第127話
「長門守、お弓!!」
「はっ!(はい)」
「必ず生きて捕まえろ!!お前たちの実力を、今、俺に示せ!!」
俺がそう言葉を発すると2人とも頭を下げた。
既に藤林の者たちが追っていることであろう。
愚か者と言うのは何処にでも居る。
俺を暗殺しようとした、しかし、失敗した・・・しかし、俺が救われた代償は大きい。
絶対にこれを画策した者を許す気はないし、実行者は証人でもあるが・・・赦しはしない。
試合場で大宴会となった。
そして、遅くまで飲み騒ぎ十分に楽しみ、帰宅途中の出来事だ。
ワイワイと話しながら定宿の山科邸を目指して帰っている最中の出来事だ。
銃撃された。
俺に怪我は・・・無い・・・
しかし、俺を庇い真里が銃撃を受けた。
そして、冒頭に戻るのであるが・・・
急ぎ山科邸へ真里を担ぎ戻る。
藤林の者で医者の心得のある者が診てくれたが、状況は宜しくない。
俺を庇った真里は胴体に銃撃を受けた。
その者の話では持って数日と言う。
今は安静にしているが時折苦しそうにする真里を見ていると腸の煮えるような思いがする。
「蔵人様」
「・・・」
「襲撃者を捕まえました」
「そうか・・・今行く」
流石は忍者集団、藤林一門。
襲撃者の下に向かいながら長門守と話す。
「それで、何人居た?」
「三名捕まえております」
「三名・・・口を割ったか?」
「いえ・・・一人は事情を知らないという事を言っておりますが・・・二名は全く話しません」
「そうか・・・事情を知らないと言っている者だけ先ずは連れて来てくれ」
その後はその者と話すこととした。
「名は?」
「
「それで太兵衛、あの二人との関係は?」
「へえ、あの二人の借りている家を貸している者です」
「そうか・・・大家と言うことか」
「はい」
「あの二人が何をしたか知っているか?」
「いえ・・・騒がしいので文句を言いに行きました時に・・・」
あ~完全に巻き込まれかもしれないが、事が事なので藤林一門が念の為に捕まえた者なのかもしれないな・・・
「そうか・・・実はな」
俺が事情を説明すると「え?」「それは・・・」と言い何とか納得してくれた。
1人は前からその長屋の一室を借りていた者とのことで名前を四郎と名乗っていたそうだ。
本当の名なのかは解らないが、情報として色々と聞いた。
伊賀の出とのことが解ったが、これも本当かは解らない。
しかし、ここ1ヶ月ほどの間に親戚と言う男が一緒に住んでいたと言う。
多分は捕まえた者の一人なのだろうが・・・
取り合えずその四郎さんと会うこととしよう。
この巻き込まれた太兵衛さんには事情から直ぐに返せないので数日間協力して欲しい事を告げると納得してくれた。
本当に巻き込まれただけの場合は5貫の迷惑料を払うことを告げたのでその報酬で納得したのかもしれないが・・・
さて、先ずは四郎さんとやらに会いに行こう。
四郎さんを見れば見た顔だ。
「やあ、また会ったな」
「・・・」
覚慶さんの襲撃犯の長的人物だ。
これは三好の誰かが関わっているのは確定だな・・・
「それで、何か話す気になったか?」
「殺せ」
「うん、最終的にお前は死ぬね」
「・・・」
「でも、今じゃないよ。先ずは知っていることを話して貰う」
「話すと思いますか?」
「いや、お前さんだけなら話さないかもね」
「・・・」
「でも、もう2人はどうかな?」
「・・・」
「まぁ有益な情報をくれたら楽に死なせてやる位の慈悲は見せるぞ」
「・・・」
「別にだんまりしていてもいいけど、残りの者が情報を出せばお前さんへの慈悲は減ると思ってくれ」
「・・・」
うん、多分、今のままではこの男は情報を吐かない。
次に向うは最後の一人の所だ。
「良い面構えだな」
「ふん!殺すなら殺せ!!極楽浄土が待っておるわ!!」
「極楽浄土か・・・そんな物本当にあるのか?」
「上人様はあると言った!!」
「上人ね~上人はただの人じゃ!お前の撃った女人は天女の末裔じゃぞ?天が許すとでも思うか?」
「天女?・・・ふん!それが如何した!!神仏なぞ恐れぬぞ!!」
此奴のダブルスタンダードは呆れて物が言えぬが、俺が話せばある程度言葉が帰って来るのでこのまま話して情報を得よう。
先ずは心を折ってからだな。
「神仏を恐れぬか・・・お前の行きたいと願う極楽浄土とやらは何処にある?」
「阿弥陀様が治める西方の十万億土の彼方にあるのじゃ!そんな事も知らぬか!!」
「十万億土と言うのはこの地球の何処じゃ?」
「地球?」
「この世は丸い大地でな、この世界を地球と言う」
「何じゃそれは?」
「この日ノ本は海に囲まれておるが、海の先には色々な大陸があり国があるが、丸い形をしておるから一周したら元の位置に戻ってくる」
「・・・」
その後は地理か科学の授業の様にこの世の事実を教えてやった。
段々と顔色を変えて行くこの男。
「海の向こうより来たと言うお前たちの言う伴天連の者たちはこの地球の各地に行っておるが極楽浄土など見たことも無いと言うと思うぞ」
「それは・・・まだ見つけていないだけじゃ!!」
「そうか・・・そもそもこの大地に極楽浄土などない!」
「じゃあ何処にある?」
「さあな、何処にあるかは知らぬが、この地球上に無いという事は」
俺はそう言って天を差してこう告げた。
「天上にでもあるんじゃないか?」
「おう!多分そうじゃ!!」
「お前は天女の末裔を銃撃したのじゃが・・・」
そこまで言うとハッとした顔で見る見ると内に顔を青ざめさせる。
「お前は極楽浄土とやらに行くと言うが、どうやって行く予定じゃ?」
「それは・・・」
「そもそもの話、悪い事をして赦されるって可笑しいよな?」
「・・・」
「天女の末裔を殺すってどんな罪なんだろうな?」
「・・・」
「南無阿弥陀仏と唱えれば赦されるような問題なのか?」
「・・・」
「まぁよく考えろよ・・・そうそう、太兵衛て知っているか?」
「何じゃ?知らぬが・・・」
「お前らのせいで捕まった長屋の大家だが知らぬか?」
「あ~あの親父か・・・まぁ巻き込まれたからな~」
「そうか・・・四郎の方お前の協力者か?」
「・・・」
だんまりを決め込んだが、四郎と同じように情報を吐けば楽に死なせてやることを告げその場を後にする。
しかし、話しぶりや四郎の正体である三好の何者かと俺に恨みのある宗教関連であの言い振りをしそうな者と言えば本願寺顕如以外にあり得ない・・・
俺は秘かに幻術の達人の2人の忍びの者に密命を与えた。
★~~~~~~★
丸目四位蔵人を狙う為にかの者の帰り道で待ち構えていると、ガヤガヤと話しながらこちらに向かって来る一団が見える。
夜なのでこちらの姿は闇に紛れているが、向こうの姿も視認し辛い。
提灯の明かりで丸目四位蔵人を確認し、種子島を構える。
徐々にこちらの方に近づいて来る。
一瞬、丸目四位蔵人に肩を貸す異国の娘と目が合った気がするが気のせいか?
いや、多分、気のせいでは無かろう・・・
鉛球を放った瞬間に丸目四位蔵人を庇い撃たれた。
「おい!ヤバいぞ!逃げないと捕まる!!」
四郎右衛門が儂の肩を強請りそう言って来る。
どうやら呆けていたようじゃ・・・
暗殺は失敗じゃ・・・
その後は四郎右衛門の長屋に逃げ込んだがどうやら追っ手をまく事は出来なかったようだ。
「孫一、多分捕まる!何も喋るなよ!!」
「お、おう・・・」
四郎右衛門の焦りが伝わって来る。
何をそんなに怯えると思っていると、ゾクリとした殺気に襲われて、取り囲まれた事を理解した。
静寂した部屋の中でじっと息を殺して待ち構えていると、何かが投げ込まれた。
煙が部屋を多い息苦しい。
そして、意識が混沌として、気が付くと、縛られておる。
どうやら捕まったようじゃ・・・
捕まってからどれ程経つかは解らぬが、丸目四位蔵人が俺の所にやって来た。
「良い面構えだな」
「ふん!殺すなら殺せ!!極楽浄土が待っておるわ!!」
強がりの虚勢ではあるが言い返して自分を鼓舞した。
「極楽浄土か・・・そんな物本当にあるのか?」
「上人様はあると言った!!」
何を言っておる。
極楽浄土を疑うなどと流石は上人様の言う悪魔じゃ!
「上人ね~上人はただの人じゃ!お前の撃った女人は天女の末裔じゃぞ?天が許すとでも思うか?」
「天女?・・・ふん!それが如何した!!神仏なぞ恐れぬぞ!!」
天女の末裔?・・・聞いて居らぬが、そんな者がこの世に居るのか?
「神仏を恐れぬか・・・お前の行きたいと願う極楽浄土とやらは何処にある?」
本当に物を知らぬ者じゃ。
儂でも知っておることを知らぬとはな・・・
「阿弥陀様が治める西方の十万億土の彼方にあるのじゃ!そんな事も知らぬか!!」
「十万億土と言うのはこの地球の何処じゃ?」
「地球?」
地球とは何じゃ?
「この世は丸い大地でな、この世界を地球と言う」
「何じゃそれは?」
「この日ノ本は海に囲まれておるが、海の先には色々な大陸があり国があるが、丸い形をしておるから一周したら元の位置に戻ってくる」
「・・・」
儂の知らぬ事をどんどんと話す丸目四位蔵人・・・
この者は神仏の言葉を聞くと言う噂もある・・・今聞いている言葉は神仏の英知なのかもしれぬ・・・そう思うと目の前のこの男がそら恐ろしい者の様に感じる。
「海の向こうより来たと言うお前たちの言う伴天連の者たちはこの地球の各地に行っておるが極楽浄土など見たことも無いと言うと思うぞ」
「それは・・・まだ見つけていないだけじゃ!!」
伴天連の者どもなぞ行き着ける場では無いと思うたが・・・
「そうか・・・そもそもこの大地に極楽浄土などない!」
考えたが否定した思いを告げられた。
「じゃあ何処にある?」
「さあな、何処にあるかは知らぬが、この地球上に無いという事は」
丸目四位蔵人はすっと人差し指を立てて天井を差す。
ああ、天にあるという事か!
「天上にでもあるんじゃないか?」
「おう!多分そうじゃ!!」
「お前は天女の末裔を銃撃したのじゃが・・・」
ああ・・・天人の末裔を害した者が天に行けるのか?
考えていると気分が悪くなって来た・・・吐きそうじゃ・・・
「お前は極楽浄土とやらに行くと言うが、どうやって行く予定じゃ?」
「それは・・・」
そう、どうやって行く?
「そもそもの話、悪い事をして赦されるって可笑しいよな?」
「・・・」
悪い事?・・・ああ・・・
「天女の末裔を殺すってどんな罪なんだろうな?」
「・・・」
どんな罪なんじゃ?
「南無阿弥陀仏と唱えれば赦されるような問題なのか?」
「・・・」
許されぬのか?・・・
「まぁよく考えろよ・・・そうそう、太兵衛て知っているか?」
「何じゃ?知らぬが・・・」
今は何処の誰かも知らぬ者の事などどうでもよい!
「お前らのせいで捕まった長屋の大家だが知らぬか?」
「あ~あの親父か・・・まぁ巻き込まれたからな~」
ほんに悪い事をしたな・・・
「そうか・・・四郎の方お前の協力者か?」
「・・・」
四郎右衛門のことであろう・・・
名前を聞き「何も喋るな」と言われたことを思い出した。
その後は色々と丸目四位蔵人が話していたが、「話せば楽に死ねる」以外は何を言ったか覚えておらぬ・・・
しかし、死ぬることは確定であることだけは理解した。
〇~~~~~~〇
急展開ではござしますが、丸目蔵人が銃撃されました!!
火縄銃での狙撃による暗殺は織田信長が初などと言われております。
勿論、暗殺されそうになった信長は激怒して今風に言えば指名手配を掛けます。
近江国高島郡堀川村の阿弥陀寺と言うお寺に潜伏した居たのをこの地の領主の
生きたまま首から下を土中に埋められ、竹製のノコギリで時間をかけて首を切断する
この物語のヒロインの一人真里は残念な結果になりそうです。
戦国期のこの時期の戦において、火縄銃は脅威でしたが、それは数を揃えたりすることで線の攻撃ではなく面の攻撃をすることと爆音と煙が脅威だっただけで、単体だとそこまで脅威には感じられなかったようで、高価な事もあり、信長が大量運用するまではそこまでの注目度は無かった物です。
そして、鉄砲が原因で討死する例はありますが、その場で死ぬことは少なく、後日亡くなることが圧倒的に多かったようです。
勿論、頭や心臓に直撃すれば即死です!!
胴体への傷が最も致死率が高かった様でショック死や後日に死ぬことが多かったようです。
鉄砲傷が元でなくなると言うのは医療が発達していなかった戦国時代は特に多かったようです。
この作品は剣豪ものなのもあり火縄銃はあまり登場していませんでしたが、これからは銃も登場してきます。
剣豪と言うのが戦で華々しく活躍したのも丁度今位までで、鉄砲が運用され出すと剣豪武将は減って行ったようです。
勿論、鉄砲だけが戦の手段では無いので減ったと言うだけで全く居ない訳でもなく武士の嗜みとしても兵法(剣術など)は廃れませんが、鉄砲がその中に組み込まれてきて、遠距離攻撃の手段として色々な流派が生まれた時期でもあります。
江戸時代の最盛期には400もの砲術流派があったそうです。
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