第193話
安土城は巨大な城の為まだまだ完成は先のようだ。
信長も偶に視察と称してやって来たついでに剣術指導を受けて帰って行く。
信長が指導受ける時って皆が遠慮して近付かないんだよね~
俺は家来じゃないし、特に敬遠したり遠慮したりなんてしないよ。
「織田殿、それは悪しゅう御座る」
「ぬぅ?」
信長に立ち稽古で悪い部分を指摘したり、普通に他の者と同じ指導をする。
権力者に媚売ったりとかしないよ~元々が仕える気も無いし、信長に仕えるとか・・・肩凝りそうだわ~
「丸目殿は儂にも遠慮されぬの」
「え?遠慮して欲しいので?」
「いや、そのままでお願い申す」
「解りました」
信長が短気と聞いていたけど、そんな事は全然無いね~
お猿さんの方が短気だよ。
俺にとって信長が迷惑なのは俺含めて配下や息子や弟子を勧誘することかな~
さて、又左さん(前田利家)がやって来た。
「肥後以来ですな」
「そうですね」
一緒に来た武将は誰だろうか?
がっしりした体つきで、眼光鋭い人物だ。
「
「お~こちらは」
紹介しようとした又左さんを手で制し、その人は自分から名乗った。
「柴田権六と申す」
「丸目蔵人と申します」
柴田勝家がやって来た。
立派な髭を蓄えた如何にも猛将と言った感じの人物だ。
話してみると未来で語られるであろう「猪武者」と言った感じではなく、それなりの教養を感じる人物だった。
初めて話した感想としては、律儀そうな人物だ。
しかし、懐も深そうだし、お猿さんに敗れる・・・うん、お猿さんはやはり戦国最強の運の持ち主だと思うよ。
今回は主君の信長への挨拶と軍団の編成でこちらに来たそうだ。
お猿さん(木下藤吉郎)も柴田さんの傘下で北陸方面軍に移動となる。
安土城の縄張が粗方終わったのでお猿さんたちはお役御免となり、次の任務が柴田さんの支援とのことだ。
お猿さんと柴田さんは犬猿の仲と聞くが、大丈夫か?
まぁ織田家の事に口出しできる立場でもないので「仲良く頑張ってね」としか言えんけどね~
柴田さんがお願いして来た。
「時に」
「何でしょうか」
「宜しければ、剣術指導を
「いいですよ」
「おお!・・・しかし、某は上様(織田信長)に北陸方面軍の総指揮を任されておりまして・・・」
「そちらに伺えば宜しいか?」
「来て頂けると?」
「丁度、お猿・・・木下殿がそちらに組み込まれると聞き及んでおりますので」
「猿めが・・・それは誰にお聞きで?」
一瞬苦い顔をして、取り繕う様に誰に聞いたかを聞いて来る。
「あ~織田殿に聞かされました・・・」
「上様に!?・・・左様ですか・・・」
う~ん、やっぱり、犬猿の仲なのね~
信長から何故か意見を求められたけど・・・
★~~~~~~★
「織田殿、それは悪しゅう御座る」
「ぬぅ?」
丸目殿は儂を遠慮なく扱きよる。
その
天下を手中に収めた今となると皆が皆遠慮して忖度し儂に接する。
元からの家臣の者たちも以前以上に遠慮するようになったと最近感じる。
「丸目殿は儂にも遠慮されぬの」
「え?遠慮して欲しいので?」
いや、今までのままが心地良い。
松永(松永久秀)に丸目殿の事を聞けば、かつての主君であった三好殿(三好長慶)にすら遠慮も無く接していたと言う。
三好殿も儂と同じ気持ちだったやも知れぬ。
「いや、そのままでお願い申す」
「解りました」
剣術の指導の合間の休憩時に丸目殿に少し話を聞いてみようと言う興味が出て話を振った。
「猿めの仕事も一段落したようじゃて、次の仕事を振ろうと考えておるが、丸目殿は如何される?」
「あ~お猿さんのここでの仕事は終わりですか」
「次は北陸の柴田の下に援軍として着けようと思うておるんじゃが」
「お猿さんと柴田殿ですか・・・」
「何かご意見でも?」
「いえ、仲があまり良くないと聞いておりますが」
丸目殿は諜報に力を入れていると聞くが、織田の内情まで知っているようじゃ。
いや、猿が話したか?
「どう思われる?」
「どうとは?」
「猿を
丸目殿は少し考えてから答えられた。
「無理ですな」
「無理ですか・・・」
「はい」
「何故無理だと?我が命で行くのですからお互いそれなりに譲るのでは?」
また少し考えてから丸目殿は答えた。
「彼らは水と油です。無理に混ぜても最終的には分離します。遅いか早いかで言えば早い段階で事が起こると思いますよ」
「ふむ・・・」
儂もその問題はあると思うておるが、子供の我儘の様な事をするか?という考えもある。
儂が納得していないと思うたのか丸目殿は更に語る。
「そうですね~元々不仲なのですから意見が衝突すれば、お猿さんが戦線を離脱してしまうとかありそうですな」
「まさか・・・猿が?・・・」
「元々そうなると解っていて行かせるのも面白そうですな~」
「ほう!もし猿めが戦線を離脱しても咎めるなとでも?」
丸目殿は猿と仲が良いで庇うかと思えば、そうでは無い様だ。
「いえ、大激怒して叱責してやればよいのです」
「何故?」
「次の戦ではお猿さんが死に物狂いで頑張るんじゃないですか?」
「ふははははは~ではそのように致しましょう」
「いや、態々仲悪い者同士を組ませるとか」
「いえ、猿めには死ぬ物狂いで頑張ってもらいましょう(ニヤリ)」
「織田殿も酔狂ですね~(ニヤリ)」
丸目四位蔵人殿は知り合って話してみれば中々に面白き御仁だ。
近衛殿も言っておったな。
さて、如何すべきか迷っておったが、猿めを北陸に行かせて、権六(柴田勝家)と仲違いして仮に戦線離脱して戻って来たら大いに叱責して死に物狂いの活躍を期待して使うとしよう。
今から猿めがこちらに戻って来て叱責することが楽しみで仕方なくなって来た。
〇~~~~~~〇
次は北陸編!!
本当は上杉謙信と以前会っていて織田と上杉の衝突を仲裁する予定で考えていましたが、ストーリー変更の影響で会っていません!!
まぁ一応は肥後大平神社に上杉謙信が人を送った訳ですから元のストーリーでも良いのですが、別のストーリーを考えようと思います。
さて、この木下藤吉郎が北陸に援軍として柴田の傘下に組み込まれることは史実でありました。
上杉謙信が加賀国にまで進出してきたことで軍議が開かれたのですが、その場で柴田と木下の意見対立が起こります。
秀吉が戦線を離脱してしまい足並みが乱れたことで、勝家は七尾城の救援に向かうが間に合わずに七尾城が陥落したため、周辺の拠点に放火しつつ退却したと言われています。
この知らせを受けた信長は、勿論、秀吉に大激怒して叱責したと言われます。
この時、秀吉は進退に窮したのですが、松永久秀が謀反を起こします。
秀吉は織田家当主の織田信忠の指揮下で佐久間信盛・明智光秀・丹羽長秀と共に松永久秀討伐に従軍して、功績を挙げたそうですが、この後、秀吉は中国征討を任されますので、汚名を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます