第62話
何と言う幸運、何と言う行幸だろうか!
久秀様に着いて山科権大納言様のお宅に丸目蔵人殿の任官祝いを持って行けばそこには上泉信綱殿がいらっしゃった!!
是非ともお会いして一手ご教授頂きたいと思っていたがまさかここでお会いできるとは何という事だと神仏に感謝した。
三度の立合いをして頂き、最後は噂に聞いた無刀取りまで直接お見せくださった。
これについては山科様のお陰とも言えるが幸運なことこの上も無し。
更にお願いして弟子入りまで出来たことは至上の喜びよ。
この喜びを自慢・・・伝えねばと思い仲の良い者の所を訪ねておる。
「新次郎殿、久しいな~」
「ああ、胤栄殿、ご無沙汰しておる」
儂が訪ねたのは
最近は久秀様に仕え忙しい毎日の為会うのも久しぶりだ。
以前、会った際に「剣聖、上泉殿か塚原殿にお会いしたいものよ」と話しておったが儂は幸運にもお会い出来てご教授願え弟子にまでして頂いたことは胤栄殿にも是非にも
「して忙しい新次郎殿が今日はどうされた?」
「ああ、実は胤栄殿に知らせておこうと思うてな訪ねて来た次第よ」
「ほ~何が聞けるか楽しみじゃ!」
儂は上泉殿・・・いや、上泉師匠との邂逅から弟子になる経緯に至るまで全て話した。
「会ってみたい」とお互いに言っていた御仁に会えたばかりか立合い、弟子にまでなったことを羨ましがられた。
「新次郎殿~狡いぞ!」
「胤栄殿、何を言う!これは偶然にして神仏の与えたもうた真理ぞ!!」
「何が神仏じゃ!何が真理じゃ!!」
「坊主が神仏を否定するか?」
「いやいや、神仏を否定するのではなくお主の言葉を否定しちょる!!」
お互いに「ぐぬぬ~」等と言いながら言い合いをしていると、胤栄殿が立ち上がり叫んだ。
「儂も上泉信綱殿に会いたい!一手ご教授頂き!弟子にして頂くのじゃ~~~~!!!」
★~~~~~~★
ええ物を見ることが出来た。
珍しく早めに家に戻ると三好の所の松永が来ておると言う。
少し挨拶でもしておこうと顔を出せば、松永の所に仕えておる柳生宗厳がおるではないか。
五畿内一の兵法者と呼ばれる者が剣聖と呼ばれる大胡に「一手ご教授」と立合いを所望しておる。
大胡も望まれれれば断らない男、直ぐに応じるようで儂も皆と一緒に見物することとした。
いい勝負になるかと思いきや大胡がその技の冴えを存分に見せた。
二試合終わった段階で儂は噂に聞く無刀取りをこの目で見とうなった。
「次は噂に聞く無刀取りかな?」
儂がそう言うと「解りました」とでも言うように大胡が応じてくれた。
噂に聞くそのままに無手で得物を絡め取り相手を投げ飛ばしよった!!
これは是非とも皆に自慢・・・知らせねばならぬと心に決め次の日の朝議に挑んだ。
「山科権大納言!誠か?誠にそちは無刀取りを見たと言うか!!」
「はい、主上」
「う~~~羨ましい!朕も見たい!!」
朝議で話すと主上が殊の外それを羨ましがられ見たいとお言いになる。
もうこうなれば大胡に願って主上の前で剣術を披露してもらうしか無いと思えた。
他の者も特に何も言わないが、手配を促す様な目線で見詰めてくる。
今日戻ってから大胡に頼んでみることとしよう・・・
〇~~~~~~〇
今回は少し短めですね~すみません。
前話からの流れですが、それぞれが自慢したことで色々な所へと飛び火しました!!
宝蔵院胤栄は宝蔵院と言うお寺の院主(寺の住職)でこのお寺は興福寺の子院となります。
そして、宝蔵院流と言う槍の流派の創始者として知られています。
弟子には
晩年は僧侶が武器を扱うのは宜しくないと言い、寺内での武道を禁じたとかなんとか・・・どういう事があり心変わりしたのか・・・
まぁそれは置いておき、山科言継の自慢も大変な事となりました。
実際には
その際に、上泉信綱の受け太刀をしたのは丸目蔵人佐と言われています。
そのことで丸目蔵人佐は「
さて、丸目の愛刀もそろそろ欲しいな~と言うのもありますが、そろそろヒロイン欲しくね?と思っております。
実際の丸目蔵人はこの時期に結婚していたかどうか知りませんが、この物語の丸目蔵人は結婚しておりません。
前世での常識に引っ張られていて「結婚まだ早いよね~」とか思っている間に現在に至ります。
どの様な出会いでどの様な者がヒロイン?となるか!!
10話以内位には出そうかな~とか思ってます。
色々と予想してお楽しみください!!
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