第130話
「おい
「
「儂の方は天子様の後は坊主どもの方を回っておったからの~」
「ふん!儂も三好家の方じゃが、そっち終わったならこれから四国の方の三好の者どもの方を回るから手伝えよ」
「仕方ないの~」
三好長慶見た事無いから言葉のみではあるが、俯いた感じで顔も視認出来辛くして畿内の三好の者どもの夢枕に立っておるが、面白い様に慌てふためく者ばかりじゃ。
蔵人様曰く、人間は見たくない物には顔を背けるからそれなりであれば騙されると言われたが、面白い様に騙されよる。
蔵人様に「三好長慶の顔を知らない」と言えば「顔など似てなくても騙されるだろうし、何なら顔なんて骸骨でも良いぞ」等と言われて試したが、骸骨だと気を失う者が多く目的を達成出来なかったので儂なりに考えて今の幻術に落ち着いた。
しかし、面白い事を考える主様じゃ!!
幻術を恐れ、仕官先で命を狙われることはあっても、この様に上手く我らを使う御仁、いや、主に恵まれるとは、これぞ神仏のお導きじゃ!!
蔵人様は儂とこの目の前の爺が忍びと呼ばれることが不快であると知ると、「幻術士」なる名を授けてくだされた。
言葉遊びのようでもあるが、悪くない。
爺も気に入った様で弟子の春麗にも自慢の様に語っておった。
しかし、言っとこう、春麗は儂の弟子じゃぞ!!
さて、それはさておき、首謀者の三好日向守を暗殺すればいいものをこんな回りくどい方法で追い詰めるのに何の意味があるのかと思うておったが、案外に儂らにとっては面白い。
蔵人様曰くは「自分から首を差し出すか、周りが首を差し出して詫びて来るのが理想」と言われた。
暗殺すれば簡単ではあるが、それを望んでおられぬ。
大罪人として皆の者から非難されて、しかるべく処置されることをお望みの様じゃ。
「真里様のお亡くなりになる前には結果にしたいの~」
「爺!そんな事は当たり前じゃ!!それこそ我らの腕の見せ所ぞ!!」
「ほっほっほ~言いよるの~しかし、その通りじゃ!!」
「おう!幻術士としての初仕事ぞ、幻術士の妙技を見せようぞ!!」
「そうじゃの~妙技を見せねばの!!」
蔵人様に「幻術士の実力・・・いや、妙技を俺に見せてくれ!!」と言われた。
「妙技」良い響きじゃ!!
幻術を恐れる者は大けれど、「妙技」等と未だ嘗て心から褒められたことなどはない。
仕官の際に見せれば表面では褒めるが裏で命を狙う・・・驚きはしても心からは褒めぬ・・・いや、恐れる・・・味方になるのだから喜べばいいものを裏切られた時のことを恐れ命を狙う・・・武田家では己の死を偽装して事なきを得たが・・・命懸けじゃった。
「じゃあ、明日から向うとしようか」
「いや、今から向かうぞ!」
「爺・・・お前さんのこと考えて明日と提案したのじゃが・・・」
「儂は燃えておる!!」
儂が蔵人様のお言葉で「妙技」が気に入ったように、爺は「燃える」と言うのが殊の外お気に入りの様じゃ。
確かに蔵人様の言い回しは面白い。
「人を幻術で手玉に取るとか燃えるな~」等と言われた。
「燃える?」意味は何となく解る。
心に炎が灯ると言うことであろう。
確かに燃える、いや、燃えている!!
爺が今から行くと言う意気込みは解る!!
「しかたない、では行くか!!」
★~~~~~~★
スナイパーの方も口を割った。
自分が神の末裔を手に掛けたことを知ると震え出した。
序に
尋問していた者の話では、幻術を見せた次の日から情緒不安定となり、「儂は地獄行きかの~」などと言うようになったそうだから
俺に「話がしたい」と言うから行ってみたら、3日で人間ここまで変わるのと言うように別人の様に成り果てていた。
目がギョロギョロしていて血走っている。
唇が荒れてボロボロで顔の血色も悪い。
まぁ、拷問しているからそれもあるのか?・・・尋問官の者曰く、心を折ったのが大きいとのことだ。
俺のセリフよりも自分が信じる阿弥陀様にNO言われたのが大きかったようだ。
彼は
雑賀・・・孫一・・・あの人?・・・よく解らん。
平井て名字だし違うのかな?・・・本当によく解らんが、雑賀衆も今後の為に潰すことを考えようか。
石山本願寺の坊主ども、特に顕如は俺の事を悪魔と言って罵っていたが、最近は特に真里が怪我をしたのも俺の影響で俺の近くに居るから不幸が降りかかった等と言っていたが、2カ月もするとそんな事も言わなくなった。
内々でという事で石山本願寺の有力者たちから謝罪の書状などが届く様になってきた。
朝廷の朝敵認定も大きかったようで、門徒が減っているとの噂だ。
顕如は俺の呪いだと言い、祈祷などして俺に呪詛返しを行っているとか・・・
呪詛?何言っているの?俺はそんなものは飛ばしていない。
果心さんや鳶加藤さんにちょっとお願いしただけだ。
三好家も同じようなものだ。
しかし、4カ月も経つと両方共に俺に謝罪の手紙を寄こす者がチラホラと現れたが、毎回の様に「先ずは首謀者の首持ってこい」と伝えている。
そして、賠償金として「20万貫」要求している。
1貫が昭和~令和の金額で言うと15万円なので20万貫って300億か・・・
幾ら大大名、巨大宗教団体でも右から左に出せる金額ではない。
しかし、出すしかなくなるだろうと思っている。
特に本願寺は無理してでも出さないと地獄行きだしね~
果心さんや鳶加藤さんが幻を見せたら必ず「如何すれば助かるか?」と聞かれるという事だったので、「被害者に詫びて被害者の言い分通りにすれば・・・」的な感じで締めるように言ったのでそれからのお手紙攻勢なのだろう。
「先ずは詫びる」を実践して来た者たちなのかもしれない。
真里は驚いたことに普通に生活できるようで余命一年とは思えないが、神の加護の影響だからだと思うと切なくなる。
順調に妊娠したし、問題は無いが、残りの時間を惜しむ様に俺含めて皆が真里の傍らを余り離れないようにしている感じだ。
藤林一門は襲撃を未然に防げなかったことに落ち込んでいたが、暗殺を防ぐのは中々に難しい事で、令和の時代ですら元国家元首が襲われて命を散らす程だ、この戦国時代だとなおのこと難しいが、警護も仕事になるという事を言うと、長門守も何か思う所があった様で俺に色々と聞いて来るようになった。
藤林警備と言う会社が将来出来るかもしれないね。
警備員が忍術使いとか・・・何か浪漫だね~将来は「日本のガードマンは忍者なんだぜ」とか言われる日があるのかもしれないね。
江戸時代は忍者=警備の人みたいな感じだったとも聞くし、意外と先取り的な考え方かもしれないね。
さて、俺は摩利支天様に感謝してこの京に日天様と摩利支天様のお社を建立することとした。
これは朝廷にも認可された。
剣術大会で大儲けしたし、立派なお社を建立する予定だったが、俺のポケットマネーだけではなく、寄付や色々が集まり中々に凄いこととなっている。
お社管理には藤林家の者を数人割り当てて京都支社的に活用することも考えている。
弓ちゃんも歩き巫女計画の拠点の一つと考えているようで、他の地域にも何かしらのお社を建てることを考えているようだが、先の話だし、態々建てなくても在る物を活用する手もあるので色々とアドバイスはしているので藤林くノ一も俺と一緒に壮大な計画が立ち上がっている。
京の町には身寄りのない子供たちも職などを求め集まって来るようなのでこまめにスカウトし人材確保をしているので若しかすると本当に巨大組織になるのかもしれないね。
果心さん・鳶加藤さんにも弟子の育成を提案しているが、今の所は出張中で話は進んでいないが、落ち着いたら話を進めよう。
一応は忍術を好む春麗が藤林家だけでなく果心さん・鳶加藤さんの弟子的なポジションではあるが、仙人の末裔と言う春麗には意外と忍びや幻術の才能があるのかもしれないと最近は思う。
さて、莉里が以前以上に頭を使い始めた。
天才が怒ると怖いね~真里を傷付けた三好日向守や顕如に対し俺と違う形で報復プランを練っているようだ。
堺の商人連中などを巻き込み、結託して何かを狙っている様なのでそちらはそちらで見物だね~
〇~~~~~~〇
計画は着々と進んでおります!!
さて、20万貫と言うのはどれ位凄いのか?
額面で現在の金額に直すと作中で語っている通り300億位です。
石山本願寺と織田信長の戦いである石山合戦は顕如が石山で挙兵し、本願寺側が大坂退去の誓紙を信長に提出し戦闘が休止される期間を差してそう言われますが、実に長い事で10年間もの間の事だったようです。
何故に20万貫のお金の話から石山合戦?と思う方いると思いますが、実は信長が石山本願寺に対して京都御所再建費用として5,000貫の矢銭と石山を求めたことが引き金と言われています。
通説では石山本願寺に信長が無理難題を吹っ掛け、破却するとまで言ったので、本願寺顕如が蜂起したとされます。
しかし、実際は顕如が諸国の門徒に信長への決起を促す檄文を送って先に仕掛けています。
『細川両家記』と言う
その中で本願寺が信長に敵対したことを驚いた記載があるそうで、戦い自体も顕如が先に仕掛けたようです。
では、何で信長が驚いたのかと言うと、実は本願寺は宗教団体と言うより大名としてみなされていたのではないかと言われています。
何故に信長がそう思うかと言うと、本願寺自体が室町幕府では大名の一つとみなされていた為に、幕府は内裏の修理料の負担などを本願寺に命じたり、諸国が負担する税なども同様に徴収していたようです。
簡単に言えば、室町幕府自体が本願寺を加賀の一大名とみなしていたようです。
だから信長もそう見ていたのですが、本願寺側は自分たちは宗教団体と思っていますからそこで食い違いが出ての結末のようです。
何故に本願寺は室町幕府に従っていたのか?と言うと、門徒が安心して信仰をする上で、対立よりも友好関係を結んだ方が良いと言う考え方でしたが・・・これがボタンの掛け間違い的な事になります。
意外かもしれませんが、信長は本願寺の息の根を止めようとはしなかったのではないかと言われています。
そうでなければ戦いが10年も持ちませんし、噛みつかれたからやり返しただけだろうと推察できます。
現に信長に従えば問題はなく、それ以後、信長は本願寺と良好な関係を保ったのですから信長の性格から考えて潰そうと考えた物をその後に潰さなかったことからもボタンの掛け違いだったんじゃないの?と思われます。
顕如は石山を退去すると紀伊国鷺森御坊に移り、ここを新たな本山としたようです。
しかし、この石山合戦の際に本願寺内では、信長と和睦するか、徹底抗戦するかで意見が対立して派閥が出来たようです。
この対立が後々の後継ぎ問題とも絡み、徳川家康の時代に本願寺は、真宗大谷派(東)と浄土真宗本願寺派(西)に分裂することになったそうです。
この物語の時期は公家の九条家を介して本願寺は三好家と良好な関係で、特に三好三人衆と良好な関係だったようです。
この物語では主人公の行動で色々と変わった様でそこまで仲良くない感じとしておりますが・・・
余談ですが・・・え?この部分が全部余談だろうと?・・・さて、余談ですが、「神仏なぞ恐れぬぞ!!」と127話でスナイパー孫一が言っております。
ここに気が付いた方は凄いです!!
実は浄土真宗の教えは一種独特な部分があり、仏教なのに一神教的な要素があります。
何それ?と思いますよね?実は、「阿弥陀様以外は神仏は認めません!!拝みません!!」と言う感じなのです。
ですから、「阿弥陀様の言う事は従いますが、他の神仏は・・・」と言うのが浄土真宗のスタンスです。
幻術で阿弥陀様を出したのは事実だとしたら効果覿面なことだと思います。
親鸞が立ち上げた浄土真宗が仏教だけど別宗教等と言われる所以の一つですね~
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