第266話

エッフェル塔に凱旋門、シャンゼリゼ通り、ルーブル美術館にベルサイユ宮殿と俺の持つフランスのイメージはそんなものだろうか。

花の都パリにやって参りました!!

実は前世の若い時分に海外旅行行きたくて初めて行ったのがここフランスのパリだった。

街並みもおしゃれで食事も美味しく満足行くものだったと記憶している。

しかし、この時代はエッフェル塔もルーブル美術館も無い。

凱旋門はあるけど俺がかつて見たエトワール凱旋門はまだ無く、その通りであるシャンゼリゼ通りも前世で見た程の華々しい場所ではない。

そして、ベルサイユ宮殿も無かった!!

それからフランス王に会いに宮殿へ赴き、お仕事を完了!!


「お初にお目に掛ります。長恵・蔵人・丸目と申します。蔵人とでも呼びください」


そう、俺は次の訪問国、フランスにやって来て、王の面前でご挨拶をしている。

(フランス語です)


「うふふふふふ~貴方が「悪魔祓いのクランド」ね。我が国に来るのを楽しみにしていたわ~」


フランス語は流石に知らないので、通訳的に天才莉里に通訳をお願いしている。

流石は天才莉里である、フランス語を3日で習得し、現在、俺の通訳をしている程に話せているから驚きだ。

里子もその一族の血を引き継いでいる様で、片言だけどフランス語を話せる様になってきている。

俺は・・・聞くだけ野暮だろ?

さて、目の前にいるのはサッカー選手でもどこぞの大泥棒の末裔でもない、フランス王はアンリ3世という名の王様だ。

俺の前世からの持ち込み知識として知る彼はヴァロワ朝最後のフランス王で、かの有名なカトリーヌ・ド・メディシスが母で、宗教対立真っただ中の欧州で宗教内戦の平和的解決を願う穏健派であったがその為カトリック同盟内では評判が悪かったようで、政敵関係にあったギーズ公アンリ1世という人物と激しく対立した。

一時的に逃亡する程にアンリ3世は追い込まれたが、起死回生の一手を討つ。

「暗殺」したのだが・・・彼自身アンリ3世も暗殺者に短剣で襲われて重傷を負い、その手傷が元で亡くなるという「暗殺」がキーワードになりそうな人物だ。

さて、このフランス王の特徴として云われるのが、同性愛者であったという。

俺の前世ではLGBTという言葉が世間を賑わせたワードでもあった。

このLGBTというのはレズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障がい者を含む、心と出生時の性別が一致しない人)のアルファベットの頭文字を取った言葉で、性的少数者の総称として使われたのであるが、この16世紀の世では、勿論、そのような言葉は無い。

しかし、日本にも衆道という文化がある様に欧州でもそんな性的マイノリティーな物はあるにはあるが、戦国の日本ほどには認められていない。

何が言いたいかと言えば、そう言う事前情報があると何だかフランス語で語る目の前の王様アンリ3世がオネエ言葉で話し、ネットリと俺を見ているように感じてしまうから不思議だ。


「はっ!最近はそのように呼ばれることもあるようです」


誰に似ているかと聞かれると困るが、映画に出て来る俳優さんにも見える程に整った顔立ちの彼がそんな性的思考を持っていると考えるとお尻の穴がヒュンする思いだが・・・


「その御業を見せてくれぬか?」

「仰せのままに」


ここでも神刀の呪詛斬りを依頼され、それを披露した。

例の如くと言うか、ここでも呪詛が横行しているようで、アンリ3世には4体の黒い何かが憑いていた。

斬り祓ったが特に彼の周りで倒れる者は居なかったが、恐らくは・・・

さて、アンリ3世以外のも彼の母、カトリーヌ・ド・メディシスにも会った。


「クランドは食通と聞き及んでいるが、噂のプリンアラモードを食べさせてくりゃれ」

「仰せのままに」


カトリーヌさんはイタリアからこのフランスに嫁いできたと云われている。

この時代では洗練されていると言われるイタリア文化をフランスに広めた人物で、香水やパラソル、ナイフとフォークによるテーブルマナー等々をフランスに齎した。

そして、そんな齎したものの中には美食の数々やマカロン、アイスクリームなどのスイーツ類もある。

今回は豪華にそれらも乗っけた豪華版プリンアラモードが完成した。


「美味である」


彼女は満足そうにそのプリンアラモードを食された。

「アラモード」というフランス語を冠していることも気に入られたようだ。


「何故、フランス語を入れたのじゃ?」

「「アラモード」ですか?」


うん、理由は前世で現物を食べたからそのままの名前を付けただけ・・・

まぁその前世の話が出来れば最も手早いのだけれど、どうするかな~・・・

あ~仕方な、仕方ない。

何時もの如く、神にその名をお借りしよう。

困った時の神頼みなのだ!!


「この欧州にやって参りました折に神より歓待を受けまして、その際に出された品となります」

「何と!!誠か!?」


うん、聞かれても「うそ~」とか言えないので、何となく意味ありげにニコリとだけ笑っておいた。

カトリーヌさんには何だか気に入られた様で、色々とお話しできた。

その際にお願いして色々な料理を学ばせて貰えることとなったよ。

マカロンとか作り方知らなかったので教えて頂ける事となったのは行幸だ。


〇~~~~~~〇


フランスにやって来ました!!

2024年8月はフランスのパリでオリンピックがあっており、タイミングばっちりのタイムリーな話となっております!!

狙った訳ではないのですが、本当に偶然なのでタイムリーです!!

さて、本文中でアンリ3世の「同性愛」について書きましたが、主人公がそう感じているだけです。

彼の死後長い間、彼はホモセクシャルか、もしくはバイセクシャルであると考えられていたようです。

未だに確定しておらず議論の余地がある話となっているようですが、ホモセクシャルであることを示す史料が多く見つかっている一方、愛人を多く抱えた事実と、ホモセクシャルではないという証拠を発見とも云われたいます。

では何故、同性愛者では無いとして事実が曲げられたのか?

アンリ3世の敵対勢力としてユグノー(フランスにおける改革派教会、カルヴァン派やカルヴァン主義とも言う)と過激派カトリックがあげられるのですが、その敵対者たちがフランス国民をアンリ3世に敵対させるよう仕向ける為に作った作り話とも言われます。

この16世紀のヨーロッパでは「同性愛」というのはある程度忌避されることだったようで、女々しさや優柔不断の象徴だったようです。

同性愛=女々しいと捉えられることで国民からは弱い王と見られ指示が得辛かったようです。

さてさて、彼の母、カトリーヌ・ド・メディシスも有名な人物で、14歳でアンリ2世にイタリアから嫁入りして来ました。

その時、莫大な持参金と千人もの従者を従えて来たと云われており、実家の権勢が伺えます。

後ろ盾が強い事がこの事実から解りますが、その実家と言うのはフィレンツェの大富豪メディチ家(フランス語ではメディシス)で、彼女自身も文学、語学、芸術、哲学、自然科学、等々の幅広い学び、豊かな教養を身に着けていたと云われます。

ある種の天然チートお嬢様だったようです。

地頭が相当良かった様でフランス語の習得も早く、完璧に使いこなしたと云われています。

しかし、夫の愛を独占していたのは、19歳年上の愛人ディアーヌ・ド・ポワチエで、その女性が宮廷内も牛耳っていたようです。

でも彼女は彼女自身の性格もあると思いますが、強い実家の力もあり日頃から快活で優美で威厳のある話し方をしており、また、豊富な知識が周囲を魅了して行ったようで、徐々に彼女は認められていきます。

その後、彼女は夫の愛を勝ち取り10人もの子供を産んだのですが、第一子は嫁いで来て10年目だったというから驚きですね。

彼女の子供は3人が王となりますが、政治手腕も相当な物であった様で、摂政となり国の舵取りもしたようです。

丁度その頃は、たび重なる外国との戦争、国内では王位争奪を背景にした宗教対立が激化しており、国内外の和平交渉に奔走していたと云われます。

そんな折、「サン・バルテルミーの虐殺」と呼ばれる凄惨な事件が起こりますが、この首謀者として彼女が巻き込まれます。

これが原因で彼女は「暗黒王妃」「フィレンツェの商人女」等と陰口を叩かれるようになったと云われております。

メディチ家の先祖が薬剤師だったことから「毒を盛る女」「蛇姫」等とも呼ばれたこともあり、彼女の周りで急死が起こると「毒殺」を疑われたりと結構散々な目にもあっております。

外国出身で責任転嫁をし易かった事情があったようですけど酷いものですね~

彼女の代名詞と言われるのはイタリア文化を背景に多くの物をフランスに齎せましたことでしょう。

本文中で書いておりますが、香水やパラソル、ナイフとフォークによるテーブルマナーから美食の数々やマカロン、アイスクリームなどのスイーツ類、等々を広めた文化の伝道者として有名です。

本当に異世界転生ものなどでよく出て来る知識チートを地で行くような天然チートお嬢様だったようです。

彼女が現代のフランスの基を作ったとも云われるほどのようです。

宮殿の造営や歌謡・演劇の分野で才能を発揮したと云われる彼女の居城はシュノンソー城ですが、現在、世界遺産となったおります。

本当にリアルチートと言うのが該当する歴史的偉人の一人ですね。

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