第57話

平常運転の1日1話に戻します!!

やっと剣豪ものらしく剣戟戦闘をガッツリ書いた?


◇~~~~~~◇


将軍様は投げられたことがまだ理解できないようでボケーとしているので近寄って来た将軍様の側近たちに俺が囲まれており、中には刀の鯉口をきりこちらを睨んでおります。

戦線体制りんせんたいせいという事です。鯉口とは刀を収めた鞘には鯉口と言うストッパー的な仕組みがあります。それを外している状態でさす。)


「丸目と言ったな!その方は大樹に何という事を!!」


激おこプンプン丸ですよ・・・剣術の立合いで怪我させるなって手加減しろって言っている様なものだよね~

本気で立合うからいみがあるんだけど・・・やっぱりお偉いさんに対しては接待的なことしないと駄目ってことかね~


「よい!」


将軍様より言葉が発せられた。

どうやら復活したようだ。


「大樹!お体に何か御座いますか?」

「ない、それよりも、これは真っ当な立合いぞ!それを汚すようなことは言うではない!!」

「も、申し訳御座いませぬ!!」


おほ~流石剣豪将軍?剣術に関しては真摯だね~

そして、立ち上がるとこちらをジッと見つめ言葉を掛けて来た。


「丸目、見事なり!その方の任官に堪えうる腕前は見せてもろうた」

「は!左様で・・・」

「如何した?嬉しくないのか?」

「いえいえ、剣豪と名高き上様にお褒め頂くのは大変光栄の極みではございますが・・・官位は望んでおりませぬで・・・」

「その方は官位が要らぬと申すか?」

「はい、特に必要としておりませぬ」


宇宙人でも見るような目で将軍様と側近がこっちを見ております。

え?そんなに可笑しいかな?・・・

官位持っててもお金入る訳でなし、だから朝廷は困窮した!

令和まで生きた現代人の感覚が中途半端に抜けきれない俺から言うと、官位で飯食えないのに持つ必要ある?なのだ。

肩書って必要だとは思うけど、身の丈だよね~俺が官位持ち?・・・無いわ~


「しかし、既にお上より内示が出ており山科様より確定と聞いておるぞ・・・」

「ま、誠ですか・・・」

「左様・・・これはお上の意思ぞ、抗えぬ事よ」

「戻り次第山科様を問い詰め・・・確認します」


マジか~~要らないとはとても言える状況ではないと言うのが分かったが、これがサプライズ人事ってやつですね!!

あれ?このくだり何処かで見たような・・・まぁ気のせいだな。

え?師匠にお前がやったことだと?ははははは~あれは致し方ない事だった!そう、あれはあれ、これはこれ!問題は俺が官位をという事だ!!


「上泉、丸目、両名大儀であった!!」

「「は!」」


将軍様はそう声を掛けるとご機嫌でその場を立ち去って行った。

後日、感状も頂いた。

あ~なんか前世の道場の爺さんが将軍様に感状を頂いたことがあるとかなんとか言ってた気がするがこのことかな?知らんけど。


★~~~~~~★


蔵人が急遽、上様と立合うこととなった。

山科様より「大樹とお会いして帰って来た後に長に話すが先に教えておく」と儂は言われ、蔵人が儂と同じく任官されることは知っておった。

儂の下に来る前に噂になっておった朝廷への献金を考えると、蔵人が任官されてもさしておかしくはない。


「師匠・・・山科様に何か聞いてました?」

「いや・・・聞いてはおらぬ・・・」


蔵人が困惑しながら儂に聞いてくる。

知っていたとは流石に今は言い辛い。

言葉が少したどたどしかったが、無口な儂の言葉じゃ少しくらいたどたどしくても問題無かろう。


「師匠、某は手を抜いて立合う方が宜しいのでしょうか?」


蔵人でも流石に上様に気を遣うか・・・傍若無人の様な蔵人がそんな事を気にすることが少しおかしかったが、師として答えねばなるまい。


「蔵人よ!」

「はい!」

「立合いに身分は関係ない!」

「はい・・・」


納得していない様な顔じゃな。


「自分から腕を見ると言われたは上様じゃ!」

「そうですけど~」


困惑しておったが急に納得したように「成程!」とか小声で言っておるが、どうせ変な勘違いでもしておるのであろう。

ここははっきりと言わねば伝わるまい。


「儂と立合った時の様に戦えばよい!新陰流の技に拘る必要はない!!」


最初に儂と会った時の様に自由に剣を振るわば蔵人に適う者はおるまい。

儂はよく当代随一などと呼ばれるが、この若い弟子に果たして及ぶのか?と思う事もあるほどに蔵人は完成された剣を使う。

任官に見合う腕を見たいと上様はおっしゃった。

そうであれば存分にその腕を見せてやればよいのだ!!

あれこれと要らぬことでも考えていたようだが、どうやら腹が決まったようであった。


「そちらの準備は出来たか?」

「は!何時でも!!」

「そうか・・・では、始めるか」


上様が声を掛けてくると、蔵人がそれに応じて場所を移動し始めた。

お互いに目礼をして剣を構えた。

蔵人は儂と初めて立合った時の様に上段斜めに構えてぴたりと動きを止めた。

上様は正眼に構えておる。

両者ともに全く動きは無いが既に戦いは始まっておる。

お互いに間合いを図っているのであろうが微動だにしない。

上様も噂通りの剣達者の様だ。

中々見ごたえのある立合いが見れそうで気持ちが高揚するようぞ。

蔵人に動きあり!一歩間合いを詰めた。

上様はそれに合わせて一歩下がる。

蔵人が更に二歩間合いを詰めると上様が二歩下がる。

蔵人はすかさず間合いを一気に詰めて袈裟に切り下してきた。

恐らくは儂にも最初に見せたあの飛燕ひえんの様な剣技であろう。

案の定、あの時の剣技で見事に上様より一本を奪ったようで、切先を首元に添えておる。

上様が「参った」と言うと蔵人は後ろに数歩下がり目礼をした。


「もう一手お願いする・・・」


上様がそう申されると、蔵人は少し考えてから足元に木刀を置き、少し木刀より離れてから再戦に答えた。


「それでは師匠と同じく無刀取りの妙技をお見せします」


とは中々に良き名じゃ、これからは儂も無刀取りと名乗ろう。

それにしても、儂と同じく無手で立合うとは面白きかな!!

さてもさても、蔵人は何をするかを喧伝して臨む訳だ、儂と同じことが果たして出来るか見ものぞ!

初手は上様の突きの速さに蔵人は躱すことしか出来なんだ。


「どうした?我から得物を奪えておらぬようだが?」

「ははは~そうですね、師匠の様に華麗に奪いたかったのですが、突きが見事で奪えませんでした」

「さ、左様か・・・」


言葉を交わしておるが、お互いに油断は微塵もなし。

上様より先程以上の気勢を感じるが、蔵人は身動ぎすらせずジッと相手の出方を待つ。

上様は再度突きを放って来た。

その突きを胴の横へと逸らしたかと思えば脇で挟みそのまま上様の伸びきった腕を掴み蔵人が片膝を曲げて体を捻ると上様がまるで何かにつまずいた様に態勢を崩し投げ飛ばされた!

蔵人は上様の木刀を徐に自分の脇から手に取ると地面に置き上様に向かって黙礼するが、余りのことに驚かれているようで、上様に反応はない。


「丸目と言ったな!その方は大樹に何という事を!!」


上様の側仕えの者どもが慌てて上様に駆け寄り蔵人を睨みながら叱責しておる。

無粋な者どもよ。

立合いはまだ終わっておらぬ、そこに横槍を入れるとは・・・

中には鯉口を切り今にも斬り掛かりそうな勢いの者までおる。


「よい!」


上様がそれに気が付かれ側使えの者どもをお止めされた。


「大樹!お体に何か御座いますか?」

「ない、それよりも、これは真剣の立合いぞ!それを汚すようなことは言うではない!!」

「も、申し訳御座いませぬ!!」


叱責し恐縮する者どもをしり目に上様は満足そうに蔵人を見た後に、お声がけされた。


「上泉、丸目、両名大儀であった!!」

「「は!」」


儂はその場で膝をつき返事をすると上様は満足そうにその場を立ち去られた。

後日、感状と共に剣の指導を乞われた。


〇~~~~~~~〇


回想含むことが多かったので今回は少し本編長めです!!


さて、一連の将軍様との邂逅は如何だったでしょうか?

ドリームマッチ2連戦でお伝えしました!!

特に、西国最強VS剣豪将軍の史実に無い立合いは如何だったでしょうか?

設定的に主人公は現代まで丸目蔵人佐が伝えた後も先人たちが磨いて来たタイ捨流の剣術を知っておりますので実力も抜きに出ておりますが、中々いい勝負だったと自分では思っておりますが、いい感じに書けているかな?とか不安には感じます。

何故ならば、自慢になりませんが戦闘書くの少ないのでまだまだ拙いと自分では思っているからです!!

上手く書けてると良いな~と思ってます。


今回は長めに本編書いたので疲れました、うんちくは・・・何て言うと思うたか!!

うんちく書きたくて書いてる作品なので1つ位語ります!!


上泉信綱の新陰流の印可はどんな条件だったのか?・・・色々調べてみて少し不明ですね~

主人公の丸目蔵人佐には「殺人乃太刀」「活人之太刀」と言う2つの印可を与えています。

これは丸目蔵人佐が京都市中などで「兵法天下一」の高札を出して対戦者を募ったのですが誰も現れなかったと言う事がありそれを噂で聞いた信綱が後日印可を与えたと言う逸話が残っております。

(「兵法天下一」の高札と言うのは「俺に適うと思うなら掛かって来いやーー!!」と言う全方向に喧嘩売る様な行為で、普通は対戦者が可成り現われるもののようですが、丸目蔵人佐は当時から相当強いことが知れ渡っていた為、喧嘩を買う者が誰も居なかったようです。後にも先にもこんな人物は他に居ないですね~だから面白いと思って主人公にしましたが何か?)

また、柳生石舟斎には今回のスペシャルフィニッシュホールドとして使用した無刀取りを印可獲得の試練として与え、それを回答した石舟斎に印可を与えたそうです。

何を持って印可とするかは実はこの時代は曖昧で、基準がまちまちだったようです。

だからこそ、色々な人物がそれぞれの基準でお題をクリアーした者に印可を与えた様で、同じ印可持ちでも実力が相当に違ったようです。

上泉四天王と呼ばれる4人はその中でも中々高そうなお題が出たのでは?とか思っちゃいますね~丸目蔵人佐の例を見てもそう思います。

皆さまはどう思われますでしょうか?


次回、山科卿ここに眠る!!の巻

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る