第102話

1話多めにUP!!

今回のうんちくは是非とも読んで欲しいのですが、必要無いと言う方には何時もの如くお任せします!!

持て余した余暇の暇つぶしにどうぞ~


◇~~~~~~◇


「父上!一大事に御座います!!」

金吾きんご(松永久通ひさみちの通称)如何した?」


息子の金吾が慌てた様子で儂の下にやって来た。

いよいよその時が来たと確信した。


「父上、驚かずにお聞きください」

「何だ?早う言え」

「はい、実は定例の評定の際に日向守殿(三好長逸ながやす)の提案にて」

「御所巻きでも言って来たか?」

「な、何故それを・・・父上が関わっておいでですか?」


長の言っておった事が始まったのであろう。

長から聞いた瞬間に「ありえる」と先ず思った。

長慶様は儂よりも感じられたことであろう。

将軍、足利義輝様をうとんじる者は三好内に多い。

理由は三好の庇護下に居るにも拘らず、諸大名を示唆して三好家の邪魔をすることであろう。

日向守殿(三好長逸ながやす)たちとは協力して三好家の政務に当ってはおるが、常々、義輝様に対しての不平不満を漏らしておった。

長慶様が居られた時はあの者たちも不満は言えど長慶様に抑えられておったが・・・重存しげまさ様(後の三好義継よしつぐ)では抑えられぬようだ。

長に聞いた折に如何にして抑えるかを考えたが、長慶様にも「儂でも苦労しておるに儂亡き後は抑えることは不可能じゃ」と笑顔で言われた・・・長慶様の最後の儂への挑戦状の様な物と思い如何に家中の者を抑えるか考えてみたが無理であった。

長慶様が如何に腐心されたという事が身に染みて感じる結果となった。

結論から言えば抑えても抑えても最終的には事が起こる事にしか行き着かなんだ。


「いや、儂は関わってはおらぬ」

「左様ですか・・・」

「しかし、長慶様が生前に抑えるのに苦労されておった」

「父上は御所巻きは反対ですか?」

「御所巻き?その先も遣るとでも話に出なんだか?」

「それは・・・」


息子は青い顔をして此方をジッと見詰める。

まだまだよの~考えてみれば長とそう歳は変わらんが、長は感情を表に出しているようにも見えて本当の感情が読めぬ・・・何も考えておらぬかもしれぬ・・・いや、そんな事はないな・・・人の身で神仏の声を聞く者ぞ、苦労が無いなどあり得ぬ事よ。

感情を読ませぬはやはり兵法を極めし者だからなのかもしれぬな。

長を見ているとそうは見えぬが・・・何にしてもそう見せぬのも長の凄い所であろう。

息子に長の爪の垢でも煎じて飲ませてみるか?

溜息を吐きつつ息子の金吾に詳しい話を聞いて行く。


「それで、何時決行予定じゃ?」

「義輝様に偏諱授与頂く際に様子を窺ってから決行日は決めることとなって御座います・・・」

「ほう・・・偏諱を貰った相手をあやめるか・・・」


バツの悪そうな顔で此方をジッと見詰める金吾。

さて、儂はどのように動くべきか?


「金吾よ、一つ動いて欲しいことがある」

「何で御座いましょうか?」

「近衛の者を助けるように進言してくれ」

「近衛の者と言いますと、慶寿院けいじゅいん様(近衛前久の叔母)と義輝様の正妻の・・・」

「そうじゃ・・・そうよの~日向守殿に何か言われたら「近衛家に恩を売る」とでも言えば納得しよう」

「左様ですか・・・」

「もしも、あの者たちが義輝様もろとも殺めると言えば、「将軍殺しばかりか朝敵の汚名までお被りになるのですか」とでも言ってみよ」

「そ、某がですか?」

「他に誰がおる?」


情けなし・・・まぁ事が終わってから鍛え直しじゃな。

義輝様亡き後は義輝様の弟君が後々将軍となる様な事を長は言っておった。

弟君はお二人居られるが、何方が将来の将軍様か・・・お二人とも助けられればそれに越したことはないが・・・覚慶かくけい様(後の足利義昭)が興福寺か・・・長慶様の「慶」の字があるお方だし賭けてみるか・・・

儂は一通の文を書く。

手の者に山科邸へ行き長に渡す様にと言付ける。

何とかしてくれそうな宛は今は一人しか思いつかぬ・・・四位蔵人殿に助力を頼むこととするか。

★~~~~~~★


霜台爺さんより手紙が来た。

内容は、覚慶かくけいと言う坊さんをしている将軍様の弟の警護依頼だ。

坊さん警護?・・・何で坊さんを警護?と思うが、爺さんの頼みだ受けることとした。

若しかしたらこの覚慶さんが将来の将軍様かもしれないしね~

現将軍の弟で元お坊さんって言ったら孫次郎さんも霜台爺さんに話した時に突っ込まれたよ・・・「二人とも僧侶じゃがどっちじゃ?」だってさ~そこまで知らんぞ!!

素直に知らないと答えたぞ!!

「「天啓」の聞き落としじゃないのか?」とか言われたが・・・面倒で「そうかもね」て笑顔で答えておいたよ。

まぁそんな過去の事は置いて起き。

近衛殿下の親族を頼んだことによる更なる追加ミッションが今度は霜台爺さんから発生したようだ・・・


「お~い、聞いてくれ~」


俺は皆に今回のミッションを説明した。

爺さんの計画では将軍弑逆が起こった時に次に危ないのがこの将軍の弟たちだと言う話だ。

まぁ弟は数人いるらしいし、どれが将来の足利義昭かは知らんが、助かった誰かが存在進化して将軍になるのであろう。

さて、次は興福寺か~そう言えば宝蔵院ほうぞういん胤栄いんえいさんが興福寺系列とか言ってたな~興福寺の子院だったかな?


「霜台爺さんの依頼で一乗院いちじょういんと言う寺院の覚慶かくけいと言うお坊様を護衛することとなった。序だから宝蔵院に行き胤栄殿に槍術を教えて貰おう!!」

「師匠!楽しみです!!」

「長師匠!最初は私が戦う!!」


槍のバカップルが我先にと喜びを口にした。

俺は山科様にいとまの挨拶をすると目的地へと皆だワイワイと話しながら向かっていった。

これから京の町はキナ臭くなるし丁度良いタイミングで京から離れることが出来たと前向きに捉えておこう。

山科邸を出ると両脇を美羽・真里にがっちりガードされつつ向うが少し歩き辛い。


「長師匠~モテモテだね~」

「莉里よ!歩き難いからお前の姉たちに一言言ってやってくれ」

「え~馬に蹴られたくないので無理~」


それを聞いていた両脇の二人が悲しそうな顔で言って来る。


「ご迷惑でしたか?」

「え~と・・・真里よ少しだけ歩きにくいだけだ・・・」

「長師匠!金銀は良いのに私たち駄目なの?」

「いや・・・美羽たちは歩き難くないか?」

「「大丈夫です!!」」


結局は二人に両腕を持たれたままで旅の空となった。

少しだけ歩き難いが両手は幸福なので楽しい旅にはなるかな?


〇~~~~~~〇


永禄の変が動き出しました。

さて、人物紹介しておきましょう。

松永久通ひさみちは松永久秀の息子で、永禄の変の三好側のメインキャストの一人であることは前の話でも書いておりましたが、実は三好重存が将軍の足利義輝から「義」の字の偏諱授与の際に義輝から同じく「義」の字を偏諱授与されております。

しかし、義輝を襲撃、殺害した首謀者の一人だったので直ぐに返して元の名に戻しております。

松永久秀は長慶の死後は大和に滞在することが多く出仕はこの息子さんにお任せしていた様で、永禄の変の際も大和に滞在していて、参加はしておりません。

義輝の子を懐妊していた小侍従局や弟の周暠は殺害されましたが、覚慶(後の足利義昭)は松永久秀に保護されたようです。

次の傀儡将軍の候補とされたとも言われますが、運は良かったのでしょう。

しかし、兄や弟が殺されていますからかなり怯えていた様で、久秀は事件直後に覚慶の命は取るつもりはないと誓詞を出しており、実際に興福寺での監禁は外出を禁止する程度でさほど厳しいものにはしていなかったようです。

さて、話は久通に戻り、一時期、松永久秀は息子から姿を眩ませていたようです。

1566年6月~1567年4月の間らしいので約1年ほどです。

その間は多聞山城の守備に徹し、松永久秀が復帰するまで三人衆方の筒井順慶と大和でドンパチやっていたようです。

そして、もう一人ご紹介!!

三好日向守長逸ながやす君!!

彼は三好三人衆の筆頭格となる人物で、松永久秀と双璧を成した三好の重鎮です。

三好長慶に反発して細川晴元と共に近江に亡命した足利義輝とも戦ったこともある様で、長慶ですら制御するのが大変だった人物の一人です。

長慶との関係は長慶から見て従叔父になる親族の一人なので、長慶に物言える人物の一人でもありました。

三好一族の中でも長慶に最も信頼されていた様で、山城飯岡城の城主を任せ、山城南半分の統治を任せていたりした時期もあるようです。

長逸は永禄の変で義輝の正室である大陽院だいよういん(近衛前久の妹)を保護し近衛邸に護送しております。

ルイス・フロイスの『日本史』にもどのような人物か記載がありますが、ガスパル・ヴィレラやルイス・フロイスが京から追放されて堺に赴く際に良くしてやったので「生来善良な人」「教会の友人」的に好意的な記載ある人物です。

この小説で度々出て来るルイス・フロイスの『日本史』ですが、この資料は中々に面白い資料で、松永久秀による東大寺大仏殿焼き討ちの事にも記載がありそれによると、「三好方のキリシタンの放火」であることが書かれています。

久秀はバリバリの仏教徒でガチガチの反キリスト教派なので久秀の三大悪の1つである東大寺大仏殿焼き討ちも若しかすると濡れ衣の可能性はありますね~

そうすると、松永久秀の三大悪って本当に何よ?って感じですね~

次回は次世代将軍様が登場?

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