第123話

★500オーバー!!評価頂きました読者の皆様方、有難うございます!!

500と言うのは大台ですね~


◇~~~~~~◇


運も実力の内とは言うが、美羽の運が留まるところを知らない。

通常であれば胤栄さんの勝ちかもしれないが、消耗度が大きかった。

流石に午前中に林崎さんとフルで戦った影響は大きかった様で技の切れが悪かった。

対して美羽は午前中は不戦勝で万全の状態で戦えたのが大きい。

そして、スピードで翻弄する美羽の戦闘スタイルが更に胤栄さんを苦しめた。

疲れている体を更に疲れさせられた訳だ。

一方、次の試合の真里は吉岡さんと長く打ち合って消耗している。

宗厳さんも斎藤さんと打ち合って消耗している。

五分五分と言ったところか?

実力的に宗厳さんが上だと思っているが、真里が負けるのも想像し難い。

真里は西洋人らしく女性と言っても日本人の成人男性と遜色ない程には大柄だ。

いや、この時代の日本人が小さいのか?

タンパク質不足で成長を阻害しないようにと大豆でタンパク質を十分に補給した俺たちはこの時代の日本人の平均から考えると大柄な方だ。

俺は175㎝~180㎝の間位の身長はあるぞ!!

真里は170㎝ちょい位?

宗厳さんは170cmを切れる位で真里よりも少しだけ身長が低い。

まぁ身体的なサイズはこれから対戦する2人が五分五分位と言うことだ。

そして、2人とも後の先を得意としたタイプ。

実に良く似たタイプだ。

武術の世界で名を馳せる者は小柄な者は可成り少ない。

剣や槍と言った得物を使う場合もそれは変わることはない。

大きい者の方が体力やリーチ、力と言った基本能力が上なのでそれが武の実力と合わされば相乗効果として相手を圧倒する。

うん!真里VS宗厳さんはいい勝負にはなりそうだ。

会場は美羽の勝利で沸きに沸いている。

決勝まで残るとは思われていない者が残ったのだ、サプライズ?台風の目?そんな感じだろう。

そうこうしていると今日最後試合の時間となったようだ。

会場に真里と宗厳さんが入って来ると大歓声が響き渡る。

先程の大波乱を期待する者たちもいるが、賭けでNo.1の人気の宗厳さんを応援する者は多い。

「負けるな~」と言う声援があちこちで飛び交う。

入場し先ずは天子様に向い一礼。

そして、向かい合い互いに木刀を構えて開始の合図を待つ。

先程までの歓声が嘘の様に真里と宗厳さんの気勢がぶつかり合うその場の雰囲気から歓声が鳴り止み不思議な静寂がその場を包む。

「ドン!!」と太鼓が鳴ると、驚いたことに2人ともが間合いを詰めて打ち合う。

慎重に行くのかな?とか思っていたので意表を突かれた。

一気に詰めた二人は激しい攻防が続く。

あっけにとられた観客はポカーンとその様子を目だけで追う。

打ち合いが一段落して2人ともが同時に跳び退き間合いが生まれると、「ワー!!」と大きな歓声が上がる。

「何だ!!あの激しい打ち合いは!!」「あれでも勝負が付かないのか?」等々のそれぞれ感想で驚嘆している者が多い。

興奮はそのまま会場の熱気を一段と上昇させる。

うん!実に名勝負だ。

真里は下段斜めに構える。

宗厳さんは正眼に構えて対峙する。

両者とも少し肩で息をしているのは先程の激しい打ち合いで無酸素運動となったからだろう。

少しすると同時と言う位の時間で息が整ったようで、また両者ともが飛び込む様に間合いを詰めて木刀と木刀をぶつけ合う。

体格が五分なので両者ともに押し切る事は出来ず、直ぐにまた跳び退く。

そして、構えを取りなおし、お互いに気勢を飛ばす。

ここまでは本当に五分だ。

しかし、この後は膠着状態となる。

試合の半分経過を伝える「ドン!!」と言う太鼓の音が鳴るも勝負が付かない。

そして、「ドンドン!!」と終了の合図がされても勝負は着かなかった。

天子様にお伺いを立てるが「甲乙付け難し」と言うご意見。

ここまで五分の試合は想定していなかったので、大会運営も困惑し、俺にアドバイスを求めにやって来た。


「長よ如何した方が良いと思う?」

「う~ん・・・出場者の俺が意見しても良いので?」


山科様に呼ばれて大会運営の方に行くと案が求められた。

さて、如何したものか?

考えてふと思う、このまま真里が勝つのも俺の名を轟かせることとなるが、既に目標を達成していると思う。

そう考えると、俺がこういった華々しい場で柳生宗厳さんと戦ってみたくなった。

真里を呼び確認する。


「勝負が決まらぬ内に呼び出して悪いな」

「いえ、ご用ですか?」

「ああ・・・御用と言うかな・・・」


勝ちを譲る様にと真里に言うのも申し訳なく思い言い淀むと、真里は俺の意を読み取ったかのように言って来る。


「柳生様と試合をしてみたくなりましたか?」

「う・・・」

「長師匠らしいですね~」

「俺らしいか?」

「はい、顔に出て御座います」


俺は自分の顔を触るがよく解らん。


「この場は引けば宜しいので?」

「良いのか?」

「はい、元より私たちは師匠の挑戦者をふるいに掛けるのが役目、柳生様は長師匠と戦うには相応しいお方かと」

「おう・・・」


会場に宗厳さんを勝ち上がりとする事を告げる口上を告げると賛否両論あるが、今回は俺VS美羽VS宗厳さんの三つ巴戦と相成った。

真里は勝ちを譲ったのに満足そうに笑い、「長師匠の為に私たちは居ますから気になさらずに」と俺が真里に申し訳ないな~と思う気持ちを先読みしてそう言われた。

真里には敵わないな・・・


〇~~~~~~〇


主人公VSヒロインの1人VS柳生宗厳と言う三つ巴戦と相成りました。

ここでのうんちくはやはり柳生宗厳でしょう!!

柳生宗厳は松永久秀に仕える前は筒井昭順に仕えています。

宗厳15歳の時ですが、柳生家は筒井家に敗れ家名存続の為に筒井家に恭順します。

その筒井家に仕えながら戸田一刀斎またの名を鐘捲かねまき自斎じさいに 富田流を学んで奥義「獅子の洞入」を会得したそうです。

この筒井家に仕えていた時に順慶から「比類無き名誉を果たして負傷した」とのお褒めの書状を貰っていることからも武将としても活躍していたようです。

宗厳30歳の時、松永久秀が大和に進攻して来ました。

筒井順慶は敗れて敗走したことで、柳生家はどうするかの選択肢を迫られて、松永久秀に仕えることを選択したようです。

松永久秀の下でも活躍し、久秀からも重用されたようです。

腹心として扱われていたようです。

宗厳34歳の時に上泉信綱と出会い新陰流に入門します。

そして、信綱は「無刀取り」の公案を宗厳に託して柳生庄を離れ、目的だった京へと旅立ったようです。

そして、丁度この物語の剣術大会が開かれていた時期は松永久秀と共に苦境の時期だったようです。

宗厳47歳の時に織田信長が大和の守護を松永久秀の仇敵・筒井順慶にしたことで、松永久秀と共に信長に反抗しますが、松永久秀は滅ぼされました。

生き残った柳生家はその後豊臣政権下では没落一直線だったようですが、豊臣政権では大和の支配者が秀吉の実弟の豊臣秀長に代わりますが、隠し田が見つかり柳生家は更に困窮したようです。

豊臣政権下では散々でしたが、徳川家に宗矩が仕えると関ケ原の戦いでは没収されていた柳生庄の本領二千石を与えられたりと柳生家は復権していきます。

豊臣政権下の苦渋の時代に入道して石舟斎と名乗るのですが、この同年に「兵法百首」と言う自身の兵法観を百九首の和歌として編纂したと言われています。

その冒頭で「世を渡るわざのなきゆへ兵法を隠れ家とのみたのむ身ぞ憂き」と詠っています。

不遇の時代で1首目に自虐の歌を詠んだのが何とも黄昏ますね~

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