第187話
藤林の諜報部から織田家が総力を挙げて築城を行うとの知らせが報告書の一つあった。
多分、安土城であろうと思う。
建設予定地も近江国蒲生郡安土山と言うから先ず間違いないであろう。
この城は本能寺の変の後直ぐに焼失したことで有名で、幻の名城とも呼ばれる城だ。
是非とも見物したいと思っていたが、お猿さん(木下藤吉郎)が縄張奉行と言う役職に就いたそうだ。
そして、藤林の方に依頼として
もう10年程前になるかな?当時、肥後大平神社の建築の為石垣職人を探していた際に、紹介されて引き入れる形となった。
当時、比叡山の門前町の坂本に居を構えていたこの人々は、近隣で戦続きで困窮していた所に俺が声を掛けたのを機に本拠地を九州に移すことを決意した。
元々この
他にも宮大工さんで元々は尾張に居たと言う岡部
まぁ神社建設が終わった段階でどうするか確認したら切原野の生活が気に入ったので本拠地をここに定めると言う。
これから畿内とかで需要あると思うから依頼は受けるように勧めている。
丁度良いので、お猿さんに紹介しよう。
さて、お猿さんが城作りで一所に腰を据えるなら剣術指導も出来るよねと言うことで、俺も近江に行くこととした。
序に、安土城見学もいいね!!
先にお猿さんに手紙を送ると「ご紹介忝い、喜んでお待ちしており候」だってさ~
うん!今回は丁度良いのでハネムーン代わりに嫁さん子供たちも総出で連れて行く。
そして、子供たちの近習的に配置された藤林の元お子様連中、
そして、今回は弓ちゃんの妊活中につき長門守を留守居とした。
代わりにお金を藤林の統括として帯同させる。
「長様、ありがとうございます♡」
弓ちゃんは大喜びだ。
長門守と夫婦水入らずで頑張れ!!
★~~~~~~★
「半兵衛!」
「藤吉郎様どうされました?」
「長さんが来るぞ!!」
「
「いや、そちらもお願いしておる」
「左様ですか」
主・藤吉郎様が「ながさん」と言う人物が来ることをお喜びである。
竹中様と話されて居るが、どんな人物なのであろうか?
お二人のやり取りを眺めていると、それに気が付いた藤吉郎様が来い来いと手招きされた。
「儂の大恩人が来るで、粗相の無い様にな」
「「「「「はっ!」」」」」
私を含めた小姓たちが一斉に平伏して返事をした。
藤吉郎様はご機嫌で「こうしてはおれぬ」と言って急ぎ何処かに向かわれた。
「
「ああ、丸目四位蔵人様じゃろうな~」
「だよな~」
「
「何じゃ?」
「お前は憧れておったの~」
「おう!お会いするのが楽しみじゃ!!」
市松と夜叉若の二人の話を何とはなしに聞いておったが、やはり丸目四位蔵人様か・・・
何でも藤吉郎様のことを「お猿さん」と呼ぶらしい。
「猿」等と藤吉郎様を呼ぶのは
幾ら官位持ちとは言え、一介の浪人が織田家の要石にして城持ちの藤吉郎様に「お猿さん」等と呼ぶは不敬である。
皆はそんな事は気にしないといった風であるし、言われておる本人の藤吉郎様もその親しげさをご自慢される。
竹中様もそれを当たり前のことと捉えておる節がある・・・
私は納得できぬ!来ると言うのであれば、一言申し上げるべきではなかろうか?
★~~~~~~★
忍びの者が儂に知らせて来た。
「上様」
「何じゃ?」
「お耳に入れたき儀が御座いまして」
身分が上がるにつれ、忍びの者も言葉を選び用件を言う前に断りを入れる様になってきおった。
「はよ言うてみい」
「実は・・・」
忍びの者は面白き知らせをくれた。
うむ、実に面白きかな!!
「ほ~そうか、そうか、良いことを知らせてくれた!」
「いえ、物の序に御座いまする」
「して本題は?」
「はい、三好
「はぁ?数年前には重臣の篠原右京進(篠原長房)を攻め滅ぼしよったな・・・こちらとしては大助かりであったが・・・三好阿波は阿呆なのか?」
篠原右京進(篠原長房)を自分たちで排除すると言う愚を犯してくれた事には感謝しかない。
今の三好で最も手強き男であった。
忍びの者は少し考えた素振りを見せてから答えよった。
「恐らくは阿呆なので御座いましょう。今度は阿波を失い兼ねぬ程の大混乱とのことで御座いまする」
「左様か・・・」
「はい、そして、長宗我部が阿波を狙う気配ありと」
あの野心家はやはり動き出しよったか。
土佐を平定し、周辺を併呑して四国を統一すれば、次に狙うは天下やもしれぬが、井の中の蛙、いや、鳥なき里の蝙蝠であろう・・・里ではなく
「ほう、島の蝙蝠が動くか」
「はい、既に海部城や大西城等の幾つかの城が落とされたそうにて御座います」
「蝙蝠殿は働き者の様じゃの~」
「そのようで」
「まぁ四国は今の所好きにさせておこうかの~」
「良いので?」
「後で何とでもなるであろうしの~こっちに擦り寄って来ておる様じゃ」
「左様で」
「ふははははは~お主は知っておろう?」
困ったような顔をする忍の者。
それがまた珍しいのでおかしくて更に笑ってしまった。
「本題より序の話に儂は興味津々じゃ」
「左様ですか」
さて、どうするか・・・手を振り忍びの者を退出させた後は思考の海へと沈む。
良い考えを思いつき、一人ほくそ笑む。
〇~~~~~~〇
京で行った大規模御前試合の縁で篠原右京進(篠原長房)を仲間に引き入れようかどうしようかと迷いましたが、引き入れるのは止めました。
真里の死に三好家が関与している以上は外すべきかな~と考え直し外しました。
さて、代わりと言う訳ではないですが、穴太衆と宮大工・番匠を引き入れました!!
史実では安土城の建築には穴太衆も岡部又右衛門も関わっているようです。
名前の出ている岡部又右衛門は大工棟梁として建築に参加しております。
尾張の大工で、熱田神宮の宮大工の棟梁として有名です。
信長が重用した大工棟梁と言われています。
安土城の天守造営を子の岡部
その功により織田信長より「総大匠司」の位と「日本総天主棟梁」の称号を与えられ小袖を拝領したと伝えられておりますが、元々からこの岡部家は室町幕府将軍家の修理亮を勤めた家柄で、正七位上修理亮の官位を得た程の人物です。
中井
大坂城の築城に参加した人物で、中井正清の父に当たります。
中井正清は徳川家康に仕え、幕府の建築事業で活躍した人物としても有名です。
徳川家康から「関東の番匠は正清の弟子になるべき」「普請に関しては何事も正清次第」等々、言われる程に重用された人物で、あまりにも重用され過ぎて過労死した可能性が大きいと言われるワーカーホリックな人物です。
仕事した物としては知恩院御影堂、二条城、江戸城、駿府城、名古屋城、日光東照宮等が有名です。
今回は建築師のうんちくでした~
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