第15話
「
「助五郎もそう思うか?」
「思うとも!これは何処で入手したんだ?」
興味津々に宗さんにその壺のあれこれを聞いて来るこの人物は茶の師匠が同じ同門の者で同じく商人をしているとのことらしい。
「実にわびていて味わい深い・・・」
「与四郎も好みか?」
「一つ・・・手に入るだけ欲しいものだ・・・」
この者も先ほどの者と同じ。
わびとか言うから千利休かと思ったけど与四郎さんと言うらしい。
「宗久、これは手に入るのか?」
武将が来ましたが「三好家に仕えとる。この場で武士として名乗るは無粋だから・・・そうだな~
元就の爺様も凄かったがこの霜台さんも貫禄が凄いな。
ただ者では・・・無いだろうが、三好家に仕える霜台・・・知らん!!
今日は俺を含めこのメンバーで俺の紹介を兼ねた茶会が開かれた。
俺の紹介が終われば早速今回の本題となる呂宋壺の自慢をしたい宗さんがウキウキしながらご紹介されております。
ジャ〇ネットもビックリの数日前に俺から仕入れたうんちくで3人のお客様にご紹介しております。
宗さんならきっと昭和から令和の時代でも立派な営業マンになれるよ。
それぞれが思い思いにその壺を見ているが、自慢して皆に好評だったことで宗さんは今日一のご機嫌な状態。
早速、霜台さんがご購入されましたが、金額交渉はこの場ではなくまた後日と言う事となった。
他の2人も物欲しそうにしているが今は霜台さんが話しているので壺を眺めながらそれぞれに色々と空想中のようだ。
俺はそんな様子を見ながら出されたお茶とお菓子を食べながらモグモグタイム。
関西来たらたこ焼きかお好み焼き食べたいが、ソース無いから無理として、他に何喰いたい?
ああ、大阪に行った友人からお土産で、そう言えば、堺土産で貰った「けし餅」美味かったな~考えていると急に食べたくなってきた。
「それは何ですかな?」
与四郎さんが何か話してるね~・・・俺に話し掛けてる?・・・
「その「けし餅」なる餅はどんな物ですか?」
「え?」
あれ?言葉に出てた?
「先ほど茶請けをお食べになりながら「堺土産で貰った「けし餅」美味かったな~」と言われておりましたので聞いたことも無い物でしたから興味を持ちました・・・」
「あれ?無いですか?けし餅?」
「はい・・・」
俺と与四郎さんの話が面白そうに感じたのか皆が注目している。
あ~背中がチリチリします。
友人が語ったうんちくでは創業は室町だったか?今は戦国時代・・・あるはずだよね?
「え~と・・・何方に貰ったかは忘れましたが・・・」
「そうですか・・・私が知らないのにこの堺の事で、しかもお茶請けであなたが知っていることが不思議でして・・・」
ん?確かに俺は前世は未来人のただの九州の一地方の国人の武士のドラ息子だけど・・・舐められている気がして肥後もっこすとしては今のセリフ捨て置けないぞ?
聞き流せばいいんだけど聞き流せないのが
前世の記憶を思い出せ!!そう!確か小さい島か嶋と書かれていたような・・・
「朧げな記憶ですが・・・小さいにシマと書く名前の店だと聞いたような・・・」
「そうですか・・・そんな店があるんですか・・・」
あ~何か悔しそう!!ふへへへ~地元民が地方の人間に情報負けとか結構悔しいよね~今の時代にその店が本当に有るかは知らんけど・・・
後日、本当にその店を見つけて来た宗さんが「美味い美味い」と言いながらお茶を飲みながら堪能していた。
「紹策さんから聞いてますけど、博多の初夜は恵比須様にお茶とお菓子を接待されたらしいですね~」
「え?紹さんから若しかして聞きました?」
「はい、それはもう詳しく聞いておりますよ~若しかして、堺でも何処の何方かにでもお接待されましたか?」
「・・・内緒です・・・」
「さいですか~」
何か変な疑いを掛けられてる?
下手な事も言えないので口を
ボロが出て変な言い訳すればまた何か旗を立てそうだと思ったからだ。
(※昔、筆者がお土産で頂きました小島屋さんのけし餅。こしあんを餅で包みケシの実をまぶしただけのシンプルですがとてもおいしい和菓子でした。室町時代に創業したお店が当時から売っていた由緒あるお菓子らしいです。凄く美味しいので当時から有名だったかもしれませんが、物語の関係上この時代はまだ有名でないことに・・・関係者の方こちらの都合ですみません。)
★~~~~~~★
「
「助五郎もそう思うか?」
「思うとも!これは何処で入手したんだ?」
彦八郎が友人を紹介したいと言って開いた茶会だが友人そっちのけで何やら新しく手に入れた茶道具の自慢をしているので紹介に
助五郎と盛り上がっているが確かにわびさびに通ずる趣があり私も出来れば直ぐにでも数個は欲しい品物だ。
博多の神屋さんの所の紹介品らしく、何でも呂宋より取り寄せた壺であちらでは有触れた保存用の壺とのことだが茶葉の保管には最適そうだ。
「実にわびていて味わい深い・・・」
「与四郎も好みか?」
「一つ・・・手に入るだけ欲しいものだ・・・」
漏らした言葉に彦八郎が自慢げに聞いて来るが、確かにいい品に思える。
直ぐに欲しいが難しそうだから余計に欲しくなる。
そうだろうそうだろうと言う感じで頷く彦八郎が羨ましい。
霜台様が交渉を始めたがこの場で立場的に一番上のこの方が交渉権は最優先だ。
茶狂いのこの方が彦八郎の手持ちを全て持って行かないかが心配だが・・・
残れば私か助五郎の手にも入ろう。
ふと見ると暢気にお茶で茶請けの菓子をムシャムシャと我関せずと言った感じで食べる田舎くさい若い侍。
彦八郎とは馬が合うようだが私とは・・・
特に注意深く見ていた訳では無いが、馬が合わない者の存在と言う物は逆に気になるのかつい目に入る。
「そう言えば、堺土産で貰った「けし餅」美味かったな~」と小さな声で呟く独り言が聞こえた。
無意識なのだろうが堺土産で「けし餅」?知らないし、気になった。
聞けば九州の片田舎の国人とのことだ。
そんなよそ者が知っていて地元の私が知らない?・・・不快感を感じる。
その思いが言葉に出てしまったようで厭味ったらしい言い方となってしまった。
言った後にしまったと思ったが出た言葉は戻らない。
私の嫌味で少し機嫌を損なわせてしまったようだ・・・一期一会、私の座右の銘だ。
こんな事ではいけないと思い直していると、件の人物がうんうんと考えている。
「朧げな記憶ですが・・・小さいにシマと書く名前の店だと聞いたような・・・」
「そうですか・・・そんな店があるんですか・・・」
記憶を手繰り寄せ店名を言う彼だがその場に居る者でその店を知る者は居なかった。
適当な事をいうものではないぞと思ったが、後日、彦八郎が探し出したと言ってその菓子を送ってよこして来た。
「本当に有ったんだな・・・」
食べてみると誠に美味、お茶によく合うし、成も実にわびていて私好み。
堺の事は全て知っていると思っていた奢りを馬鹿にされた気分となる。
やはりかの者とはそりが合わないと・・・まだまだ私も若いものだな、これでは茶の湯を極めるのは遥か先。
心を落ち着ける為に茶を点ててそれを自ら飲みつつけし餅を頬張る。
「実に上手い」
お茶を
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