第171話

時は少し戻り、丸目蔵人一行は帰郷している道中。


嫁たちの出産はまだ少し先だが、早く帰って顔を見たいと言う思いが募る。

そういえば、嫁たちと長く離れるのは何時以来だ?

逸る気持ちを抑え博多に寄り道。

竜様(近衛前久)は少しの間は吉田郡山よしだこうりやま城で有力人物と面識を得たり旧交を温めたりした後は畿内へと旅立って行った。

う~む、信長包囲網でも作る予定?

まぁ神の言葉を信じるなら、やりたいことを思いのままにやると言うことだろうから・・・

頑張れ?信長にとってはとばっちりの不幸な出来事だろうけど、これも歴史の強制力とでも思って諦めが肝要だよね~

慣れ親しんだ博多は神屋に行くと紹さんが息子の貞清と話し込んでいた。


「ただいま~お二人さん如何したの?」

「お帰りなさい。お!丁度いい所に!!」


紹さんが喜びながら手招き。

次に売れそうな物を模索中らしいのだけど意見を求められた。

う~ん、これから需要が高まりそうなのは硝石・・・あ!九州も日本国内では暖かい方と言っても夜は暖かくして寝たいよね~てことで、羽毛布団欲しい!!

え?ここは綿花栽培ちゃうのかって?

ははははは~何言っている!!軽くて暖かいお布団様と言ったら羽毛布団様に決まっているだろ!!

でも、上は羽毛布団としても下のお布団は真綿(絹)の布団良いよね~

てことで2つとも勿論の様に依頼したよ。

大昔のヴァイキングの墓からも羽毛布団が見つかったって前世の何かで見聞きしたし、探せばあるっしょ!!

よう知らんけど、ヨーロッパとかでは羽毛布団あると思うし、綿花もそろそろ入って来てもおかしくない!!

多分、俺が観たことないだけで、入って来ているはずだ!!

衣食住が整ったら次は《眠》でしょ!!

さて、さて、夢が膨らむね~

取り合えず今回は寝具を探して貰うこととしたよ。

売れそうなら輸入するとのこと。

うん、寒い地方ほど売れそうな気がするよ~

戦国時代は冷夏で更に冬も寒いと言うし、全国的に売れる?

場合によっては天子様に献上してから箔付けて売るという手もあるね~

羽毛布団とかに慣れてしまったら戦場行くの辛いだろうね~俺はもう多分行くことないので殆ど他人事で御座る。

さて、博多でも旧交を温めたので熊本戻るぞ~


★~~~~~~★


長様とこんなに長い日数離れた事があっただろうか?

よくよく考えると龍造寺家に行った時位?

日がな一日ボーとして過ごすのも日が長く感じる為、3人で散歩がてらに毎日真里の所に行くこととしている。

最近は少しお腹が大きくなってきて階段が辛くなって来たし、そろそろ行くのは難しくなりそうだ。


「う~階段が辛い・・・」

「莉里~ふくよかになったから」

「何~太ったって言いたいの?」


春麗と莉里がそんな言い合いをしながらじゃれている。

千代より仙術を教えて貰っているが、一番適性が高かったのが春麗で、軽身功けいしんこうと言う技を春麗は早くも会得しかかっている。

千代が見本を見せてくれたが、極めれば羽の様に軽くなると言い、見本として風に揺れる枝の先に飛び乗ったのには驚いた。

私も仙術の適性は高いらしいのだが、天狗の使う仙術の方に適性があると言われた。

天狗の末裔だから?多分、そうなんだろう。

春麗は狐の末裔でも無いのに千代妖狐の使う仙術に適正があるのは少し狡いと思う。


「春麗は軽身功を使って階段上れるからいいけどね~私も莉里も身重だからそろそろこの階段が辛いのよ」

「そう!美羽の言う通り!私は太っていない!!」


そんな話をしながら真里の下に向かう。

しかし、一緒に行動していた筈なのに何故か一人になってしまった。


「すまぬがそこの者」

「え?わ、私ですか?」

「おお、そなたにちょっと聞きたいことがあっての」

「な、何でしょうか?私で解る事なら・・・」


おかしい、ここは関係者以外立ち入り禁止の区画のはず・・・少し警戒しながらも悪い者の気配はしないし、ここで助けることは自分にも良い気がして天狗様のお社に案内する。


「実はの~天狗が祭られていると聞いてな、少し様子を見に来たのよ」

「あ~ご参拝ですね」

「まぁそんなもんじゃ」


その後は天狗の祭る場所に向かいながら何気ない会話をし、他にもここにある神の社を巡りながら案内した。

全ての社を巡ったが誰にも会わない・・・おかしい・・・

警戒しながら周りを見渡すが人っ子一人おらず、私とこの山伏殿のみ。


「案内ありがとう」

「いえ・・・」

「ふむ、お主は天狗の末裔の様じゃな」

「お、お分かりになるのですか?」

「ふはははは~同族じゃて分るぞ」


目の前の山伏殿はそんな事を普通の事の様に語る。


「あ!もしかしてあなたは、いえ、貴方様はガブリエル様?」

「いや、そのような名前ではないが、儂は優婆塞うばそくと言う者じゃ」

優婆塞うばそく様ですか?」


その優婆塞うばそく様と私は話し、天狗の仙術の初歩を教えて頂いた。

聞けば新しく天狗が社に祭られたと知り合いの方より聞いたので見に来たと言われる。

知り合いは「うか」と言うお名前の方だそうだ。


「ここで会ったのも何かの縁じゃ、少しだけ天狗の仙術の初歩を教えて進ぜよう」

「はい、ありがとうございます!!」


その後はひたすらに優婆塞うばそく様の教えに従い呼吸を整え、背中に意識を集中する。

丁度、首から少し下位の位置に温かい何かを感じる。


バサッ!!

「あ!!」

「おお!立派な黒じゃな!!」

「あ、ありがとうございます!!」

「良い良い、同族じゃ、これも縁じゃし、また今度でも続きの修行法を教えて進ぜよう」

「はい!!」


そして、私は優婆塞うばそく様と別れた途端に声を掛けられた。


「美羽~何処行ってたのよ~!!心配したのよ!!」

「え?莉里・・・え~と・・・ごめん」

「うん、まぁ無事ならいいわ。みんな~!!美羽居たわ~!!」


春麗もお付きの者たちも慌ててこちらに向かって来た。

心配させて申し訳ないと思ったけど、何故、他の人と会わなかったのかは不思議だ。

しかし、幸運だったと思う。

私の仙術はその日を境に飛躍的に伸びたと自分自身が感じる。

何より背中に・・・長様が戻って来たら見せてみよう!!

どのような反応をされるか今から楽しみである。


〇~~~~~~〇


お気づきと思いますが、2話とも「羽」繋がりで!!

羽毛布団の歴史は意外と古く、古いものだと800年代位の物がノルウェーで発見されたヴァイキングの船墓より見つかったと言われています。

北欧では1200年代には今の私たちでも見て触ればすぐに分かるほどのレベルの羽毛布団があったそうで、北欧の王侯貴族は使っていたようです。

しかし、贅沢品だったのは間違いなく、「羽毛布団で寝る」=「贅を尽くす」と表記される程には贅沢品だったようです。

一方、日本では800年代頃のお布団事情は貴族の中には、真綿(絹)の詰め物をした薄いお布団を使っていた人もいたようです。

現代のような綿入りのふかふかのお布団が登場したのは江戸時代後期で、一般化したのは明治・大正時期でした。


※コメント頂き気が付きましたが、この江戸時代後期に一般化したのは木綿!!真綿(絹)ではなく木綿(コットン)のお布団が一般化します。綿と上書しましたが書いている時は真綿と綿とかき分けたつもりでしたが、書かないと解り辛いかな~と追記。


羽毛布団を手に入れたら間違いなく日本でも最高級品として売れるの間違いなしでしょう!!

主人公が手に入れるのは何時の日か!!

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