第40話

「お初にお目に掛かります、生国は肥後、某は丸目蔵人佐長恵と申す。兵法修行にて上泉殿に一手」

ぞ!!」


え~と・・・間違いちゃいました・・・

名前間違うとか失礼極まりないのは理解しているのだが・・・あれ?おかしいな~


「失礼致しました」

「うむ・・・」


凄い不機嫌そうな上泉師匠・・・これはヤバいぞ・・・何とか打開策を考えないと弟子入り却下とかシャレにならん。


「え~と」

「何じゃ?」


仕方なし、ここは神様仏様に御すがりするより思いつかぬ。


「じ、実は」

「実は?」

「はい、実はにて上泉信綱殿に弟子入りするようにと言われまして」

「ほう、それでか!!しかし神が名を間違うか?」

「はい、そうですね・・・(タラリ)」

「ふむ・・・まぁいい」


少し機嫌が治った?・・・初めて会う相手なのでよく解らん。

え?初めてじゃなくても解らんだろうって?・・・そんなこと気にするな!!

でも何か考えとかないとこれは不味いぞ・・・

あ、俺に官位をとか言ってたな!!これは使えるか?俺じゃなく師匠に官位を授けて貰おう!!よし、いい案だ!時間ある時に山科様に手紙でお願いしておこう!!


「立合いたいという事で良いのだな?」

「はい、是非とも!!」


は~良かったよ~歴史通り!!

でも、前世の道場の爺さんの話ではここで袋竹刀ふくろしないが登場してって聞いたな~結構な名場面で、生意気な若い丸目を袋竹刀で指導してって・・・師匠が普通に木刀を持ってブンブンと素振りして御座る・・・


「あの・・・付かぬことをお伺いするのですが・・・」

「何かな?」

「袋竹刀はお使いには?」

「今を時めく今九朗判官殿に袋竹刀では失礼かと思うてな・・・あら?何故、袋竹刀を知っちょる?」

「え・・・そう!です!!」

「今思いついたような言いざまだったような?」

「ギクッ!・・・です!!」


ジッと俺を見詰める師匠。

背中に嫌な汗が流れます・・・自業自得?五月蠅い黙れ!今はお前たちの相手をしている暇はない!!


「まぁよい、一手ご指南いたそう」


よし!乗り切った!!

危ない危ない!木刀を袋竹刀に持ち替える師匠。

まだ師匠じゃないだろうって?ふふふふふ~ここまで来れば弟子入り間違いなし!!

なんでこんなに苦労しているのか・・・実は北条さんとこから山科様が用意してくれたお手紙返してもらうの・・・忘れちゃいました!!

うっかりだよね~すっかり忘れていたよ。


試合が始まった。

師匠の構えは下段、地の構えである。

おお!!銅像の構えじゃあ~りませんか~♪

実物で見ると感動一入ひとしおだよね~♪

俺は何時もの袈裟斬り特化の上段斜め。

さて、さて、何から試そうか?・・・うし!ここは秘剣燕返し行っとく~?


「では参る!!」


俺は速攻で間合いを詰めて燕返しを使うが見事に躱された。

流石、師匠!流石、聖剣!!

次は・・・塚原さんとこ行っとく~?

一之太刀いちのたち・・・う~ん惜しいが袋竹刀で受けられた。

は~流石だね~と思っていたら・・・


「丸目殿!」

「何でしょうか師・・・上泉殿・・・」

「失礼仕った!某が教えるこ」

「あいや、またれい・・・」


え?何を言おうとしている?若しかして「教えることは無い」とかじゃないよね・・・調子乗り過ぎた?


「う・・・やられた!!」


俺はその場で倒れ伏す。

チラリと師匠の方を見るとあきれ顔・・・


「丸目殿・・・」

「流石は天下にその名を知らしめる上泉殿!!某ではかなわなんだ・・・」

「はぁ?」

「是非とも弟子にして頂きたい」

「いや、それは・・・」


重要な事なので2回言いました!

そのまま土下座していると師匠がため息をして「相分かった」と答えられました!!

うし!歴史の強制力とはにも恐ろしい物とは!!

強制力?今のが?って脳内イマジナリーフレンドが囁きますが無視です無視!!


(イマジナリーフレンドとは、想像上の友達のことで、小さい子供さんなどがこの空想の友達を作ることがあるそうです。作者の母の友人のお孫さんが昔、小人を見たと言っていました。これもイマジナリーフレンド?でも、スーツ姿にメガネしたやせ型の中年男性で、手に竹槍装備してみのガッパしてたそうですが・・・おっと、学術的にはIC(イマジナリーコンパニオン)と言うそうです。)


★~~~~~~★


後北条方より一人の若者が某の下に兵法修行で訪ねて来た事を伝えられた。

何故に後北条より連れてこられたのかはよく解らんが聞けば畿内で名を馳せた「今九朗判官殿」と言うではないか。

実に面白いと思いあってみれば、眼光鋭く鋭気に満ちた実に才溢れた若者に見えた。


「お初にお目に掛かります、生国は肥後、某は丸目蔵人佐長恵と申す。兵法修行にて上泉殿に一手」

ぞ!!」


流石に間違われるとは思わなんだ。

それなりに名が知れていると自負があったが間違われるとは・・・

心の動揺を隠す為押し黙ると相手は気分を害したと思ったようであわあわと慌てよる。


「失礼致しました」

「うむ・・・」


相手を威圧する気も無いが自分の自惚れを隠す為に変な態度となったことで儂も押し黙ると更に相手が慌てだした。


「え~と」

「何じゃ?」


ぶっきら棒な受け答えとなってしまったがきっと相手の緊張がこちらに飛び火したのであろう。


「じ、実は」

「実は?」

「はい、実はにて上泉信綱殿に弟子入りするようにと言われまして」

「ほう、それでか!!しかし神が名を間違うか?」

「はい、そうですね・・・(タラリ)」

「ふむ・・・まぁいい」


口下手な儂にしては良い受け答えが出来たとほくそ笑むが相手は更に焦りだす。

早く一手相手と立合うか・・・


「立合いたいという事で良いのだな?」

「はい、是非とも!!」


相手は喜んでおる。

「今九朗判官」と呼ばれる者の腕前は如何であろうか?

袋竹刀をお披露目と思うたが失礼だろう。


「あの・・・付かぬことをお伺いするのですが・・・」

「何かな?」

「袋竹刀はお使いには?」

「今を時めく今九朗判官殿に袋竹刀では失礼かと思うてな・・・あら?何故、袋竹刀を知っちょる?」

「え・・・そう!です!!」

「今思いついたような言いざまだったような?」

「ギクッ!・・・です!!」


神仏とはやはり先を見通す人知の及ぶものではないと畏怖を覚えるが、今思いついたような言い様が気になる。


「まぁよい、一手ご指南いたそう」


仕合が始まると今までの陽気な雰囲気ががらりと変化する。

掛け声と共にこちらの間合いを埋めてくる。

初手から秘剣と思われる技を使う丸目殿。

そして・・・これは、塚原殿の一之太刀?

辛くも両方の秘剣を躱したが背中に冷たい汗が流れ落ちる。


「丸目殿!」

「何でしょうか師・・・上泉殿・・・」

「失礼仕った!某が教えるこ」

「あいや、またれい・・・」


儂の教えることなどない様な鮮やかな手前。

技に入る前の動作も儂の動きによく似ておるが教えてないので独学で、いや、天狗に教えられた?

「教えることなどない」事を伝えようとすると何かを察知したのかの様に言葉を遮る。

何故じゃ?

そうこうしていると、何故か倒れ伏す丸目殿。

急な病か?これはいかん!!


「う・・・やられた!!」


へ?この御仁は何を言っているのか理解が追い付かん。


「丸目殿・・・」

「流石は天下にその名を知らしめる上泉殿!!某では適わなんだ・・・」

「はぁ?」


本当に何を言っているのか。


「是非とも弟子にして頂きたい」

「いや、それは・・・」


意志が固い。

これは天恵なのかもしれぬ。

仕方なく弟子として認めたが・・・しかし、この者と関わると何やら面白いことになりそうで心躍こころおどる気になってくるから不思議な事じゃ。

さて、戦に負けたが儂ももう一度兵法修行に旅に出るかどうするか思案していたところ。

前々から考えていたがこの御仁に会い、いや、この弟子に会い踏ん切りがついたぞ。

世の中は広い儂の知らぬような猛者がまだまだいるのだろうがこのような者と会えると思うを心躍る。


★~~~~~~★


主人公が上泉信綱に弟子入りしました!!


上泉信綱は上泉箕輪城みのわじょう落城までは名乗っていたそうです。

落城後に落城させた武田信玄、当時は武田晴信が家臣にならないかと誘ったそうです。

しかし、上泉はそれを断ったのですが、晴信は残念がりましたが仕方ないと諦めていみなの信の字を贈ったそうです。

それで信綱となったそうです。

これを偏諱授与へんきじゅよと言い偉い者が贈るのは贈られた者にとって大変名誉なことで、受けるのが通例となります。

敵方の者に偏諱授与するのは可成り珍しいことです。

また、落城した箕輪城の城主の長野業盛なりもりからも上野国一本槍の感謝状を貰ったそうです。

賤ヶ岳の合戦などでは七本槍と言う活躍した者を槍に例えて讃えております。

一本槍という事は他に類を見ない一番活躍したと認められたことを表します。

このように両軍から評価された上泉信綱とはこの戦いでどんだけ活躍したんですかね~

長野業盛なりもりはあの有名な上州の黄斑おうはんこと長野業正なりまさの息子です。

黄斑は虎のことです。

俺!生黄斑YA~♪


次話では上泉門下四天王出てきますよ~

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