第37話

さて、相手は誰だろうか?

後北条家での有力武将は多いが武寄りとなれば・・・もしや!北条の5レンジャーこと北条五色備ほうじょうごしきぞなえの代表格の黄レンジャー・・・違った、地黄八幡じきはちまんこと北条綱成つなしげだろうか?

う~ん、北条家来るなら見てみたい人リストの1人だが・・・そのリストは何だだと?

そんなの聞くまでも無いだろ?俺の独断と偏見で会ってみたい人リストだよ!!

はぁ?観光気分で兵法修行するなだと~失敬な!遊びと言う名の余裕なんだよ!!

リストラされた同僚が同じことを言ってたって・・・さて、対戦相手は誰だろうな~


どうやら相手が確定したようである。

壮年と中年・・・どっちだ?と言う位の年齢の武将があちらで木刀をブンブンと振ってござる。

何か眼光鋭く勝気そうな印象の40歳前後かな?位の方が先ほどまでの素振りを止めてこちらをにやりと笑っておりますが・・・相手にとって不足なし!!

多分名のある武将さんですね!!

俺、兵法修行者だから武将と言えど負ける気ないよ~

よく勘違いする人居るけど、兵法って何?って聞いたら軍学・兵学、つまりは用兵術と思うだろ?

孫氏の兵法とかまさにそれ。

でも、この時代の日本でと言えば、剣術を中心とした武術を指します!!

はいここ重要!間違いなく絶対に確実に!テストに出すぞ~覚えとけよ~(中学校の恩師風)

おい!ニッチ過ぎて誰もこのモノマネ解らないと思った奴!挙手!!

あ・・・スマン、9割以上の者が手を挙げたわ・・・

まぁそれはいい!良くない?蒸し返すな!!

簡単に言おう!はよ言えって野次聞こえたぞ~顔覚えたからな!

まぁいい・・・剣術で丸目蔵人佐長恵が負けるなど早々あってはならんのだ!!

もちろん、負ける気は毛頭ないけどな~


「準備は宜しいか?」


どうやら審判的に仕切を行う者が俺に声を掛けてきた。

俺は頷きながら「何時でも」と言うと審判も頷き仕切を始めた。


多目ため周防守すおうのかみ元忠もとただ、お相手仕る」

「丸目蔵人佐長恵、押して参る」


相手は多目さんと言う方の様だ。

お互いに一礼して言葉を交わすと構えを取る。

俺は何時も通りにタイ捨流の袈裟斬りの構えで相対す。

お相手の多目さんは正眼に構え合図を待つ。


「始め!!」


合図はあったがお互いに動かない。

構えから相手の力量や戦法を見ているのだ。

勿論、戦略で速攻で相手の間合いを詰めて戦うこともあるが、今はこちらの力量を見せる時でもあるがどうやら相手もさるもの、手練れの様である。

「構えから戦法を見るって何よ?」と思うだろ?簡単に分けると攻撃特化なのか防御特化なのか両方を同じ位考えたニュートラルなのかの3つになる。

相手の正眼に構えたのはニュートラル。

流派により色々な呼び名があるが、相手の正眼に切っ先を置く事から正眼の構えと言ったり、どんな変化にも対応できる攻防両得の構えで相手に水の流れの様に柔軟に対応できることから水の構えなど呼ばれることもある。

まぁ相手は臨機応変型と言う事だ。

比べてこちらの構えは完全に攻撃特化。

流石、薩摩の示現流の元となった流派!!

攻撃特化の構えは水の構えに対して火の構えなど呼ぶ流派もある。

また、上に構えて天を指しているので天の構えと言う流派もある。

じゃあ防御特化は・・・うんちくいいからはよ戦えって?

了解了解、解った解った・・・


俺は間合いを詰めて相手の間合いへと飛び込む。

多目さんも構えからこちらが攻撃をしてくることは想定済み。

こちらの木刀を対処してスキを突くようだ。

袈裟斬りが躱されて相手はそれをスキと見て木刀をこちらに振り下ろそうとした時、振り抜けたはずの木刀が跳ね上がって相手の木刀を下から跳ね上げる。

多目さんは予想外の軌道から自分の木刀を跳ね上げられて万歳みたいな態勢でスキだらけ。

すかさず俺は木刀を多目さんの首筋にあてる。


「う、参った・・・」


勝負あり!決め技は一度はやってみたい大技、秘儀、燕返し!!

巌流がんりゅうさんスマヌ、先に使っちゃった~テヘペロ


「先ほどのは油断しただけだ!!」


目の前の多目さんじゃなく松田うじがまっかっかで猛抗議。


「されば、もう一手」


俺はそういうと多目さんにもう一度勝負を持ちかける。

目を丸くした多目さんは直ぐに笑顔になり「一手ご教授願えます」と言い嬉しそう。

この人も俺と同じく剣術大好きな人らしく負けたことよりも未知の物を見て嬉しがってござる。

この人いいな~なら期待に応えて行っちゃいましょうか!!


多目ため周防守すおうのかみ元忠もとただ北条五色備ほうじょうごしきそなえの黒担当。北条氏康は中々やんちゃで戦で敵陣に攻め込み突出し過ぎた事があるそうですが、その際に独断でこの多目元忠が退却命令を出したそうです。氏康は後にそのことを感謝したと言う逸話があります。秀吉の小田原征伐までバリバリの現役で、72歳で討ち死にしたと言う生粋の戦人と言う人物です。)


★~~~~~~★


うんちく途中でしたので必要な方は読んでください。

防御特化の構えは下段の構えとなります。

流派により土の構え、地の構えなど言います。

陰陽五行いんようごぎょうの考え方が導入されており、木火土金水の構えと陰陽の構えがあります。

陽の反対側に構えたら陰みたいな物や上段が陽で下段が陰みたいな流派があり本当にまちまちと昔聞きましたが、そこら辺はよく解りません。

基本的には五行の構えと呼ばれる五つの構えがあります。

その五つそれぞれで特徴がありますが、この構えに対してはこの構えの方が有効と言う物があるため睨み合っていても構えを変えたりして牽制するものの様です。

野球のバッティングみたいな構えを八双はっそう八相はっそうの構えと言うそうです。

この構えは木の構え、陰の構えとも言われるそうですが、木ですから陰陽五行で言うと火に弱いとされますので火の構えの方が少しだけ有利的な感じの考え方ですが、勿論実力差や戦法、奥義などでそれを覆したりするようです。

主人公の使うタイ捨流の構えは袈裟斬りを狙い上段斜めに構えますので火の構えとなります。

多目の正眼の構えは水の構えで、構えだけ見ると多目が有利ですが・・・

燕返しは袈裟斬りしその剣先を躱そうと相手が下がった所に返しの刀で切り上げる動作となります。

今回は木刀を切り上げたことにしましたが、本来は胴を下から刺すか薙ぎます。

この技は最初の太刀で相手が下がるので更に追い掛けて切り上げる技なので成功率を上げるために巌流小次郎は物干し竿と呼ばれる通常より長い太刀を使ったなど言われますが、どこまでが本当なのか・・・しかし、恐ろしい奥義です。

本当に剣術は奥が深いですね~


★~~~~~~★

誤字脱字チェックしてたら34話で尺八しゃくはちが何故か八尺はっしゃくになってた・・・この作品の作風で完全にこの誤字を皆様が当たり前のようにスルーしたんだろうな~と遠い目になりました^^;

多分、八尺様がそろそろ登場すると期待した読者の方スマヌ!!

残念ながら八尺様の出番はこの作品では・・・多分ないと言い切れる自信が・・・

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