第118話

確定申告書類作成完了!!

後は提出のみです!!

辛い数字との戦いが終わった・・・


◇~~~~~~◇


櫓の方から「天晴!!」との掛け声が聞こえたので天子様もご満足の戦いだったようだ。

試合が終わったので先ずは汗などを拭き取り終わってから試合会場に戻ると2試合目は既に始まっており、見物用に取り置きしていた身内席に行くと霜台爺さんや弓ちゃん等が試合を興味深げに見ている。


「勝者!!篠原しのはら右京進うきょうのじょう!!」

「勝者!!しま左近丞さこんのじょう!!」


殆ど同時と行っていい位で勝負が決まった。

勝ち名乗りの後には「ワー!!」と歓声が上がり、勝った二人は天子様の方を一礼した後にお互いに睨み合いながら笑い合っている。

次の対戦相手なので既に威嚇し合っているのかもしれない。

篠原さんは年配のダンディーさん。

嶋さんは勝気そうな若い侍と言った感じだ。

その睨み合いですら会場を盛り上げるスパイスになっているようで、「直ぐに戦え!!」とか言う掛け声すら上がっている。

立会人が声を掛けてお互いに目線を外し会場より離れて行った。

俺の方の山は俺VS伊勢太郎さん、篠原しのはら右京進うきょうのじょうさんVSしま左近丞さこんのじょうさんの対戦が明日行われることとなった。

会場の熱気は冷めやらぬが、少しの間休憩的な時間となる。


「霜台爺さん朝から酒か?」

「おうとも!実に良い酒の肴じゃ!!」

「サイデスカ~」

「それにしても長の相手、強かったの~」

「爺さん知ってる人物?」

「いや、知らん!!」

「そうか・・・」

「次はあの覆面の者とか」

「ああ・・・」


あれ信綱師匠じゃないよね?いや、考えられなくはないな・・・伊勢太郎とかネーミング・・・


「先程の勝者の二人は知っておるぞ」

「ほ~」


爺さん曰く、篠原しのはら右京進うきょうのじょうは三好家の家来の一人で、十河一存(長慶の弟)と試合して勝ったことがある人物だそうな。

十河さんの実力知らんから解らんが三好家中ではそれなりの実力者として知られているとのことだ。

ここまで残っているのだ弱い者などいない。

しま左近丞さこんのじょうは大和の筒井家の重臣で、爺さんとは不仲な家で今バチバチにやり合っている間柄とのことだ。

そんな時にここに来ていいのか?とか思うが、畿内には朝廷よりこの大会期間中に事を起こせば朝敵認定するぞと遠回しなお達しがあったので大会中に馬鹿をやる者は居ないと言う。

朝廷権力をこんなところでフル活用とは・・・天子様はよっぽど楽しみにしていたようだ・・・

爺さんが、「あの2人は試合に紛れて殺しても良いぞ」とか言う。

流石は梟雄きょうゆうだね~「自分で倒せよ」と言ったら「そうしよう」と言うから冗談か?・・・爺の冗談は冗談に聞こえないが、両方が今は爺さんの敵勢力側の者なのだ。

中休憩が終わり次のトーナメントの山の試合が始まる。

美羽VS北畠きたばたけ具教とものりと山本何某さんVS山田何某さんの対決だ。

山本さんと山田さんは爺さんも特に知っている人物ではなかったが、ここの残っているのだからそれなりには・・・

「ドン!!」と太鼓の音と共に試合が始まった。

身内が居るのでそっちに注視しよう。

爺さんもそちらの試合を注視したようだ。

美羽の事も知っているので興味深げにそっちの試合を見ている。

美羽は上段斜めに構えて微動だにしない。

北畠さんも正眼に構えて微動だにしない。

お互いに動きは少ないがすり足で間合いを詰めている。

チラリと見るもう一方の方は目まぐるしくお互いに構えを変えて「やー!」とか「とりゃ!」とか叫んでいるがあちらも動きは無い様だ。

美羽と北畠さんの方はお互いの間合いがある程度詰ると、先程と打って変わり激しい打ち合いとなった。

打っては躱し、躱しては打つ。

いなして相手の態勢を崩そうなどと攻防が激しく入れ替わっている。

しかし、一瞬の隙が北畠さんに出来たのを美羽は見逃さず木刀を叩き落とした。


「勝者!!近衛美羽!!」


美羽たちは既に養子として認められ仮ではあるが名乗りを認められている。

なので近衛と名字で呼ばれるのだが、まだ慣れないな~

まぁ夫婦になれば直ぐに丸目美羽なのでその期間限定だ。

「美羽姫最高!!」との掛け声が聞こえる。

今の一戦でもうファンが出来たようだ。

名の知れた剣豪、北畠きたばたけ具教とものりに勝利した美羽の知名度は可成り上がりそうだ。

北畠さんは美羽に一言二言声を掛けてから此方をちらっと見た後に試合場を出て行った。

さて、もう一試合の方はまだまだ続いているが、此方も激しい打ち合いとなった。

実力が五分五分なのでいい勝負だ。

しかし、決着は意外な結果となった・・・


「相打ち!!にて・・・協議に入ります!!」


大会運営に名前を借りている山科様含めた審判団が協議した結果、再試合を明日行うが、場合によっては美羽の不戦勝という事で決着がついた模様。

さて、両者とも激しく打ち合った為ボロボロで、しかも肩を強かに両者ともに傷めたようだ。

回復する可能性は低いが、決めつけは良くないので、まぁ妥当な決着だね。

次の試合はあっけない程に勝者が決まった。

胤栄さん(武蔵坊弁慶)と林崎はやしざき勘助かんすけさんが明日戦うこととなった。

これも中々の名勝負となりそうだある。

武蔵坊弁慶は顔晒しているのでもう胤栄さんで良いよね?

さて、次のトーナメントの山に入る前にまた中休みとなるが、会場は興奮状態であちらこちらで試合の感想を言い合っている。

「助平強かったぞ!!」とか俺にも声を掛けて来る者は多い。

俺の名前が「助平」になっている気がするが気のせいか?・・・


★~~~~~~★


丸目四位蔵人の高弟、近衛美羽殿・・・女子と思うて相手すれば恥を掻くこととなろう。

構えを見て解る、この女人は一廉の剣士じゃ!!

相手にとって不足なしよ。

態々伊勢より来た甲斐があろうと言う物よ!!

そして、その師である四位蔵人は更に上の実力者か・・・是非とも手合わせをしたいが、儂の組には儂でも侮れない者が数名いる。

近衛美羽殿だけではない、武蔵坊弁慶殿に林崎はやしざき勘助かんすけ殿と一筋縄ではいかぬ程の兵どもがおる。

出来うるならば全員と手合わせ願いたいが・・・

そして、試合開始の太鼓の音と共に間合いを詰めようと思うておったが、丸目四位のあの技・・・行き成り使われれば対処の難しき技よ。

同じ構えを取っておる近衛殿が使えないとは思わんがええじゃろう。

り付くようなこの気勢!やはりこの者も強者じゃな・・・

じりじりと間合いをお互いに詰めて行く。

ある程度詰るとお互いに示し合わせた様に動きを止め、次の瞬間には木刀を振り下ろしておった。

躱しながらスキを探し、スキと思えばそこを狙うの繰り返し。

まるでましらの様にすばしっこくて一瞬儂の攻撃が遅れてしもうた。

そのスキを相手はやはり見逃してはくれなんだ。


「勝者!!近衛美羽!!」


残念至極ではあるが、負けてしもうた。


「近衛殿」

「はい、何で御座いましょう」

「宜しければ丸目四位蔵人殿を紹介頂きたい!!」

「長師匠に何か御用ですか?」

「出来ますれば一手ご教授頂きたし!!」

「はい、伝えさせて頂きます」

「おお!!忝い!!ではこれにて失礼!!」


後日、お会いすることとなったが、この出会いは儂の人生の転機となった物だと後々に思うことになろうとは・・・この時は思わなんだ。


〇~~~~~~〇


この物語ではヒロインに負けてしまいましたが、北畠きたばたけ具教とものりは相当強いです。

国司剣豪などと呼ばれる人物で、公家大名の代表格の一人です。

伊勢国司にして正三位権中納言にまでなった人物で、塚原卜伝に師事し一之太刀を伝授された人物です。

一之太刀は塚原卜伝が最奥義とした秘剣で、受け継ぐことができるのは1人だけと定めていたとも言われています。

その秘剣を正統継承したのが北畠きたばたけ具教とものりで、塚原卜伝の嫡男の塚原秀幹にあてて北畠具教に教えを請うように遺言し亡くなったそうです。

塚原秀幹は既に一之太刀を習得したと偽って、比較のために見せてほしいと北畠具教に頼んだろころ、事情を知らない彼は騙されて秀幹に一之太刀を見せてしまったなどと言う逸話が残っています。

本当かどうかは解りませんが、剣術の世界ではこのような事は普通にあったので秘伝は安易に見せる物では無い物として扱われていましたが、流石に卜伝の息子から騙されるとは思わなかったのかもしれませんが・・・うっかりさんですね。

北畠具教は織田信長の伊勢侵攻で敵対者として出て来るので知っている方も多いと思いますが、最後は信長に暗殺されます。

信長に恭順した後も裏で暗躍したりして伊勢での復権を狙っていたと言われます。

嘘か誠か織田信長の刺客に襲撃された際に、太刀を手に19人の敵を斬り殺し100人に手傷を負わせたというから凄いですね~

しかし、逆に刀の刃を家来により潰されており、抵抗できずに斬殺されたとも言われます。

上記の無双話が偽りだったとしてもそれ位しそうなほどの剣豪であったと言うことかもしれません。

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