第295話

100万字突破!!

(※10万字ごとに5,000文字余幅として設けています。文字数的には105文字突破となります。)

大台に乗りました!!

まだまだ続きますのでお読み頂ければ幸いです。


◇~~~~~~◇


捕虜の男を見た女性は慌てたように男の方に近寄って来たかと思うと凄い剣幕で男に言い募る。


「だから言ったのよ!カルロ!!ゲホゲホゲホ・・・」

「すまん・・・シャル・・・」


シャルと呼ばれた女性は沈痛な面持ちで捕虜となったその男を咳き込みながらも見詰める。

カルロと呼ばれた男は心配そうにその女性を見詰めては居るが、同時にバツが悪そうとという感じである。


「取り合えず、事情は聴いてやるから話してみろ」


俺はそう声を掛けて事情を聴くこととした。

男の名はカルロス・グスマンと言い貴族家の八男坊らしい。

家長の弟である親の八男なので名ばかり貴族と言うより、既に貴族籍すら無いらしい。

元々はある家で騎士として仕事をしていたらしい。

シャルことシャーロットと言うのが件の女性の名で、彼女も同じく女騎士として彼と同じ家に仕えていたそうだ。

そして、二人は恋仲となり結ばれた。

そこまでは良かったが、シャーロットは美人だ。

彼女の上司が以前から彼女に粉を掛けていたが選ばれたのは捕虜となった男、カルロスである。

上司の妬みで二人ともその貴族家に居辛くなり、仕方なく職を辞し船の護衛となったそうだ。

折り悪く彼女が胸の病気を患い今の状態となる。

そして、流れ流れて海賊の雇用される今の状態に行き着いたそうだ。

運の悪い事に、海賊に雇用されて初戦で俺たちに当ったそうで、運の悪さを嘆くしかないと自嘲気味にカルロスは言う。

シャーロットさんは泣きながら「カルロの馬鹿、何度も何度も止めようって言ったのに」と嘆いている。

うん、見ていて可愛そうになって来たので、初犯と言う事で情状酌量の余地ありと俺が勝手に判断し助けてやることとした。


「シャーロットさんに免じて助けてやろう」

「本当か?」「いいのですか?」


二人が驚き聞いて来るので頷いておいた。

里子が「父上は美人に弱いですから」と言うが、決してそんなことはないぞ・・・多分。

それにしても、里子ちゃんにはそう思われてるのね・・・パパ悲しいよ・・・

まぁ取り合えず口にした以上助けることは確定だ。

船室で惰眠を謳歌している千代を呼び出し、確認することとした。


「どうだ?」

「うむ!「神饌」を2日程続けて飲めば治ろう」


千代の見立てでは「神饌」を2回飲むだけでシャーロットさんの病気は回復するらしい。

「神饌」の万能さに驚く。

恐らくだけど、シャーロットさんの病はこの時代で労咳ろうがいと呼ばれるもので、将来的に肺結核はいけっかくと名付けられる病気であろう。

結核菌に感染後に体が弱って症状が出る。

菌なので移ることもある病気なので何方にしても対処が必要だから、恩を売るにも丁度良いと「神饌」を飲ませ快癒させた。

病気は治っても落ちた筋力などは戻らないので元騎士とは思えない程に彼女は華奢だ。

しかし、驚いたことに元々はカルロスより腕が立つらしい。

それを聞いた女性陣が色めき立つ。

うん、立合いたいのね。

丁度良いので人材登用と言う事で、この夫婦を雇うこととした。

里子のお付きが居なくなっていたので、航海の間は里子お付きとしてカルロスを充てた。

シャーロットさんはまだまだ病気療養が必要なので、安静にしつつ、適度な運動をして貰うこととした。

航海は長いので良い話し相手が出来たと思い、お互いの事を話したりもしたが、俺がスペインとイングランドの貴族位を持つ事を言うと、驚かれた。

やはりと言うか何と言うか、その両国の爵位持ちは珍しいらしいし、名ばかりだが伯爵位と言うのはそれなりの高位らしい。

日ノ本での官位は驚かれなかった。

このような船を所持しているのだから何処かの国の高位の者と思っていたそうだ。

とりあえず、雇用条件とかも考えないといけないので、雑談でそこら辺も探りを入れた。


「金貨三枚で雇われていた」

「え?たったそれだけ?」

「勿論、襲った船で得た物は山分けになるから、臨時で収入にはなるが・・・」


金貨の価値はよく解らないが、カルロは「腕が立つから良い金額なのだぞ」と言うが、命の代償に金貨三枚と考えると安くないかな?と思ってしまう。

確か、前世で聞きかじった話だと、一両が30万位の価値と聞いたから、同じ金貨と考えて換算すると、約90万で命懸けの仕事の雇用をされていたと言う事になる。

高いのか安いのかはよく解らないが、先に金貨一枚を渡され、終わり時に二枚渡されるという形らしいので、金貨一枚しか手に入らなかったと言う事となる。

うん、安過ぎて驚くぞ。

雇用条件として年間で20両で雇うこととした。

シャルの方も正式雇用後はその金額で雇うことも明言した。

二人とも驚き、そんなに貰って良いのかと聞かれたが、手練れにしては安い金額だと思うけど、本人たちが驚いているし、喜んでいるからな~要らない事は言わないよ。


「カルロとシャルの腕を見込んでの奮発だよ」

「「主様!!誠心誠意仕えさせて頂く!!」」


ハモって俺に忠誠を誓って来たよ。

うん、何だか悪い気もしなくはないが、本人たちの満足度は高いし黙っておこう。

実状が知れたら徐々に給与を上げて行けば問題無いだろう。


〇~~~~~~〇


次話はいよいよ主人公一行が日本に戻って来ます!!

さて、女騎士ですが、中世のヨーロッパは男尊女卑なのでそんな者がいたのかと思われると思いますが、女騎士は存在しました。

スペインに女騎士が居て戦いにも従事したことが記録にも残されているようですし、何より、12世紀頃の遺跡で名誉ある死を遂げた騎士の墓所より多くの遺骨が見つかったらしいのですが、その中に一人の女性の遺骨があったそうです。

数は少数ですが居たようです。

女性騎士と言えば「くっ、殺せ!!」のくっころイメージですが、実際に強かったのか?

強かった様です。

何故強かったと言えるかと言うと、騎士と言うのは武力を土台として就く職業の一つです。

勿論、コネとか色々あるとは思いますが、基本的には武力ありきの職業です。

そんな中、男性中心の職に女性が混じる訳ですからそれなりの実力者ではないと成りえません。

物語などで「私より強い者とかし結婚しない」なぞと言う女騎士が居ますが、それが言える程の実力者が多かったようです。

勿論、例外も居ると思いますが、男社会の職業に女性で飛び込むのですからやはり強い事が最低条件です。

さてさて、物語中で新キャラのカルロスの給与が20両でしたが、1両当り28万程の価値だったようです。

と言う事は約560万の年収で雇用したと言う事になります。

これを高いとみるか安いとみるかは時代によって違うと思いますが、主人公は少しだけ現代感覚が残っている為、全体的な給与は高めで雇う傾向があり、その分待遇面が良く感じる配下は多そうです。

現代に比べ日本の戦国期位の人件費は驚く程に安かったようですから、金貨3枚(3両換算だと約84万)程で命懸けの仕事に就くのは破格の金額だったのかもしれません。

江戸時代の幕府に仕える下級武士の給与は税引き後で約500万程だったと言われますので、それから比べても高くは無いのですが、戦国時代は命懸けなのにそれ以下だったらしいです。

江戸時代以前には人の命が軽かったというのが給与からも見えて来るのですが、本当に時代によって人件費で色々見えてきますね。

現行の日本の社会情勢を見るに、凄く歪な時代です。

人が減っていると言われますけど人件費は低い国家となっております。

通常は人が居ないと人員確保の為に人件費ってどんどん上がるんですが、今の現状で賃金ってそんなに上がっていないのが日本の実状なんですが、どうしてこんなに歪なのか不思議ですね。

経済を語る話でもないので、この話はここまでで!!

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