第270話

スペインであれこれと動いていたんだけど、王様(フェリペ2世)から宮廷での夜会に誘われた。

考えてみれば夜会とか初めての参加かも?

昼間の茶会とかはよく参加していたけど、何故参加をしなかったかと言うと何となく?

そして、急ぎ此方でのそれなりの恰好を誂え、参加する事となったのであるが、俺以上に美羽・莉里・春麗のドレス一式の用意が大変だったよ。

ドレスだけじゃなく飾り物のネックレスにイヤリング、カンザシ何かを用意したんだけど、うん・・・何かそれだけで疲れた。

何かさ~パートナーの髪と目の色をそれらに入れるのが良いらしいんだけど、俺は黒髪黒目なので黒・・・ある意味では地味だよね~

黒のドレスとか・・・まぁ良いっちゃいいけど喪服みたいで俺が嫌。

と言う事で、美羽には薄い黄色のドレスにブラック・ダイヤモンドの飾り物とした。

何か希少で高いらしいけど、俺の色ということで美羽が気に入ったのでこれに決定。

うん!美羽の小麦色の肌に薄い黄色のドレスが映えるね~

莉里にはブルーのドレスに黒蝶パールの飾り物。

凄い似合う!!

黒蝶パールはタヒチ産で実はフランスで感謝の印として頂いたパールで、それを使い拵えました。

これも希少らしいね。

莉里の白い肌に黒蝶パールがよく映えるし、平成・令和の世ならイ〇スタ映えとかして「いいね」を量産したかもね。

春麗は赤と黒のドレスで、童顔で幼く見える彼女を大人の女性に大変身させました。

いや、大人なんだけどね~

お飾りにはダイヤのお品で纏めましたが、実に似合う。

ダイヤと言ってもイエローダイヤと言う黄金色のダイヤモンドで、そこだけ浮き出た様な配色なんだけど、際立って見えてよく似合う。

三人共とても綺麗で言う事御座いません!!

さて、俺の格好は特に皆が気にしてもいないだろうし、語る必要ないと思うので、夜会について語ろう。

まぁ簡単に言うと、意見交流会?

ダンスと談話しながらの酒を嗜む会みたいな感じ?

貴族間で色々な情報交換をすることが主目的と言う事ではあるが、王様主催の物はそれなりの身分の者しか参加できないという。

諸々のオープニングの挨拶終わると身分の高い順に王様にご挨拶なんだけど、国賓の俺が最初に挨拶するとの事で早速とばかりにご挨拶に伺う。


「陛下、お招き感謝します」

「うむ、クランドとは色々話したいので後ほど顔見世してくれ」

「仰せのままに」


挨拶を済ませ後ほどのお約束をしてから雰囲気を楽しむ。

お!お酒発見!!

そう言えば、最近は酒控えてたな~

昔はよく朝まで飲み明かしたりしていたんだけど、過去のやらかしを反省してある程度制限してた。

そう思うと、急に酒が飲みたくなり、早速とばかりに酒を飲む。

いや~つまみも美味いね~酒との相性も抜群だ。

頃合いを見て莉里たちから促され王様の許に伺ったんだけど・・・少し飲み過ぎたかも?

美羽たちに「飲み過ぎでは?」と言われたし・・・


「おお!よう参った!クランドよ此方に座れ」

「はっ!」


何か王様の横に座り語らいに参加したんだけど、そうそうたるメンバーだったらしいけど・・・翌朝には覚えてはいなかったよ。

何話したんだっけ?・・・


★~~~~~~★


「長様!少し飲み過ぎですよ」


美羽が苦言を呈した。

久しぶりに酒を豪快に嗜む長様はご機嫌で酒の肴と一緒に浴びる様に飲み干して行く。

流石は高位貴族の夜会で出されるだけの物で、口当りもよく、油断すると飲み過ぎてしまいそうな美酒である。

しかし、そういう意味では切原野は異常であると痛感する。

ここに出されている酒に負けずとも劣らない酒が無数にある。

特に「神酒 神饌」に関しては、過去どころか現在に至るまで、あれを超える物を飲んだ覚えがない程である。

それに「清酒」も実に美味しいが、葡萄酒も負けてはいない。

ここに出されている物にも見劣りしない美味しさであるが、現在はどれも少量生産なので世に出回ることは少ないだろう。


「どうじゃクランド、酔っているようじゃがどの酒も美味かろう?」

「はい、実に美味しいお酒が揃っておりますね」

「そうであろう、そうであろう」

「しかし、サングリアだから美味しいと思うのですが、サングリアあるなら、テキーラとかも飲まれるのでは?」

「テキーラ?」


あ!私の直感が囁く。

酔った長様はまた何かとんでもない事を言おうとしているのではないか?と。


「長様・・・」

「何?莉里」


長様の袖を摘まみ注意を促そうとしたが遅かった。


「クランドよ、テキーラとは何じゃ?」

「え?スペイン人とかお好きですよね?」


陛下が周りの者たちに確認するがお知りにならぬようだ。

これはもしやすると、長様の偶に起こる現象の一つ、神にもてなされての・・・


「テキーラって言うのはですね~メキシコ・・・え~と今は何て言うんだっけ?アステカ?」


ブツブツと何か言い始める長様がテキーラなる酒の説明をし始める。


「え~と、その地に生えているAgave竜舌蘭から作る蒸留酒で~♪」


陛下のお顔が真剣な物に変わり、陛下が目配せして補佐官の方が急ぎメモを取り始めた。

これは何か大ごとになりそうな気がして怖い。

しかし、長様の言葉に私も興味を持ち聞き入ってしまった。

美羽と春麗も不安顔であるが、今口出しは難しいと彼女たちも判断したようだ。

そして、その間にも酒をカパカパと煽る長様。

長様はご機嫌でテキーラなる酒の説明を続けている。

長様の話すその酒の起源がまた面白い。

Agave竜舌蘭と言う植物の幹をかじっているハツカネズミの巣穴を覗くと黄金色の液体が溜まっているのを偶然に見つけた物が嘗めてみると甘かったそうだ。

甘い事からお酒が造れるのではと思ったその者はこれを集めて発酵させた。

酒精ある物が出来上がり、蒸留して出来たお酒がテキーラの起源と言われた。

恐らくは今はまだ未発見の物かもしれない・・・現に、陛下たちのざわつきが凄い。


「莉里、これ拙いよね?」

「うん、そうだね・・・」


美羽と話していると春麗が小瓶を取り出し、長様に飲ませた。

あ!恐らくは「神酒 神饌」であろう。

あのお酒には解毒作用がある。

そして、酔いもある程度醒させてくれるようで、長様が酔いを醒めさせるておられるのがはっきりと判った。


「あ・・・不味い」


今までの事を振り返り、顔を青ざめさせる長様。

やはり、ここで話すには憚られる内容だった様である。


「クランド!酔いが醒めた様じゃが?何を飲んだ?それに、先程の話は何処で知り、その酒をどこで飲んだのじゃ?」

「えっと・・・神・・・」

「神?」

「そう!神に飲ませて頂きました!!そして、神よりお話を伺いました!!」

「何と!!」


その後は大騒ぎである。

長様は何食わぬ顔をされておられるが、不味い事を口走った時にされる目の動きをされている。

恐らくは、酔った勢いで口走ったのをどう対処するかでも考えておられるのであろう。

酔いが回り過ぎて体調を崩したとして早々のその場を離れたが、後日、陛下より呼び出され、素面しらふの長様が夜会の席で話した内容について詰め寄られたのは言うまでも無い事であった。


〇~~~~~~〇


主人公が酒飲んで酔っ払って口走るのはデフォですね。

さて、テキーラとサングリアと言うお酒についてですが、御存じでしょうか?

テキーラはメキシコ国内のハリスコ州とその周辺に生えている竜舌蘭を主原料としたお酒です。

蒸留酒で度数の高いお酒で古代アステカからの伝統的な醸造酒であるプルケが、スペイン人によって蒸留酒とされたメスカル(竜舌蘭を主原料とするメキシコ特産蒸留酒の総称)の一つです。

実はスペインは16世紀にはアメリカ大陸の植民地化を進めており、本国より遠方な為、現地での物資確保の一つとして、現地で飲用する酒を確保する必要性から生み出されたお酒であると云われています。

最初のテキーラ工場は1600年に建てられ、1873年にやっとヨーロッパへ出荷された記録が残っているそうです。

現時点では発見されて間もないか、地産地消している程度のお酒です。

原産国のメキシコは、勿論、スペイン人等のラテン系の人々に人気なお酒でもあります。

さて、サングリアについてはワインに数種類のフルーツにスパイス、ハーブ、糖分を加えて作るお酒の事で、ワインカクテルを指してそう呼びます。

近年では日本酒でも同じようにカクテルするのが流行っているそうですから面白いですね~

サングリアはスペインやポルトガルでよく飲まれているお酒で、起源も古代ローマまで遡ります。

スペイン・ポルトガルのワインは赤ワインが多く濃厚な物が多かったようで、口当たりを良くする為に水を混ぜたりしたものが風味を足す意味で進化したことから始まったと言われます。

また、安ワインを美味しく飲む方法でもある為、同じように色々なお酒でも風味を変えて楽しむ方法としても発展したようです。

スペイン北部発祥と言われる桃やネクタリンを使ったスーラと言う名のサングリアなどが有名でしょうか?

日本では混成酒を家庭で作る場合でも20度以上の酒に漬けることが前提となります。

これは以前のうんちくで語りましたが、サングリアは混成酒の部類なので、一般家庭で20度未満の醸造酒であるワインで作製した場合は、酒税法違反となりますので注意してください。

見つからなければ・・・等と考えて捕まっても責任は負い兼ねます!!

ただし、一杯ごとに飲む直前に果物を入れることはカクテルとなりますのでOKとなりますのであしからず。

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