第35話

「いや、危害を加える者など居らんぞ!」

「え?何か某ささやきました?」

「そうではないが・・・顔に何となく出ておったような・・・」


ふぁ~良かった!また心の声が駄々洩れたのかと思ったぞ。

でも・・・顔から読めれたか・・・やるな幻庵げんあん!!あ、今は宗哲そうてつか、失敬失敬。


「それに、今は上野は攻められており行くのは厳しいぞ」

「え?大変だ!誰が攻めているんですか!!」


マジか~師匠のところ攻めるとか何処のドイツだよ!!あ~ドイツは攻めて来んか~おっと言葉遊びは置いておいて、何処のどいつだよ!!


「え~と・・・我ら北条と武田・・・」

「アウチ・・・そうなんですね・・・」


あ~そりゃ兵士が警戒するの当たり前ですよね~今攻め入っているのにそこへ向かおうとする者・・・怪しすぎるがな~

う~ん・・・あれ?確かこの戦い後に師匠は兵法修行の旅に出るんじゃなかったか?

道場の爺さんの話で聞いたかな・・・よく覚えてないので何とも言えんが、なんかそんな気がしてきた。

やべえよやべえよ~(出ピー風)チッ人物名も放送倫理規定に引っ掛かったか~

あ~頭の中で遊んでる場合ではないが、現実逃避したくなる。


「それでじゃ」

「はい・・・」

「今、上野は我ら北条と武田が攻め入っておるのじゃが、其方も上野に行きたいのじゃろ?」

「はい・・・」

「氏康様も今上野に居るので会う名目で入ると言うのはどうじゃ?」


おお、一石二鳥的な奴ですね!!

俺は先ほどまでの杞憂を忘れ首をブンブンと縦に振っていた。


「初めてお目に掛かります、丸目蔵人佐長恵と申します」

「よく来られましたな、北条左京大夫さきょうのだいぶ氏康と申す」


氏康と向き合っている俺・・・しかし、周りには北条家臣団。

あ~ソウダヨネ~ソウダヨネ~戦時下でしかも敵方の者に師事を考えている者と総大将が会うなんて警戒以外何する?て感じだよね~

でも、ここでオドオドすると駄目なんよ~普通に普通に自然体で!!

気持ちはやべえよやべえよしてても良いけど、見栄は重要、心を読むのは難しいんだよ!


「流石は噂のお方だすな」

「はて?某の噂とは?」

「ははははは~九州の大大名の大友の鼻をあかしたことや、顕如上人との問答で勝利したことや、朝廷へ個人で莫大な献金をされたことなどですかな」


うほ~九州の噂まで・・・やっぱり侮れないな~有名武将。

しっかりとかっちりと情報を集めてるよ。

大きくなるには訳があるという事だろう。

さて、北条氏康はう~ん、昭和の大手ゼネコンの社長のような貫禄。

元就や霜台爺さんや義元とはまた違うベクトルの貫禄というものがある。

相模の獅子は凄いがそれ以上に気になるのがやはりと言うかやはり、北条家臣団の猜疑、侮り、等の良い感情とは言えない様な視線だ。

だよね~だよね~ソウダヨネ~

特に一人気に入らないと言うのがありありと表すような態度の武将がいる。

席次から考えて間違えなく北条家の家臣の中でも地位が特に高いと思われる。


「ふん!その者は兵法者と聞き及んでおりましたが、兵法修行者とは思えぬ行動の数々、氏康様、このような訳の分からない者など相手にするなどは・・・」

憲秀のりひでそれは言い過ぎぞ」


先ほどから俺に対して特に嫌な目線で見詰めていた人物が氏康に言い募る。

まぁおっしゃる通りです・・・自分自身でも思ってるけど人から言われるとショック大きいんだぞ!!

その憲秀さんより更に上座にいる宗哲さんが窘める。


「松田殿、こちらから呼び立てたのです、その言いようは失礼ぞ、礼を欠く言動はお控えなされい!」

「然し、宗哲様、事実は事実でございますれば」


松田憲秀か~どっかで聞いた気が・・・何だったかな~・・・!そうそう、思い出した。

秀吉の小田原征伐の際に裏切った北条家の筆頭家老がそんな名だったって・・・多分本人だな。

有名な話で、秀吉は松田憲秀の寝返ることの打診の書状をそのまま北条方に突き返して、「このような人物がこちらに寝返る書状を送ってきましたよ。他にも沢山来ていますが大丈夫ですか?」的な書状を送り付けた。

北条側の上位の者ですら裏切るという事で小田原城内は大混乱を起こしたというが・・・

そんな事を考えながらジーと見詰めていると、目線が気に入らなかったのか俺に食ってかかる松田憲秀。


「何だ?その目は!呪い師の様な詐欺師の様な輩の分際でその目は何だ!!どうせ兵法修行者などと言ってもどうせ大したことは無いのであろう!!」


カチン!俺の事は良いよ色々遣らかしたのだから、でもな丸目蔵人佐を馬鹿にするとは・・・許せん!!

あれ?・・・なんか変だぞ・・・俺=丸目蔵人佐・・・身から出た錆!!

ごめんよ~本当の丸目蔵人佐よ。


「ふん!黙り込んで言い返せんとは、儂の言い分が正しいという事だな」


あ~色々考えていたので途中からよく話を聞いていなかったぞ。

今は名誉回復、挽回するのが重要だ。


「松田殿で良かったかな?」

「何じゃ!」

「某が兵法修行者ではないと?」

「ふん!そうじゃがそれがなんじゃ?」

「では実力にて証明いたしたく思うが?」

「ふはははは~立ち合いでも望むか?北条にはお主では絶体に勝てぬ猛者が大勢居るのにその言いよう!今更無理とは言わさんぞ!!」

「受けて立ちましょう!!」


お!瓢箪から駒と言うが何だか剣術ものの雰囲気!ソウダヨネ~そうでないと!!

ふと気が付くと事の成り行きを見ていただあろう相模の獅子が面白そうににやりと笑っている顔が目に入った。

権力者って本当に上手いよね~何も言わないのに周りを上手く使う。

考えてみれば俺との会見も別に不満分子を同席させなくて良いのに態々この場に置いてる時点で何か思惑なりあったんだろうけど、俺の腕も見たいと言うところか?

は~これだから怖いよ高パラ武将・・・


★~~~~~~★

次回、氏康目線挟みます。

少しUP減らしますが、1日1話を目標にUPしていきますので宜しくです。

誰と闘わせよう・・・

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