第263話
パエリア、ガスパチョ(冷製スープ)、ソパ・デ・アホ(にんにくスープ)、アヒージョ、ハモンセラーノ(世界三大生ハム)、トルティージャ(スペイン風オムレツ)、チュロス、等々のスペイン料理は美味かった。
しかし、今、俺の来ているイングランドも中々美味い料理が多いようだ。
例えば、横でお狐様が貪り食っているローストビーフは絶品で、俺も噛み締めながら食っているよ。
(英語の会話です)
「如何じゃ?スペインに負けて無かろう?」
「はい、とても美味しく頂いております」
「そうか、そうか」
イングランドの食事は不味いとか言った奴出て来い!!
いや、やっぱりいいわ。
目の前に並ぶ料理の数々を見ても思うが、この時代(1580年代)のイングランドの宮廷料理は普通に美味かったよ。
俺が何故イングランドに来ているかと言うと、俺は天正遣欧少年使節と言う宗教使節団の序でヨーロッパにやって来たのだけれど、俺の目的は彼らとは違う。
俺の目的は多くの国に日ノ本を知らしめること。
まぁ特に如何しろとは言われていないので、勝手に俺がそう思って行動している訳であるが、スペインでの呪詛騒動では爵位を得たが、その後直ぐから多くの貴族が俺の元を訪れ呪詛斬りを依頼して来た。
兎に角斬りまくったね・・・多分、俺が戦などで斬った人間よりあの黒いのの方を斬った回数の方が多いと思うぞ。
何かあの黒いのにも俺のこと知られたのか、そもそも彼奴らに思考あるのかよく解らんかったが、何か途中から目が合って嫌々されたり、ごめんなさいみたいな動作されたり、何なら日本式土下座する者も居たな~
粗方の呪詛されてる貴族連中の依頼で呪詛と思われる黒いのを斬りまくったので、今、スペイン貴族の多くには黒い影は付き纏っていなくなってお役御免となった。
さて、そうなると今度は時間が出来る。
そこで本来の目的である外交使節の仕事に従事することとした訳だ。
そして、最初の訪問国として目指したのがイングランドである。
この時代のイングランドはスペイン・ポルトガルと並び大国と言える存在である。
治めているのはエリザベス1世と言う女王様だ。
女性の年齢を考える等は失礼かもしれないが、50~60歳の間位だろうか?
まぁそれなりの年齢に達している感じの女性だ。
俺の前世の世界史の知識としては、「
あ~それからプロテスタント(カトリック教会を「旧教」とするなら「新教」)の信奉者とも言われており、確か・・・スペイン無敵艦隊を破った時の女王だったような・・・
今現在で、スペイン無敵艦隊を破った事実は無い為、今後起こる事なのだろう。
「時に、クランドよ」
「はい、女王陛下、何で御座いましょうか?」
「スペインでは悪魔祓いをしたと聞いておるが・・・」
「悪魔祓いですか・・・悪魔かどうかは解り兼ねますが、呪詛の様なものを悪魔と言うなら悪魔なのでしょうが、それを斬り祓いました」
「ほう・・・」
女王様は目を細めて俺を見る。
何か最近は「悪魔祓い
その噂はここ、イングランドにも届いているようだ。
「その御業を私に見せてくれぬか?」
「仰せのままに」
うん、一発芸的に見せるだけで感心得られるなら儲けものだよね~
早速とばかりに女王様(エリザベス1世)を視れば、4体の黒い奴・・・
「女王陛下には4体の黒いものが憑いて居りますな」
「4体もか?・・・」
女王陛下は周りの者たちを見回す様な感じで見回すが、特に何かある訳ではない。
まぁあのスペインでのお茶会の事は既に広まっているのであろうから、ここに呪詛っている者が居たとしても今はボロは出さないと思うけどね。
「それでは祓って貰っても構わぬか?」
「ええ、大丈夫ですが、この場には道具がありませぬし、刃を女王陛下に向けるような形となりますので・・・」
「おほほほほほ~そのような細事は気にせぬで、頼めるか?」
「仰せのままに」
ここでも呪詛斬りすることとなった。
王様(フェリペ2世)の時と同じく、大小の刀の効果を説明し、神刀での呪詛斬りを依頼された。
4体目を斬り祓った直後に会場の中の一人が苦しみ始め倒れたので、そいつは女王様を呪詛ってたのだろう。
女王様は御付きの者に目で合図していたので、王様同様にその者の家宅捜索でもやるのだろうね~
さて、ここでもスペインに対抗してなのかどうか知らんが、爵位を貰った。
スペインと同じような特権で、「マールメ」と言う名の宮廷伯とのことで、スペインと同じように名ばかりの爵位で、日ノ本の外交官的な立場を重視してくれるとのことだ。
う~む・・・このまま行くと行く国行く国で同じことが起こりそうだが・・・
女王様はスペインに対抗してなのだろう、5隻の無関税をくれた。
後々、日ノ本の帰国の挨拶の為にスペインに戻ると、同じく王様も5隻に増やしてくれたので、追加でまた2隻建造することとなる。
★~~~~~~★
「猪・鹿・蝶、そっちは片付いたか?」
「はい、春様」
「こっちも終わりました」
「余裕でした」
野盗に襲われた者たちを助けたが、言語が通じない。
身振り手振りから感謝していることは間違いないようだ。
「
言葉が全く解らず、猪・鹿・蝶(
「|ᑐᑭᓯᒍᓐᓇᖅᑑᔮᖏᓐᓇᒪ ᐅᖃᐅᓯᕐᒥᒃ.《言葉が通じない様だな》」
助けた者たちの代表者らしき男が何か言っているが、こちらと同じく言葉が通じないことを嘆いているのであろう。
「|ᓄᓇᓕᕋᓛᖅᑕᖃᖅᑐᖅ ᖃᓂᑦᑐᒥᑦ, ᒪᓕᒃᐸᖓ《近くに村があるからついて来てくれ》」
ついて来いと言う様な身振り手振りだ。
恐らくは助けたお礼に何かするからついて来いと言う事かもしれないが、如何すべきか迷う。
「ついて来いと言う事だろうな」
「恐らくは・・・」
鹿が3人を代表して答えた。
よし、とりあえず着いて行こう。
見るからに純朴そうだし悪い事にはなるまい。
その者たちの後を着いて行き、半刻ほどで集落へとたどり着いた。
〇~~~~~~〇
主人公はイングランドに上陸です!!
息子の春長(春)はある場所へとたどり着きました。
ネタバレとなるかもしれませんが、春たちが辿り着いたのは北アメリカ大陸で、アラスカの地となります。
謎の言語はイヌクティトゥット語となります。
カナダのエスキモー系民族のイヌイットにより広範に話される言語なのですが、そこら辺の歴史や色々はあまり詳しくないのでご容赦を!!
さて、主人公サイドもイングランドのエリザベス1世が登場しました。
彼女は本文中で書かれているように有名なイングランドの女王で、「栄光の女人《Gloriana》」等とも呼ばれました。
中々の波乱万丈の人生を歩んだ女性で、ヘンリー8世の王女として誕生したのですが、生まれて2年半後に母であるアン・ブーリンが処刑されたことにより、庶子とされたという初っ端から中々の人生波乱の幕開けから始まり、弟のエドワード6世(9歳で即位)の治世では姉たちの王位継承権を無効にした為、一時的に継承権が無い状態となります。
続いてメアリー1世(フェリペ2世の奥さん)の治世になると、プロテスタントの反乱を計画した容疑で1年近く投獄されたと云われています。
しかし、このメアリー1世が崩御すると王位を継承者となり彼女の治世が始まります。
エリザベス1世の治世では優秀な顧問団に支えられたと云われるのですが、最も有名なのがウィリアム・セシルと言う名の男爵です。
重臣中の重臣と言われ大蔵卿・国王秘書長官を歴任しました。
大蔵卿は大蔵大臣、国王秘書長官は内務(国務)大臣の様な役職です。
エリザベス1世の代名詞としては作中で書きましたが「
しかし、女王なので世継ぎ問題があり、最後の求婚者は22歳年下だったと云われます。
スペイン王フェリペ2世も彼女に求婚したようですが、拒否されたようです。
彼女の治世時に起こった事件として最も有名なのはアルマダの海戦でしょう。
当時、世界最強と言われたスペイン無敵艦隊を海戦で撃破しました。
しかし、その後、彼女は大量の難民で四苦八苦したようです。
そもそも、スペインがイングランドを責めようと思った原因は主にイングランド側にあります。
両国は宗教問題やイングランドのネーデルラントへの介入によって悪化したいたのに加え、イングランド私掠船によるスペイン船や入植地に対する海賊行為が頻発していたことからフェリペ2世が重い腰を上げる結果となりました。
この戦いの海戦でスペインは約130隻の艦隊を投入したと云われています。
しかし、スペインは海戦に負け、帰還途中に嵐に会い、帰り着いたのは67隻で死者約2万の損害を被り、スペイン衰退の予兆となったそうです。
ただし、海戦後にイングランドは反攻作戦に失敗し、戦争の主導権を失いました。
スペインは艦隊を再建し直し制海権を死守し最終的にはスペイン有利で戦い自体は終結します。
この海戦で名を馳せた人物が居ます。
イングランドの艦隊副司令官を任された人物で、名をフランシス・ドレークと言います。
この人物も中々面白い経歴の人物で、奴隷船の船長→海賊→イングランド人として初めて世界一周を達成→海軍中将・叙勲→プリマスの市長→艦隊副司令官となります。
一介の奴隷船の船長が海軍提督に上り詰めた立身出世の人物なのです。
実は国民的な漫画「O〇E P〇ECE」の登場人物は結構歴史上の人物が多く、このフランシス・ドレークもモデルとされた一人といわれます。
胸に「X」マークで、元海軍少将で、最悪の世代の一人、リュウリュウの実(古代種)のあのキャラはこの人物がモデルだと言われますね~
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