好実休の二大看板が相次いで亡くなり斜陽の時期で大変だろうによく時間を割いて来れたね~とか思っちゃう。

あ~何かお供が前の孫次郎さんと違う人を連れてきているね~

孫次郎さんの威厳が凄かったけど今回連れて来た・・・まぁ孫次郎さんと比べるのは申し訳ないけど数段劣るけど中々どうして出来る感じの人が来た。


「霜台爺さん、先に紹介、こちらが某の師匠」

「上泉信綱と申す」

「おお!これはこれは、松永弾正忠だんじょうのちゅう久秀と申す。よしなに」

「こちらこそ、よしなに」


任官予定なのだが任官のお祝いを言われた。

今回はそのお祝いを言いに来たとのことだ。

お祝いのお酒も持って来たとの事なので今夜は宴会になるだろう。

お連れの方が師匠の名前を聞いて驚いているが・・・

霜台爺さんも気が付いた様でニンマリと笑いながら挨拶するように促す。


「お初にお目に掛かる。柳生新次郎しんじろう宗厳むねよしと申す。上泉殿には是非お会いして一手ご教授願いたいと前々より思うておりました!!」


あ~これが噂の石舟斎せきしゅうさい!え?噂ってなんだよって?・・・言ってみただけだよ!まぁ知っているキャラ出て来るとテンション上がるだろ?そういう事さ!


「そうですか・・・ではお相手させて頂きましょう」


うほ~ラッキー!!歴史的立合いの観客になれるとか燃えるね~

霜台爺さんもこうなることを予想していたようでワクワクである。

そして、家主の山科様も何処からか聞きつけて家に戻って来たと思ったら偶々だったが「いいものが見れそうじゃ」と言いながら俺と同じく観客やる気満々です。

山科様も剣術は大好きみたいで昔から師匠とも交流があったし、柳生さんの事も知っていた。

五畿内一の兵法者と柳生さんは呼ばれている有名人とのことだ。

歴史的にもこの対戦があったことは知っているが、何か足りない気もするが気のせいだろう。

ちなみに、豊たちも噂を聞きつけて試合会場のお庭に集合しているよ。

お偉いさんと会うのはちょっととか言ってたのにね~


「それでは宜しいか?」

「はい!では、参る!」


早速始まりましたよ!!

師匠VS柳生さんの熱き立合いが!!

師匠は竹刀を持って御座る。

立合い前に竹刀の説明を色々と柳生さんにしていて柳生さんも感心していた。

実はこの竹刀は現代の物に限りなく近い!!

何故か?そんなの決まっているだろ?飛騨高山で時間を持て余した時に師匠と一緒に作った一品よ!!

師匠が考えてた以上に良い物が出来た様で師匠もご満悦だよ!!

やっぱり完成品知っているって大きいよね~自分で言うのも何だけど、これが噂の知識チートか!と思ったぞ!!え?・・・お前何期待しているんだよ!俺っちはただの剣豪だぞ!世の中を改変できるような実力も財力も何もかもありまっしぇ~ん!!

おっと、立合い立合い!


師匠は何時もの下段の後の先スタイルで待ち構えている。

柳生さんは正眼に構えているがこちらも中々の堂に入った構えで実力の程が伺えるが攻め込んでは行かない。

お互いに全く動かないがまだ始まっていないとか静止画像を見ているとかそういう事ではないぞ。


「その構えはしゅう御座る」


そう言うと師匠が珍しくスーっと間合いを詰めて袈裟に斬り付ける様な動作、あ!燕返しだね~と思ったらそれに対処しようと下がってから攻撃しようとした瞬間に竹刀で木刀を跳ね上げられて万歳した柳生さんに竹刀を突き付ける・・・

おい!師匠!!それは俺の十八番だろ!!

(小次郎さんの技を無断借用している自分自身は棚上げです)

一瞬、師匠がこちらを向いてにやりと笑ったような気がしたが・・・いや、気のせいではないな多分。

自分でも試してみたくなったのだろうね~師匠も剣術大好きなので丁度良いので試したんだろうな~


「ま・・・参った・・・いや、もう一手お願いできますか?」


あ~この人も剣術大好き人間かな?目をキラキラさせて師匠を見ているよ。

何時もの様に「うむ」と頷くと後ろに下がり何時もの下段に構えて相手を待つ師匠。


「では、再度参る!!」


柳生さんは今度は自分から攻撃に打って出た。

中々の間合い詰めのスピードだが詰めた瞬間にまた師匠が少し前に出て


「その構えはしゅう御座る」


と言ったと思ったら相手の木刀を自分の竹刀で絡め取り下に落とす。

吉岡さんに使った巻き上げの反対の巻き落としと言うやつだね~

吉岡さんと違い木刀を離さなかったが完全にバランスを崩して立て直しに時間が掛かりそうだけどそんなスキを師匠が見逃すはずもなく、首筋に竹刀をそっと当てる。


「お見事!!」


山科様が興奮して声を上げる。

そして、とんでもないことを言い始めた。


「次は噂に聞く無刀取りかな?」


あ~何か将軍様とのやり取りが噂になり、無刀取り=師匠みたいな構図になっています。

俺も今更ながらに「流石は今九朗判官」と言われていますが、貰う予定の官位は「蔵人くらんど」と言うイレギュラー官位だけどどうするんだろうね~判官って別の官位の別名なんだよね~まぁ特段にとか呼ばれたい訳じゃないからね~

後日、「今義経」と呼ばれる様になったと知りましたとさ、めでたし、めでたし・・・っておい!まだまだ終わってないぞ!!


「それは・・・是非ともお見せください!!」


あ~柳生さんがキラキラお目目で懇願して来たよ。

師匠はため息のような感じで一度息を吐き、「うむ」という感じで竹刀を地面に置き少し移動してから「来られよ」と声を掛けて無刀取りを見せて皆を喜ばせた。

柳生さんはその場で師匠に弟子入りを懇願し、師匠も受け入れて弟子となった。

しかし、この一連の出来事がまた大きな波紋を呼ぶのであるが・・・


〇~~~~~~〇


柳生宗厳、通称、石舟斎が登場しました!!

実際は1563年に上泉信綱一行が京に向かう途中に奈良に寄った時に柳生宗厳と仲の良かった宝蔵院ほうぞういん胤栄いんえいの2人が上泉を訪ねて行きそこで立合いをして弟子になります。

その立合いも色々説があります。

上泉信綱本人が相手にした説。

そして、弟子が相手にした説とありますが、弟子も神後宗治が二寸6cm位短い得物で相手にして宗厳が全く歯が立たなかった説と疋田豊五郎が相手にして「その構えはしゅう御座る」的な事を言って完封したと言う説があります。

え?何処かで聞いたセリフだな~って?・・・(汗)

リスペクト、そう!リスペクトです!!

どの説が正しいのかは解りませんが、史実の通りに柳生宗厳が上泉信綱の弟子となりました。

実は丸目蔵人佐を主人公にと決め松永久秀と絡むことを考えた時に、そう言えば松永久秀の家来に柳生石舟斎いたな~と思い、このストーリーは考えていましたので初期段階で考えていた話の1つとなります。

そして、この話はまだまだ続きがあります!!

次回はその続きに繋がる話となりますので主人公たちから少し離れて話が展開します。

では!次話をお楽しみに~

(次の話少し短いので午後位にUP予定です)

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