第8話
「
「どれどれ・・・正解」
光陰矢の如しと言うが博多に来て1カ月経つ。
神屋さん、改め紹さんとは毎日話している内に殿付けとか肩っ苦しくなり「さん付けで呼びませんか」と提案して合意頂いて更に直ぐに色々と意気投合して長さん・紹さんと呼び合う仲になった。
紹さんの息子の
それにしてもこの貞坊は多分天才だ。
教えれば教えただけそれを吸収する。
1日でアラビア数字を覚え、1週間で足し算を覚え、3日で引き算を覚えた。
今は既に足し引き掛け割りの複合的な問題を解いている。
(中二心でローマ数字としておりましたが、ある読者様よりご指摘あり冷静に考えるとアラビア数字の方が利便性高いよねて思いまして・・・変更しました!!)
計算するのに電卓欲しいが無いのでそろばん無いかな~とか思ったが一般的では無い様だ。
仕方ないので紹さんに道具屋を紹介してもらってそろばん作りました!!
どうやら中国式のそろばんはあるようだったので俺の知るそろばんへとブラッシュアップ!!
それの使い方も今は教えておりますがやはり貞坊は天才で、教えている誰よりも上手に使うようになった。
最近は脳内そろばんでの暗算も教えているがまだまだイメージ出来ないようであるが取っ掛かりは出来つつあるようで簡単な暗算では普通にそろばんを使わなくなった。
貞坊以外はまだまだだが、出来れば後1月位で今の貞坊程度の事を覚えて欲しい物である。
そう言えばあの番頭、名前を
全て水に流して今では普通に付き合っている。
「商人で金に蔵とは縁起が良いな~」と言うと名前があまり気に入っていなかった様だが最近は名前が気にならなくなったようだ。
コンプレックスが解消されて良きかな良きかな。
それに同じ「蔵」の字が名前に付くのだし仲良くしたいところであるが何だか金蔵からは尊敬されている様で・・・ファーストコンタクトのインパクトが影響しているんだろう。
この1カ月で先ず博多〇らぶらのバッタ物を作成した。
見掛けは簡単に見えるが流石は銘菓、微妙に同じ味にはならないが少し違ったモドキのお菓子が完成した。
この時代でも長年地元で愛されたお菓子はウケた。
少し黒砂糖風味なのはご愛敬である。
序でに黒砂糖あるんだしと思って黒棒作ってみたがこちらもウケた。
黒棒作るのにベーキングパウダー欲しかったが無いので代用として炭酸水を考えたが近郊で炭酸水って有ったかな?と考えて1つ思い出した。
長田鉱泉場である。
福岡県筑後市の船小屋温泉近くにある天然炭酸水の湧き出る場所だ。
旅行でお出掛けして飲んだが全国的に有名な天然の炭酸水と言うだけあり美味かった!!
何気なく紹さんに場所を説明すると
あれぇ~?この時代は無いのか?しまったな・・・如何しよう。
「天啓でそこにあるそうなんですが出来れば恵比須様が食べたいと・・・」
ここは便利な猫型ロボットならぬ「天啓」に御すがりした。
恵比須様ごめんよ~俺が食べたかったんだよ・・・黒棒はある意味俺のソールフードである急に食べたくなったのだ。
全ては目の前にある黒砂糖が悪い!!
流石は博多を代表する大店の主、紹さんは忘れた頃に炭酸水を持って来られました。
そして、食べた人々は黒棒の魔力に遣られ虜となった。
後に時の帝へこの2つが献上されることとなったと知らされたが・・・俺は何も知らないこととしておこう。
「そう言えば長さん、恵比須様のお社は何処に立てれば良いんですかね?」
何故俺に聞くと思ったが、恵比須様を勝手に持ち出したのは俺だ・・・
それに、忘れていたよ・・・確か十日恵比寿神社は吉塚駅(博多駅の隣駅)近くにあったな・・・
今はどこら辺か地名で吉塚で合ってるの?解らんが・・・
「恵比須様と言えば・・・」
「恵比須様と言えば?」
「・・・そう、恵比須様と言えば海!浜辺近くとか・・・」
「おお、確かに確かに、早速そこら辺を調べさせて良さそうな立地を探してみましょう!」
あ~地名とか適当な事言えないから恵比須様は
後日、調べさせた結果、その浜辺で恵比須様の像が見つかったと報告があり適当に言った自分自身が一番驚いたが、そのことは墓まで持って行く秘密としよう・・・
恵比須様の像が見つかったと言う事でそこに恵比寿神社を建てることとなったが・・・将来、十日恵比寿は本来の場所と違う場所に建立されるかもしれないが、お祭りするのには変わりないので許して欲しいな~と神頼みしておこう。
せめて名前くらいは残さないとなと思うが如何するか・・・
紹さんから親戚の子として
何でも酒屋の息子なので「焼酎の製法はこちらに売ってみては?」と紹さんに言われた。
それと、是非とも簿記やそろばん術を教えて欲しいと頼まれた。
まぁ特に問題無いので紹さんの言う通りにしたが後々凄いことになるがそれはまだ後の話。
「長さん、ここはどうですか?」
「
「え?おかしいな~」
普通はこれ位だよね~貞坊が天才なだけで普通の人はこれ位のものだ。
計算の説明をすると自分の間違いがどこだったのかを直ぐ理解するので彼の場合は秀才タイプだろう。
茂さんは最近茶の湯に嵌って来たようであるが俺も紹さんの勧めで茶の湯を紹さんに教えて貰っている。
この頃はまだ千利休とかが大塔していない時代なので堅苦しいお作法なども少ない。
何方かと言えばお茶を楽しみながらコミュニケーションを取ると言うような社交的な意味合いが大きい。
最近はセレブ層と言うか富裕層の嗜みとして茶の湯が人気らしい。
茂さんは中でも茶道具に魅力を感じる様で収集にお熱の様である。
紹さんが貿易商と聞いていたので何気なく
あれ?この時代の物じゃなかったっけ?まだ少し早かった?また何か遣らかしたような気がして背中に冷たい物が走る。
俺の内心の焦りとは別に紹さんは大変興味を持ったようである。
「その壺はどういう物ですか?」
「食い付きが凄いですね・・・え~と・・・呂宋にある有触れた保存用の壺なのですけど・・・茶葉の保管に丁度良いと言う事で人気じゃ?・・・」
「聞いたことは御座いませんな?」
「そうなんですね・・・」
「それは天啓ですか?」
「いえ・・・」
天啓じゃないと言うとハッキリ解る程に紹さんはガッカリしたが俺の方を不審な目で見て来る。
そうだよな~貿易商の情報通の商人が知らないのにたかが国人のドラ息子が外国の情報知っているっておかしいよね~ヤバいな・・・
「実は・・・」
「実は?」
「夢の中で恵比須様にお接待頂いた際に・・・」
「ああ、若しかして?」
「はい、その際にお茶を頂きましたがその時にお茶を保管していた壺を自慢されまして・・・」
「な、な、何と!!恵比須様がご使用された・・・壺!!」
絶対これまたやらかした奴だ・・・
背中にダラダラと汗が流れ落ちる。
「その際に幾つか茶道具を見せて頂いた中の1つがそれでして・・・あちらではただの壺なのですが、こちらに持ち込めば・・・」
「そうですね!何としても探させます!!」
「はい・・・恵比須様の話は某と紹さんの秘密と言う事で・・・」
「はいはい勿論心得ておりますよ!!」
1年後その壺は国内に持ち込まれた。
俺が言ったままで穀物などを保存するただ有触れた壺が飛ぶ様に少し高値で売れた。
時代が時代だし千利休の様にセールスマンの居ない壺にはプレミアは付かなかったがそれでも味のあるその壺はある一定のステータスを得た様である。
紹さんは俺に対してホクホク顔で「一生面倒見ますよ」と言う。
どれだけ儲かったのやら・・・「よろしくお願いします」とだけ答えておいた。
ただし、呂宋壺の逸話で有名な話で骨壺や便器として使われた物もあり、時の権力者であった豊臣秀吉に献上された呂宋壺が過去に便器であった為秀吉が大激怒したらしいので持って来る際に注意するようにとアドバイスしておいた。
神屋が
神屋印の呂宋壺は穀物などの保管用の物だけを厳選して手に入れる様にと言明されたのは言うまでも無い。
時代が変わろうと骨壺や便器に使われた物には好い気はしないのだからそこは重要だ。
時は流れ博多に来て半年が過ぎた。
何故か現在、博多を押さえている大大名の
かの有名なキリシタン大名、後の
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