第209話
「蔵人さん久しぶりです」
「オルガさんもお久しぶりです」
2年程前からオルガさん(グネッキ・ソルディ・オルガンティノ)は京で活動している。
九州で日本語を頑張って勉強した為、凄く流暢に日本語を話す。
九州に居た時のたどたどしかった喋りも味があってよかったんだけどね~
さて、オルガさんは現在畿内での宣教の責任者を行っていると言う。
忙しい中、態々俺に会いに来てくれたそうだ。
そして、今回は一人の武士が同行していた。
オルガさんに促されてその彼が自己紹介。
「お初にお目にかかる。高山ジュストと申します」
「某は丸目蔵人と申す」
この高山さんは霜台爺さん(松永久秀)にも仕えていた人物で、爺さんの死後、荒木村重と言う人物に仕えたそうだ。
荒木村重が信長に謀反を企てた際にオルガさんに相談して以来、オルガさんとは特に懇意にしているそうだ。
現在は荒木村重と袂を別ち信長に仕えているそうだ。
高山ジュスト・・・多分、高山右近かな?
首に深い傷、報告書の通りだが、あの傷でよく助かったなと思うよ。
完全に致命傷だが助かったことで益々キリスト教にのめり込んだとか何とか。
じろじろ見てしまったつもりはないが高山さんが気付いてニッコリ笑いながら、「神の奇跡です」とその傷を撫でながら言う。
ガチの人だ・・・まぁ確かに奇跡だよね~
さて、旧交を温めと高山さんの紹介にオルガさんはやって来たようで、雑談後は切の良い時に帰って行った。
まぁ話題が絶えず中々に長時間となったような・・・
さて、数日後、アポも無くある人物が訪ねて来た。
(※ポルトガル語の会話です。史実でもこの人物は日本語を話さないことがデフォであったようです。答えは後ほど)
「丸目様、お久しぶりです」
「あ~・・・何しに来られたので?」
うん、本当にこの人何しに来たんだろうか?
特に仲良くもない上に、アポなし、汗臭い
一応は顔見知りなお偉いさん・・・無下には出来ない為座敷に上げたが、正直言えば臭いし汚いし話していて不快に感じるから早々に帰って欲しい。
「実はお願いに上がりました」
「お願い・・・ですか?」
「はい、是非とも主の教えを広める為に協力頂きたい」
この親父何言っているの?
格好やその他以外にも発言まで不快過ぎる。
俺の方の付き添いの莉里と美羽が冷たい目で彼を見る。
絶対零度もかくやと言う程の底冷えして来そうな程の視線も彼には通用しないようだけど、同行者はそうでは無い様だ。
一緒に来ている同行者は慌てている所を見ると、思い付きの
見てて気の毒になる程に青ざめた顔で同行者は「失礼ですよ」等々言っているけど、言われている当の本人は意に返さないようだ。
さて、俺は「No」と言える日本人なのでその問いに答えよう!!
「え?嫌ですが?」
「え?ガブリエル様の使徒の貴方が我らに協力するのは天命では?」
「いえ、ガブ師匠からは特に何も命じられたいませんよ。それよりも、あなたの恰好や態度は何ですか?人に会う物では無いですよ」
不快ですと言うことを伝えると、うん!怒って帰っちゃしました。
ぶぶ漬け出すまでも無かったね。
あんなのがトップってイエズス会って人材不足?それともキリスト教を広める気が無い?
まぁそんなことはないだろうけど、今のままだと可成りヤバいと思うね~
本当に多神教崇拝者の俺的にはどうでもいいけど、多分、多くのこの国の権力者階層からは受け入れられない人物だろうね。
俺ですら天子様と会うとかの時は一張羅出して来て着る位はするぞ。
オルガさんやトーレスさんとは大違いだね~
後日、その事を聞き付けたオルガさんが恐縮して謝罪に来たけど、オルガさんが悪い訳ではないし、オルガさんに謝って貰う問題でもないと俺は思う。
序なのでまた楽しくおしゃべりしました。
オルガさんは友達だけど彼はただの知人。
オルガさんが頼んで来たら2~3度くらいは便宜図るかもしれないけど・・・
今回で会うのが二度目の彼に何を期待されても動く気無いよ。
紹介した者を不快にさせて終わるだけだと思うしね、紹介するだけ無駄。
まぁその前に紹介する気も無いけどね~
★~~~~~~★
コスメ・デ・トーレスは肥後大平教会を立ち上げこの地にて司祭をしている。
ある日、急ぎの手紙が京へと赴任して行ったグネッキ・ソルディ・オルガンティノより届けられた。
「は~カブラルは何をしているのでしょうね・・・」
蔵人さんに対し失礼極まりない態度で接したことがつらつらと書かれていた。
トーレスやオルガンティノは事を重大事と捉え、連名でカブラルが行ったことを含め丸目三位蔵人の事を本国に報告した。
その結果、何と丸目三位蔵人はこの度目出度く「聖人」の認定がなされた。
これは異例中の異例で、キリスト教徒でも無い者に「聖人」認定がされるのは有史以来初めてのことであった。
また、この世界線の上ではアジア人初・日本人初の快挙?でもあった。
そして、その認定書を携えて近く巡察師が日ノ本に訪れる事となっているが、その「聖人」に対し日ノ本の宣教トップがおいたしたと言う報告は実に頭の痛い問題として次の宣教トップの者が頭を悩ませる結果となる。
勿論、蔵人を日頃から知るトーレスは多少の無礼程度で怒る人物では無い事は心得ているが、怒らないから失礼を働いていいと言う訳ではないのは常識だ。
親しき仲にも礼儀ありなのだ。
これは古今東西変わる事ない不変の定理なのであるが、それを理解しない輩が現在この国の宣教トップの座に居ることが問題なのだ。
丸目蔵人が思っている以上にこの出来事は重大事として捉えられ、大騒動となるが、それは又別の話。
後々、巡察師のアレッサンドロ・ヴァリニャーノが来日を果たす。
来日して最初に聞かされた報告はこの国の宣教トップが宣教に適さない人物であると言う事であった。
念の為にと九州よりフランシスコ・カブラルに詰問状を出すと、
「この国の民ほど傲慢、貪欲、不安定で、偽装的な国民は見たことがない。・・・以下略・・・この国の民は悪徳に耽っており、また、そのように育てられている」
と言ったこの国の民に対して殆ど暴言としか読めない文言を書き連ねて寄越した。
同じく、現在、この国の首都である京の都で宣教を頑張るグネッキ・ソルディ・オルガンティノに意見を求めたところ、
「カブラルは、この国の民を黒人と同じ様な低級な者たちと呼び、その他、侮蔑的な表現を用いて宣教を行う。彼はよくこの国の民に「おまえたちはジャポンイスだ」と言い放つことが多く、この国の民が低級な人間であると声高に言い、それが誠の様に無理やり人々にその事を理解させようとしている」
と言う見解が送られて来た。
これは他の者に聞いても同意見な為、来日早々に衝撃を受ける結果となった。
そして、ヴァリニャーノの調査は更に進んで行くのであった。
〇~~~~~~〇
安定のカブラル、答えはカブラル!!
この年は大事件がまだまだ続きますので主人公以外の所もこれから書くことが増えそうです。
しかし、一部では主人公サイドの者がしっかり暗躍すると思います。
さて、高山右近ですが、優秀な人物なのですが本当に波乱万丈な人生を送る人物で、キリスト教に入信したことが裏目裏目に出ている様な気がしないでもない人生を歩みます。
摂津国三島郡高山庄(大阪府豊能郡豊能町高山)の国人領主の息子として生まれた彼は先ず松永久秀に仕えました。
キリスト教嫌いの松永久秀にです!!
父が洗礼を受けた為、右近以下家族や家臣など約150人も一斉に受洗したと言われています。
ジュスト(Justo)という霊名を授けられたそうですが、ジュスト(Justo)とは公正・公平という意味です。
足利義昭が将軍職に就くと和田惟政を摂津国守護に任命したことからジュスト高山は和田惟政に仕えることとなります。
これは松永久秀に仕えるより良かったのかな?
しかし、和田惟政が荒木村重と中川清秀の軍に敗れて討死しました。
荒木村重は織田信長に近付き、「摂津切り取り勝手」と言う実質の信長のお墨付きを貰います。
和田惟政の死後、高槻城は子の和田惟長が城主となりますが、17歳だった為、叔父の和田惟増が彼を補佐することになりますが、和田惟長は理由は不明ですが、
これにより高山家が和田惟長の主だった相談役となってしまいますが、これを良く思わない和田家臣団が、和田惟長に高山親子の暗殺を進言し、実行に移されます。
その知らせを聞いた高山父はこの事を実質の摂津の支配者の荒木村重に相談します。
荒木村重は「それが事実なら先に殺れ、もし兵が足りないと言うなら自分が手伝う」的な事を言ったとか・・・
そして、和田惟長は高山親子を自分の城に呼び出します。
そこで闇討ちされそうになりますが何とか難を逃れます。
しかし、運が悪い事に夜の暗闇の中の室内乱闘だった為、味方の家臣が誤ってジェストを斬り付けてしまい首を半分程も切断するという大怪我を負ってしまったそうです・・・この大怪我から何故か助かり宗教狂いへとジョブチェンジしました。
その後は荒木村重に仕えます。
しかし、荒木村重が信長に謀反を企む。
妻子を人質に出したり何とか思いとどまる様に説得してみたけど・・・謀反実行。
この次期に悩んだジェストはオルガンティノに相談したそうです。
オルガンティノは「信長に降るのが正義だが、よく祈って決断せよ。」的なアドバイスしたそうです。
アドバイスと言う名の・・・
その後は信長→秀吉→前田家と仕えますが、徳川家康によるキリシタン国外追放令を受けて改宗を受け入れずに国外追放処分を受け入れマニラに亡命し、そこで亡くなったそうです。
彼は利休七哲の一人に数えられる茶人で、文化人でもありました。
前田家は改宗して日本に残る様にと留意したようですが・・・
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