第190話
俺が来る日に合わせて信長が視察?怪し過ぎるわ~
信長と別れたのち、鎌をかけてみることとした。
「お猿さ~ん!一個貸しな~」
「ふひっ!?」
お猿さん(木下藤吉郎)の目線の先には半兵衛さんが居る。
半兵衛さん(竹中重治)は「はぁ~」と溜息をして、「解りました、一個借りです」と言った。
どうやら半兵衛さんの策略のようだ。
普通に信長と面会して欲しいと言えば・・・うん、断る可能性高いな~流石、今孔明!!
小六さん(蜂須賀正勝)は面白そうにその俺たちのやり取りの様子を見ているよ。
うん、予定外のことあって疲れたし
今回も藤林の者は本当に優秀である。
先回りして
お猿さんたちにも先に知らせているので滞在先はこちらで用意済みと伝えてあった。
場所は安土山から歩いて15分くらいかな?時計無いから大体大凡だけど、その位の近場に滞在先があるので、お猿さんたちが好きな時間に剣術指導することとした。
さて、剣術指導以外にも城作り面白そうなのでよく見学させて貰っているが、お猿さんたち曰く縄張が遅れていると言う。
信長には「少し遅れている」と言っているようだが、実際は「結構遅れている」であるそうだ。
「上様(織田信長)には言えないだがね~」
「言った方が良くない?後でバレたら間違いなく怒るよ~」
「それは・・・」
あ~怒られたことを考えて顔を青くしている。
どうやら今更「遅れてます」とか言えないようだ。
半兵衛さんも苦い顔をする。
う~ん、問題は何だろうか?
数日程見学させてもらうと、一つの問題点が浮き彫りとなった。
「なぁ、お猿さん」
「何だがねー」
「あ~お金って少し多めに使っても問題無いのかな?」
「長さん!何か良い考えあるのけ?」
「ある様な無い様な?」
「どっちだがね~」
俺は肥後大平神社の造営時に採用した作業効率UP方法を試すこととした。
「今日の一位は十組乙班!!二位八組甲班、三位四組丁班・・・」
「よし!!」
「あ~惜しかった・・・」
「次こそは!」
「くそ~負けた・・・」
一位の者がガッツポーズで勝ち誇り、それ以外の者たちもそれぞれの喜びや悔しがり方をしている。
そう、職人同士を競わせるやり方を採用した。
それぞれ10人程のグループ分けをして一日のノルマをまず決める。
そして、それを超えて仕事をした分を競わせて順位を付け表彰するようにと提言した。
直ぐに理解した半兵衛さんが俺の意見を落とし込んで次の日からこれを始めたことにより作業スピードは可成りUPしたし、職人さんたちも何時も以上のやる気をだし、楽しく仕事をする様になり、相乗効果で更に効率UPした感じがある。
ゲーム感覚取り入れて競わせて更に煽る為に表彰。
報酬も上乗せするのを見れば更に職人さんのやる気も倍増と言う結果になる。
「長さん!」
「おう、お猿さん、如何した?」
「お陰で遅れを大分取り戻せただがね!!」
「おう、良かったな!!」
1ヶ月程でお猿さんは大喜びでその事を伝えて来た。
★~~~~~~★
「お猿さ~ん!一個貸しな~」
「ふひっ!?」
藤吉郎様が丸目様の鎌かけに引っかかりこちらを見られた。
丸目様もその目線を追って私を見詰める。
「はぁ~・・・解りました、一個借りです」
「言質は取ったからね」
丸目様はニッコリと微笑まれてそう言われた。
借り一つ・・・何を要求されることやれと思うと気が重くなる。
しかし、特に何かを要求されることなく日々が過ぎていく。
ある日、縄張の遅れをこの城の総奉行である丹羽様よりご指摘された。
「木下殿」
「はひっ!」
「はぁ~そう驚かなくても・・・」
「申し訳ない・・・」
「少し縄張が遅れ気味の様で御座るな、大丈夫で御座るか?」
「問題御座らぬ!!」
問題だらけだ。
作業の遅れた理由は1つは天候である。
職人たちが手を抜いていた訳ではないが、こればかりは仕方ない。
「木下殿がそう言われるなら・・・予定通りの工程で進めて問題御座らぬな」
丹羽様はそう言われて次の議題へと移られた。
「藤吉郎様」
「半兵衛・・・どえりゃ~やびゃあがね!!(訳:凄~くヤバいよ)」
「少し考えてみましょう・・・」
どうしたものかと考えているがその前に丸目様にも相談したようで良い案を出された。
丸目様は「お金って少し多めに使っても問題無いのかな?」と言われたが、織田家の一大事業である。
金子の上乗せなど何の問題でもない。
丸目様の発案を聞き急ぎ纏め上げ、次の日からその事を始めると、職人たちのやる気は鰻上り。
「今度もまたうちが一位を勝ち取るぞ!!」
「「「「「おー!!」」」」」」
「今度こそ作兵衛率いる八組甲班には負けぬ!うちが一位じゃ!!」
「「「「「おおーー!!」」」」」
「一組甲組の名を天下に轟かせるのじゃ!!」
「「「「「おおおーーー!!」」」」」
「ぬかせ!二組乙班の尻でも眺めておれ、次の天下は我らぞ!!」
「「「「「おおおーーー!!」」」」」
各班が朝から掛け声を掛け合い、闘志を燃やし、作業開始の鐘と共に一斉に作業を開始し始めた。
丸目様の発案の中には、朝の作業開始、昼休み開始、昼の作業開始、作業終了の四回鐘を鳴らし職人たちに時を伝える様にと言われた。
その事で職人たちは決まった時間働き、結果次第で表彰と金一封を手に入れる。
その事が賭けの対象にもなっており、職人たちは自分たちの実力を誇示することが出来る上に金子も得ることで今まで以上に仕事に精を出した。
更に丸目様の発案で六日間働き一日休みを繰り返す、その六日間の成果で順位を決めるので休みの日の朝一で結果発表と言う仕儀となった。
一日の休みを何故入れるか聞けば、「人とは休息を必要とする。休みの日を入れることで作業効率は上がる」と言われて半信半疑であったが、本当に作業効率は目に見えて上がった。
これは表彰・金一封の効果だけでは無い様だ。
更に、七日に一度の休みの日には大規模な市も立つようになって安土山の周辺は七日に一度の市と言うことで七日市と言う名でその市が呼ばれるようになった。
更に、その事が近隣に伝わると更にその日に人が集まり大賑わいとなった。
丸目様に「これも狙ってのことですか?」と聞けば「偶々ですよ~」と答えられたが・・・何処までが本当か、皆目見当もつかぬ。
何にしても大分後れを取り戻すことに成功した。
このまま行けば、工期日程は守られるであろう。
しかし、これでまた借りが更に増えたようだ。
〇~~~~~~〇
滞在先で近江商人登場させたかったんですけど、この当時の近江商人って少し下火なんですよね~
安土城が出来て織田家の中心地になってからは大いに栄えて、後には多くの日本企業の礎になる様な商家が出て来るのですけど・・・
近江商人の流れを汲むと言う企業は住友、伊藤忠商事、西武、高島屋、西川、東レ、ワコール等々、それに、今や世界のトヨタとかですね~他にも多くの近江商人の流れを汲む有名企業がありますね~
実はお布団と言えば西川かな?と思い西川を出そうかな~と思って調べたんですけど、丁度この時代は西川仁右衛門さんと言う方が蚊帳商いを始められておりました。
西川産業の創業年はこの時からとされており、この人物が西川の遠祖と呼ばれ、1566年より現在まで続く歴史ある会社となりました。
さて、この西川仁右衛門さんは秀吉の命により田中吉政が八幡山城や八幡堀や八幡山下町の構築に着手した際に大工事の工務監督に任ぜられたそうです。
これは1583年の出来事と言われています。
序に八幡山城は別名で近江八幡城、現在の滋賀県近江八幡市宮内町辺りで、独立丘鶴翼山、通称八幡山にある城でした。
羽柴秀次の居城で秀次事件の後は京極高次が入城しましたが、築城から10年で廃城となりました。
さて、話は戻し、蚊帳売りの商人が大工?と思うと思いますが、なんとこの西川仁右衛門さんは近江国蒲生郡南津田村(滋賀県近江八幡市南津田町)の大工組西川家に生まれた人で、元々は大工と言うより大工も兼業。
更に、4人の息子(市右衛門・弥兵衛・久右衛門・甚五郎)が居り、その息子たちを連れ能登で蚊帳を売り、その売った資金で能登の海産物を仕入れ八幡山下町で卸し売りをしたことで更に財を成したと言われています。
後々、江戸幕府の許可を得て江戸日本橋通りに出店を開き、近江屋作右衛門と名乗ったそうです。
幕末の近江屋事件の近江屋とは関係ありません!!
屋号は四男甚五郎さんが店を継ぎ山形屋を名乗っていたようです。
鹿児島県に本社を置く百貨店の山形屋と関係するのかは知りませんが、この山形屋の創業者は近江商人の血を受け継ぐ現在の山形県庄内地方の北前船商人と言われます。
まぁ西川仁右衛門さんの家は後の西川産業になるので多分関係ないでしょう。
さて、近江商人は色々な商売格言を残しています。
中でも一番有名なのが「三方よし」でしょうか?
意味としては売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よして感じです。
二代目中村治兵衛さんが書き残した家訓を伊藤忠商事創業者の伊藤忠兵衛 さんが広めたと言われています。
更にそれを、第二次世界大戦後の研究者が分かりやすく標語化したものと言われています。
「三方よし」は元々は長い文章ですから標語とした研究者さんナイスですね~
この研究者さんとは小倉
流石に内容は殆ど忘れてしまいましたが中々面白い一冊だったと記憶しております。
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