第285話

ここは何処だろうか?

白一色でブリザードの夜を思い出す。

それとも、しんしんと降り積もる真冬の夜の山野の様なもの静けさだろうか?

寒い訳ではない、ただ白いだけの空間が延々と先の先まで見える限り続いている空間に何故か私は立っていた。

しかし、雪も風も無く静寂が周りを包む白いだけの世界なのにもの悲しくはない。

不思議とこの静寂が心地良く、神聖にすら感じてしまう。

ふと気が付くと、私の背後で賑やかな話声がする。

何時の間にかそこに現れたというように存在する気配。

耳をそばだてると男女の話声?


「今回は特別に客を招いた」

「え?誰を・・・」


声のする方に振り向くと、円卓を囲み男女の何者かたちが楽しそうに会話をしていた。

振り向いた私にニッコリと微笑み美しい女性の方が話し掛けて来た。


「そなたがセドナだな」

「はい・・・」


逆らっては駄目だという心の叫びの様な変な気持ちで私は回答した。

そこに居る者たちはただ者ではない雰囲気が見ているだけで伝わり、こちらに漂って来る様なそんな気がした。

本能が絶対に逆らうなと叫んでくる。

少し足が震えた様な気がした。

それを悟られた様で、美しい女性が微笑みと共に私を落ち着かせようと話す。


「そう構えるな。私は摩利支天と言う」

「マリシテン・・・」


何処かで聞いた様な・・・ほんの最近その名を何処かで聞いた気がするが・・・!

思い出した。

春(春長)に連れられて行った神の社に祭られていた一柱の神の名が「マリシテン」という名であったが・・・え?

恐る恐ると、その神の名と同じ人物に聞く。


「貴方様は神ですか?」

「おほほほほほ~そう呼ばれることもあるわね」

「では、他の方々も・・・」

「そうじゃの~一人だけ人が居るがの」


そう言ってマリシテン様が中年男性を見る。

人と言ってもその男性もただ者では無いであろう。

神と対話する者など通常の者ではない。


「セドナ、此方に座りなさい」

「はい・・・」


言われるがままに下半身が魚の・・・もしかして、海の女神・セドナ神様であろうか?

勧められた席に座ってハッとその方を見れば、「正解です」と言われる。

え?言葉に出していないのに、私の心を読んでいる?

そう思った瞬間、セドナ神様がニコリと笑われた。


「それで・・・そちらの女性はもしかすると・・・」

長恵ながよし(丸目蔵人の名)よ、察しが良いですね」

「あ~春の嫁か・・・」


不思議だ・・・恐らくは春の国の言葉を話しているはずなのに全て理解できる。

何故かよく解らないと思っていると、セドナ神様が「神界ですからね」と言われる。

神界と言うこの場所では言語関係なく誰とでも話せる?

よく解らない、思考が追い付かない。

あ~多分、これは夢だ・・・

あまりの事に現実逃避してそう思った瞬間、セドナ神様が私に言った。


「そう、貴方は夢を見ておりますが、神界に居るのも事実ですよ。この場では言葉の違いなぞ些細な事よ。今回はあの男、丸目蔵人長恵の息子に貴方が嫁ぎましたのでそのお祝いで当事者の貴方をここに私の意志で呼びました。何と言っても、貴方は私の遠い遠い子孫なのですからね」

「え?」


目の前で神たちと飲み食いしている中年男が春の父親?

それに、セドナ神様が私のご先祖?

夢なのに夢ではないと思えてならないが、勇気を出して義父に話し掛けてみた。


義父様ぎふさま・・・」

「お!春の嫁さんか!!貴方の様な美人さんに「義父様ぎふさま」と呼ばれると、何だか照れるね~まぁ俺は丸目蔵人長恵と言う。春の事よろしくね」

「はい!」


春の父である義父様ぎふさまの事は「なが義父様とうさま」と呼ぶこととなった。

酒に酔われたのか、長義父様が自分から「なが」と呼ぶようにと言われたので、そう呼ぶこととなった。


「ほれ、もっと食え」

「はい・・・」


男神で「オーディン」と名乗られた神が食事を勧めて来た。

ここにある食事や酒はどれも美味しく頬っぺたが落ちると思える程の物であった。

見ればオーディン様は赤いお酒だけを飲み、食事は2匹の狼に与えている。

食いっぷりが良く、実に可愛らしく見えるが、神の連れた動物だ、ただの狼ではないのであろう。


「娘よ」

「はい」

「これが春の先祖じゃ」

「この子がですか?」

「そうじゃ」


オーディン様は一匹の狼を指さしてそう言われる。

成程・・・確かに春によく似た気配もする。

そして、セドナ神も確かイヌに嫁がれたというし、神話の話だからそういう事もあるのだろうと納得した。

納得した段階で、セドナ神様が声を掛けて来た。


「まさか私の子孫が私と同じくイヌの伴侶となるとはね」

「犬ではない!神狼!オオカミじゃ!!」

「似たような物です」

「違う!!・・・まぁよい・・・」


セドナ神様とオーディン神様が話し終わると、セドナ神様が私に言う。


「貴方は私の子孫の中でも私の権能を色濃く受け継いでます」

「え?如何いう意味ですか?」


確かに私はこの方と容姿が似ている。

この美しい神に似ていることが今は凄く誇らしく感じるし、何よりセドナ神と同じ名であることもまた誇らしかった。

なのに、「権能を色濃く受け継ぐ」と言うのはどういう事なのだろうか?


「貴方が一緒なら海は味方ですよ」

「え?」

「セドナ神様!そこを詳しく!!」


長義父様がセドナ神に説明を求められた。

セドナ神曰く、海での私は全てに於いて守られる存在となるそうだ。

どんな嵐にあっても私の乗る船は沈まないと言うのが一例らしい。


「よし!日ノ本に戻ったら春とセドナちゃんを中心の船団を作ろう!!」

「え?・・・え~~~~!!」


私はつい叫んでしまった。

まぁこれは夢だし、叫ぶ程の事でもないか。

しかし、蔵人が日ノ本に戻ると、春とセドナを中心とした船団が組まれ、彼女の故郷である北アメリカ大陸との間に定期便が出来、アメリカ大陸に日本人街が出来ることとなる。


★~~~~~~★


まさか夢の中の神界で春の嫁のセドナちゃんと初顔合わせするとは思わなかった。

これぞ神のみぞ知る?・・・違うか。

帰り際にセドナ神たちが結婚祝いとしてセドナちゃんに加護を授けた。


「どんな加護ですか?」

「いや、大した加護ではないぞ」

「いやいや、神の加護です!きっとすごい筈です!どんな加護か教えてください!!」

「単に言葉を覚え易くする加護じゃ」

「え?莉里みたいにですか?」

「莉里?・・・あ奴は加護なしじゃ」

「左様ですか・・・」

「異国に嫁いだのじゃから言葉が通じぬは不便であろう?」

「まぁそうですね」

「親心と思うてもらってよい」


セドナ神の加護でセドナちゃんが言語チートとなりました。

確かに日本語難しいから丁度良いかもね。

目が覚めて、嫁さんたちに事の顛末を話したら、春麗は「流石我が子!!」と言って得意顔だったよ。

珍しいので皆して春麗を中心にお祝いしたよ。


「姉より先に婚姻とは・・・帰ったら少しもんであげましょうか」


と微笑して刀に手を掛ける里子・・・

いやいや、俺が「俺を倒さないと里子は嫁にやらん!!」とか言ってたら里子も調子乗って「父上を倒せる程の猛者と結ばれたいものです」とか言うもんだから、里子狙いの子たちの目の色変えて現在修行中だよ?

国に帰ってから俺の命大丈夫だよね?

まぁあと少しで帰る予定なので実物のセドナちゃんと会うのが楽しみだ。

息子娘たちはそれぞれがそれぞれで好きなことをするように言っているので、自分の身にに邁進している事だろう。

国に戻ってからの彼らの成長が楽しみだ。

そう言えば、セドナちゃんが春が「片目」と呼ばれるネームドモンスター(特殊個体の白熊です)を倒したと言っていた。

確かせがまれて前世の漫画かアニメか何かの話で大剣振り回す話をしたことを思い出した。

「斬馬刀」と言う馬の首すら斬り落とす程の大剣の話をした時に春が凄くキラキラお目目で聞いていたけど・・・まさかね・・・


〇~~~~~~〇


セドナがサプライズゲストとして神界に登場!!

さて、加護と言うのは実際あるのか?

日本において「加護を得る」と言うのは神仏に限定すればその神仏の力添えを得るという意味合いで使われます。

今回セドナが得た物は「ギフト」等とも呼ばれる能力で、生まれた子供などに特殊能力がある場合は「ギフテッド」等と呼ばれ、同世代の子どもよりも先天的に高い能力を持っている人々を指してそう呼びます。

全体的な知的能力、特定の学問、芸術性や創造性、言語能力やリーダーシップ、身体能力に視覚や聴覚などの五感など、多岐にわたる分野で優れた才能を見せる点が特徴と言われます。

身体能力で言うとオリンピックなどに出て来るスポーツ選手何かはその最たる者だと言われます。

名を残した歴史的偉人もこの能力持ちが多かったのではないかとも言われます。

もしかすると、当物語の主人公とした剣豪・丸目長恵もギフテッドだった可能性は非常に高いと思われます。

222話で「ギフテッド」の話は少ししましたが、現在、まだあまりギフテッドっぽい話は書いておりませんが、今後はそこら辺の話も増えて行くと思います。

次話は春長編の取り合えずの完結と麗華編へと移って行きます。

そして、子供編は羽長編まで書いてから次の事を考える予定としておりますのでお付き合いください。

一応、その後に少しだけ主人公不在の日ノ本の話を入れてから主人公主体に戻そうかと考えております。

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