第6話

こちら現場の丸目です!!

昨日に引き続きまた神屋さんのお店に突撃訪問しておりますが、店に入った途端に店員たちが一斉にこちらを見る・・・何だこの反応・・・

そうこうしていると昨日最初に対応してくれた店員さんが慌てて俺の前にやって来て、「丸目様お待ちしておりました!旦那様も首を長くしてお待ちです!!」と言ってくる。

その後は下に置かないと言うのはこういう事だよね~というような応対であれよあれよと言う感じで立派なお部屋にご案内頂きました。

案内してくれた店員さんが「旦那様も直ぐに伺いますので暫くお待ちください」と言って出て行きました。

目の前にはおもてなしの白湯と多分、干菓子ひがし

白湯を一口飲み干菓子を一つ摘みモグモグタイム。

「博多と言えば通り〇んとか博多〇らぶらじゃないの~」とか前世で食べた博多のお土産の銘菓の事を言いながらモグモグしていると、神屋さんが入室して来た。


「何やら聞き慣れないことを申されておりますね」


あ、独り言聞かれちゃったか・・・まぁここは何もなかったかのようにご挨拶。


「お言葉に甘え早速伺いました」

「ええ、首を長くしてお待ちしておりましたよ・・・先ほどの」

「先ほどの?」

「「博多と言えば通り〇んとか博多〇らぶらじゃないの~」と聞こえましたが何のことだかさっぱりでして・・・」


やべ、完全に全部聞かれてます。

さて、どうやって誤魔化すか・・・


「実は、昨日の夜に宿で寝ていると夢の中で神様に接待を受けまして・・・」

「なんと!それはどの様な神様だったのでしょうか?何か言っておられましたか?丸目様は神と対話できるのですが?」


あ・・・やべ~この時代の人ってこの手の事信じちゃうだった・・・前世ならこの後は「寝言は寝て言え」と言われ「だから夢の話だって~」て返して「そうだった!ただの夢の話かい!!」て三段落ちで笑いになるのに・・・

多分、今、俺の顔は盛大に引き攣っている。


「それで、丸目様」


ええい、ままよ!!


「この近くに恵比須様とか・・・」


確か博多近郊で商売の神様と言えば十日恵比寿!!


「いえ、御座いません・・・」


あれぇ~?無いの・・・マジで?・・・如何しよう・・・

もうこうなれば適当に喋っとくか。


「実は商売の神と言えば恵比須様、その恵比寿様が「商売の街によう来た、商売を繁盛させる簿記を教えに来るとは天晴だ」と申されまして・・・」

「おお、それでそれで」


神屋さんの食い付きが凄いな・・・適当な作り話なのに申し訳ないが今更「嘘~」とか言えないぞ・・・


「それで、恵比須様よりご接待頂きまして「博多の銘菓じゃ」と言われて頂いたお菓子が通り〇んと博多〇らぶらと言われまして・・・」

「それはどんなお味で」


圧が凄い・・・


「え~と何方も食べたことない・・・ほっぺの落ちるような美味で・・・」

「神のお渡しになる物ですからそれはそれは美味しかったでしょうね~」

「はい、とっても・・・」


神屋さんはうっとり顔で居たが何やら考え込むような顔で俺に聞いて来る。


「それは再現可能でしょうか?」

「え~と・・・」


通り〇んはバターとか要るよな?そもそも素人であのお菓子再現は・・・無理。

博多〇らぶらは求肥ぎゅうひの餅とこしあんだから・・・何とか可能?


「1つは再現できる・・・かも?・・・」


ニンマリと笑う神屋さん。

あ~この流れは多分再現をお願いされるな・・・

前世で自作の大福作ったので求肥は作れるから何とかなりそうだがこの時代って砂糖って高級品だし黒砂糖だよな?それとも代用で蜂蜜・・・後程確認だな。

更に神屋さんから恵比須様の事を根掘り葉掘りと聞かれて「恵比須神社を博多の町衆で作るか?」とか言っておられますが・・・十日恵比寿無いのは誤算だがまぁこの地で恵比須様が信仰されるので許してください恵比寿様。

(※十日恵比寿神社:1592年創建です。一月十日に創建されたので十日恵比須と言われます。この時代はまだ・・・)


神屋さんが落ち着くと何やら言い難そうに昨日のことを謝罪して来た。


「丸目様、昨日は大変ご迷惑をお掛けしました」

「いえいえ、突然来たので仕方なき事、某はこれからこちらでお世話になる身ですので気にしないでください」

「いえ、そういう訳には参りませのであの者の処遇は丸目様の・・・」


あ、この流れは・・・俺の一言で彼の人生は決まる・・・確かに失礼ではあったが突然来た者がこの商店の主の名前を言えば疑ってしかるべきではある。

少し態度はデカいし、いや、可成り態度デカかったな、それに太々しく、上から目線・・・ゲフンゲフン

まぁ頭には来たが紹介状も無しに来た俺も俺なのでこれからお世話になる所で最初から波風は勘弁である。


「私の一存で彼の処遇を決めるのですね」

「はい、そのつもりでおります」

「では、彼をここに呼んでください」


そう言うと「誰か~」と神屋さんが叫ぶと「は~いお待ちを」と言う声の後に店員さんが1人やって来て神屋さんから例の彼をここに呼ぶようにとの事付けを受け出て行った。

待つ事暫し、意気消沈して昨日の勢いは如何したの?と言いたくなる様な件の彼が現れた。

彼が入室すると部屋の空気が二段階ほど重くなった気がするが・・・気のせいとは言えないな。

仕方ないのでこちらより声を掛ける。


「昨日は世話になったな」

「へぇ、申し訳ございません」


彼は土下座しておりますが神屋さんは険しい顔でこちらを見ております。

さて、どうしよ~

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