第125話

師弟でガチバトルやるとは思わなかった様で話題になっているようだ。

まぁ、普通は師匠に花を持たせるとかするだろうけど、俺はそんな事は関係ない!!

弟子が実力をつけて俺に勝つならそれも甘んじて受け入れるぞ!!

それに、これから奥さんにしようと言う者に「手加減してね~」とか言うの格好悪いだろ!!

それで負けたらざまあない?・・・天の声さんがそう言われますが、負けなかったから良いじゃん!!

さて、休憩に入ったが真里たちが実に甲斐甲斐しくサポートしてくれる。

濡れタオルに飲み物まで用意してくれております。

美羽も先程まで戦っていたので同じく休憩中で、俺の横で俺と同じく濡れタオルに飲み物を手渡され、汗を拭き、飲み物を一気飲みして、「この一杯の為に頑張った!!」とか残業終わりの飲み屋の親父の様なセリフを吐いている・・・

うん、気持ちは解るよ~俺も先程、同じ様なセリフ吐いてたし・・・

間違いなく俺の影響だな・・・


「美羽」

「はい!長師匠!!」

「さっきの技な」

「はい!!」


期待の眼差しを俺に向けて来る。

シャイニングウイザードの日本名、「閃光魔術」は流石に無いな・・・

さて、閃光と言う物から連想するのは稲光だろう。

稲光脚いなびかりきゃく・・・何か語呂も悪いし、必殺技感が無い・・・

稲妻・・・雷・・・!


「美羽、『雷光らいこう』と言うのはどうだ?」

雷光らいこう・・・!!良いです!!凄くいい!!強そうな名ですね!!」

「膝を土台にして飛び上がり蹴りを放ったからあの技は雷光蹴りかな?刀で斬り付ければ雷光斬りてとろこだな」

「おお!是非にそれで!!」


シャイニング系の技は『雷光』と言う事とした。

その内、本当のシャイニングウイザード・・・雷光膝蹴り?を教えよう。

確かに使う機会は少なそうだが、咄嗟の攻撃オプションとして雷光系の技は意表も付けるし膝ならそれだけで相手を倒せそうだ。

膝の怪我する恐れもあると聞くし、戦場では殺傷力マシマシの膝当てを用意して着けるのもありだな。


「長師匠、美羽の技は師匠の知る別の技でもあるのでしょうか?」


真里が鋭いな。

俺の考えを読む様にそう聞いて来る。


「そうだな、美羽の技を雷光蹴りと名付けたが、俺の知る技だと膝蹴りだな」

「それは恐ろしく威力のありそうな技ですね」


感心した様に真里が言うのを聞き、美羽も「あ~膝蹴りだと更に攻撃速度速い!!」と言っている。

美羽の頭の中ではもう既にシャイニングウイザードが完成しているのかもしれないな。

一応、膝での攻撃は立合いの試合では禁止することとした。

威力もあるので相手に深刻なダメージを与えてしまうことは勿論、防具も付けずに使えば使った者も膝を傷めるだろうし、本当の必殺技は余人に見せる物ではない。

「秘奥義とする」と言えばその場にいた弟子たちは納得したようだ。

技名を聞いた係の者より噂が伝わり美羽は「雷光の美羽姫」と呼ばれるようになった。

そして、風神雷神からだろうか?真里も「疾風の真里皇女」と呼ばれるようになり、たちまち2人の字名が広まって行った。

あれぇ~?俺は「助平」なのに高弟の2人の字名がカッコいいぞ・・・

あ~一応「今義経」とか呼ばれてたな・・・「助平」よりましか・・・

そうこうしていると試合の開始時間が来たようで、係の方から「そろそろ刻限になります」と告げられたので、軽く体を動かして確認してみるが、疲れは残っていないようだ。

うん!宗厳さんには悪いが、弟子との真剣勝負で体も十分に温まり、状態は最高だ!!

確認するようにストレッチをしたり素振りをして再度気持ちを高めていく。

「準備いいですか?」と声を掛けられたので「大丈夫」と答えると試合場に案内された。

宗厳さんと共に入場し、天子様にご挨拶。

向かい合い構えを取る。

俺は上段斜めに構えて合図を待つ。

宗厳さんは正眼に構えて合図を待つ。

「ドン!!」と合図の太鼓が鳴ると宗厳さんが一気に間合いを詰めて来た。

幾つかの試合を見て俺が先の先を好むことを知っての事であろう。

突いて来たのでそれを木刀で捌く。

おいおい、三段突きかよ!!

幕末の新選組の沖田総司が得意としていたと言うが、宗厳さんも三連続なのにそう見えない程の速い突きだ。

一突き目二突き目を躱し三つ目を木刀で払う。

ローキックが飛んで来たので飛んで躱す。

流石ですね~

剣術は前蹴りやハイキックは珍しいが、ローキックは古来より使われる崩しの技だ。

ローキックを躱しつつ跳びながら袈裟に斬るが躱されて位置が入れ替わる。

丁度、宗厳さんから見て俺が背を見けた状態になったのをスキと見て上段から俺を狙って一撃を放って来たのを頭上で木刀を水平斜めに構えて攻撃を滑らせるようにいなし、俺は回転しながら回し蹴りを放つ。

手応えあり!!

見れば腕をクロスしたような形で蹴りを受けた様で宗厳さんが顔を歪ませている。


「四位蔵人様は足癖がお悪い」

「柳生殿、様は不要です」

「さ、左様で・・・では何とお呼びすれば?」

「そうですね~長とでも蔵人とでも好きな様に」

「されば、蔵人殿と」

「はい、そうお呼びください」


お互いにニッと笑い構えを取りなおす。

会場は「おお!!」とどよめき「ワー!!」と歓声が上がる。


「されば拙者も但馬守たじまのかみとお呼びください」

「相分かった。では、但馬守殿、押して参る!!」


袈裟斬りからの燕返しを放つも躱された。

まぁ見せすぎたかな・・・そして、更に間合いを詰めようとすると但馬守殿は前蹴りを放って来た。

おっと危ない!危うくカウンターでお腹に一撃を喰らう所だったよ。


「但馬守殿も足癖がお悪いようで」

「いやいや、蔵人殿に合わせておるだけです」

「左様で・・・」


う~ん、師匠もそうだったけど対応が早いよ!!

先程の攻防が嘘の様に間合いの取り合いと牽制で膠着状態に陥る。

初めて会った頃は8:2で勝てる自信があったが、今は6:4位かな?

負ける気は毛頭ないが、余裕と言う程ではない。

但馬守さんも研鑽を積んで好敵手になっているので油断できない。

しかし、俺も研鑽を積んでいるので本当に負ける気は無いよ、いや、寧ろ勝つことしか考えていない!!

さて、虎穴に入らずんば虎子を得ず!!俺は間合いを詰めて一気に畳みかける為に師匠を倒したコンボ技へと入ろうとしたが、前蹴りが飛んできて邪魔をして来る。

流石に見られた技は警戒されるか・・・

それにしても、但馬守さんは前蹴りを多用して来るな・・・!

俺は再度間合いを詰めようとした時、前蹴りが飛んで来た。

これを狙っていたので斜め前に躱して足を掴む。

そして、美羽に倣いプロレス技を発動!!

必殺!!ドラゴンスクリュー!!

まぁ知らない技を初見で対応するのは困難だよね~見事に但馬守さんはスクリューに巻き込まれて受け身も取れずに一回転し、強かに大地に転がった。

足も少し痛めたかもしれないな。

俺はすかさず間合いを詰めて木刀をそえる。


「う、参った」


やられた~と言うような顔で但馬守さんが負けを認めたことで、立合いの者が「勝者!!四位蔵人!!」と勝ち名乗りを告げる。

歓声が津波の様に押し寄せて来る。

上手く立ち上がれない但馬守さんに手を差し出して立たせて声を掛ける。


「良い試合が出来ました」

「左様で・・・して、最後の技は?」


う~ん・・・ドラゴンスクリューとか言って解らないよね~

またも命名しないとな・・・タイ捨流がどんどん戦国プロレスになっているが・・・気にしたら負けな様な気がする。


「咄嗟に思い付いた物でして、名はありませんが」

「左様で・・・しかし、凄い技でした・・・」


だよね~ドラゴンスクリューを初めて見た時俺も驚いたしね~プロレスラーはお約束で一緒に回転するけど、知らなければ普通に踏ん張る。

踏ん張ると膝のダメージが半端ないし、足の痛みで受け身どころじゃないから大ダメージ必至だよね~

現に但馬守さんは可成り痛そうだ・・・

投げられる寸前に但馬守さんも危険を察知して踏ん張るのを止めて一緒に回転したから大怪我までにはならなかったが、一ヶ月ほどは足の怪我で不自由するかもしれない。

う~ん技名か・・・回転するから龍巻?・・・語呂が微妙か?・・・龍巻じゃなければ嵐・・・何か違う・・・旋風つむじ・・・!辻󠄀つじかぜ何か気に入ったのでこれにしよう!!


「今思いつきました」

「ほう、良ければ技名を教えて頂けるか?」

「辻󠄀つじかぜ!!」

「辻󠄀つじかぜ・・・」


どや顔で自信満々に言ったが、そんな可愛らしい風じゃないだろう?的に思っちゃった?・・・まぁ技名とはそう言う物だ!!大げさに付けるか、技を隠す為に敢えて特徴だけを捉えて何気ない感じで付けるか!!

俺は後者を選んだだけだ。

さて、後は宴会じゃ!!


〇~~~~~~〇


丸目蔵人が優勝しました!!

決め技はまたもプロレス技!!

実は他の技も考えていました。

竜巻旋風脚かドラゴンスクリューか迷ったんですが、ここでは続けてプロレスうんちく入れたくて、ドラゴンスクリュー採用です!!

ドラゴンスクリューは派手な技ですので人気の技で、武藤敬司選手も雪崩式ドラゴン・スクリューと言う技を多用します。

他にも太陽ケア選手のオリジナル技で腕のドラゴンスクリューでタイガー・スクリューと言う技もあります。

ドラゴンスクリューは藤波辰爾選手が産みの親で、藤波選手のオリジナル技となります。

技名の由来は藤波選手のニックネームが「ドラゴン」なのでドラゴンスクリューと言う技名となった模様。

藤波選手は「無冠の帝王」「プロレスの神様」と呼ばれるカール・ゴッチに指導を受けていたそうで、その技術からインスピレーションを受けて作った技と言われています。

産みの親は藤波辰爾選手ですが、プロレスの必殺技の一つに押し上げたのは武藤敬司選手だと言われています。

1995年10月9日、高田延彦選手戦において、高田選手の蹴りをキャッチした武藤選手はドラゴンスクリューを繰り出し膝の靭帯を損傷させ、足4の字固めによる武藤選手の勝利で幕を閉じたそうで、これ以降、武藤選手のドラゴンスクリューからの足4の字固めは定番となったようです。

アメリカのリング界でも席巻した技でザ・ロック(ロック様)も使っていました。

ザ・ロックを知らない方居るかな?またの名をドウェイン・ジョンソンと言います。

ワイルドスピードでルーク・ホブス役の俳優さんで、2022年に「世界で最も稼いだ俳優」1位を取った方です。

今回語ったドラゴンスクリューと前回語ったシャイニングウイザードそして、延髄斬り(アントニオ猪木)、ムーンサルトプレス、バックドロップは私が初めて観て度肝を抜かれたプロレス技ですね~

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